聖域 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 491
感想 : 44
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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087463156

作品紹介・あらすじ

異動先の編集部で、偶然目にした未発表の原稿『聖域』。なぜ途中で終わっているのか。なぜこんなに力のある作家が世に出ていないのか。過去を辿っていくと、この原稿に関わったものは、みな破滅の道へと進んでいる。口々に警告されるが、でも続きを読みたい、結末を知りたい。憑かれたように実藤は、失踪した作家、水名川泉を追い求め東北の地へ。そこで彼が触れたものは。長編サスペンスの傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 篠田エンターテイメントはやはり読み応えがある。面白い。しかしこれは、そもそも主人公である実藤に魅力が乏しく、また、彼が小説「聖域」にそこまで強く惹かれる理由に説得力が足りなかったように思う。そして、周囲の人々がことごとく水名川泉を忌避するのも大げさな謎かけっぽくて納得感が薄かった。
    何かに憑りつかれた男の人生の顛末を描くことこそが著者の本分で、あの世とかこの世とか実相とか色即是空とかは本来的なテーマではないのだと思うが、どちらかというともっとそっちへシフトした物語が読みたかったな、という気持ちにさせられた。

  • 以前この著者の本で「仮想儀礼」というのを読んだことがあるが、それも宗教がテーマのお話だった。この本も「宗教」や「信仰」にかかわてくる。かわったテーマでなかなか面白かった。

  • 今まであの作家と関わった人が不幸になる理由も分かった。ただただ、深いなぁ、そういうことかぁと思った。
    創作として読んだけど、実際に東北地方では有りうる話だったのかと思うと少し怖かった。
    文章がちょっと堅くて長い感じで終始読みづらかった。
    あとメインとなる実藤、『聖域』の続き読みたすぎてガッツキすぎてちょっと引いた。

  • カバーデザイン:多田和博
    写真:getty images

  • とある編集者が行方不明の小説家の行方を追う、サスペンスです。

    いろんな意味で死にたくなりました。
    いや、これじゃあ表現がまずいな。
    帰りたくなったというか、返りたくなったというか、還りたくなったというか・・・。

    失ったもの、敵わないもの、美しいもの、そんなものにすがってしまう。
    普段はそんなこと思ってもいないのに、いざ目の前に現れると、抗えない。
    嗚呼、人間って弱い生き物なんだなって、登場人物たちの姿を見て思いました。

    でもきっと、どんなに強い人でも、弱い部分があるんです。
    どんなに隠すのが上手でも、ふとした瞬間ですべてが崩れてしまうこともある。
    でも、それでいいんだ。
    崩れるなっていう方がたぶん無理だ。

    そこで初めて気付くことがある。
    そこで初めて見えたものがある。
    だからどうか、崩れる人を許してほしい。

  • エンターテイメントとしては、最高におもしろい。

  • 週刊誌から文芸誌に異動したての編集者・実藤が、ある時偶然手にした未発表原稿「聖域」。物語が佳境にさしかかったところで、終わってしまっているこの作品のラストを読みたい一心で、実藤は無名の作者・水名川泉を捜し出すため、僅かに残された痕跡を頼りに東北へと向かう。

    ◆94年4月刊行された小説であるにもかかわらず(執筆はそれよりずっと前だと予想されるけど)、「新興宗教」が物語のひとつの軸として働いている。日本人にとっての「信仰」の問題。
    ◆東北地方の描写に、いつか車窓から見た風景を思い出し、記憶と描写を重ね合わせるように読まされた。
    ◆二重の「聖域」。『聖域』という本書の中で、「聖域」を扱っている二重性の面白さ。作中の「聖域」も、普通に興味深い内容。退屈させない。
    ◆泉を捜索する過程の疾走感。加速していくミステリー。
    ◆創作の虚構に惑う作家としての泉。潮来としての泉。
    ◆編集者・実藤の「作品を世に出す」という使命感が、途中から揺らぎ、利己的な欲求のために泉に接触しようと試みる。その際の人間の醜悪さ。

    舞台として登場する青森県浅虫温泉周辺は個人的に思い入れがあるのだけど、きっと綿密に取材を重ねたのだろうなあというのが伝わってくる描写でした。

    一級のエンターテインメント小説でありながら、作者である篠田氏の小説家である己をも賭した挑戦、そのプロ根性に、ほとほと感服するばかりです。文句なしの5つ★。ぜひ読んでもらいたいものだと思いました。

  • 主人公は “水名川 泉” に辿り着けるんだろうか、と最後まで惹きつけられて読んだんですが、結着の仕方が・・・。

  • 大作だと思います。

    だけど私は宗教にももちろん宗教を題材にした
    ほんにもあまり興味が無く…
    最初はとても難しく感じました。

    ただ主人公が女性作家に小説の続きを書いてもらうために
    危なそうな団体に乗り込んだり
    東北の田舎町を探し回ったり…と言う下りは
    引き込まれました。

    最終的にはやっぱり私には理解できない
    分野にたどり着いた感じなので
    私的には★が二つですが、やはり重い大作だと思われます。

  • 偶然手に入れた「聖域」という未完の小説に魅せられた出版社の編集者が、作品を完成させるために、消息不明の作者を追うと...というサスペンス小説。
    主人公には、今ひとつ感情移入できなかったが、先を読ませない展開で、ストーリーを追うだけでもなかなか面白かった。

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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