偉大なる、しゅららぼん (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (584ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087451429

作品紹介・あらすじ

古くより対立する日出家と棗家。迫る存亡の危機を力を合わせて斥けられるのか!? 万城目ワールド全開のスーパーエンターテイメント。濱田岳&岡田将生主演で映画公開!

感想・レビュー・書評

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  • 再読です。「鴨川ホルモー」「プリンセス・トヨトミ」「鹿男あをによし」を再読したからには、「しゅららぼんも再読せねばならぬ」という強い意志を持って、本棚に向かった結果、この「しゅららぼん」と「とっぴんぱらりの風太郎」を手に戻った私でしたが、やはり「風太郎」は(私の中では)重いので、当初の目的通り「しゅららぼん」を再読するに至りました。
    読み始めてビックリしました。内容を全く覚えていなかった・・・初読みした時の私はどうかしてたのだろうかと思うほど、覚えていなかったのです。例えば、就職したてで、学生時代が懐かしく、淋しく、心が病んでいたとか、夫単身赴任中で、幼子二人抱えて復職して心が病んでいたとか、転職して新しい環境に馴染めずに心が病んでいたとか・・・真実はわかりませんが、とにかく初読みのように新鮮な気持ち読めました。読み進めるうちに朧げに思い出したことは、「そういえば竹生島に行ってみたいと思ったな」ということと、白馬にまたがる清子と思しき女性の(自分の心に浮かんだ)絵だけでした。

    なんでしょう、この「しゅららぼん」も万城目ワールドに違いないのだけれど、先述した3つとは少し違う感じがするのは私だけでしょうか。特別な力を持つ「湖の民」って、なんか本当に大昔に存在してそうです。そしてその力が消えつつあるというのも妙に万城目ワールドとしては現実的です。だからなのか、京都・大坂・奈良ときて、滋賀だからなのか、今回の再読まで少し影の薄い存在でしたが、さすが、面白かったです。結構大変な宿命を背負っているのに、ちょっとおとぼけの主人公涼介と、「いや、高校生にしては色々と悟りすぎやろ」、と思うくらいどっしりとしたナチュラルボーンの殿様、淡十郎とのちぐはぐ感が良かったです。涼介の心の内は等身大の高校生で、クスッと笑わされるところは万城目作品あるあるでした。

    わりと分厚い本なので、序章ではないんでしょうが、物語が進み始めるまで少し長く感じますが、話が進むにつれて、涼介たちが背負う宿命、不毛な争いがどう落ち着くのか目が離せなくなってきます。そこにまさかの展開が。日出家と棗家を石走から追い出そうとする強力な力の持ち主が判明してから、棗広海の決断と秘術の決行まで、なんと切ない時間だったでしょう。こんなにも切ない物語だったかしらとやはり初読みの記憶は戻らず、新鮮な気持ちで切なくなりました。やはり神から与えられた力など人間には不要なのでしょうか。切なすぎて、棗広海の秘術で、両家の力なんて消えてしまえばいいのに、と思ってしまいましたが、そうなってしまっては、なんだかな~ですが。
    というか、先代、ひどいでしょ。自分の研究のため、自分たち一族のためといって、人ひとりの人生を変えちゃってるじゃないですか。先代がいけないですね、ホントに。

    この両家の力が、少し理解しづらかったです。後出しじゃんけんのように、清子はあれができるとか、広海はすごい強い力を持ってるなどとわかってくるし、両家の力を合わせるともうなんでもできるような気がして、「え、そんなこともできるん?」と少し置いてけぼりになりました。

    結局、これでまた湖の民が減ったということですよね・・・

    事件(?)が終わってからの少し物悲しい時間を過ごす淡十郎と涼介に起こる、ラストシーンは素敵でした。

    少し長いですが、やはり楽しいです、万城目ワールド。琵琶湖か~、いいところに目をつけたな~、ッカ~!と思いました。

  • 万城目学版の『幻魔大戦』…いや、『童夢』か?そんな超能力合戦(?)が展開します(笑)

    舞台は琵琶湖。石走(いわばしり)という湖東にある架空の城下町。日出涼介は湖西の日出分家出身。生まれつき、日出一族に伝わるある"能力"を保持していたので、石走の本家から高校に通う事になった。本家には同い年の淡十郎がいた。石走の殿様の居城だった屋敷に住む本家の人々は、皆一筋縄ではいかない人ばかり。しかも二人のクラスには、対立する棗(なつめ)家の息子、広海がいて…。

