おしまいのデート (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.71
  • (214)
  • (521)
  • (425)
  • (52)
  • (13)
本棚登録 : 5441
感想 : 436
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087451887

作品紹介・あらすじ

両親の離婚以降、月に一度祖父と会うようになった彗子。母の再婚を機に会うことをやめる二人だったが……。表題作ほか、5つの物語からなる短編集。世の中は色々なデートで溢れている。(解説/吉田伸子)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 【デート】【おしまい】に関する短編集
    そこまで起伏が無いホッコリした話
    でも、普通の生活には気づかないけどちゃんと起伏がある事を描いている。

    どの話しも楽しく読めたが
    ランクアップ丼は1番好きかな

    読んでて中学2~3年の時の担任に会いたくなった…
    子供の時、ケンカばかりしてて
    まったく勉強しない
    けど俺は年一度の夏休みの【自由研究】だけ 本気を出す子供で…小学校の6年間、中学の3年全て市から賞を貰っていた子供だった(夏だけって…TUBEじゃあるまいし…ぁ…失礼か…)

    その担任は、理科の先生で
    夏しか本気にならない俺を可愛がってくれて…
    点数悪くてもニコニコ、先生が生徒を怒ってる最中に後頭部にボールを投げても怒られるのは回りの他の生徒だし(それはどうかと…)

    先生が俺を気に入っている特権だけで
    高校も推薦してくれて
    【大丈夫だぞ】しか言わない先生

    元気だろうか…

    高校の同級生が、妻なので
    この先生がいなければ結婚相手も変わってるかも…子供も違う子になってる…

    感謝伝えたいなぁ…

    二十歳で結婚して地元を出てしまった為
    成人式出ていなく
    知人から【先生がベルゴ探してたぞ】と聞いた…

    いやぁ…会いたいな…

  •  瀬尾まいこさん、2003,2005年の短編作品5篇。共通テーマが、誰かと誰かの「デート」。それも、これで最後という「おしまい」が関係します。

     かと言って、男女間の恋愛、それも悲恋を扱ったものではありません。更に、一編が30〜40p程度なので読みやすいです。(その分、自ずと登場人物の心理描写は薄いですが‥)

     各編のレビューは割愛しますが、共通テーマでもある「おしまい」は、新たな生活(変化)への「はじまり」で、心の持ちようで身近な所に幸せがあることを、さりげなく教えてくれているようです。

     5編の中で私的には、表題作「おしまいのデート」のじいちゃん、「ランクアップ丼」の上じい(教師のあだ名)の話がいいなと感じました。さりげない愛情・人への想いがたまりません。
     カッコいいぜ、じいちゃん! がんばれ、じいちゃん! 最高だよ、上じい!

     解説で吉田伸子さんが、本作を「上質な薬膳スープのよう」と喩えていらっしゃいました。個人的には、シンプルだけど豊かで深い味わい、じわぁ〜と身体に沁みてくるのは同感ですが、喩えるならその時々の旬の食べ物(魚・野菜)かなぁと思います。忘れた頃、季節が巡って来た頃にふと食べたくなる味です。そんな癒し効果がある短編集でした。

  • 『玉子丼はにおいのとおりにおいしかった。長ネギも玉子もとろりとやわらかく、玉子と甘いだしが絡んだご飯はふっくらしていた』

    かつて同じ時間を共にした人のことを思い出す時、何故か食べ物のことが一緒に思い出されることってないでしょうか?もしくは、何かを食べていて、逆にそれをきっかけにして、あの時のこと、彼のこと、彼女のことを思い出してしまう、そんなことってないでしょうか?『ソフトクリームはすぐに溶けだして、答えを出すことをせかしてくれる』、そんな時、視覚、臭覚、味覚の三つの感覚が同時に刺激され、深く心に刻まれていきます。「おしまいのデート」、その作品名からは恋人たちの関係の終焉を描いた内容が想像されます。しかし、そこに描かれるのは色んなきっかけで繋がった人たちの一つの時間の終わりと次の時間のはじまりを告げる物語でした。

    作品名でもある〈おしまいのデート〉という短編を含め、五つの短編からなるこの作品。『デート』という言葉から想像される恋人同士のいわゆる”デート”のイメージを思い浮かべると、その予想外に展開する内容に驚くことになります。”デート”の組み合わせは多種多様。おじいちゃんと孫、同級生の男の子同士、そして教師と教え子と様々な組み合わせの人物たちが日時と場所を決め、出会い、語らい、そして食も共にする、そんな”デート”の風景が描かれていくこの作品。中でも絶品だと思ったのは2編目の〈ランクアップ丼〉でした。

