岳飛伝 11 烽燧の章 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087456325

作品紹介・あらすじ

南下する辛晃が攻撃を仕掛けるも岳飛・秦容はさらに力を増し撃退した。一方、北で続いていた呼延凌率いる梁山泊軍と兀朮・胡土児の金国軍は総帥の首を賭けた最終決戦に臨む。(解説/細谷正充)

感想・レビュー・書評

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  • 「なあ、呼延凌殿。若い者たちが、なにを作り上げようとしているのか、俺にはわからん。しかし、志というものが、少しづつかたちを見せ、命を帯びはじめている。俺はそれを、ただ感じるだけだが」
    「俺の親父のころから、志は確乎としてあったのだと思います。あのころは、わかりやすかったのでしょう。俺など、いまでも不意に、霧の中に迷い込んだような気分になることがあります。統括も王貴も張朔も、霧のむこうが見えるようなのですが」
    「俺たちは、軍人さ。志に眼を奪われると、戦がおろそかになる。ここにある戦場で、ただ闘えばいい。俺は、いつもそう思っている。勝ちも負けも、衆義庁が意味をつけてくれるわけさ」
    山士奇が、笑った。歳をとった、と呼延凌は思った。(159p)

    歩兵隊隊長の山士奇が戦死した。「楊令伝」以降のベテラン兵士だった。命をすり減らして、彼らは獅子奮迅の働きをして散って行った。山士奇自身その命の重みの価値を知ってか知らずか、統括や王貴の立てた政策を認めているように、本作ではなっている。

    しかし、今回の闘いはホントに必要だったのか?わたしはよくわからない。戦いの意味を、衆義庁は「戦いそのものを無くすための戦い」だと位置づけている。しかし、歴史が教えるように、それは支配者層の言い訳、或いは理想に過ぎない。勿論宣凱たちにそう言い募るのは酷だとはわかっている。そもそも楊令が始めた戦い自体が理想だったのだから、その運用の責任を、あの若者たちに言い募る資格は、私には無い(←だったら言うなよ)。

    長い物語は、あと6巻を残して(6巻しか残していなくて)、想いは千々に乱れる。岳飛は再び歴史の舞台に登らなかった。それなのに、今彼は北へ北へと夢を追いかけている。金国は、やがて蒙古に破れるだろう。それなのに、綻びが出始めているとはいえ、梁山泊と互角の戦いをしている。
    夢は大陸を駆け巡る。暫くは、夢を見させて貰う。
    2017年10月6日読了

  • 秦容は嫁取りをしないのを呼延凌に操立ててる言い訳してたくせに迫られたらさっと礼ちゃん妻にするちゃっかりした弟気質な器すき。対して呼延凌はほとほと苦労性だなあ。みんなに総師の立場押し付けられてから本当によくやってる。よくやれちゃう器と器用さがあるのも彼の大変なところだ。兀朮はまだ好きに戦ってるイメージあるが、呼延凌は部下に対しても閉じるようにしているというこの巻の描写にて痛々しく感じた。史進は好き勝手死にたがっているようで心配だろうし、山士奇は死んじゃうし、昔っから梁山泊担ってた人たちを部下としてみねばならない辛さは想像を絶する。凌にあまり背負わせすぎないでくれ…

  • 梁山泊が金と激突。しかし決着はつかず。そう言う中で、南のベトナムの近くで、サツマイモから作った糖を交易に使って財を生み、南で米を北で小麦を買い占めて、南宋と金を食料で苦しめる梁山泊。物流を武器にそれぞれの国と戦うというのは現在の経済戦争を1000年以上前に行ったと言う事か。そんなところが垣間見える話である。 後4巻。どうなるか。

  • 金軍と梁山泊の戦い
    蕭玄材の物流への躍動
    秦容と公礼の結婚

    物流、水軍、北、南で南宋、金、梁山泊が凌ぎあう

  • またまた、色々ココロ揺さぶられる。
    久々の決戦あり、そして結婚あり。
    北ではきな臭い匂いが漂い始めた。
    クライマックスに向かっている、まだまだ楽しめるけど、少し寂しくなってる。

  • 3.8

    兀朮強くなったな〜
    秦檜もそうだけど、スーパーヴィラン的な存在がいるわけでもなく、登場人物も読者も感情という足が地に着いていなそう

  • 感想は最終巻にて。

  • 呼延凌と兀朮との激しい戦い。
    すごい光景が目に飛び込んでくるようでのめり込んで読んでました。
    まだまだ長い戦いは続くようですが。
    結果は如何に??
    ハッピーエンド?
    バッドエンド?

  • 今まで志を持たないと言っていた李俊が、志を秦容に語るようになるなんて。
    ”「自分が思った通りに、生きて生きて、生ききる。人間が志を全うするというのは、そういうことだ。替天行道の志は、人間らしく生ききることを、ただ言葉にしたのだと、俺は最近、思うようになった」”

    長老と呼ばれる李俊と史進に隠れて目立たないけれど、呼延凌もそこそこ歳をとっていたんだなあ。
    思えば彼の今までの一番の見せ場は、穆凌(ぼくりょう)から呼延凌になった時だったのかもしれない。軍の総帥にしてはあまりにも見せ場がなかったし。

    梁山泊はもう、軍のいらない姿に変わろうとしている。
    西遼や西夏、日本、秦容達のいる小梁山、さらには南宋の秦檜も、目指す国のありようが同じ方向を向いてきたのだから。
    戦うのではなく、溶け合っていくのか?と思ったところに蒙古の存在。
    ああ、歴史は変えられないよねえ。

  • さまざまなことが行き過ぎる中で、秦容が山の女兵士である公礼を妻とします。替天行道の国づくりが進む中、それぞれの思いはどこに向かうのか、複雑な思いで読み進めています。

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著者プロフィール

北方謙三

一九四七年、佐賀県唐津市に生まれる。七三年、中央大学法学部を卒業。八一年、ハードボイルド小説『弔鐘はるかなり』で注目を集め、八三年『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞、八五年『渇きの街』で日本推理作家協会賞を受賞。八九年『武王の門』で歴史小説にも進出、九一年に『破軍の星』で柴田錬三郎賞、二〇〇四年に『楊家将』で吉川英治文学賞など数々の受賞を誇る。一三年に紫綬褒章受章、一六年に「大水滸伝」シリーズ(全五十一巻)で菊池寛賞を受賞した。二〇年、旭日小綬章受章。『悪党の裔』『道誉なり』『絶海にあらず』『魂の沃野』など著書多数。

「2022年 『楠木正成(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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