オーダーメイド殺人クラブ (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087453133

作品紹介・あらすじ

「私を殺してほしいの」中学2年生の美少女・小林アンは、同じクラスの「昆虫系」男子・徳川にそう依頼する。ふたりは被害者と加害者として「特別な存在」となる計画を進めるが…。(解説/大槻ケンヂ)

感想・レビュー・書評

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  • タイトルがすばらしい。
    そして、とても美しい小説。

    いかにもの中二的バンドである「筋肉少女帯」を聴きながら書かれたというこの小説。さすが安定のイタさだ。(安定してたらイタくないか…矛盾した表現だ)

    クラス内でも目立つグループに属するリア充女子・小林アンは、一方で死や猟奇的なものに惹かれている。女子のグループの中での人間関係のバカらしさに愛想をつかし、クラスの冴えない「昆虫系」男子・徳川に、自分自身の殺害を依頼する。二人が「作る」事件の結末は―。

    「これは、悲劇の記憶である。」と始まるが、連載ものだったこともあり、結末をわからず書いていたという。
    そのせいか、先が見えない感じが全編を覆っていて、ページを繰るたびに意外な展開。最後まで事件がどうなるのか、どのような「悲劇」なのか、わからない。

    小林アンと徳川は事件を計画している時、とてもイキイキして、キラキラしている。眩しいほどだ。
    中二はやたら自意識過剰だ。そして、美意識こそ中二の生きる基準だ。でも、美意識は持っていても、どうやって実現すれば良いかわからない。だから、そんな時期に美意識が共有できる友人(恋人?)に出会えるのはそれだけで幸せだ。充実した人生を約束されている、と言っても過言ではない。

    羨ましく思う。
    まあ、本人たちは死ぬほど必死なんだろうけれど。

    大槻ケンヂさんも解説に書いていたけど、辻村さんは優しい作家さんだなと思った。

  • クラスで上位グループに属する中学二年生の小林アンは、些細なことで無視されたり仲良くなったりを繰り返す友人たちの関係や、学校生活や家庭に苛立つ日々を送っている。
    その一方で、死や猟奇的なことに興味を持ち、クラスで冴えない男子徳川になぜか惹かれ、彼に「私を、殺してくれない?」と持ち掛ける。
    アンと徳川、二人で極秘の殺人事件が練られていく。

    中学生の頃の複雑な胸の内と、教室内で湧き起こる生徒の間での噂話のようなものが中二の目線でひたすら書き綴られていて、その力量が凄いと思った。
    重苦しい空気が続くしイライラする場面もあったけれど、結末は長いトンネルから抜け出せたようで、スッキリと爽やかな気持ちになれて、最後まで読んでほんとうに良かったと思った。

    若い頃特有の黒歴史みたいなものって、誰にでもあるのかもしれない。
    そう思うと、少しは前向きになれるような気がする。
    子供たちを包むような、とても優しくて温かい作品だと思った。

  • 最近は大人の世界でもいじめは問題になっているが、中高性の狭い世界においてはすべてを支配する重大な問題。しかも「何故?」と首を傾げるようなたわいの無いことが原因ということがよくある。大人になった今の自分からみたらくだらないですませられるが、それができないのが学校だけにしか存在意義を見いだせない感受性豊かなティーンエイジャーだ。
    この小説でもそんな姿が如実に表現されていて、委託殺人という極端な方法へと突き進む。さらに大学進学で東京へ行く、大人に片足を突っ込み始めた主人公達は新たな生き方に気づき始める。
    大変面白い小説でした。

  • 中2って難しいお年頃、って一言で言うのは簡単だけれど、実際は様々な要因が絡みあっていて、当事者も心のコントロールが出来ないのだろう。主人公の心も複雑で、なんとも私には理解できない部分が多かった。明後日、中学の入学式を迎える娘が、中2になった時、こんな感じだったらどうしよう、って怯えながら読み進めた。終盤はハラハラしながらも最後はホッとした。全体を通して、読んでいて寿命が縮みそうだった。

  • 時間を作ってでも一日で読み終えたかった。二日に分けてしまったことをとても後悔した作品でした。

    『嫌なことがあったり、自分を不幸だと感じるときほど、世界が美しく見えるのは、何故だろうか』、生きている限り、辛い時間、辛い日々は必ず訪れる。吹き荒ぶ嵐の中にいるような、終わりがあるのかとも思える耐える日々。時計を見ても全く時間が進まないと感じる時間が続いていく。
    この作品では、そんな辛さが一つひとつリアルに感じられ出す中学二年生の小林アンの視点から、見えるもの、聞こえるもの、そして身体に感じる痛みが事細かに描かれていきます。一所懸命に考えた結論が裏目に出る瞬間、他人を思いやった気持ちが裏切られ行き場のない狭い路地に追い込まれて行くどん底の日々。周りが暗ければ、周りがが冷たければ、周りが闇であればあるほどにその向こうに垣間見える世界はあたたかくて美しい。届きそうで届かないもどかしさ、手を伸ばしてもあと少しで届かない現実。闇を彷徨っている時間、日々ほどそれが永遠に続くようにさえ感じられます。

