エンド・ゲーム 常野物語 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087464320

感想・レビュー・書評

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  • 常野物語の第3作。

    常野物語第1作の「オセロゲーム」の拝島親子その後のストーリー。

    この拝島家、失踪していた拝島暎子の夫の肇も含めて「あれ」と呼ばれるものと戦い続ける宿命を負わされた一家。

    ある時、暎子が倒れて、娘の時子が洗濯屋の火浦に会ってたところから物語が始まる。

    常野一族でも最強の力を持っていたはずの拝島肇が失踪した理由、拝島暎子の「裏返す」能力を獲得したいきさつ、肇と暎子が他の一族と隔絶していた理由など、よく分かり驚きでした。特に肇と暎子が出会った所は、えぇ?そんなんアリ?って思いました。

    逆に「裏返し」合うのがどんなふうになっていたのか、「あれ」とは常野一族にとってどんな存在なのか、「裏返す」と「洗う」の違いはあるのか、最後のシーンは「洗われた」ままの状態なのか「洗われた」ところから思い出せた状態なのかはよく分かりませんでした。

    時子と火浦との間に子どもが生まれたら、また同じことが起こるのではないのか?っていう疑問を持ちつつエンディング。このエンディング、何となくさみしい感じがありながらも、肇の身勝手さを思うとこれで良かったんだな、と思いました。

    常野物語は、勝手に3部作と思っていたのですが、あとがきで、「常野物語」まだ続きます。とあるので、続きをお願いします。刊行されてからだいぶ時間が経っていますが・・・。「エンド・ゲーム」のエンディングのシーンも伏線になり得るなぁ、と思いました。

    この「エンド・ゲーム」は物語全体が緊迫した雰囲気がずっとあって、ドキドキしながら読みました。ので、ずっと緊張しながら読みましたので若干疲れました(笑)。前2作とは違う雰囲気で、最初はあれれ?と思ったんですが、とても楽しく読めました。

  • 光の帝国、蒲公英草子の印象とはだいぶ異なる印象だった。
    特殊な能力を持つと言うことは、少し考えてみれば、当人たちにとっては良いことばかりではなく、負の部分を併せ持つ、ということではあるのかもしれないが、
    光の帝国や蒲公英草子が、いわば光の部分を描いた、温かい物語だとすれば、今作は影の部分を描いた物語、と言う印象。
    前2作の印象が良く、普段読まない、ファンタジー的なシリーズを手に取ってみたところがあるので、少し期待とは違う、と言うことで、評価は厳しくつけてしまった。2.5~3.0の間くらい、と言う感じ。

    最後まで読んで、拝島家に起こったことが、おおよそ理解できたような気がするが、途中の『洗濯』されて幸せな日常になったかと思いきや、最後に恐怖が戻る、みたいな描写のところなど、少し混乱するところがあった。
    『あれ』が、時子や高橋の言葉から想像するに、人間の精神の歪み・妄想で、それによって他人を巻き込もうとする力だとするならば、『裏返す』とどうなるのか、と言うところもいまいち掴みきれず。

    最後まで読むと、『洗濯』に意味があったのだろうか、、と言う印象も受け、正直、物語全体としてのメッセージが良く分からなかった。

  • 光の帝国でオセロゲームが結構好きだったから、なーんかしょんぼり。あまり頭が良くないからか、え?ん?ってなって「結局のところ」が良くわからなかった。洗って、叩いて、洗濯する。の文言は好き。

  • 裏と表の分かり易いオセロゲームから、内側と外側をひっくり返しひっくり返しを繰り返して内も外もない宙空に放り出されてしまったような視点に。
    敵と味方ではなく見え方の違う同族による返し合いでは?と視ると、皮肉というか薄ら寒い。
    誰から仕掛けたゲームなのか、どこから仕掛けたことになったゲームなのかが判らなくなって、勝ち敗けに意味が無くなった時、そのゲームの意義はそもそも何だったのか?
    終わらせて良かったのか定かではないけれど、終わって始まってしまった、そんな“不安の次元が一つ上がった”達成感を感じる結末。

  • 何が本当で、何が作られたものなのか。

    登場人物だけは同じで、繰り返し語られる、微妙に違う世界。違う結末。彼女の作品には、ミステリーのような文章の運びと「藪の中」形式のストーリーが繰り返しでてくる。

    「光の帝国」の続編?スピンアウト作品?拝島母娘の孤独な戦いに終止符が打たれる。でも、本当に終止符なのか。

    ちょうど読み終わったポール・オースターの「リヴァイアサン」もそう。同じ人物。語られる違う物語。

    重複する物語に作家が、私が、魅かれるのは、私達の世界もそうだからなのか。重なり合う物語から見えるもの。

    何が本当で、何が作られたものなのか。

  • 常野物語第3段・・・前作までの作品が良かったので手にとってみたものの、後半は無理やり感が否めず消化不良だった。種明かしもあり納得できたところもあるが、正直評価は分かれるところか?

    そのため評価は星3つ!!
    どうやら続きもあるようなので次回作に期待。

  • 前巻までとあまりにも雰囲気の違うものだったけれど、かなり引き込まれた。
    おもしろかった(^^)

  • 常野物語「光の帝国」に載っている「オセロ・ゲーム」の長編。

    『あれ』と読んでいる謎の存在と闘い続けてきた拝島時子。『裏返さ』なければ『裏返され』てしまう。『遠目』『つむじ足』など特殊な能力を持つ常野一族の中でも最強といわれた父は、遠い昔に失踪した。そして今、母が倒れた。ひとり残された時子は、絶縁していた一族と接触する。(あらすじより)

    以下感想です、若干のネタバレ含みます。気をつけてください><




    恩田陸さんのお話、この『常野物語』のシリーズに関しては、言葉の遣い方がうまいというか、捕らえ方がうまいというか…。私達が普段何気なくつかっている言葉が、全く違う意味をもって成立しているというのは、とても面白いと思います。だから引き込まれてしまうんでしょうね。

    今回の「エンド・ゲーム」は新しく、常野一族とは違う、『洗濯屋』が出てきます。この人達の存在は新鮮でしたね。場面転換が多くて、本の中の世界で空飛んでるみたいな気分でした。

    時子の父親も出てきますが、私が想像してたのとは違って、なんて言うんでしょうか。人間の黒い部分がみえてるような人でした。あくまで私の解釈ですけど…。短編の「オセロ・ゲーム」を読んだ時点では、一族最強と謳われた夫と書いてあったので、もっとヒーロー的なものを想像してたんです。でも実際の時子の父はそんなことなくて、結局は自分のことしか考えていないというか。

    私的に『洗濯屋』の彼がなかなか良い感じの役回りでよかったと思います。
    最後の方とか、おぉ、と思うところもいっぱいあって面白かったです。

  • 何度もひっくり返る展開。どちらが正しいか。。。結局どっちが正しいかなんて無意味なのだな。しかし、もう少し言葉を紡いで欲しかった。次があるから、多くは語らないのかも。でも次に出てくるか分からんしね。

  • 私の頭が悪いせいかどういうこと!?の連続。
    精神世界?の描写が不気味で引き込まれた。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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