冬姫 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087452464

作品紹介・あらすじ

織田信長の娘、冬姫。信長の血の継承を巡り、繰り広げられる男たちの熾烈な権力争い、女たちの苛烈な〈女いくさ〉に翻弄されながらも、戦国の世を生きた数奇な半生を辿る歴史長編。(解説/村木嵐)

感想・レビュー・書評

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  • 戦国武将・織田信長の二女冬姫。その器量の美しさ故
    父親からは格別に遇されたという冬姫を中心に、戦国の世の
    女戦の生き様を描いた物語。

    信長は婚姻による外交に長けており、冬姫の姉にあたる五徳
    (徳姫=おごとく:九歳)を、徳川家康の嫡男信康の正室として輿入れさせ
    また、妹のお市の方(冬姫の叔母)は近江の雄、浅井長政の元に嫁がせ
    親せきとすることで美濃、近江の同盟を成功させている。

    そして冬姫は――信長との観音寺城の戦いで敗れた
    六角氏に仕えていた蒲生賢秀(がもうかたひで)が、三男(嫡男)忠三郎を
    信長に人質として差し出すことで蒲生家は、織田家に臣属したのだが
    その忠三郎(ちゅうざぶろう)というのが14歳のりりしい顔立ちの利発な若者で
    以後信長に気いられ、冬姫との婚姻へとあいなるわけである。
    蒲生忠三郎(後の蒲生氏郷:うじさと)14歳、冬姫は12歳だった――

    なんだかとっても難しそうなお話ですが、この時代、とかく女子は
    男の政の道具の一つであるかのような扱いで、敵も味方もなく
    振り回されていました。輿入れといえど恋も愛もあったものではありません。
    けれども一旦添い遂げれば、お互いを深く理解しあって愛を育んでいく...。
    夫のためお家のためにと尽くしていく、女にも女ならではの戦があったのです。

    ここに登場する女性陣の面々は、冬姫、五徳、お市の方のほかに
    信長の正室・帰蝶(濃姫)、側室・鍋の方、家康の正室・築山殿(瀬名姫)
    明智光秀の娘・細川ガラシャ、そしてお市の方の長女・淀殿(茶々姫)と
    女だてらにも何かしら戦国の世を揺るがしたであろう錚々たる顔ぶれが揃います。

    そんな中での冬姫は、少し控えめで目立たない存在のよう...。
    けれどもその器量の美しさの中には利発さも兼ね備え、そして、逆境に対して
    前向きにとらえていく心を持ち、夫を愛し、父親を愛し、お家を愛し、支え尽くす
    冬姫の凛とした姿は清らかです。読んでいてとても清々い気持ちになりました。
    さらに言えば夫・蒲生忠三郎も然り。利発で雄々しく逞しく、そして何より
    妻を愛する気持ちは優しさにあふれています。史実でも生涯側室を
    持たなかったとあるほど...。

    そして作中ではわずかな登場でしかありませんでしたけれど、帰蝶(濃姫)さまの
    凛として揺るぎない佇まいが際立って感じられたところも好きでした。

    少し冷めた心で考えてみれば、女の戦などただのお家騒動。
    痴話げんかではないかとも思えてしまいますが、男にも女にも
    誰にもどこかに愛するものを守りたいという気持ちがありました。
    織田信長は偉大なお人です。それを二分してしまうなんて...あぁ..秀吉!!(笑)

    戦国の女戦の物語でありながら、信長と秀吉のやってきた政についても順を追って
    添えられているため、歴史書物としても充分に読み応えがあり楽しめました。
    読んでよかったです。

  • 武家の女は、槍や刀ではなく心の刃を研いで戦をせねばならないのです。
    と、いう言葉が、とても、印象的でした。

  • 面白かった
    織田信長の二女、冬姫の数奇な生涯を語る物語
    どこまでが史実でどこまでが創作なのか、自分の知識不足のため、相変わらずよくわかりませんが(笑)、エンターテイメントとして楽しめました。

    ストーリとしては
    織田信長の二女の冬姫は蒲生氏郷の妻になり、戦国時代の中
    、その覇権を競うため、「おんないくさ」を仕掛けあうというもの。

    「武家の女は槍や刀ではなく、心の刃を研いでいくさをせねばならないのです」

    と育てられ、さまざまな女たちが闘うことになります
    信長の妹お市の方をはじめ、淀君、鍋の方、五徳、ガラシャ、築山などなど
    心の刃とは言いますが、実際には諜報戦ともいえます。
    冬は「もず」と「又蔵」を従えて、その戦いの中生き抜くことになります。

