残り全部バケーション (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087453898

作品紹介・あらすじ

裏稼業コンビの岡田と溝口。離婚や虐待、拉致など様々な出来事に遭遇しては、予想もつかない方法で事件を解決する! その出会いは偶然か、必然か。5編からなる小さな奇跡の物語。(解説/佐藤正午)

感想・レビュー・書評

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  • 2023.10.23 読了 ☆9.5/10.0


    去年一度読んで、また読みたくなって再読。
    当時目に留まらなかった、ユーモアと機知に富んだセリフや文章の数々に気づけて嬉しい。
    なにより、短編集なのに短編集ではない、一本の長編小説に繋がる伊坂さんの趣向や群像劇、伏線とはひと言で言い切れないほどの巧みな「あの時のあの人!あの出来事!」とページを前に遡ってめくりたくなる仕掛けがたくさん散りばめられていて、読んでいて飽きない。


    特に第二章のタキオン作戦は心打たれた。


    伊坂ワールド、伊坂マジックを堪能したい人オススメです。




    〜〜〜〜〜心に残った言葉〜〜〜〜〜





    "儲けてる奴ほど、ろくなことしてねえよ。ふんぞり返ってパソコンに向かって、ぴこぴこボタンを押してたり、人を顎で使ったりな。それよか、身体使って、荷物運んだり物作ってる人間の方がよっぽど偉いってのにな"




    "暴力振るわれそうになったら、その時だけでも避難しろよ。別に、親父に歯向かえってわけじゃないし、父親を嫌いになれってわけじゃない。ただ、どんなに親しい犬でも、そいつが咬もうとしてきたら、避けるだろ。雨が降れば傘をさすし、スズメバチが襲ってきたら、一回家に逃げ込む。それも同じだ。親がどんなに好きでも、殴られそうになったら逃げろ。で、つべこべ言ってきたら、『お父さんは好きだけれど、痛いのは嫌いだ』と言い返せ。お父さんと暴力は別物だ。
    暴力は最悪だけどな、その人間が最悪ってわけじゃない"




    "人を騙すには、真実とか事実じゃなくて、真実っぽさなんですよ"



    "スーパーとかで買い物すると、レジ袋もらえるじゃないですか。あのレジ袋ってなかなか口が開かない時あるんですよね。ぴったりくっついちゃって。
    で、俺はこのまま、スーパーでレジ袋を指でこすったまま、歳とっちゃうんじゃないかって不安になることってないですか?"

  • 伊坂作品は4作目だが、今一つ作家の特徴を捉えられない。時間軸が戻って行くのも「ゴールデンスランバー」にあったような。
    この作品はアウトローな人達が多勢出てきて、当たり屋や強請も出て来るのだが、コントのような溝口と純粋な岡田にホッコリさせられる。
    足を洗おうとした岡田に無理難題を仕掛けた溝口だったが、岡田は見事にクリア。標題の「残り全部バケーション」では適当に打った携帯の番号の家族とのドライブという有り得ない展開。
    父親からのDVを救ったり、子供の頃は担任の先生を助けたりする心優しい岡田なのに溝口に罪を擦りつけられ、上部団体に処刑(?)される。
    破天荒な溝口にも呵責の気持ちがあったのか、予想外の行動に出る。(何と無く筋が読めたが)
    ドタバタのコントを見ているような展開で笑わせてくれる。最後の結末は想像するしかないが、多分良い結果になったのでは?

  • ミニチュア写真家:田中達也さん作のタイトルそのままな感じの表紙が可愛くて思わず手に取った。
    裏稼業コンビが織りなす独特な発想からくる行動や出来事が伊坂さん作品らしくてやっぱり好きだなー。5つの短編だけれど少しずつ繋がっていて、登場するキャラみんな濃くて面白い。名言もたくさんあった。
    個人的には「残り全部バケーション」「小さな兵隊」「飛べても8分」がお気に入り。

    5話すべてに登場する溝口は口悪いし言うことやること雑だけれど、憎めないキャラなのがわかる気がする。
    最後はフワッとした終わり方で読者に解釈が任されるが、良い結果になるような気しかせず、勝手に面白い再会の場を想像してしまった。

  • 伊坂幸太郎さんは学生時代にハマりまくった作家さん。

    私自身がここ10年ほど読書から離れていたので、最近の作品は全然読めていないんですが、久しぶりに読んでみたいな〜と手に取ってみました。

    伊坂節というのか、独特な世界観は相変わらず。これこれ〜という感じ!
    なんというか、悪いやつなんだけど憎みきれないキャラクターを作るのが上手なんですよね。

    最後にもうひとひねりを期待してしまったので☆3にしましたが、やっぱり安定して面白いのでまた色々読んでみたいと思います。

    • 1Q84O1さん
      あ〜っ、わかります
      『死神の精度』『陽気なギャング』シリーズもいいですよね

      そーなんですよ
      初期作品はいいんですが、ここ数年の作品は…、ん...
      あ〜っ、わかります
      『死神の精度』『陽気なギャング』シリーズもいいですよね

      そーなんですよ
      初期作品はいいんですが、ここ数年の作品は…、ん〜、個人的にはちょっと残念かも…です(~_~;)
      2023/01/08
    • mochimochiさん
      やっぱりここ最近の作品はちょいと残念なんですかね…(⁠~⁠_⁠~⁠;⁠)

