天切り松 闇がたり 4 昭和侠盗伝 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087462739

作品紹介・あらすじ

時は昭和九年。関東大震災から復興を遂げ華やかなモダン東京を謳歌したのも束の間、戦争の影が徐々に忍び寄っていた。ついに寅弥が我が子のようにいとおしんできた勲にも召集令状が届く。国の無体に抗おうと松蔵らが挑んだ企みとは?激動の時代へと呑みこまれていく有名無名の人々に安吉一家が手をさしのべる五編。人の痛みを、声なき声を、天下の侠盗たちが粋な手並みですくいとる。

感想・レビュー・書評

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  • 天切り松の話を聞く時は、法務大臣だろうが検事総長だろうが膝を揃える
    所長や管理部長、刑務官たちが膝を揃えて正座をして松蔵の話を聞いている様を想像すると吹き出してしまう

    「ほれみろ。みんながそうして行儀よく座れァ、狭え座敷も広く使えるんだ。横柄な野郎が世間を住みづらくしてるってことを忘れるな」
    と言い放つ松蔵。ここでは怖いものなしだ

    陸軍将軍の軍服から金鵄勲章を、さらに某宮殿下の大勲位菊花大綬章が盗まれた!
    人の命を虫けら同然に徴兵し、大陸へ進軍を続けるお上への物言わぬ抵抗だ

    「俺たちァ確かにお天道様に背を向けた盗っ人だが、人の命を盗んだためしァ天に誓って一度もねぇ。帝大出や士官学校出のおつむのなかじゃあ、命の重さは紙っぺら一枚より軽いらしいが、どっこいこの尋常小学校出のおつむじゃあ、どう考えたって命の重さは地球の重さだ」
    検事総長を前に毅然と言い放つ安吉親分

    世界各地や日本国内の昨今の暗いニュースを思い、胸が熱く涙が出た

    私がこのシリーズが大好きなのは、単なる耳に楽しい語りだからではない、お上に従うしかない民の苦しみを民に代わって一矢報いてくれる熱い人情があるからだろう

    村田松蔵の二つ名『天切り松』が、よりによって天切りで忍び込んだ東郷平八郎元帥からいただいた名だったとは、何ともスケールの大きな話だ

  • 闇がたりも最後。とは言っても別段シリーズを締めくくるような話は無いが、タイトルにもなった昭和侠盗伝は、通常より少し長めでスケールの大きい骨太な作品で、一層男気溢れる仕上がりになっている。全体を通しておこんがこれまでよりも人間らしさを前面に押し出していると言うか、やたらに女性らしさを感じさせる行動をとっていたのが良かった。
    このシリーズは、思わず声に出したくなるような調子、言い回しが溢れんばかりで、どんな人に読んでもらうのがしっくりくるのかと思いめぐらせるのもまた一興である。

  • 今回も面白かった!シリーズを重ねる毎に読みやすくなってるって感じてたんだけど、それは物語が現代に近づいてきてるからなのかも。カフェとか段々知ってる言葉が多く出てきてる気がした。

    天切り松さんが仕事した描写って今まであんまない気がしたんだけど、今回やっと出てきました!狙った人2人とも起きてたけどね。笑
    なんだか天切り松の新人時代を見ているようで、頑張れってなりました。

    それにしても相沢中佐の話は、読んでて何とも言えない感情になりました。松蔵と同じように「神を信ずることの幸か不幸」を考えさせられる話でした。奥さんへの愛情表現が下手だけれど、ちゃんと愛してたのが伝わる相沢さん。奥さんを苦しめることになるから、人を殺さなければいいのにって思うけれど、それが本人の思う正義なんだからしかたない。

    そして「王妃のワルツ」が好きでした。黄不動の栄治もかっこいい人だったのか!今まで出てきてたけど、そんなに心に残ってなかったみたいです。ファンクラブが出来るほどかっこいいのか!顔を見てみたくなりました。
    でも何よりも1人のひとを愛した殿下が1番かっこよかった!結婚するならそういう人とするのが幸せだと思いました。津村さんはチャラチャラしてないで、見習って欲しい。笑

  • 2020/1 読了
    天切り松シリーズ最高!

