安井かずみがいた時代 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087452990

作品紹介・あらすじ

「zuzu」こと作詞家・安井かずみ。彼女を知る26人の人々のインタビューから、安井の華やかでスキャンダラスな私生活に迫り、数々の伝説で彩られた55年の人生を追うドキュメント。(解説/山田詠美)

感想・レビュー・書評

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  • 危険な二人<沢田研二>・激しい恋<西城秀樹>・よろしく哀愁<郷ひろみ>等々…、計4000曲を量産。

    超売れっ子作詞家の活躍の傍ら、サンローランを
    はじめとし時代の先端のファッションをまとい、ロータス・エランの駆り、レストラン「キャンティ」へは友人のコシノ・ジュンコや加賀まりこらと夜な夜な出没し 、当時一流の文化人やアーティストと交流を結ぶ。

    著者は安井かずみと交遊のあった、コシノジュンコ・ムッシュかまやつ・吉田拓郎・平尾昌晃・稲葉賀惠・金子國義・大宅映子・林真理子ら…22名に素顔の安井かずみを浮き彫りにすべく取材を敢行。

    1960年代~70年前半の安井かずみ…
    アバンギャルドで自由奔放な時代

    1970年後半の安井かずみ…
    加藤和彦と結婚後は前衛から保守へ転向した時代

    安井かずみの交遊録は加藤和彦と出会う以前と以後で大きく変わる。以前はアンニュイさとエキセントリックさにあふれた時代のファッションリーダー。以後は夫婦でテニスを始め夜から昼へ健康的な小麦色のライフスタイルへとチェンジし、友人も重ならない。

    数々のラブアフェアをくぐり抜けた時代の寵児は、
    加藤和彦というたったひとりの男の人生を楔として生き方まで変えていく。ゆえに、加藤和彦に向けた証言も徐々に増え、吉田拓郎にいたっては、安井かずみ夫婦への印象は辛辣そのもの。見る人によってこれほど印象は変わってしまうものなのか…。

    その光と影の濃淡具合を丹念な取材で浮かび上がらせた力作。

  • 安井氏の周辺に詳細なインタヴューを重ねた労作で、貴重な証言集ではあるが、夫の加藤和彦氏を必要以上に貶める、著者の安井氏に肩を入れ過ぎな視点にはとても辟易した。

  • ハードカバー。図書館。

  •  1960年代~70年代に活躍した女性作詞家の安井かずみさん。
     彼女にかかわった人たちのインタビューにより描かれた彼女は、高度成長期の豪奢だったころの日本の豊かさを見せてくる。こんな時代があったのか、と。
     誰にとってもあこがれるロールモデルである安井かずみさん。けれども結婚によって、理想の夫婦を演じているうちに……という方向性にしたいのだろうけれど、本当のところはどうだったのだろうか。わからない。
     彼女の身近におり、現在も存命だが、登場しない人たちが居る。語られないことでより魅力的に映るような気もする。

  •  著者が本書タイトルを「~がいた時代」としたように、昭和の高度経済成長からバブルに至るまでの歳月を、ひとりの女性作詞家を媒体にして見ることで、当時が、一時代として浮かび上がる。

     60年代は、東海道新幹線の開通、東京五輪など象徴的な出来事でも彩られる高度経済成長期。自分の親の年代が青春を、若き社会人生活を謳歌した時代だ。
     当時はうかがい知ることもなかったが、文豪、著名人が入り浸る六本木の『キャンティ』に、赤坂の『ムゲン』、東京の最高の社交場だった生バンドの入るナイトクラブ『コパカバーナ』『ニューラテンクォーター』『花馬車』、赤坂租界と呼ばれた界隈も、今やその名残り見いだすのも容易ではない。時の流れを思い知る。

     編集者から執筆を依頼された著者は、編年体でその時代を辿るのでなく、ZUZUと呼ばれ時代に愛された”安井かずみ”を知る26人の証言を元に、様々な視点から光を当て、時は前後しつつも、多面的にZUZU像を浮かびあがらせる。安井かずみ本人はもとより、加藤和彦の存在、またその交友関係を描く視点が様々に移り変り、見え方がいろいろあって実に面白い。

     序盤は林真理子、新三人娘など、安井かずみに憧れたシンパによる証言からはじまり、後半は徐々に、晩年になってからの知人や、加藤和彦との結婚の前後から二人を知るより深く安井かずみに関わった人による、哀惜の籠った証言へと移り変わっていく。
     良い時も悪い時も見てた吉田拓郎の証言が胸に迫る。