      昔はほんとに出る作品ぜーんぶ面白くてワクワクしながら読んでいたの...
      やっぱりここ最近の作品はちょいと残念なんですかね…(⁠~⁠_⁠~⁠;⁠)

      昔はほんとに出る作品ぜーんぶ面白くてワクワクしながら読んでいたので、悲しいです(⁠´⁠д⁠`⁠)⁠
      2023/01/08
    • 1Q84O1さん
      けど、図書館に行くと伊坂さんの未読本ならんでないかチェックはするんですけどね…
      読んでないのがあるとやっぱり借りちゃいますw
      けど、図書館に行くと伊坂さんの未読本ならんでないかチェックはするんですけどね…
      読んでないのがあるとやっぱり借りちゃいますw
      2023/01/08
  • 夏らしい表紙に惹かれて読んだ。裏稼業のコンビの話。短編だけど繋がりあり。軽快だけど深い言葉。やってることは悪だけど、ちょっと間抜けでどこか憎めない。なんなら愛らしくも感じる。すべての加減が超絶妙。ラストは読者の想像に委ねられるが、散りばめられた数多くの伏線により後味も爽快。これぞ伊坂幸太郎作品。さすがです。

    • 松子さん
      ひろー!
      わたしもこの作品大好きっ
      ほんと『さすが』!の作品だよね
      ひろのレビュー、同じ気持ちでうれしっ(^^)
      ひろー!
      わたしもこの作品大好きっ
      ほんと『さすが』!の作品だよね
      ひろのレビュー、同じ気持ちでうれしっ(^^)
      2022/08/23
    • ひろさん
      ねー!もー『さすが』!の作品だよねっ♪
      まつがこの作品を読んで、伊坂さーん!って叫んじゃう気持ちがよくわかったよ~!
      夏になったら読みたいな...
      ねー!もー『さすが』!の作品だよねっ♪
      まつがこの作品を読んで、伊坂さーん!って叫んじゃう気持ちがよくわかったよ~!
      夏になったら読みたいなって思ってて、読めてよかった(*ˊ˘ˋ*)
      この気持ちを共有できて嬉しい♪ありがとっ☆
      2022/08/23
  • ⭐4寄り
    この本は、はまる人ははまるんだろうなと思いながら読み進んで行った。
    まずは溝口さんと岡田さんの関係、性格の違いが興味深い。起こる(起こす)事柄が、あり得ないことばかりでコメディ。岡田さん、もう出番無し?と物足りなさを覚えながら読み進めてしまう。最後の最後に色々な事がわかる。

  • テンポよく進むストーリーが心地よく、面白かった!映画を観ているようだった。「小さな兵隊」のお話に「逆ソクラテス」味を感じた。

  • 最近ハマっちゃって著者買いしています。

    冒頭に出てきた一家離散しようとしている家族と、いわゆる悪いやつとのやりとりがどう進んでいくのか、気になってしまって読み進めました。

    悪い奴の方の生い立ちとか触れつつも、話全体としてはばらけていたように思えますが最後は繋いでいく感じで、読み手に想像させるという。
    さすがです。

    個人的にはタイムマシン的なやり取りを取り繕う件が好みでした。裸の男とか、実際に映画を観ていたのでわかる人からすればツボかと思いますが、どうでしょうか?

  • 五つの短編、三章まではたくさんの人物が出てきてすごく内容に引き込まれた。最後でどんでん返しがあるんだろうなと期待しすぎたせいか、予想外ではあったがイマイチぱっとしない終わり方だった。第一章のあの家族と岡田は結局どうなったのか気になる。

  • 色んな作家さんの本を見ても、2〜3冊に1回は伊坂幸太郎さんの本を見たいと思い、定期的に摂取してしまいます。

    伊坂さんの作品は、読みやすい構成3割、物語に引き込む力3割、笑えるところ3割、考えさせられる言葉1割のブレンドが、病みつきになります笑

    本書は、クセ少なめで特に読みやすい伊坂さんらしい作品のような気がします。

    p38過去のことばっかり見てると、意味ないですよ。車だって、ずっとバックミラー見てたら危ないじゃないですか。事故りますよ。進行方向をしっかり見て、運転しないと。来た道なんて、時々確認するくらいがちょうどいいですよ。
    →基本は前。たまに後ろを振り返る。大事なことをわかりやすくコミカルに浸透させてくれる。

    p95人を騙すには、真実とか事実じゃなくて、真実っぽさなんですよ。
    →「騙す」を「説得する」に置き換えると、仕事にも通ずるなぁと感じた。

    p263いいか、飛んでも八分、歩けば十分、メールは一瞬。だとしても、飛べるなら飛ぶべきだ。そんな経験、しなきゃ損だろうが。
    八分も十分も大差ねえ、なんて言ってるのはな、「どうせ人間は、死んじゃうんだから何したって関係ねえよ」って言ってるのと同じだろ
    どうせいつかは死ぬけどな、生き方は大事なんだよ
    →真理。年齢を重ね、生き方(生き様?)こそ大事だなぁと感じる。ただ生きるのではなく、ありたい自分であることこそが人間の在り方だと思う。

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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