  • いつの間にか浅田次郎が「好きな作家」になっていた(笑)。

    さて、シリーズ第4弾。当初10歳前後の小僧っ子だった“天切り松”も、はや20代の後半。親分、兄貴たちもそれぞれ歳を重ねているのも、趣がある。

    今回は、太平洋戦争にひた走る軍部の闇が、市井の人々の目にどう映っているのか、“先の大戦”やら“日露戦役”等の戦争を経験している者たちが、破滅に向かって突き進む日本に憤る様にページを多く費やされていた。

    タイムリーにも、船戸与一が同じ時代を描いた長編を読んでいる最中だったため、歴史に疎い自分にも時代背景がよく見えてきて、読みやすかった。

    ★3つ、7ポイント半。
    2018.05.03.古。

    相沢事件や二二六事件等、軍部周辺では非常におかしな空気が充満している日本。大陸では(前述の)「満州国演義」に描かれるような謀略が行き交うきな臭いことこの上ない時代。
    政治の思惑を振りかざし軍部の内でも権力闘争や武力行使が日常茶飯事で・・・・、支那の大地では不毛な作戦に投じられた若い命が無残に散る・・・。

    その同じ時代の東京。銀座・丸の内などでは「モダンガール」や「モダンボーイ」が横文字で洒落た言葉を交わしつつ優雅な都会生活を営む・・・・。

    (この作品はもちろんフィクションであるが)
    それらの世相の対比は決してフィクションではなく、当時の日本のリアルであるという点が、なんともかんともやるせない。

  • 解説すまけい氏。 亡くなっているのか。。

    松蔵の独り立ちした姿も読みたいが、そうすると親分たちがもういないわけで。。 悩。。。

    常兄は『ジョーカーゲーム』を思い出す。
    実際に起こった事件。
    近代以降の方が歴史がなじみがない。。

    おこん姐さんは、以前から言われてはいたが恋愛に関して凄く純情だとわかる話。

    栄治兄も親分も格好よく、全員のエピソードが入った1冊。

  • 天切り松闇がたりシリーズ4.
    昭和侠盗伝(目細一家のお手並みオンパレード、3つの勲章×東郷平八郎!)/日輪の刺客(相沢事件、×相沢三郎×永田鉄山)/惜別の譜(相沢の妻、相沢の処刑まで)/王妃のワルツ(黄不動の栄治×嵯峨浩×愛新覚羅溥傑)/尾張町暮色(振袖おこん)

    この1冊は、実在の歴史上の人物や事件、出来事を絡めたものが主流だったな。相沢事件もあらためて調べなおしたりした。嵯峨浩さんの半生も、あたらめてべつの伝記でも読んでみたいなあ。お写真検索すれば出てくるけど、ほんとに美人。
    昭和侠盗伝は、3巻までに、一家それぞれのキャラや仕事分野を描いておいて、それをふまえて読むと、もう、映画のようだ。でもこれは、必ず先に3冊ぶんの流れを読んでないと、味わえないとこだよね。

    なんか、ルパン一家みたいに、キャラの特性も年齢も動かないままパターンの違う事件だけが起こるんじゃなくて、時代がちゃんと動いていって、だんだんみんなが老いていってるもんな、そうそう長く続くシリーズじゃないのかもな。。。これの次まで手元にあるので、5巻、ライムライト、心して読もう。松蔵は青年になってきたけど、次くらい、そろそろ虎弥はけっこうな歳になるかなあ。。。。

  • 時は大正から昭和へ。
    モボやモガが銀座を闊歩するも、
    日本は激動の時代に突き進む。
    戦争の悲惨さと命の尊さを語る。
    「生きて卑怯者になれ」
    このくだりは
    こみ上げてくるものを
    抑えられなかった…。

  • 松蔵の活躍が多く面白いです

  • シリーズ四作目で時代は、大正から昭和へ。
    五作の短編のうち、四作は戦争絡みと、少し興醒め。
    だが、『惜別の譜』『王妃のワルツ』は、読む価値あり。

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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