永遠の出口 (集英社文庫(日本))

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著者 : 森絵都
  • 集英社 (2006年2月17日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087460117

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永遠の出口 (集英社文庫(日本))の感想・レビュー・書評

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  • 冒頭───

    私は、<永遠>という響きにめっぽう弱い子供だった。
     たとえば、とある休日。家族四人でくりだしたデパートで、母に手を引かれた私がおもちゃ売り場に釘づけになっている隙に、父と姉が二人で家具売り場をぶらついてきたとする。
    「あーあ、紀ちゃん、かわいそう」
     と、そんなとき、姉は得意げに顎を突きあげて言うのだ。
    「紀ちゃんがいないあいだにあたしたち、すっごく素敵なランプを見たのに。かわいいお人形がついてるフランス製のランプ。店員さんが奥から出してくれたんだけど、紀ちゃんはあれ、もう永遠に見ることがないんだね。あんな素敵なのに、一生、見れないんだ」
     永遠に───。
     この一言をきくなり、私は息苦しいほどの焦りに駆られて、そのランプはどこだ、店員はどこだ、と父にすがりついた。おもちゃに夢中だった紀子が悪いと言われても、見るまでは帰らないと半泣きになって訴えた。

    1970年代、ぼくはおそらく一般的に“思春期“から”青春”と言われる時期の真っただ中にいた。
    中学、高校、そして大学時代。
    それが、ぼくの70年代だった。
    未来に何の不安もなく、真っ直ぐに輝いていた日々。
    そんな毎日をぼくは送っていた。
    もちろん、悩みや葛藤や苦しみも、他の人たちと同じように味わうことはあったが、概ね、今振り返っても楽しい日々のほうが思い浮かぶ。
    70年代は、遥か昔の、切なく、ほろ苦く、甘酸っぱい記憶のなかで、ぼくがあの頃に戻りたいと心の底から切望する時代だ。
    でも悲しいことに、その時代には二度と戻れない。
    心の中で振り返るだけにとどめて、明日に向かって歩き出すだけだ。

    この作品は、1970年代から80年代へかけて、主人公紀子の小学校から中学生、高校生へと少しずつ大人になっていく姿が描かれている。
    小学校時代の親友との永遠の別れ。
    危うくドロップアウトしそうになった中学時代。
    勘違いで無残に散った高校時代の初恋。

    淡々とした日常の中で起こるちょっとした出来事。
    両親の離婚問題は、その中でもいちばん大きな問題だったろうか。
    多かれ少なかれ、人はこんな経験をして成長していくのかもしれない。
    森絵都はそんな少女紀子に優しく寄り添って描く。

    最後に書かれたエピソードも秀逸だ。
    ───生きれば生きるほど人生は込み入って、子供の頃に描いた「大人」とは似ても似つかない自分が手探りしているし、一寸先も見えない毎日の中でのんきに<永遠>へ思いを馳せている暇もない。
     だけど、私は元気だ。まだ先へ進めるし、燃料も尽きていない。あいかわらずつまずいてばかりだけれど、そのつまずきを今は恐れずに笑える。
     生きれば生きるだけ、なにはさておき、人は図太くもなっていくのだろう。
     どうかみんなもそうでありますように。
     あの青々とした時代をともにくぐりぬけたみんなが、元気で、燃料を残して、たとえ尽きてもどこかで補充して、つまずいても笑っていますように───。
     急に一人になった薄曇りの放課後みたいな、あの懐かしい風の匂いが鼻をかすめるたび、私は少しだけ足を止め、そしてまた歩き出す。(348P)

    森絵都は児童文学出身だけあって、主人公を奈落の底に突き落とすようなことはしない。
    常に、明日があるのだからどんな時でも希望を持って、と語りかける。
    明日が、未来が、ある限り、ぼくたちはそれが明るいものだと信じて歩き出す。

  • どこにでもいる普通の少女、紀子が小学3年生から高校3年生までに経験した様々なこと―誕生日会をめぐる小さな事件、黒魔女のように恐ろしい担任との闘い、不良といわれる仲間とつるんだ中学時代、家庭崩壊の危機を救った温泉旅行、高校での初恋―と共に紀子の成長を描いた短編集。

    大人になってから振り返ると愚かで羞恥に満ちているが、小さな世界の中で子供なりに精一杯生きていた日々。紀子が一生懸命になればなるほど、くすぐったいような、苦笑いしたいような気分になってくる。それは誰もが何かしら紀子と似たような経験を経て大人になってきたからかもしれない。それを大人の目線で冷静に見つめることができるようになったからこそ、このほろ苦さを感じるのだろう。

    「大人」は別の生き物のように感じていたあの頃から、時間だけは過ぎていってしまった。今の自分はあの頃思い描いていた「大人」とはほど遠い、むしろあの頃の延長でしかないけれど、結局「大人」ってそういうものなのかな、とやっと解った。違う生き物になれる訳はなくて、あの頃から続く今の自分と折り合いをつけながら、これからも生きていくのだろう。この物語を読んで改めて思った。