    読み始めてしばらくは「は?」という状況が、"これでもかっ"ってくらい続きます。やがて少しずつ"能力"の秘密がわかって来ると一気読みがやめられません。
    SF?…全然違う。陰陽師の術合戦?…近いけど違うなぁ。何しろ「しゅらら、ぼん」ってのが、何とも情けないもんなぁ。…というお話です。

  • 滋賀県の象徴、日本一の大きさを誇る琵琶湖。身近であり、どこか底知れないものを感じる不思議な存在。そんな琵琶湖にまつわる物語。

    見えない力を持つ人々がいる。
    クセが強い。クセしかない。登場人物のクセが尋常じゃない。笑わせてくれる。
    どこまでも愉快で、はちゃめちゃな展開だが、ところどころ切ないスパイスが散りばめられているファンタジー。

    この際、固いことは言わず楽しめば良いじゃないかという感じだ。今後は琵琶湖を見るたびに、何かを想うだろう自分に決して感慨は無い。そんな軽いものでいい。

    以下ネタバレあり。(備忘録)

    主要な登場人物は涼介、淡十郎、グレート清子、棗、パタ子、源爺、校長、速瀬。

    涼介の主観で進む物語。シリアスの中に唐突にコミカルな部分が出てくる。棗はどこまでも男前だった。
    伏線回収も多くあるが、そこまで凝った伏線ではないかと思う。なんとなく予想していた人間にスポットライトが当たってしまって何とも拍子抜けした。
    源爺、あなたは全く悪くない。最後にやっぱり皆を想い助けたではないか。あなたを追い詰めた日出家の力なんて消えてなくなればいい。

    湖の民とされる人々の不思議な力と社会との繋がりから、日出、棗、両家の確執が描かれる。大切な力の継承と、その力を忌む青年たちの奇妙な活劇は切なさすら感じる。
    序盤のうちに何が正義という話ではないことに気付くし、青年たちが背負っているどこか理不尽な事情が哀れにも見える。

    物語の最後に、淡十郎は力を得て、それを使ったようだ。自らを犠牲に放たれた棗の秘術と、淡十郎の力はぶつかり合いシュララボンと音を発した。
    淡十郎もまた、自分を犠牲にしたのだろう。

    読了。

  • いやぁ~、相変わらず
    なんという想像力と妄想力!!

    いったい万城目学の頭の中はどうなってるのか(笑)
     
    冒頭からワケ分からんまま
    その物語の力で
    グイグイ読ます手腕にはホンマ脱帽です(>o<)


    舞台は日本最大のパワースポット、琵琶湖の湖畔の町、石走(いわばしり)。
    この土地で現代も城に住み、
    1300年にも渡り琵琶湖から授かった不思議な『力』を伝承してきた日出一族。

    そして、日出家の永遠のライバルであり、
    こちらも琵琶湖から授かった
    ある恐ろしい『力』を有する最大の宿敵・棗(なつめ)家。

    高校入学を機に石走にある日出本家にやってきた日出涼介が遭遇する摩訶不思議な日々と
    棗家との対立、淡い初恋、修行の日々、
    そして両家を凌ぐ巨大な力を有する謎の敵が現れ
    力で力を洗う戦いの幕が切って落とされる…

    といったザッツ・エンターテイメント小説です(笑)


    それにしても面白かったなぁ~(笑)(*^o^*)

    パタ子さん曰わく奇面組みたいな赤い詰め襟制服を着て(笑)
    城から舟でドンブラコとやってくる高校生って絵柄を想像しただけで
    ぷぷぷと笑いが込み上げてきます(笑)

    日出家、棗家の両家ともに
    心や肉体を操る力を持っているが
    琵琶湖を離れるとその力が発揮できなくなるという設定も
    面白い♪

    主人公の涼介がいわば
    一番地味なんやけど(笑)、
    いつも城内を忙しなく走るパタ子さんこと藤宮濤子(とうこ)や
    『力』を放つ時、下品な音を立てる(笑)
    日出家の永遠のライバル、
    棗家のイケメン息子、棗 広海(なつめ・ひろみ)、
    ある特別な力を持ち城内でひきこもり生活を送るグレート清子など
    とにかくキャラが立ちまくってるので
    荒唐無稽な話なんやけど、
    容易に映像が浮かんでくるんですよね(笑)

    そしてなんと言っても
    「ナチュラルボーン殿様」として生を受けた、
    ちょっと小太りな日出本家の長男、日出淡十郎が
    抜群にいいキャラしてるんですよ(笑)

    人を使うことに慣れていて
    不器用ながら真っ直ぐな性格は
    物語が進むにつれて
    なぜかカッコよく思えてくるし、
    陶芸や彫刻や絵を愛す
    高校生らしからぬ趣味を持つところも
    レトロ趣味な自分にはツボでした。
    (これ、絶対初めから映画版の濱田岳くんをアテ書きしてますよね笑)