    『毎月、二十四日の給料日には必ず玉子丼を食べる。働きはじめて二年近く、ずっと続いている習慣だ』というのは主人公の三好。しかしそんな玉子丼を一緒に食べるのは『六十二歳のじいさんとだ』という三好は『上じい、まだ六十二歳やろ?後、二十年は生きなあかん』と諭します。『日本人の平均寿命は、八十くらい』という三好に『えらい面倒くさい話やなあ。後、二十年もあるんか』と返す上じい。三好は、ふと『俺が初めて上じいと玉子丼を食べたのは、高校三年生の時だ』と過去を振り返ります。『生まれながらにして母子家庭』だったという三好家は『仕事も恋愛もしまくる母さんの下、必然的に俺は一人になることが多かった』という生活から『高校生の時の俺の食生活はおそろしく乱れていた』という状態。『そんな高校三年生の夏の日、二組の山根とけんか』をし、どっぷり日が暮れるまで担任に叱られた三好が生徒指導室を出ると、そこに『二組の担任である上じいが立っていた』という光景。『今度は山根の担任に文句を言われるのかと』思う三好に『飯を食おう』と誘う上じい。断る三好に『まあ、三好。そう言うなって』と『学校近くのうどん屋に連れて』行かれます。『定年間近の社会の教師だった』という上じいは、『まあ、食え。お前がけんかするのは、いらいらしとるからやろ?いらいらするのは、腹減っとるからや』と、『玉子丼二つ』を頼みます。『すぐに運ばれてきた』玉子丼は『甘辛い、いいにおいがする。半熟の玉子がつやつやして見るからにおいしそうだ』と三好の空腹を刺激します。それを『きれいに平らげた』三好。その日以来『俺はちょくちょく上じいと食事をした』と二人の間に玉子丼を一緒に食べる関係が出来上がります。奥さんを早くに亡くし、子どもも独り立ちして一人住まいという上じい。そんなある日『天丼二つ』と『誇らしげに注文をした』上じい。『なんや、今日は玉子丼ちゃうの?』と問う三好に『そうや。今日は奮発して天丼や。最後の晩餐やからな』と答える上じい。そんな最後の晩餐を経てもさらに続いていく二人の関係は三好にとってかけがえのない時間となっていきます。そして…というこの短編。玉子丼から天丼へとランクアップしていく食事を共にする二人のひと時。玉子丼で繋がる上じいと三好。お互いを思いやる人としての優しさをしみじみと感じる結末に、目頭が熱くなるのを感じた逸品でした。

    “デート”をして相手と一緒に食事をしたことがないという方はいらっしゃらないと思います。食べるということは人にとっての一番の喜び。そんな喜びを共にする相手は仕事でもなければ、あなたが好きな人、一緒にいて楽しいと思う人だと思います。そんな人との楽しい時間だからこそ食事がさらに美味しくなる、美味しい食事だからこそ幸せな時間がますます幸せになる。そんな相乗効果もあってか、そんな時の食事のことはよく覚えているものです。『ソフトクリームを食べ終わるまでに、今日どうするかを決めなくてはいけない。ソフトクリームはすぐに溶けだして、答えを出すことをせかしてくれる』と二人の暗黙の決まり事を演出する『ソフトクリーム』。『悪さをしなくても玉子丼を一緒に食べるようになった。変わってないのは、玉子丼の味だけだ』と二人の関係の変化を演出する『玉子丼』。食が演出する二人の幸せな時間。特別でも何でもない、ごく一般的な食べ物である『ソフトクリーム』や『玉子丼』。そんなどこにでもある食べ物が二人の特別な時間を作っていく、二人の特別な食べ物になる、そして二人の中にいつまでも残り続ける大切な思い出になる。そんな二人の特別な思い出の時間は、読み終わってふっとため息をつきたくなるような静かな余韻を残す素朴で味わい深いものでした。

    瀬尾さんの作品は、実に淡々と描かれるものが多いように思います。〈ランクアップ丼〉の結末も他の作家さんだったらもっとシーンを盛り上げる演出を入れて感動深いものにするのではないかと思います。しかし、瀬尾さんはあくまで淡々とその場面を描いていきます。冷静なまでの淡々さ。すると、読者にはそこに描かれる光景に静かに対峙する時間が生まれていきます。そんな時、読者は素の気持ちで登場人物の気持ちに向き合うことになります。押しつけられる感動ではない、シンプルに淡々と提示される事実だけが、読者の心を射抜きます。そこに生まれるのは、演出による感動ではなくて、読者が、提示された事実に素直に反応する素直な気持ちです。なんだかわからない、じわっとしたあったかいものが体の中から込み上げてくる感覚。女性作家さんの小説ばかり読んでいる私ですが、こんな感情に包まれる作家さんは他にはいないように感じています。これが瀬尾さんの魅力、瀬尾さんの作品の一番の魅力。時々無性に瀬尾さんの作品を読みたいと思う感覚はこんなところから来るのかな、そんな風に思いました。

    「おしまいのデート」。『デート』という言葉から思い浮かぶ恋人たちの甘く幸せな時間とは異なる五組の”カップル”がそれぞれに過ごした大切な時間。そして、おしまいの先にも続いていく物語。淡々とした瀬尾さんの描き方が故に五組それぞれが過ごした幸せな時間が、自分の中にも共有されたような不思議な読後感、とても素敵な作品でした。

  • 孫と祖父、元不良と定年間近の教師、同じクラスの男子同士、捨て犬をシェアするバツイチ30代女子と大学生、保育士と園児(とその父親)…5組の変わった
    一風変わったデートを描いた短編集。

    切ないが哀しくない。
    自分にやさしくしたい時に読みたい本。

    密を避ける、という名目で、なかなか人とサシで向き合うことが難しい時代。
    デートっていいなぁ、としみじみ思った。

    デートしたい!