    「あの時代を東京で遊んでいたヤツらって、みんないいヤツでニコニコしていたんだけど、どこか哀しいんです。その中でも最も哀しいのが安井かずみでした。」

     どこか淋しさを纏ったあの時代。当時を知る読者の感慨、著者の思いともシンクロしているような証言だ。 そして時代もまさにイケイケの高度成長から、狂乱のバブルを経て、やがて崩壊の序曲が聞こえ始める。
     安井かずみの人生を繙きながら著者はこう記す。

    「作詞家であることを生涯誇りとしていた安井かずみは、沈みゆく太陽を観ないで逝った―。」

     やがて”失われたン年”(10年?20年?)と言われる平成の世にあって、安井の人生を振り返ることは、日本の青春と自分自身の青春を振り返る作業、と述懐する。

    「みんなが豊かになることを目指して懸命に走っていた時代の日本は、夢のような過去である。」

     当時のような、夢に浮かれた狂乱の世は、もうないと言われるが、女性がアート、芸能、文化の領域で台頭し、感性を活かして時代の寵児となったあの胎動は、今また別のかたちで脈々と受け継がれ、次の新しい時代に現れようとしてないだろうか。
     平成というひとつの時代が終わったあと、当時を全く知らない世代にとって、新しい価値観として見直され、リブートしないとも限らない。そんな足元の蠢動を感じる昨今。面白い著作を読めた。

     まわるまわるよ、時代はまわる♪(安井の歌詞じゃないけど・笑)

  • 男女雇用機会均等法が施行される以前、戦後からバブル崩壊まで日本文化、エンターテイメント界、日本女性に大きな影響を与えた女性について書かれた本。ゆかりのある25名の著名人(主に芸能界)にインタビューしており、人間の光と影も伝わってくる。
    1994年にガンで無くなっているので、自分が生まれてから8年は同じ時期を生きていたのかと思うと感慨深い。
    現代の日本はモノが溢れ、グローバリゼーションが進み、海外も身近になっており、昔に比べて生活水準も底上げされているはずなので、ここまで突出する方を発見することは難しいかもしれない。けれど、突き出る事が難しい時代だからこそ、できたらかっこいいだろうなって思う。
    規模の大小はあるけれど、何かに良い影響を与えて人生を終わらせたいと改めて思うきっかけをくれた一冊。

  • ブクログで知った本。周囲の人の証言をもとに、安井かずみの生涯をふりかえる。

    昔、加賀まりこさんの昔の写真を見て、衝撃をうけた。口があんぐりするほどにかわいかった。本作中の安井かずみさんの写真もキュート。
    安井かずみ×加賀まりこ×コシノジョンコ。なんとキラキラした組み合わせ。
    世代ではないので、直接テレビなどで見たことはあまりなく、もはや半分史実になっているような人々が次々と登場。現実離れした世界が広がる。
    作詞家として売れっ子になった前半生と、加藤和彦とよき夫婦として生きた後半生の落差がすごい。人の人生を慮ることなんてできないけれど、有名になるっていいことばかりではないなあと思った。

    それにしても、ドナドナの訳詞者が安井かずみさんとは知らなかった。

  • 安井かずみさんという人のことは
    まったく知らず、
    本の表紙に惹かれて購入しました。
    いわゆるジャケ買いです。

    彼女は時代を牽引するほど
    派手でカコイイ人ではありましたが、
    その一方で、
    古風な面を併せ持つ
    不思議な人だったようです。
    いまも語り継がれるほど、
    とても魅力的な人だったのでしょうね。

    本書は
    安井かずみさんの生涯をたどると同時に、
    彼女が生きた時代とその空気感、
    先端をいく女性としての生き方、
    男と女の関係性、
    愛情の在り方などが描かれ、
    とくに加藤和彦さんとの関係は、
    実に興味深いものでした。
    まるで
    人間の本質を描いた物語を
    読んでいるようでした。







    べそかきアルルカンの詩的日常
    http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
    べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え”
    http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a
    べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
    http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

  • かっこいい女にかっこいい女の人生が書いてある本をもらった。やっぱりかっこいい女は読んでるものが違う。かっこよすぎ。

  • 『上昇気流に乗る日本の「時代のアイコン」であった』
    『伝説の女、ZUZU』
    と裏表紙にあるように、まさに映画でも観ているかのような著名人との交友関係や豪奢な暮らしぶり。
    セレブってきっとこういう人のことを言うんだなと思い、驚きながら興味深く読みました。
    生前安井かずみさんと親しかった26人の方々の証言からは、加藤和彦さんと結婚する前の彼女と結婚後の彼女の印象が大きく異なっているように感じます。
    世間の憧れや理想の対象であろうとすることの厳しさや残酷さが伝わってきました。

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