    他にもスモークサーモン入りのクロワッサンサンドや
    重箱に入ったうなぎ弁当や
    おろしポン酢をかけた近江牛弁当、
    北海道の小樽から呼び寄せた職人による握り寿司など
    お城で出される豪華な料理や
    淡十郎や涼介が学校に持ってくる贅沢弁当の数々にも
    食いしん坊さんならヨダレたらたらになるハズ(笑)


    それにしても『物語』の力ってスゴいわ(*^o^*)

    当たり前の日常を描いたリアルなストーリーの小説も好きだけど、
    読めばひととき現実を忘れさせてくれる極上のホラ話(笑)も
    小説の醍醐味を味あわせてくれて、
    本が好きで良かったって
    改めて思いました。

    ラストの締め方がまた心憎くて泣けるし、
    読後は最後まで読んで良かったっと言える
    最高のカタルシスが得られますよん(笑)

  • ものすっごく面白かった! ほら話をここまで広大に描けるのは素晴らしい!

    『鴨川ホルモー』といい『鹿男あおによし』といい。

    万城目学という作者の脳内が知りたいと切に願う。今回、直木賞候補に広大なほら話を書くことに置いて一人者の作者が候補に入っているが、こうした作品に賞を与える茶目っ気が欲しいと思う今日この頃である。

    少なくとも直木賞は大衆文学を対象にしているのだから!

  • 琵琶湖から力を授かり、不思議な力を宿す二つの「湖の民」。日出家は他人の心に入り込み相手の精神を操る力を、棗家は他人の心に入り込み相手の肉体を操る力をそれぞれ持っていて、「両すくみ」の状態でお互いに反目しあっている。

    石走城に住む日出家は、淡十郎や清子など個性派揃い。そこに親戚筋の日出涼介が修行のためやって来たところから、摩訶不思議な物語がスタート。

    万城目ワールド全開の面白ストーリーで十分楽しめました。

  • 単純に面白かった
    SF+コメディ+ファンタジー+ミステリーといったところでしょうか?

    不必要な力をもってしまった高校生の奇想天外な物語。
    あまりのはちゃめちゃ設定に最初はついていけませんでした。

    物語としては、琵琶湖から不思議な力を授かった日出家。その本家に高校生になった主人公やってくるところから話が始まります。本物語の設定では日出家は城の本丸に暮らし、本系の長男は、殿様のような言動!
    そして、城から舟で高校に通うというものすごい展開。
    さらに日出家のライバルである棗家の長男とこの高校生達の学園物と思いきや、高校の校長先生も出てきて、サイキックバトルアクション巨編へと話が膨らんでいきます。

    さまざまな伏線がのちのち回収されてスッキリで、話は落ち着くところに落ち着きます。
    ここまで風呂敷広げて纏め上げるのはさすがです。
    「しゅららぼん」の意味も下品でこれまたよい!!

    読みはじめでは、何がなんだか、何が起こるのかも含めて、何のことが書かれているのかさっぱりわかりません。読み進めていくうちに、だんだんと理解で来ていて、ついには、万城目ワールドに引き込まれていってしまう感じです。
    とても楽しく、面白く読み通せました。

    これ、映画になっているんですね。
    清コングが深田恭子?納得いかない(笑)

  • 不思議な力の話なんだけど
    よくある感じとはちょっと違うことで
    ぐっと掴まれた感じ

    「しゅららぼん」が出てきたとき
    少年ジャンプの世界と繋がった(笑)

  • 万城目作品を読みたくなって読んだ。
    長かった。

    万城目学はいつも摩訶不思議な世界観を作り上げる。
    それでいて、どこかリアリティがある。
    この小説も“琵琶湖に関わる力”をテーマにしている。
    この力は現実には決してない(と思われる)のに、もしかしたら現実にもあるのではないか?と思わせる力がある。
    本当に不思議だ。

  • 偶然が悲劇を生む種なのはいつものこと。

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著者プロフィール

万城目学(まきめ・まなぶ)
1976年生まれ、大阪府出身。京都大学法学部卒。
2006年、『鴨川ホルモー』(第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞)でデビュー。主な作品に『鹿男あをによし』、『プリンセス・トヨトミ』、『偉大なる、しゅららぼん』などがあり、いずれも文学賞ノミネート、映像化等など、大きな話題を呼ぶ。また、エッセイ集に『ザ・万歩計』、『ザ・万遊記』、対談本に『ぼくらの近代建築デラックス!』がある。

「2013年 『ザ・万字固め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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