  • 恋愛デートとは全く趣旨が異なる。デートに至る過程やデート後の相手を想う気持ちが熱くに伝わってきた。5編からなる短編;①父方の祖父と最後のデート、②玉子丼を恩師と一緒に食べたいデート、③男子同級生と映画デート、④捨て犬を公園でシェアする学生とデート、⑤保育士がその通学する子どもの父親とデート、多様ながら人生の岐路に立つデートだった。特に②がよい。高校時代にグレていた学生と教師の関係。時々、教師が一番安い玉子丼を奢ってくれた。社会人となり教師への恩返しのために玉子丼を奢る。この学生の成長を素直に実感できた。

  • 面白かったです(*'▽'*)


    どのお話も素敵だったけれど、上じいのお話はちょっと泣けた(ノ_<)こういうの弱いんだって〜。学校で読まなくて良かった。

    なんか、瀬尾まいこさんの本に慣れてしまったような…どんなにいい本でも前より感動しない…。前までは「きてくださいお願いします」っていう態度だったのが、「来れるもんなら来てみろや」ってなったみたいな?
    自分で書いてて意味不明です

    最近は勉強づめで本をあまり読めません…つらい(;_;)気晴らしに買い物に行くだけで呆れた顔されちゃうし……はやく中学生になりたい…( ; _ ; )/~~~

  • 祖父と孫娘、元教師と教え子、公園に捨てられた犬の世話を通じて知り合ったOLと大学生、男子高校生同士、それぞれのデートの様子を描いたショートストーリー。そして、最後の話は、保育園児の父親と保育士が園児も含めてデートするために試行錯誤する様子を描いている。

    いずれも、心がほっこり温まるストーリーだけど、個人的には、表題にもなっている"おしまいのデート"と、"ランクアップ丼"が好き。
    どちらも、月に1度、年齢差はあれど心置きなく話せる相手と会って、ソフトクリームや玉子丼など手軽な物を食べながら、たわいもない話をする。互いに信頼感ができるだけでなく、いつの間にか、たぶん無意識のうちに、会うことがどこかで心の支えになっている、そんな関係性の相手がいることがなんてステキなんだろう、と思わせてくれる。

  • 「デート」にまつわる短編集。★3.5で!
    どれもサクッと読めて読みやすいけど、ドキドキの展開という感じではなく、落ち着いて読めてほっこりする。
    一般的な男女の「デート」の話はないから、恋愛モノが読みたい人はこれじゃないかな笑
    どれもおもしろいし心温まるけど、刺激とかもないから印象には残りにくい作品かも。
    最近ひねくれた登場人物の作品とか、刺激が強い作品ばっかり読んでたから小休憩になりました。

  • ほっこり。読みやすい。
    出会いと別れにまつわる5つの短編集。

    人と人との出会いは一つの線が交わり合うように気まぐれで、でもそこに確かな繋がりが生まれることもあるってことを感じたな〜 5つの作品どれもが、本来なら交わらなかったような出会いを描いていて、だからこそ物語として面白かった。
    わたしが1番好きなのは「ランクアップ丼」かな。主人公と先生は毎月給料日に一緒にご飯を食べる。けれどそのデート(?)も今日で最後だと告げられて────? 主人公と先生の関係も素敵だし、結末には驚かされた。自分が割と手のかからないタイプの生徒だからこそこういう関係はすこし羨ましいかな?笑

  • 人と人とのつながりをかいた5篇の短編集。
    前半の3作では、人と人とはいつかきっと別れがくる。
    それが、早いか遅いかで、一期一会なんだなとかんじました。
    出逢った人とはすごい確率で出逢っている訳なのだから、どのくらいの期間のお付き合いかはわからないけれど、大切にしたいと思いました。

    4作目の
    『ドック・シェア』
    32歳で離婚歴のあるOLの私は、人生もう、こわいものなしだと思っている。
    公園で捨て犬のポチリンを、見知らぬ男の子と一緒に飼い始める。男の子は毎日、ポチリンに中華料理を届けにくるのですが・・・。

    5作目の
    『デートまでの道のり』
    保育園児のカンちゃんの父親と交際している、保育士の私。
    カンちゃんともっと仲良くなりたいと思っていますが、なんだかカンちゃんに自分の下ごころを見抜かれているような気がしてしまいます。が、カンちゃんの本心は・・・。

    この2作が特によかったです。
    瀬尾まいこさんの作品は2作目ですが、人に対する優しい愛情にあふれた方だなあと思いました。
    悪い人、嫌な人が出てこないところが素敵です。
    他の作品も読もうと思います。

全436件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

瀬尾まいこの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×