- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087455939
作品紹介・あらすじ
柴田錬三郎賞、歴史時代作家クラブ賞作品賞、河合隼雄物語賞の3冠を受賞し、王様のブランチブックアワード2014の大賞にもなった話題作の文庫化。実在した南部八戸の女大名の一代記。(解説/池上冬樹)
感想・レビュー・書評
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時代小説棚にあるのがわかっていて、どんどん時間が過ぎてしまった。ようやく読めた。読み応え半端ねえ、その分満足感がある。直虎を見ていたので、でも寧々さんは知らなかった、悔し涙。歴史に翻弄されたんだけど、性格そのままで器でした。羚羊の字も良いし、語り口も500年以上生きている筈の伝説ですね。遠野に行った事あるので景色が浮かび、河童が主役ってとても素敵だな、とにかく色々要素が織り込まれて賞も獲れる思います。いやあ読み切ったよ、長いお別れに小さいお家にどんどん読めてる
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いきなりの羚羊目線である。
そして歴史話というものに対して、「あれがあっちについた、これがこっちについたとわかりにくい」と主人公祢々に言わしめてしまう。
「私には、胃袋並みに三つか四つ、脳みそが必要…」とは羚羊の言葉。
時代物が苦手な身としては、ちょっと体をほぐしてもらったような気持ちになった。
といってもお家や藩の話ではあり、油断は禁物(笑)
そこをゴツゴツとした堅さや重量感を削った、さらりとしたタッチで導いてゆく。
異界との交わり具合も自然で程よい感じ。
「遠野物語」にも少しばかり興味が出てきた。 -
一人称が羚羊(かもしか)の角、という変わった設定で最初は戸惑った。ファンタジー要素が随所に挟まれている、少し変わった歴史小説。
実在した女大名、祢々はとても魅力的。少女の頃はもちろんだけど、不幸を乗り越えて、苦境をはねのけて行くたびに、厳しく、美しくなっていく。思慮深さと行動力を兼ね備えていて、とても強い。かけがえのないものたちを奪われたゆえの、痛々しい強さではあるけれど。。
戦で一番大切なのは、やらないこと。戦うのは簡単。やらない方がずっと難しい。だけどどんなときもその難しい選択をし続けてきた祢々の姿勢には、現代の私たちも考えさせられるものがあると思った。 -
歴史小説はそれほど好きではないけど
面白く読めた。
東北の歴史に詳しくなくてどこまでがファンタジーなのかよくわからなかった、知ってたらもっと面白かったと思う。 -
実在した女城主と角とのファンタジー?
どうしたら、こんなに強く生きられるの?
責任感だけじゃ無いよね。
心持ちの少しでも、真似できたらと思いました。
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乗り越え方。現代を生きる戒め。
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南部氏が治めていた青森、岩手、秋田にまたがる地。
その地で生まれ育った袮々は、女大名として手腕を振るう。
しかしそこに至るには、悲しみと、怒りと、忍があった。
物語の語り部はアオシシ、羚羊である。
しかも一本角の!
彼もまた美しき白い羚羊と出会い、悲しみの別れを経験している。
死後は霊となり、物語を語り続ける。
本書で繰り返されるのは、「戦で一番重要なことは戦をやらないこと」だ。
どこぞの大馬鹿者(それを選んだ有権者も相当程度責任があると思うが)が、我が土地を戦争で取り返しましょうといっていたが、戦争をゲームか何か、血は流さず、自分も死なないと思っているのだろうか?
それともただ単に、「戦争しようとか言えちゃう俺ってかっこいい」なのか。
あるいは何にも考えてないのか。
何れにせよ、人が死に、腐るのを間近に見る生活は、普通じゃない。
袮々は、武士なら戦って散ることこそ、と息巻く家臣を諌め、「二度と私の大切な者の命を奪わせない」(296頁)、「生きる道を、選べ」(306頁)という。
これがどれほど大変で立派なことか!
なんども登場する不思議な鳥、ぺりかん。
本文に直接影響を及ぼすわけではないが、張り詰めた空気を和らげ、息をつかせる。
さすが、愛の鳥。
遠野といえば、のカッパも登場して「遠野物語」の世界にも触れられる。
涼しくなったら、不来方城近くまで墓参りに行こうか。
銀河鉄道より、少し派手な色の列車に乗って。 -
八戸南部家→遠野のお家のことは知らなかった。
マイナーな土地・家の小説は、知らないことが多くて面白く、ありがたい。
史実に軸を置きつつ、人の感情の彩りがよかった。
かたづのの語りであるとか、河童のみんなの話はファンタジー。
歴史的な物語と、時折すっと入るファンタジーな挿話のバランスが良かった。 -
記録
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中島京子「かたづの!」読了。重い歴史物の風格と、ユーモア、ファンタジーが混在する素晴らしい作品でした。中島さん、面白いなぁ…今、一番好きな作家さんです。☆四つ!
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とても読みごたえのある作品だった。少し複雑な所があるので、また改めて読み直したい。
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角の一人語りは、最後まで馴染めなかった。
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歴史ものはあまり得意ではないのだけれど、楽しく読めた。
ファンタジー要素が濃いからかしら。 -
「羚羊の角」を語り手に配し、遠野ゆかりの「河童」や絵から抜け出した「ぺりかん」やらも登場する、ファンタジー色の強い作品となっています。 ―― https://bookmeter.com/reviews/72976384
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2018年1月30日
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生きる道を、選べ
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遠野の羚羊の片角が語る江戸時代唯一の女大名の一代記。
夫と幼い嫡男を立て続けに失う。二度と大切な人たちを失いたくないと、戦わず困難に知恵と勇気で立ち向かう。
しかし、謀略と武士を気取る男どもに何度も窮地に陥り、身を削りながら、最後にようやく短いけれど静かな時を迎える。
河童や、絵か抜け出たペリカンも出てきて、どこまでが事実で、どこからが創作なのか判然としないが、一気に読んでしまった。「小さいおうち」にも似た空気感を感じた。 -
女大名、その波乱万丈の一生。
骨太の歴史小説かと思いきや、河童も出てくるし、羚羊の角が語り手だし、ファンタジーのよう。
「戦でいちばんたいせつなことは、やらないこと」を信条に祢々は、次々と降り注ぐ過酷な運命に立ち向かう。矜持よりも命。でも、分かり合えないこともある。異なる意見の人もいる。これが祢々の一人称だったら、もっと引っ張られたり、反発したりしたかもしれない。でも、語り手は角なので俯瞰的になっている。河童の話もあって、民話や伝説のようだ。そこが他の歴史小説と違う。
今年の大河ドラマがちょうど井伊直虎で、祢々も尼になっているからか、どうしても脳内イメージは柴咲コウになってしまう。で、この祢々は実在の人物? あまりこの時代の、そして東北の歴史に明るくないので、わからなかった。それは些細なことなのだけど。