終末のフール (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087464436

作品紹介・あらすじ

八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。そう予告されてから五年が過ぎた頃。当初は絶望からパニックに陥った世界も、いまや平穏な小康状態にある。仙台北部の団地「ヒルズタウン」の住民たちも同様だった。彼らは余命三年という時間の中で人生を見つめ直す。家族の再生、新しい生命への希望、過去の恩讐。はたして終末を前にした人間にとっての幸福とは?今日を生きることの意味を知る物語。

感想・レビュー・書評

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  • 本作『終末のフール』の感想になります。

    宮野優さんの『トゥモロー・ネヴァー・ノウズ』と似た印象を受けました。あちらはタイムループですけど。

    伊坂幸太郎さん読了本は『グラスホッパー』と本作の2作だけなので、まだまだ伊坂幸太郎さんらしさを理解できていない私ですが、終末を宣告された世界の小さな町でのエピソードは、どれも柔らかな温かみのある話でしたね。

    特に気に入った台詞は『鋼鉄のウール』からの引用で、
    「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」
    「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」p220
    でしたね。

    絶妙な表現だと感じました。
    私は日常的に死を意識した生き方をしている訳でもないし、生き方を変えた未来に確信はないですからね。
    分からないからこそ、今を大事に生きるんだというメッセージを感じました。

    8編の連作短編集ですが、終末を控える人達の様々な生き方は、どこかに共感できる所があり、のほほんとした気持ちで読み終えました。これが伊坂幸太郎さんらしさなのかもですね。

  • 8年後に小惑星が地球に衝突することが発表されて、5年経過した仙台のある地域に生活する人々の連作短編。
    発表当初は絶望する人々が自殺したり、自暴自棄で掠奪、強盗、殺人が一斉に起きて、5年後の今は落ち着きが出始めた頃。登場人物達の周辺も親や家族が自殺したり、殺されたりと悲惨な状況。重く暗い話しが続くが、どの短編も後半に明るい兆しが出てきて救われる。
    あと3年しか無いと見るのか、あと3年もあると考えるかで随分違ってきそう。自殺を思い止まる人、恨みによる殺人を止める人、子供を産むと決断する夫婦など。
    最後に衝突は間違いだったというオチかと思ったが違ったようだった。残された3年を生きる人々が潔く思えた。

  • 3年後に地球が滅びる世界の
    同じ地域に住む人達の短編集。

    まず設定が面白い!
    その中でありそうと思わせるところはさすが。

    書いた人が伊坂幸太郎であることから、
    最終章への期待が勝手に高くなって
    しまいましたが、
    もっと読みたいと思いました。

  • R1.8.9 読了。

     8年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。そう予告されてから5年が過ぎた頃の仙台北部の団地「ヒルズタウン」の住民たちが余命3年の時間の中でそれぞれの人生を見つめ直す物語。目次の短編集のタイトルを見た時に思ったことは、「ハライチの漫才ネタのようだ。」だった。
    読み始めてみると、こんな状況に自分が置かれたらどう生きるだろう?と頭の片隅で考えていた。この小説の登場人物たちのように、最後日まで大切な誰かと一緒にいられたら幸せかもね。「鋼鉄のウール」が特に良かった。
     やっぱり、伊坂幸太郎さんの小説は良いですね。

    ・「こんなご時世、大事なのは常識とか法律じゃなくて、いかに愉快に生きるかだ。」
    ・「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」
    ・「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」
    ・「やるべきことをやるしかない。」
    ・「何かに夢中になる人をオタクって言うなら、それは敬称だ。」
    ・「一生懸命に考えて、決めたなら、それはそれで正しいんだと思うんだよねえ、わたしは。外から見ている人はいろんなこと言えるけどね、考えて決めた人が1番、偉いんだから。」
    ・「死に物狂いで生きるのは、権利じゃなくて、義務だ。」

  • あと何年かで、地球は滅亡する!
    8年後に滅亡発言から、5年経過し、パニックとか、暴動とかが、落ち着き少し平和?になった仙台近辺のとある地域の人達を描く8編。
    今、緊急事態宣言とか出まくって、少しダレた感じの雰囲気が似てなくもないか…別に滅亡レベルではないけど。