    でも、やがて嵐は去る、夜は開ける、そして光がさす、エンディングの凪を漂うかのような描写の静けさ。嵐を抜けて大人になっていくアンの強さ、たくましさ、そして優しさの中に、苦しかったあの瞬間を懐かしく感じられる日々が彼女にも訪れたことを良かったな、本当に良かったと心から感じました。

    辻村さんの作品の中でも群を抜いて深い闇を彷徨うような作品だったと思います。だからこそ、読み終えた後の世界がとても美しく感じられるのだと思いました。当初、書名から読むのをかなり躊躇いましたが、結果、読んでとても良かった作品でした。

  • 泣けた。
    やっぱり辻村さんはすごい。
    なんだってこんなにも中学生の心理を上手に描けるのか。
    理不尽ないじめとか、ヒエラルキーとか、体裁ばっかり気にしてしまうとか、本当に、大人になってからはもう全然思い出しもしないような、些細なことでも、当時はものすごく辛かったりとか、あるんだよねぇ。
    「徳川が私を殺してくれる」とか、何かしらのことを支えに生きていくことって、あるよね。何でもいいから、依存するもの、支えになるものって、必要。
    学校って、友達って、本当に大変。
    大人も人間関係は苦労が多いけど、やっぱり中高生ほどじゃないと思う。
    親との関係も、この頃はよく悩んだよなあ。

    例の日が過ぎてからのことが、あっさりとしているので、その物足りなく思ってしまったが、引越しの日に徳川が来てくれて、ノートに絵を描いてくれていたのを見たシーンも、泣けた。あそこも好きだ。
    今後の2人が明るい。
    えっちゃんも、いい子だったなぁ。

    情景描写もいっぱいあった。
    どれも素敵だった。
    癒してくれるものは、自然。
    私も、新採用の頃、くたくたになってアパートに帰ってきて、はー、と車から降りて見上げた星空のきれいなこと。ここに来てよかった、とまでは思えなくとも、明日も頑張ろうと思えた。それを思い出した。

  • 最後までハラハラドキドキだった。友達との関係がリアルで、中学校生活のめんどくささを思い出しつつ、でもそれが青春なんだろうなと思ったり。自分が異常だと思い込もうとしているアンはイマイチ理解できなかったな。学生の時に読んでいたら何か感じることがあったかも。

  • フォロワーのたけさんのレビューを読んでから気になっていた本。
    たけさんの評価は、私の評価と近い為、今後も参考にさせて頂きたいと思っていますm(_ _)m

    この作品は題名にインパクトがあり、題名を記憶していたが、
    たまたまブックオフで見つけたので購入してみた。


    中学二年のふたりが計画する「悲劇」の行方
    親の無理解、友人との関係に閉塞感を抱く「リア充」少女の小林アン。
    普通の中学生とは違う「特別な存在」となるために、同級生の「昆虫系」男子、
    徳川に自分が被害者となる殺人事件を依頼する。


    「これは、悲劇の記憶である。」
    から始まる殺人計画のノート。
    この先に一体どんな悲劇が待ち受けるのか!?
    全く想像出来ない展開。


    中学二年生。
    クラスメイト、親、先生との関係に、時には傷つき、悩みする姿は、
    自分も通ってきた道なのだが、強烈にリアリティを感じた。

    教室内で、きっと誰もが多かれ少なかれ体験したであろう事実を
    リアルに言葉で表現し尽くしている。

    彼女らの目指している道は、私などには到底理解出来ないが、
    それでもその先が気になって仕方ない。


    結構な厚みの本なのだが、気が付けば没頭してしまっていた。

    結末がまた素晴らしい。
    こんな酷い題名なのに、どこかほっこりさせられる、そんな本だった(*^-^*)

    • たけさん
      bmakiさん、こんにちは!
      「評価が近い」と言っていただけてとても嬉しいです。
      僕もbmakiさんのレビュー楽しく読まさせていただいて...
      bmakiさん、こんにちは!
      「評価が近い」と言っていただけてとても嬉しいです。
      僕もbmakiさんのレビュー楽しく読まさせていただいてます。
      今後ともよろしくお願いします。

      この本、ほんとに中二生の姿がリアルに描かれてますよね。読んでて懐かしいような、恥ずかしいような。
      最後はほっこりさせられて、素晴らしい小説でした。
      2020/08/12
    • bmakiさん
      たけさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます。
      私が高く評価したものを、たけさんも高く評価して下さっていた為、大変おこがましいですが...
      たけさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます。
      私が高く評価したものを、たけさんも高く評価して下さっていた為、大変おこがましいですが、感性が少し似ているのかな?と思い、この本も購入してみました(*^-^*)
      ゾクゾクするほどとても良かったです!
      またたけさんの評価を参考にさせて頂きます。
      ありがとうございました。
      2020/08/12
  • ちょっと怖かった・・・。でも終わり方はよかった!!

  • 『中2病』…と言ってしまえば簡単すぎてしまう。学校という狭い世界の中でのことをうんざりしつつも通過しなければならない気の毒な時期。そんな世界がよくわかるお話し。いや、これだけでわかったつもりになるなよ、おばさん!と、言われてしまいそうだけどね。
    でも、読後は『青春だなぁ』『純粋だなぁ』という感想が湧き上がってきた。不思議な読後感です。

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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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