  • とある少女の駆け抜けた時間のお話p(^_^)q 。
    物語の中の少女と一緒に悩んだり、「どうしてこんな考えになっちゃうのかな?」とうまく物事を運ぶことができないもどかしい場面には、ため息をついてしまい(´Д` )。
    なんだか家族や友達のような感覚で最後まで楽しむことができた本でした♪( ´θ`)ノ。

  • 主人公の紀子の、小学生から高校卒業までを綴った連作短編集。
    面白くてどんどん読み進んだけど、同時に読んでて胸が苦しくもなった。青い10代を生きて大人になった人なら、誰しもが思い当たるエピソードが満載で。
    今まで忘れていたことでも、そういえばこんなこと私にもあったなぁ、なんて色々と思い出したりした。小学生時代のお誕生会とか、女子同士のあれこれとか、仲良くても卒業してバラバラになると疎遠になっちゃう感じとか。

    この主人公は反抗期がやや行きすぎた感じになったのだけど、私の周りにいたいわゆるグレてた子も、元々はきっと普通の子で、ほんの些細なきっかけでそっち側にいって、でも少し大人になってまた元に戻ってみたり、純粋だからこそ染まりやすく揺れやすい、そういう思春期の描き方が本当に秀逸。
    森さんは元々児童文学のジャンルの作家さんだから、というのもあるかもしれないけれど、大人になって読んで自分のことを振り返って少し胸が疼くような、懐かしくてちょっと笑っちゃうような、青さが恥ずかしくて思わずジタバタしちゃうような(笑)、たくさんの感覚を与えてくれた小説だった。

    10代の頃から目標を明確に持って5年先10年先のビジョンを描けていた人もいるかもしれないけれど、全く描けないまま何も決められないまま高校を卒業してしまった私のような人間からすると、「未来は全然分からなかったけれど、自分次第でどんな風にも変えていけた」と30代になってから気づいた瞬間の、諦めとも後悔とも誇らしさともつかぬ複雑な感覚が正しく描かれすぎているこの小説が、大好きだけどちょっと怖い、と思ってしまうのかもしれない。はっきりと自信が勝っているなら、そうはならないのかもしれないけれど。

  • この話は私世代の話だと思うんだけど、私の世代ってこんなにはじけてたかな。
    私が田舎っぺだから知らなかっただけなのかな…。
    第6章からはすごく面白くなった。特に第8章の「恋」はいい。

  • 勝手な想像だけれど、森絵都さんは紀子のような少女時代を過ごしたのかなあ、と思った。それくらい、そのときそのときの少女のリアルな感情が、格好つけずに書かれている。
    わたしはひとつのことを鬱々を悩んでしまう性格だけれど、典子のように信念をあっさり捨てて万引きをしたり、勘違いから恋をしたり、流れやそのときの感情に任せて生きる人には、きっと死ぬまで面白い展開が待っているのだろうな。
    万引きはもちろんするつもりはないけれど、わたしももっと気楽に生きてみようかな、と思う。

  • 何度も読み返した本!

  • 途中 破天荒な行動もあるけど小学生から高校生を経て、社会人になった今もずっと出口に向かって歩く女性。つまづくことも多いけどまだまだ元気に先に進み続けるし燃料も尽きてない。←見習います(笑)

  • *「私は、“永遠”という響きにめっぽう弱い子供だった。」誕生日会をめぐる小さな事件。黒魔女のように恐ろしい担任との闘い。ぐれかかった中学時代。バイト料で買った苺のケーキ。こてんぱんにくだけちった高校での初恋…。どこにでもいる普通の少女、紀子。小学三年から高校三年までの九年間を、七十年代、八十年代のエッセンスをちりばめて描いたベストセラー*

    10年ぶりくらいの再読なれど、懐かしくて恥ずかしくて切なくて微笑ましくて…得も言われぬ温かな読後感はそのままでした。誰もが通る道で、それを後ろに従えて進む明日。そんな日々がより愛おしく思える、素敵な一冊。

  • 劇的な事件が起きるわけでもなく、主人公はどこにでもいる普通の女の子。彼女がおとなになるまでの、成長の物語。

    だけど。だからこそ。

    彼女の辿る青春の日々は、彼女がそこで感じること、考えたことは、誰もが経験した想いなのではないか、と思うのです。

    少なくとも私は、紀子は私だ、と思う瞬間があった。
    今思えば、どーでもいいじゃんそんなん、って思えることを、この世の終わりのように感じてた時期が確かにあった。
    こんな風に考えて、こんな風に苦しんだ時が私にも確かにあった。

    懐かしく、みずみずしい匂いのする一冊でした。

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