広瀬正・小説全集・5 T型フォード殺人事件 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087463781

感想・レビュー・書評

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  • 半世紀前の殺人事件の真相が、今あきらかになる?!
    過去と現在が混ざり合う、ミステリー小説。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    46年前のT型フォードが状態良好のまま、とある医師宅で保管されていた。

    それを買い取った泉は、自宅でT型フォードの御披露目会を催す。
    その会で、所有車だった医師の孫が話し出したのは、46年前に起こった殺人事件だった。

    T型フォードの御披露目会はそうして、未だ真相不明の殺人事件について、考察する回へと変わっていくのだが…。

    (T型フォード殺人事件)
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    表題作の中編「T型フォード殺人事件」、短編「殺そうとした」、「立体交差」の3編を収録した1冊。
    どの話も、昭和時代の映画を見ているような、セピア色の話でした。

    「多分、こういうことだったの…かな??」という読後感だった既刊「ツィス」「エロス」「鏡の国のアリス」に比べ、「T型フォード殺人事件」は真相がはっきりしており、すっきりと読み終われる推理小説です。

    また詳しくは書けないのですが、この小説の主人公、つまり語り手である“わたし”について、途中「アレ?!」と混乱する地点がきます。
    「一体どういうこと…??」と、混乱して読み戻りましたが、すでに作者の術中にはまっていたことに気づき、「うわ~、やられたー!!!」となりました。

    短編「殺そうとした」はタイトルが秀逸。
    主人公たちはまさに「殺そうとした」状態だったのですが、まさかのドンデン返しに、これまた「えー…」と茫然となるお話です。

    短編「立体交差」は、既刊「マイナス・ゼロ」をすこし思い出す、タイムマシンものなのですが、「マイナス・ゼロ」が過去に行く話に対してこちらは未来に行くお話です。
    ただ、未来から戻ってきた主人公たちがとった行動の意味が最初わからず、ゆっくりその部分を読み直して「多分、こうなのかな…?」と、自信なさげな結末の意味予想をして読み終わりました。
    そして巻末の石川喬司さんの解説を読んで、やっと自分の考えた予想に、自信がもてた感じです。

    いくら未来を見てきたとしても、主人公が戻ってきたのはあくまでも「現在」です。
    その地点から未来を見てみると、やっぱり未来は「まだ決まっていない」状態なのですから、主人公のとった行動の意図も、未来に続く道の1つとしてはアリだなと思った、「立体交差」の結末でした。

  • 数年前、「マイナス・ゼロ」を最初に読んだときから、広瀬正は大好きな「SF作家」だと思っていた。その印象は「タイムマシンのつくり方」で非SFの短編を読んでも変わらなかったのに。全集5を読むと間違いに気がつく。「この人、何でもいけるんだ!」

    表題作「T型フォード殺人事件」は、タイトルからも想像できるように、ミステリーもの、謎明かしものだ。緻密な描写、どんどん進む展開に夢中で読み進めていくと……

    「え、何?!今どうなった?あれ、どっか読み飛ばした?」となる。ページを戻ってみてもさっぱりわからない。落ち着かない気持ちのまま、最後まで読み切ってみると……「ああ!やられた!こんなのアリ?!」

    読者、特にミステリーファンを食っているとしか思えない結末。それを支える文章力、構成力、いたずら心、ウィット。この作品をどう評価するかは、読み手によってわかれるのかもしれない。でも少なくとも私は、「広瀬先生、脱帽です!」。

  • 2022/12/14再読

  • ☆3.5

    途中すごい混乱してあれっ?あれっ??となったけど、それがなにゆえかわかると深い納得と、してやられた感に満たされる。
    その時代の風や生活が見える描写も良き。

    同時収録の『殺そうとした』が好みの一編で、すっきり斬れ味に満足した。

  • この飄々とした文体、くせになる。
    一気読みしないと登場人物がこんがらがる。

  •  広瀬正シリーズ最終巻。殺人事件と銘打った本作は本格的なミステリだ。T型フォードというからには自家用車が普及し始めた昔の物語で、現在の登場人物がその時代の殺人事件を回想してその真相に迫るというストーリー。過去のシーンでのノスタルジックな風物描写と人物造形は相変わらずうまい。それが現在の登場人物たちにつながって新たな事件を引き起こすという筋立ても気が利いている。しかも最後にはアッといわせる見事な大トリックが仕掛けられていて、ミステリとしても十分成功している。タイムマシンものなどSFだけでなく、こういうミステリのプロットやトリックも達者なものだ。これが遺作というのが返す返すも残念でならない。もっと読みたかったな。早逝が惜しまれる。

  • 良い。
    ユニークな推理小説。時間軸のストーリーは、作者の得意分野。意外な展開が楽しい。
    相変わらず古い車やカメラなどに詳しい。それがストーリーに活かされている。
    短編2編、秀作。

  • いわゆる本格ミステリ、というジャンルのものになるのだろう。

    なんだか、わざと七面倒臭くしているようにしか見えなかった。

  • T型フォードってのがよく分からないけど、面白かった。
    人の心って難しい。咄嗟に嘘付いちゃう気持ちは分かるような…。

  • あまりに完璧を求め過ぎて、私にとっては読みにくいものもある広瀬さんの作品ですが、このTフォード殺人事件は面白かったです。

    よくあるミステリーの王道、『昔の事件の謎解き』をしていたら、その事件が目の前で起こった、という設定も新鮮に感じました。

    最後の最後にサプライズもあったし、広瀬さんが描く人物像は完璧なようで人間くさくて好きです。

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