残酷な王と悲しみの王妃 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087451238

作品紹介・あらすじ

16、17世紀のヨーロッパを支配した王たち。現代に残る絵画や財宝にみることができる華やかさとは裏腹に、王朝を存続させるため政略結婚した王や王妃が歩んだ激動の人生とは!?(解説/原田マハ)

感想・レビュー・書評

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  • 中世ヨーロッパを舞台に実在した王と王妃の悲しみの歴史。

    読み終えて率直に中世と呼ばれる時代、ヨーロッパの王族間がこんなにも複雑な婚姻関係にあったことに驚かされました。

    ちょっと特殊な高校の専門コースに通っていた私自身が世界史を深く学んでこなかったこともあり、この複雑な家系を理解することは困難で、各章を純粋な一つの歴史として読み終えました。

    相変わらず登場人物の相関関係を把握することが苦手な私にとって、カタカナ名は一層の苦労を要しました。

    王の権力が強大が故に跡目争いは熾烈を極める。

    そこに隠された人間の本性はやはり恐ろしいものがありました。


    説明
    内容紹介
    16、17世紀のヨーロッパを支配した王たち。現代に残る絵画や財宝にみることができる華やかさとは裏腹に、王朝を存続させるため政略結婚した王や王妃が歩んだ激動の人生とは!?(解説/原田マハ)
    第1章 メアリー・スチュアート
    第2章 マルガリータ・テレサ
    第3章 イワン雷帝の七人の妃
    第4章 ゾフィア・ドロテア
    第5章 アン・ブーリン

    内容(「BOOK」データベースより)
    運命の支配か、宿命への挑戦か―。エリザベス一世と熾烈な闘いを繰りひろげたメアリー・スチュアート。血族結婚くりかえしの果てに生を受けたハプスブルクの王女マルガリータ・テレサ。強烈すぎるロシア皇帝イワン雷帝に嫁いだ七人の王妃たち…。数百年の時を越え、王族の生々しい息遣いがここに甦える。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    中野/京子
    作家・独文学者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • ヨーロッパは地続きなんだな。と、改めて思う。
    戦国時代の大名が家の繁栄や安泰のために、息子や娘に政略結婚させたように、国を越えてそれをやっていた。
    だから王族、皇族は海外の王族、皇族と親戚になっていて、名前も似たりよったりでややこしい。
    何度も系譜に戻って確認した。

    以前読んだ小説と映画では、アン・ブーリンは自分から仕組んでヘンリー8世に近づいたように描かれていたけど、本書ではヘンリー8世のゴリ押しで仕方なく結婚したようになっている。どちらが正しいのかはわからないが、当時の王様はやりたい放題、男尊女卑な世界だった事がうかがえる。

  • 読書録「残酷な王と悲しみの王妃」3

    著者 中野京子
    出版 集英社

    p38より引用
    “ これまでのいきさつ上、死んだ息子の嫁
    をカトリーヌが優遇するなどありえなかった。
    メアリーがもう少し知恵を働かせ、姑に対し
    て慎重な言動をとっていれば状況は違ってい
    たかもしれないが、今となっては「子なきは
    去る」しか道はない。”

    目次より抜粋引用
    “メアリー・スチュアート
     マルガリータ・テレサ
     イワン雷帝の七人の妃
     ゾフィア・ドロテア
     アン・ブーリン”

     独文学・欧州史に明るい著者による、ヨー
    ロッパの五人の王と王妃を巡る逸話を取り上
    げた一冊。同社刊行作文庫版。
     政敵との覇権争いをした者から夫のでたら
    めさに振り回された者まで、肖像画とともに
    ダイナミックなエピソードが記されています。

     上記の引用は、メアリー・スチュアートと
    カトリーヌ・ド・メディシスの関係がひっく
    り返ったことを記した項での一節。
    王妃として我が世の春を謳歌して、姑にも悪
    い態度で接していたところ、夫が死に宮廷に
    居場所がなくなったそうです。人生はいつ何
    時逆転してしまうか、誰にも分からないもの
    なのかもしれません。
     自分の息子を殴り殺したり、自分の妻を斬
    首にしたりと、ロクなやつがいません。しか
    し、現代のニュースを見ていても、同じよう
    な事件が後を絶たないのを見るに、人は思っ
    た程進歩していないのではないかと感じてし
    まいます。自分がそうならないためにも、歴
    史を学ぶことには意義があるのではないでしょ
    うか。

    ーーーーー

  • 「怖い絵」シリーズが面白かったので借りた本。
    中野京子さんの文体は切れ味が良く、読みやすい。

    学生時代は世界史にそれほど興味がなく、いい加減にしか勉強してこなかったのに、何度も読み返してしまう。

    スコットランド女王でエリザベス一世と覇権を争った
    メアリー・スチュワート

    ベラスケス作『ラス・メニーナス』で描かれたスペインハプスブルク家の幼い王女マルガリータ・テレサ

    「怖い絵」にも出てきた、皇帝による世継ぎの息子殺しの生々しい殺人現場を描いた、
    イリヤ・レーピン作『イワン雷帝とその息子』
    (なんでこんな怖い事件を絵の題材に選ぶのかと思いつつ、実は一番惹かれた)
    なぜロシア皇帝がこのような取り返しのつかない事件を引き起こすに至ったのかを詳しく解説した、
    イワン雷帝の七人の王妃

