蒲公英草紙―常野物語 (集英社文庫)

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著者 : 恩田陸
  • 集英社 (2008年5月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087462944

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蒲公英草紙―常野物語 (集英社文庫)の感想・レビュー・書評

  • 峰子ちゃんが最も温かく幸せだった頃を綴った、
    よもぎ色の日記帳「蒲公英草子」。

    記憶を遡るように綴られた思い出が
    立体となりいきいきと語られていく物語。

    品よく優しく穏やかな景色と人々。
    田を耕し、人々が助け合い生きていた時代。
    人の心に寄り添い、想いを繋げ、
    痛みも人もまるごと引き受け、
    自らの中に「しまう」常野の一家が村を訪れる。

    美しい光に満ちた明るい季節。
    季節が過ぎ行く夕暮れの光と風。
    苦しい甘さが胸をつき、唐突に喪失が訪れる。

    時代は流れ、戦争が始まり、
    奪われていく命。
    地獄の果てで静かに告げられる
    終わりに続く始まり。

    誰一人傍観者ではなく、今を生き、
    今を作っている。
    誰かのものを奪うのではなく、
    強い優しさを大切に繋げていける
    日本人でありたい。

  • 不思議な力を持っている遠野一族と槙村家の物語を峰子から見てほのぼのと進んで行く。
    最後の章で大きく物語が動き、親の愛や戦争の悲しみ、聡子の言葉、光比古の存在が凝縮されていた。

    読み終えて光の帝国でも感じたが、かつて、日本には遠野一族に近い人たちがきっといたと思わせる話です。
    日本人の繊細さならあり得そうな気がします。

  • 常野物語シリーズ第二作。今回は一族ではない人間視点からのお話。
    #前作と同様、「しまう」能力を持った春田家が登場。

    のどかな農村を舞台に人の良い村民たちの穏やかな生活があり、
    常野一族とのささやかな交流や淡い恋が読んでいてほっこりとします。

    しかし天災と戦争は人々の意思や願いを踏みにじるように襲ってくる。
    大切な人を奪われる悲しみと憤りが短い文章からずしっと伝わってきます。
    印象的だったのは、天災による喪失には救済的な場面があったのに対し
    戦争による喪失は絶望と無情が残るばかりで、救いがない。

    最後の最後に作者に突き放されたような気がして、呆気に取られる読後です。

  • 2008/10/02

    常野シリーズと聞いて。

    なんかあたし、恩田陸を読むといつも最後に肩透かしをくらう気がするのだけど気のせいかしら

    読んでる最中はあったかくなったし、続きが気になってどんどん読んじゃうし。でも物語の終末で、ん?て。

    や、面白かったけどね。
    謎は全てはっきりとは明かさないんだねー
    読者が想像せよということかー

    基本的にファンタジー好きなのでよかったです。
    お城や剣やお姫様が出てくるファンタジーじゃなくて、これぐらいの、日常のなかの非日常感がすきだー


    ひろたかさまと結ばれればよかったのに!


    響いた?

  • うーん、そろそろカテゴリ「恩田陸」が必要かなぁ。
    常野物語2作目。

    槙村家のお嬢様、末娘で病弱な聡子と、
    その主治医の娘で、話相手となった峰子。
    峰子の視点から話は進む。
    槙村家に、しまう能力を持った常野の一族がやってくる。
    ちょっと切ないけど、読後感の良い本だった。

  • たんぽぽ。変換されない。悲しい。


    恩田陸さん新刊!しかも常野シリーズ!読まないわけにはいかないッてことで一瞬でした。

    ストーリ-としては意外性はなく、恩田さんにしては率直な雰囲気でした。発想としてはすでに「光の帝国」で登場しているものでしたし。
    言うならば、求めすぎたことを後悔。これは決して作品の内容に対する不満ではなく、オチと見せ所を期待しすぎた自分への後悔です。もっと純粋に登場人物の心情を読めば良かった。


    主人公が回想として語る口調は、淡々と、綺麗なものを綺麗と感じ、怖いものを嫌悪するといった当たり前なことを伝える純粋な記憶でした。ただそれはあまりにも切ない昔話でした。

    変わらずにはいられないもの。二人の空気。思い出すこともできないあの瞬間。去り行く日常。日溜まりの幸せ。無くした宝物。どうか大切に「しまって」ください。

  • シリーズ第一作『光の帝国』は、常野の人々を主人公に描いた物語だったけど、これは普通の人間の目で見た常野とそれを支える槇村家の人々を外から描いた物語。

    槇村の家は遥か昔に常野から嫁を迎えその血が入っているので、突発的にその力を持った人が生まれるのでしょう。
    主人公の友人となる“聡子様”は、その力(遠目)を持って生まれた。
    彼女と、その時滞在していた春田一家(『光の帝国』に掲載されている「大きな引き出し」に出てくる春田家のご先祖)の交流も非常に興味深いものだった。

