雷神の筒 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087464214

作品紹介・あらすじ

織田信長はなぜ覇者になれたのか。若き日の信長に鉄炮を指南し、最強の鉄炮衆を創り上げた男の存在抜きには語れない。橋元一巴。初めは民を守るために鉄炮の改良と応用に打ち込んだ。塩硝のルートを求めて種子島に飛び、好敵手・雑賀孫市と出会う。主君が覇道を邁進する一方、悩みを深めた。疎まれつつも仕え続けた一巴の生涯を通じ、信長の天下布武への道を鮮やかに描いた斬新な長篇戦国絵巻。

感想・レビュー・書評

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  • 織田信長の鉄砲衆の頭の橋本一巴を描いた歴史小説。信長は鉄砲を活用したことが躍進の理由とされるが、本書では一巴が鉄砲に注目したことが先である。楽市楽座や鉄甲船も一巴のアイデアとなっており、主人公補正が強い。しかし、それを採用し、現実化させる信長も天才である。しかも、信長は非情であり、一巴は報われない。皆が主人公を持ち上げるような主人公補正はない。

    織田信長は兵農分離を進めた。これを職業軍人政策と見ることは現代の公務員感覚のバイアスがある。信長の思想は「合戦のないときは、足軽どもに、荷を運ばせ、銭を稼がせる」ものであった(152頁)。信長の兵農分離は民間感覚にあふれたものであった。

    「商いというもの、なによりも、人の欲しがるものを長く売るのが肝要」との台詞がある(208頁)。商売の本質が示されている。売ったら売りっぱなしのマンションだまし売りは本当の意味の商売ではない。

    信長は仕えたくない主君であった。明智光秀が謀反を起こしたことも理解できる。信長に嫌われた家臣に対して「おまえが仕えるのではない。おまえの砲術が仕えるのだ」と語る台詞がある(427頁)。人間ではなく、スキルで仕える。ジョブ型の発想である。人脈第一のコミュニケーション至上主義の昭和の日本型組織よりも先進的である。

  • 信長に仕えた鉄砲名人?の橋本一巴の話。
    鉄砲伝来と普及、運用と、国内での製造開始や、煙硝の調達などなど、非常に興味深い歴史が背景。
    記録にチラリとだけ名前があらわれる人物を膨らませて、とても面白い人として描いているのがスゴイ。
    またこの作家さんの小説を読みたいと思えた。
    歴史に名前はあるけれど、知らなかった人に出会いたいと思った。中盤以降少しだれたけれど、面白かった。

  • てつほう、それは戦国の力

  • 鉄砲名人橋下一巴。なるほど題材は面白い。けど『火天の城』以降の山本兼一は何かいまひとつだなぁ。面白いのだが何かいまひとつ。

    • だまし売りNoさん
      権力の否定、滅びの美学のようなものが色濃く出ているからでしょうかね。
      権力の否定、滅びの美学のようなものが色濃く出ているからでしょうかね。
      2022/10/15
  • 時は戦国。天下統一の覇者となる織田信長は諸国の戦闘において新兵器である銃を戦術的に取り入れて勝利を重ねていったが、その銃の調達や開発、果ては銃兵隊の調練に至るまでを行った家臣がいた。
    それは織田信長の幼少期から共に歩んだ橋本一把という男。その生涯を描く。

    史実とフィクションが織り交ざったものではあるため、この人物像はフィクションなのかもしれないが、戦術家・狙撃手として非常に優秀な人材であるが心根の優しい橋本の人物には好感を抱かずにはいられない。
    小説ではあるが、とても大切なことを教わった気がする。

    ・世の中を動かすのは金の流れ。世の中のどこに何を回せば、渦が作られ金が動き、果ては時代が動くことを読む。
    ・自分の命を差し出さず、離れたところから敵を殺すことができる。だから戦場で笑っていられるのだ。
    ・戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり。

    久々に会う、良い本でした。

  • 織田信長はなぜ覇者になれたのか。若き日の信長に鉄炮を指南し、最強の鉄炮衆を創り上げた男の存在抜きには語れない。橋元一巴。初めは民を守るために鉄炮の改良と応用に打ち込んだ。塩硝のルートを求めて種子島に飛び、好敵手・雑賀孫市と出会う。主君が覇道を邁進する一方、悩みを深めた。疎まれつつも仕え続けた一巴の生涯を通じ、信長の天下布武への道を鮮やかに描いた斬新な長篇戦国絵巻。

  • 織田信長に鉄砲を指南した橋本一巴について書いた本です。

    橋本一巴は織田軍の鉄砲頭であったそうですが、あまり歴史には登場しておらず、この本では織田信長の戦歴にあわせて、橋本一巴がどのように活躍したのかを創作されています。

    どうも橋本一巴はずけずけと物を言う人間のようで、たびたび信長に疎まれることがあっても、鉄砲の技術だけでなく、戦術の立案にも秀でていたようで、たびたび登用されているのところは面白いです。

    ↓ ブログも書いています。
    http://fuji2000.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/post-d684.html

  • 信長・テクノクラート三部作の一つ。

    織田家鉄炮頭、橋本一巴の鉄炮狂いの生き様を描く。

    前二作とは打って変わって、鉄炮一筋に生きながらも鉄炮と自身の存在理由に悩む今回の主人公は、また違った魅力があって面白い。

    一巴は鉄炮の存在意義を、天下万民の安寧のために使うことに求めつつも、攻められる側からすれば信長側になんの義があるのか、所詮合戦は己が欲のためにするものではないのかと迷う様は、人間臭くて共感を覚える。

    ラストの孫市との決闘シーンも、天下万民のためでもなく、信長のためでもなく、ましてや家族のためでもなく、鉄炮のために生き鉄炮のために散る、まさに職人としての生き方だろう。

    最後に解説で作者のことを触れている。

    「50代前半はまだ若い、これから歴史の中からどのような物語を紡ぎだしてくれるのか、大いに楽しみだ。」

    この言葉が虚しく響く。

  • (欲しい!/文庫)

  • 『火天の城』に続き、信長旗下の人シリーズ。
    中から、そしてより「庶民」な感覚に近い場所にいる人物の視点だからこそ見えてくる、信長の一面が面白い。
    「そう見るんだな~」と、火天の城の信長と似ているけど、やっぱり違う。同じ人を同じような場所から見ていても、見えてくるものはやっぱり違うんだな、と。

    個人的に佐々成政がちょくちょく出てくるのが嬉しい!

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著者プロフィール

歴史・時代小説作家。1956年京都生まれ。同志社大学文学部を卒業後、出版社勤務を経てフリーのライターとなる。88年「信長を撃つ」で作家デビュー。99年「弾正の鷹」で小説NON短編時代小説賞、2001年『火天の城』で松本清張賞、09年『利休にたずねよ』で第140回直木賞を受賞。

「2022年 『夫婦商売 時代小説アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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