    ジョージ一世の妃であるゾフィア・ドロテア妃は
    32年もの間、夫に死ぬまで幽閉された。

    ヘンリーハ世の二番目の王妃アン・ブーリン
    彼女は後にエリザベス一世となる女児を生んだが、
    正嫡の男児を望むヘンリーハ世の期待に応えられなかった為に夫によって濡れ衣を着せられ斬首されている。

    彼女は映画『ブーリン家の姉妹』でも有名な悪女とされているがどう考えてもヘンリーハ世の身勝手さや無慈悲さの方が目立つ気がする。

    前王妃キャサリンとの離婚に反対するヴァチカンを切り捨て、英国国教会を設立という宗教改革をしてまで
    アン・ブーリンを手に入れたかったのだろうが、
    すぐにそれは憎しみに変わる。
    母親が処刑され、一時は庶子に格下げされた苦労が
    あったたからこそ、エリザベス一世の慎重で冷徹なリアリストの性格が形成されたのかもしれない。

    きな臭くて、うんざりする程血腥い西洋史だが、
    他にもメディチ家やハプスブルク家など興味は尽きない。

  • 説明が分かりやすく歯切れの良い文章なので相変わらず読みやすいです。

    この本では王妃の薄幸さが語られていますが『怖い絵』で知った『イワン雷帝とその息子』のイワン雷帝の婚歴のすごさと行いに特に驚かされました。
    ロシアのことわざがDV過ぎて恐ろしいです…。

  • 「その点で、女は男ほど情に流されやすくはない。愛してくれる相手を可愛く思うようになる、というのは男性特有の不思議な優しさであり、たいていの女性は嫌なものは嫌なまま」

    だから男の人は浮気しやすいのかなあ。
    でもこの心理を知って、強気で押す女の人と流される男の人って組み合わせはなんとなく醜くて嫌いかも。本人たちが幸せなら尚のこと。

    中野京子さんの本は10年近く読んでいる気がするけれど、前は、小説より奇なる史実や、少し残虐なものをみたい好奇心だけで読んでました。
    これからは、女性が虐げられてきた時代を終わらせよう、というか、男も女も自分らしくいられない相手といる必要なんてないんだよって時代なんだよ、みたいな、なんだろ、SDGsっていうの?な読まれ方がするのかなあなんて思いました。

    どうして人間は残虐なものを見たがるんでしょうね。目を覆う手の隙間から覗く、どきどきがほしいのか、狩猟民族時代の暴力性の名残か、農耕民族だって土地拡大=豊かさから連なる暴力性を秘めている、だからこそ商人こそが平和の象徴として資本主義社会を導き出したのか。
    むしろ避けることのできない残虐さを隠してもらっている、ありがたみを、確認したいのか。
    眠いので文章が長いです。
    ほんとはあんまり何も考えずに読みました。

  • 絵はただ鑑賞するもので背景までは気にしてませんでした。
    でも背景や時代背景を知ると辛いし怖くもありますね。
    まさに女性がモノ扱い。

    やっぱり中野さんの本はおもしろいなぁ。

  • なんと再読だった。
    気が付かなかった…

  • 『ラス・メニーナス』のマルガリータ・テレサ、叔父の皇帝に嫁いだ後、21歳で亡くなっていたとは。ヤン・トーマスのお茶目な肖像画から、勝手にご機嫌なウィーン生活を満喫したんだと思ってた…そう言えば彼女、かの「カルロス2世」の実姉なんだから、男児を産まなきゃスペイン王室が断絶するんだった。あ、ここからスペイン継承戦争でルイ14世はしゃしゃってくるのかー。

  • 中野京子さんの本は、膨大な歴史と芸術に関する知識をテーマ縛りで解説してくれるので大変わかりやすく面白い。

    この本も、王と女王の関係をテーマにオムニバス形式でまとめられている。

    プリンセスと聞いてディズニー映画を想像したらとんでもない。

    ハプスブルク家の血縁結婚、幽閉される王女、イワン大帝の顔の見えない妻達など

    どれもこれも女性の視点から見ると、今の感覚では到底許されない人権侵害が必須条件としてまかり通っている世界。ホラーです。
    同時にそうまでして血を繋がなければならなかった王の側の苦しみもあったんだろうなと。

    当時のヨーロッパ王族が血縁を駆使して国の存続や領土拡大という国家事業をやっていたというグロテスクな現実にドン引きするとともに、この本では彼らの人間的な感情を想像し共感することもできる。
    それは肖像画や歴史画の存在が大きい。

    とくに印象に残ったのは、ベラスケスの才能によって生きているように描かれた肖像画達や、のちの時代に資料と画家の想像を交えて描かれた「イワン大帝とその息子」の衝撃的な姿。

    単に歴史を知る為だけでなく、生身の人間を通して現代と共通する部分を見出す力が絵画にはあるのだと改めて思った。

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著者プロフィール

早稲田大学、明治大学、洗足学園大学で非常勤講師。専攻は19世紀ドイツ文学、オペラ、バロック美術。日本ペンクラブ会員。著書に『情熱の女流「昆虫画家」——メーリアン』(講談社)、『恋に死す』(清流出版社)、『かくも罪深きオペラ』『紙幣は語る』(洋泉社)、『オペラで楽しむ名作文学』(さえら書房)など。訳書に『巨匠のデッサンシリーズ——ゴヤ』(岩崎美術社)、『訴えてやる!——ドイツ隣人間訴訟戦争』(未来社)など。

「2003年 『オペラの18世紀』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中野京子の作品

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