    そんな中、氏郷と冬姫の絆は強い。
    氏郷へのひたむきな愛情を胸にこの乱世を生き抜いた冬姫
    楽しめました。

  • 信長の娘、冬の生き様。
    蒲生氏に嫁いだ冬という女性がいたことも知らなかったけれど、歴史上の有名武将もいっぱい登場するので流れは分かりやすかった。
    始めは呪いなどの話題も多く面白く読んでいたけれど、段々と人間関係のしがらみに苦しみながら「女いくさ」を戦い抜く強い女性に圧倒された。
    侍女のもずの苦悩と献身も見所だった。

  • [冬姫] 葉室 麟

    信長の二女で蒲生氏郷の妻、冬姫の生涯を綴った歴史小説。

    冬姫、帰蝶、お市、茶々、ガラシャ等の女性の戦い。

    「武家の女は槍や刀ではなく心の刃を研いで<女いくさ>をしなければならないのです」(本文から抜粋)
    <女いくさ>が底辺に流れている。
    大河ドラマで見てみたい。

  • 権謀術数渦巻く戦国の世で、人はどのようにして人を信じ愛するのだろう。
    平和と思える現代に於いて、友情や愛や信頼はすぐそばにあって手にすることもそれ程難くはなさそうだ。時として裏切られ泣くことはあろうとも。
    けれど戦国の世で人を信じ愛する事は、その向こうに裏切りがある事を覚悟していなければならないようだ。
    裏切られて泣くのは裏切られた時の準備ができていない自分が愚かだと。
    その愚かさは言い訳もできない死に通じる。
    裏切られた、騙されたと泣いて涙で悲しみを流せる現代のありがたい事と感じます。

    • スタンドアローンさん
      [冬姫] 葉室 麟

      信長の二女で蒲生氏郷の妻、冬姫の生涯を綴った歴史小説。

      冬姫、帰蝶、お市、茶々、ガラシャ等の女性の戦い。

      「武家の...
      [冬姫] 葉室 麟

      信長の二女で蒲生氏郷の妻、冬姫の生涯を綴った歴史小説。

      冬姫、帰蝶、お市、茶々、ガラシャ等の女性の戦い。

      「武家の女は槍や刀ではなく心の刃を研いで<女いくさ>をしなければならないのです」(本文から抜粋)
      <女いくさ>が底辺に流れている。
      大河ドラマで見てみたい。
      2020/04/02
    • moboyokohamaさん
      スタンドアローンさん、私も大河にピッタリな作品と思いました。
      スタンドアローンさん、私も大河にピッタリな作品と思いました。
      2020/04/08
  • 史実とフィクションとを織り交ぜながら、女人の観点から織田豊臣時代を描いた歴史スペクタクルといえようか。
    信長の二女で、蒲生氏郷に嫁いだ冬姫が、従者の助けを借りながら、敵対する勢力と、「女いくさ」を仕掛け、自らの運命を切り開いてゆく。
    どこまでが史実で、どこからがフィクションか、それを楽しみながら、時代小説の面白さと、歴史小説の醍醐味を味わえる。

  • 戦国の世で繰り広げられる女たちの戦い。その中で信長の娘であることで、清く姿勢を正して、相手の心を理解しながら難を逃れていく冬姫を応援しながら、あっという間に読み終わった。

  • 織田信長の娘として産まれた冬姫の物語
    久しぶりに葉室麟らしい本を読んだ。
    この時代の家や家族を守る女性の強さと怖さが伝わって来た。安土城、蒲生など近くに住んでいた事もあったが初めて知る事ばかりだった。沢山の登場人物が描かれていたが
    それぞれが光輝くように感じた、個人的にはもずに魅力を感じた。

  • 戦国時代、男は武器と才覚で運命を切り拓き、女は夫のため家のため気丈な心でいくさをする。命がけで産んだ子を、ときには敵国ヘ人質にやり、戦場へと送り出さなければならない。
    信長の2女として生まれた冬姫、秀吉治世下での女同士の生存競争にスポットライトを当てた歴史物語です。

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著者プロフィール

1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』と『秋月記』で、10年『花や散るらん』で、11年『恋しぐれ』で、それぞれ直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』で直木賞を受賞。著書は他に『実朝の首』『橘花抄』『川あかり』『散り椿』『さわらびの譜』『風花帖』『峠しぐれ』『春雷』『蒼天見ゆ』『天翔ける』『青嵐の坂』など。2017年12月、惜しまれつつ逝去。

「2023年 『神剣 人斬り彦斎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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