ホテルローヤル (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087453256

作品紹介・あらすじ

北国のラブホテルの一室で、心をも裸にして生々しく抱き合う男と女。互いの孤独を重ねる中に見えてくるそれぞれの人生の大切な断片を切り取る。第149回直木賞受賞作の文庫化。(解説/川本三郎)

感想・レビュー・書評

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  • 桜木紫乃さん2冊目。直木賞を受賞した代表作を読みたくて購入。
    家業のラブホテルであるホテルローヤルの仕事を高校生の頃から手伝っていた、という経歴からホテルローヤルに関わる人々の生態が事細かに綴られている。
    7つの短編がホテルの廃墟から始まり、ホテルが作られる時期まで遡っていくという逆回しの展開。
    廃墟のラブホテルの艶めかしいシーツの跡がある部屋で、彼女のヌード写真を撮る彼氏。挫折した彼の狂気的な撮影動機となった部屋は、そのホテルを廃業しようとした娘が、大人の玩具の営業と関係しようとして果たせなかった跡。廃業の原因ともなった女子高生と教師の心中は、後の短編に経緯が綴られる。
    苦しい経営のお寺の奥さんが、お布施として檀家の 人達と関係を持つ話しは切ない。ホテルの従業員の奥さんは、どうしようもない家庭を耐えることで生きている。
    暗く悲しい内容が殆どだが、淡々と、そして詳細に描かれている。ラブホテルを通して人間の本性が剥き出しとなる様が生々しい。

  • ホテルローヤルという北海道のラブホテル(死語じゃないよね)に関わった人達の連作短編7編。
    廃墟となったホテルを舞台に描く「シャッターチャンス」から読み進めると、ホテルの時間の流れが遡っていく。最後は、ホテル建設時の「ギフト」となる。結末が廃墟なのだから、その遡及は物悲しい。
    土地柄、漁業の衰退や商店街の寂れなど、ホテルだけでなく、街も疲弊していく。街の疲弊が、そこに住まう女性達も疲弊させる。
    各短編の主人公は、自身にあるいは家庭に問題を抱えた女性。彼女達は、その境遇を受け入れている。
    不満を訴えるでなく抗うでもない。しかも、僅かな何かに希望さえ見る。
    前半4編は、そんな女性の強さを感じていたのだけれど、後半3編は、男性の弱さに流れてしまったような。で、少しまとまりが悪いかも。

  • R2.6.26 読了。

     映画化することを知って読んでみた。「バブルバス」「せんせぇ」「星を見ていた」が、庶民的な感じがして良かった。

    ・「人と人はいっときこじれても、いつか必ず解れてゆくものだと、死んだ母に教わった。」
    ・「いいかミコ、なにがあっても働け。一生懸命に体動かしている人間には誰もなにも言わねぇもんだ。聞きたくねえことには耳ふさげ。働いていればよく眠れるし、朝になりゃみんな忘れてる。」

  • 第149回直木賞受賞作。

    北国の湿原にあるラブホテルを舞台にした、7編からなる連作短編集。

    時間軸が現在から過去へと遡っていくストーリー。それぞれの登場人物が微妙にリンクしているところは面白い。

    ラブホテルという非日常的な場所から生まれる物語は寂しさもあれば安らぎもある。

  • ー 男も女も、体を使って遊ばなきゃいけないときがある…

    道東のとあるラブホテルにまつわる連作短編集。

    廃墟となった後の話から始まり、最後にホテル「ローヤル」と名付けられた経緯が語られ終わる。

    ラブホテルは、単にセックスをするための非日常的な場所。そういった場所をモチーフにした小説だから、読む前はもっとドロドロしたドラマを想像していた。思いの外、普通の人の普通のセックスが描かれていて、日常を感じさせる細かい描写もあって、そこがよかった。

