- Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087455397
作品紹介・あらすじ
宮瀬家の洋館で起きた、大胆不敵な強盗事件。狙いは、巨額の埋蔵金の隠し場所を示す暗号文書だった。敵に誘拐された小林少年の大活躍。明智の名推理で危機一髪となるか!? 2編収録。(解説/三上延)
感想・レビュー・書評
-
江戸川乱歩『明智小五郎事件簿 9 「大金塊」「怪人二十面相」』集英社文庫。
名探偵・明智小五郎の活躍を事件発生順に並べた興味深いコレクションの第9巻。
小学生の頃、学校の図書館から全巻借りて読んだポプラ社の『少年探偵 江戸川乱歩全集』には、『大金塊』『怪人二十面相』のようなジュブナイル作品もあれば、少し妖しくエロチックな大人向け作品も収録されていた。今、読むと非常に懐かしく、読んでいるうちにストーリーだけでなく、細部まで思い出すのは、当時の印象が相当強かったからだろう。
『大金塊』。ジュブナイル作品だけに色々と突っ込みどころはあるのだが、当時はそんなことはお構い無しに、小林少年は一体どうなるんだとドキドキしながら読んだものだ。そして、思い出したのはこの作品で、小林少年の本名が『小林芳雄』と初めて知ったということ。
『怪人二十面相』。言わずと知れた少年の冒険心を刺激する名作。小林少年が率いる少年探偵団が明智小五郎と共に怪人二十面相に闘う図式の完成。解説で三上延が、怪人二十面相を”全力で少年探偵たちに付き合ってくれる「大人の遊び相手」”と少年の純粋な心を踏みにじるようなことを書いているが、これは良くない。
今回も巻末に平山雄一の『明智小五郎年代記』が収録されており、作品の背景、登場の風俗や世相を知ることが出来る。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
シリーズ9冊目にしてやっと怪人二十面相登場なのだけど、今までの大人向け娯楽小説から突然2作とも子供むけになったのに少し戸惑い。掲載誌などそのへんの経緯の解説があると嬉しかったのにな。
発表順としては少年探偵団もの第一弾が「怪人二十面相」になるけれど、このシリーズは事件の起こった順ということで「大金塊」が先に来ます。こちらも小林少年が被害者の息子である少年・不二夫くんともども大活躍するものの少年探偵団はまだ結成されていないということでこの順番に。「大金塊」は犯人の窃盗団の首領が美人の女賊というのが珍しい。使われているトリック自体は、今までの乱歩作品の焼き直しのようなものが多く(人間椅子とか)とくに目新しさはないのだけれど、財宝の隠し場所をしめす暗号の解読、そこから鬼が島の異名のある孤島へ渡り洞窟探検、そこへ満ち潮で水が満ちてくるなど少年好みの冒険要素満載なのは楽しい。
「怪人二十面相」は1931年の事件とされており、都合3つの美術品盗難事件が二十面相により行われるわけですが、変装が得意という設定ゆえ手口がワンパターンで、明智探偵ならずとも読者は内心(こいつが二十面相じゃね?)とわかってしまうのが微妙(苦笑)しかし最初の事件の際は明智探偵が海外出張中ということで小林少年が一人で二十面相に立ち向かい、誘拐監禁されたりするも一矢報いるというのが凄い。そしてこの事件で知り合った被害者一家の息子・壮二くんにより小林くんを団長に少年探偵団が結成されるという経緯。
明智探偵は「西洋人のように背の高い洋服姿」「よく光る目、高い鼻、引きしまったかしこそうな顔」「頭はもじゃもじゃにみだれています。ちょうど絵にある古代ギリシアの勇士のような頭なのです」 と大金塊で描写されており、容姿のほうは相変わらず、そして「港区龍土町の閑静なやしき町」で「わかくて美しい文代夫人と、助手の小林少年と、女中さん一人の質素なくらし」をしているとのこと。
それにしても少年むけに書かれたせいか、奥さんの文代さんの出番は全くなく、明智先生が小林くんとばかりラブラブなのには不謹慎な微笑を禁じ得ません。「怪人二十面相」のラストシーンが、「明智探偵も、思わず少年の名をよんで、両手をひろげ、かけだしてきた小林君を、そのなかにだきしめました。美しい、ほこらしい光景でした」「明智先生ばんざあい」「小林団長ばんざあい」で締めくくられていて、以前解説でオーケンが書いていた説にいたく共感します。 -
読了 20230905
-
そろそろ深いこと何も考えずに気楽な気持ちで読めばいいかな。
-
クロニクル第9巻は『大金塊』『怪人二十面相』。
子供向けの冒険譚という性格が強いが、乱歩というとこの辺りから読んだ読者が多いのではないだろうか。『です』『ます』体の語り口調、小林くんの活躍……ただただ懐かしい。
これでクロニクルも残り3冊となった。完結が楽しみなような、寂しいような……。