    同時に大人になるにつれて失ってしまうものや、忘れ去った日々への郷愁など、普通の青春小説としても楽しめた。

  • 舞台となる農村の風景が美しく描かれていた。自然の脅威に賢く強く立ち向かう少女に感動です。登場人物みな優しく清廉としたものが漂います。
    短編であった光の帝国の常野の人の歩みを掘り下げたストーリーでとてもドキドキしました。

  • 「常野物語」第二弾。前作は連作短編集であったが今度は長編。不思議なちからを持つ聡子様のことを軸に話し相手の峰子が日々を綴った『蒲公英草紙』。老女になった峰子がそれを開き、愛しく懐かしく眺めている。
    能力を持つということは幸せばかりではない。能力を持つからこそ辛いことを受け入れなくてはならない時もある。聡子様の潔く美しい最期に感銘を受けた。

  • 時は20世紀が開けたばかりの日本。主人公は医者の娘で地元の名家の病気のお嬢さんの話相手になった事から物語が始まる。まだ小学生でありながら自分のお勤めを遂行する主人公や子どもでありながらも周りの者に気を配るお嬢様に今時の子どものはない健気さを感じる。
    主人公の家は開業医だが暮らしぶりは現代の医者と比べ物にならない質素なもの。医者、警察官、学校の先生、当時知識人と呼ばれる人達は尊敬され且つ自身も模範となるように責任をもって行動していた。そんな古き良き日本の姿が垣間見れた。
    本書にも「光の帝国」にも春田一家が登場する。子ども達の名前が同じだった気がして、もしや同じ家族?と思ったが、「光の帝国」を読み返してみたら似ているけど違う名前だった。こちらが何世代か祖先なんだなと納得。

  • 常野という特殊な人々とのつながり、人々の連綿と繋がっていく生命の輪、そういったものの美しさが素敵。
    けれど、決してふわふわと幸せにさせてくれるだけの話でなく、生きていく上での悲しみも教えてくれる。
    本当に素敵な一冊。

  • 懐かしく切ない傑作ファンタジー
    20世紀初頭の東北の農村。少女峰子は、集落の名家・槙村家の聡子嬢の話し相手を務めていた。ある日、聡子の予言通りに村に謎めいた一家が訪ねてくる。不思議な力を持つ一族を描く感動長編。
    ラストが切ない。光の帝国を読んでからの方が楽しめるとおもう。

  • 前作とは変わって、ひとつなぎの長編。
    光の帝国「手紙」の中に出てきた書見台を持つ旧家のことだと思われます。たぶん。
    文章の深みとか、巧みさ、そういう基準で見ると、こちらの方がたしかにうまい、という気はするけれど、その分、勢いはないなぁ・・という印象。

    登場人物について、なぜか前作を匂わせるキャスティングだったような気がする。「遠目」は、いつの時代でも、仲間を助ける役割を担っているのだろうか。
    「しまう」ということについて、前作では、いいなぁ、なんて漠然と感じるだけの能力だった。けれど、改めてこう、掘り下げられると、どこか、少し怖いような、なんとも言いがたい気持ちになった。
    単に記憶するだけじゃなく、つまりは、人ひとりをそのまま受け入れる、そういうことだと捉えるとするならば、これは、つらいことだよなぁと思う。
    忘れたくないこともあれば、忘れたいことも、忘れなければならないことも、きっとあるわけで、痛みも苦しみも、全部「響いて」しまったら、人間が壊れてしまうんじゃないの?なんて思ったり。
    まぁでも、それができるのが常野、なんだろうな。

  • 常野の人たちを描いたシリーズ。
    古き良き田舎の風景が目に浮かぶよう。
    こういう不思議な力を持った一族が存在しないとは言い切れないよなぁ…。むしろ、存在していてほしい。

    聡子様がお屋敷に戻ってきた場面では涙が止まらんかった。
    哀しい話でもあるのにじんわり来た。


    2012年3月17日

  • 表紙の写真風景がほんとうに似合う、やさしげな常野物語。

  • 高校のときに恩田作品読んで、苦手だと思って避けていてよかった。
    でなければ大学のときに読んでしまっていただろうから。

    美しく優しい思い出の、一夏の記憶の物語。
    この中には語り手にとってだけではなく、私たち読者にとってもそう、〈旧き良き日本〉の懐かしい田園風景が広がる。
    思い出は、いつだって優しい。
    それにあまりにも無頓着だった自分への後悔で胸が千切れそうになるくらい。

    でも決して穏やかなだけでもないんだ。
    追憶の切なさと同時に軍靴の足音が遠く響いているのがはっきりとわかる。

    最後の章に入る前に、語り手はこう言う。
    「私は語らなければなりません、あの運命の日のことを。当たり前の顔をして始まった、いつもと同じはずだった一日のことを。」

    みんな2011年3月11日がどんな風にして始まったか覚えているんだろうか。
    私の3月11日は、私が社会人になって家族がばらばらになる前の最後の家族旅行の始まりの日だった。
    電車は普通に動いていて、旅行という非日常にわくわくしていたけど、それ以外は何の変哲も無い、本当にいつもと変わらない朝だった。