    「星を見ていた」が最も好き。ミコがいとおしい。
    「バブルバス」はほっこりとする話。
    「せんせぇ」は全てが繋がった後に衝撃を感じる。

  • 北海道の湿原を見下ろす場所にある
    ラブホテル「ホテルローヤル」
    物語はこのホテルを舞台にした下記7つの短編集

    「シャッターチャンス」
    「本日開店」
    「えっち屋」
    「バブルバス」
    「せんせぇ」
    「星を見ていた」
    「ギフト」

    各章の主人公はホテルの利用者だったり、従業員や出入りの業者、さらにホテルの経営者とその家族だったりする。
    特徴的なのは、時間を巻き戻す形で章が進み、時には登場人物同士の繋がりに気付かされ、時間と空間の立体感が徐々に鮮明に見えて来るところだと思う。

    桜木紫乃さんの作品は『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』に続き2作目
    本作とは系統は異なるが、やはり北海道の釧路を舞台として、そこで生活を築く人々を描く点は共通していて、同じ温度感と哀歓が溢れていた。

    なかでも「星を見ていた」は印象的だった。
    ホテルローヤルの掃除婦である60歳のミコが歩んで来た半世紀以上の年月が哀愁を誘い、何度も胸が張り裂けそうになった。彼女にとって、母親が残してくれた言葉の数々は、信念となる一方、呪縛に近いものだったのかもしれない。

    「ラブホテル」という秘め事の巣窟の様な場所を物語の舞台に選んでいるからこそ、様々な角度で人々の現実を直視された作風だった。
    男女のドラマティックでエロティックな内容ではなく、もっとリアルで生々しくて生活感すら感じる。
    そして、どの話も湿っぽくて悲しくて、寂しくて切ない。でも、そんな姿をみせられるのも、お日様に蓋をしてくれるホテルローヤルのお陰なのだろう。
    そう思うと、沢山のドラマが生まれては消える非日常的な「ラブホテル」という日本の文化が、外国人に大ウケするのも納得だ。
    やはり日本文化は素晴らしい!
    って、最後そこ?笑

  • 1つのホテルが作る7つのストーリー。

    人が生きていく上で夢と欲望は必要なものなんだと
    思う。
    だけど、欲望が勝りすぎてしまうと、
    きっと幸せは離れていくんだなって思った。

    自分も過去にそれで人を傷つけたな。

  • さらっと読める直木賞受賞作。
    連作短編集で、最終話のギフトでは大吉とるり子の二人にとってはキラキラと希望のあるエピソードになっているが、その行末を知っているのでなんとも侘しい。読了後、虚しさだけが残ってしまった。

    この小説が受賞したのにはどんな背景があるのだろう。

    直木賞=エンターテイメント性を重視されているとのことでテスカトリポカなんかはまさしく!と個人的には感じたのですが、本作が受賞した経緯などをググり”直木賞とは”を調べるきっかけになったので良かったです。


  • 7つの物語が重なっていないようで重なっている、チェーンストーリー。
    面白いのは現在から過去へと展開していくところ。

    桜木紫乃作品は今作が初めて。

    読み始めた最初の物語、いきなり嫌いなタイプの男性が出現…これは最後まで読めないかもしれないと心が折れそうになる。
    が、物語の内容の好みは置いておくとして、桜木紫乃という人の文章はとても読みやすく、無駄がないと感じる。そのあとは一気読み。

    地方都市の片隅、煌びやかな人生など夢見ることができない日常の中で、それでも健気に働くことをやめない登場人物の姿に胸打たれた。

  • なるほど…

    これが直木賞作品か

    まあ、賞を取った作品が必ずしも面白いとはかぎらないからね…

    ラブホテルを題材にした小説だから
    もう少しグロさやエグミみが欲しかったかなぁ
    ちょっと物足りなかったです

    唯一、「本日開店」は面白かった!

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著者プロフィール

一九六五年釧路市生まれ。
裁判所職員を経て、二〇〇二年『雪虫』で第82回オール読物新人賞受賞。
著書に『風葬』(文藝春秋)、『氷平原』(文藝春秋)、『凍原』(小学館)、『恋肌』(角川書店)がある。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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