    311後の渦中にいるときに読めて良かった。本当にそう思う。

    内閣は必死に働いている中、与党の議員はやることがわからないと仕事をせず、野党が与党時代に散々批判された体質で対策に奔走する。
    国と大企業が散々太鼓判を押した原発の欠点が露呈され、先行きが見えない中、空虚な「大丈夫」を繰り返す。
    輸出製品をつくれない、つくっても風評で売れない、この状態になっても後手後手に回る政府。
    ねぇ、「これからも日本は続くのでしょうか。この国は明日も続いていくのでしょうか。これからは新しい、素晴らしい国になるのでしょうか。私たちが作っていくはずの国が本当にあるのでしょうか。」
    私たちの日本には、それを尋ねられる常野の一族はいない。


    でも、きっと答えは明らかなんだ。
    もう一度読み返してみれば、思い返してみれば。
    当たり前の日々を懐かしむなら、それは再建するに値するものなんじゃないだろうか。
    国というのは、なにか大きく得体の知れないもに見えるかもしれないけど、それは本来たくさんの一人一人の、当たり前の生活の集合体なはずなんだから。

    私は日本が好きだ。
    本当にそう思った。

  • 悲しくて泣けた。
    日本は本当に、どこに行ってしまうのだろう?

  • 不思議な力を持つ常野一族のちょっと昔の物語。力を持つ人たちの生き方、そして息苦しさとの折り合いのつけ方が印象的だった。あの子、不思議な子なんだよね、近づかないでおこうではなく、それはそれで認めて、普通に接することができる人たちとの交流は読んでいて気持ちよかった。わたしも「不思議な」ことや人にであったら近づいていってみたいと思う。彼らに苦しみがあったら救えなくても話は聞きたいと思う。聡子さんや峰子さんはそういった点でとても秀でていた。悲劇的結末ではあるけれど、聡子さんは悲しんでいない。常野は永遠だから。

  • 【状態】
    貸出中(予約0)

    【内容紹介】
    青い田園が広がる東北の農村の旧家槙村家にあの一族が訪れた。他人の記憶や感情をそのまま受け入れるちから、未来を予知するちから…、不思議な能力を持つという常野一族。槙村家の末娘聡子様とお話相手の峰子の周りには、平和で優しさにあふれた空気が満ちていたが、20世紀という新しい時代が、何かを少しずつ変えていく。今を懸命に生きる人々。懐かしい風景。待望の切なさと感動の長編。

    【キーワード】
    文庫・シリーズ・ファンタジー


    ++++1

  • たんぽぽそうし
    なんて温かで麗らかな響き。
    あの頃の宝石のようにきらきらした大切な想い出はいつまでも記憶の中で生き続ける!

    常野物語の第2弾。
    「しまう」春田一族が関わる物語。20世紀初頭の長閑な村の、品のあるお屋敷とそこでの穏やかな暮らし。
    そこに「常野」が加わるとまるでお伽噺のようだ。

    第1弾『光の帝国』の中でも、その不思議な能力が印象深く残っていた春田一族の「しまう」。
    彼らのお陰でみんなの想いをいつまでも残すことが出来る!
    今も、そしてその先も、彼らがみんなの想いを連れて旅を続けていることを願ってやまない。

  • 「この国で生きていくことを決めた時から、僕たちはみんなを『しまう』ようになったんだ。みんなの思いをこの先のこの国に役立てるために。僕は、自分の一族に生まれついたことや、この生活を後悔してないよ」という光比古の言葉がこれまでの流れとは違っていたので違和感をもったが、峰子の最後の「彼らが、そして私たちが、これからこの国を作っていくことができるのか、それだけの価値のある国なのかどうかを彼に尋ねてみたいのです。」のセリフで納得がいく。

    本文冒頭の「いつの世も、新しいものは船の漕ぎだす海原に似ているように思います。」に応えた解説の新井素子の「漕ぎだしていった、清潔で前向き、自分の人生に恥じていない人々が、どこにたどり着いたか、それを思うと、とても切ない。」に共感する。

  • 光の帝国の1話目に出てきたしまう一家のことが気になっていたから、蒲公英〜でしっかり出てきてどういう能力がある人達かわかってすっきりした。
    聡子と峰子の関係にほっこりした。最期は切なかったけど、聡子は100%生き抜いたことは素晴らしい人生といえると思った。

  • 常野シリーズらしい、切なさのただよう長篇。
    戦争に突入していく時代、その設定に既に単純なハッピーエンドではないことを予感させる。
    これは、常野の春田家の物語であり、遠目の聡子の物語であるけれど、峰子の少女時代とのわかれを描いたものであり、少ないページ数で強烈な個性を放つ槙村に住む人々の話。異能が軸にありながらも、それがストーリーの主題ではなく、聡子と峰子を中心にさまざまな登場人物たちの気持ちが語られる。時には聡子の目線で読んだり、峰子の目線で読んだり、さまざまな立場で読み、その度に感情を揺さぶられる。

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