    あと数年で地球終了!ってなったら、どうするんやろ?これは、年齢にもよるとこ多い気もする。一段落してるような人と、これからの人。
    そうアッサリと終了って言わんと何か方法ないん?って思うけど、何か作品の趣旨に合わんな。
    実際になってみんと分からんけど、余命宣告された感じなんかな?しかも全員で!
    自分なら、残り余生を後悔なく生きるってのも無理やし、楽しい事だけしてても飽きそう。みんな仕事もしてなさそうやし。
    結局、日々、何か小さな目標でも持って、小さな幸せを噛み締めて、最後まで生きる…
    う〜ん…難しい…
    どうしたらええの〜ʅ(◞‿◟)ʃ

  • ここまで心を揺さぶられる小説を読んだのは久しぶりです。
    本当に心が洗われるというか、人生を前向きに考えられるようになる小説でした。

    この小説のあらすじですが、8年後に小惑星の衝突により世界が破滅するという発表があってから5年後、残り3年しかないという状況で、仙台にある『ヒルズタウン』とよばれる町で生活している人々の姿を描いた8篇の短編集です。
    8つの物語のなかでそれぞれの主人公達はそれぞれの想いを胸に日々を生きています。
    8つの物語、それぞれ心を打つものがあります。

    ここに描かれている人達は、命について「達観」しているというか、「悟りに至っている」という言葉が正しいのか分かりませんが、そういった境地にたどり着いている人が多いのは必然なのでしょう。
    なぜなら、この小説では直接的な描写はありませんが、ここに至る5年間の間に、暴動や大規模な騒乱、略奪、強盗に殺人、そして自殺といったあらゆる不幸な出来事がおき、世界の破滅を迎えるに至って、それに耐えられず精神に異常を来した人達やそれ巻き込まれた人など多くの人々が命を失っています。
    つまり、そういった異常な事態を生き残った人達がここに描かれている人達ですので、ある意味においては、もう既に選ばれた人々なのです。

    8つの物語のなかで、僕が一番刺さった物語は、4番目の物語『冬眠のガール』です。
    現在23歳の彼女は、4年前の19歳の時に突然両親を失います。殺されたのでもなく、事故や病気で失ったのでもなく、二人そろって自殺してしまったのです。一人娘である彼女を残して。彼女はそれ以来、3つの目標を立て、それを紙に書いて壁に張り、4年間何とか一人で、その目標を実現するために生き残ります。その3つの目標とは、
      〇『お父さんとお母さんを恨まない』
      〇『お父さんの本を全部読む』
      〇『死なない』
    読書家だった彼女の父は、自分の書斎に数千冊の本を所蔵しており、彼女はその本を4年間かけて全部読み切ります。この『冬眠のガール』は、彼女が最後の本を読み終わったところから始まります。
    2番目の目標を達成してしまった彼女は、新たな目標を探すために、多少の落ち着きを取り戻した町に繰り出します。そこで彼女は新しい目標を見つけます。その新しい目標とは・・・。

    彼女は、あくまでも素直で前向きです。そして3つの目標を忠実に守る。余命3年であるにもかかわらず新しい目標に向かって努力を惜しまない。そのひたむきな彼女の姿に心を打たれます。

    この小説がこれだけ感動を呼ぶのは、『死』を目の前にした人々の生活に真っ正面から取り組んでいるからでしょう。

    僕たちは、誰でも死にます。それはいつか分からない。誰もがもっと先のことだろうと何の根拠もなく思っています。
    『死』を意識しながら生きている人は少ないでしょう。しかし、そこに明確な『死』の期限が設定されれば、誰でもその圧倒的な威圧感の前で立ちすくみます。
    誰の前にも『死の壁』は立ちはだかっているはずなのに、それが透明で見えないからこそ、誰もが全力でそこに向かって走っていくことができるのです。
    でも、その壁に色がついてしまったら?
    あなたはそこに向かって全力で走って行くことができますか?

    この小説に描かれている人達は、全力とは言わないまでも、その『壁』に向かって確実に一歩一歩に前に向かって進んでいく人達です。
    そこには、諦めや達観や希望や絶望や、ありとあらゆる感情が渦巻いています。でも、そこにあるのは、決して『絶望』だけではないのです。
    「子供を産もうとする夫婦」「恋人を探そうとする若者」「誰よりも強くなろうとする少年」「最後の最後まで小惑星を観測しようとする天文学者」など、この小説に登場する彼らは、最後の最後まで諦めません。いや、生き残ろうとするのではなく、最後のその日までしっかりと生きようと心に決めているのです。

    この小説は、人生の素晴らしさ、ありがたさ、そして、この世界をいとおしく感じることをもう一度改めて思い起こさせてくれる、素晴らしい物語です。
    少年少女から老人まで、一人一人考えることは違うかもしれません。
    ただ、誰にとってもかけがえのない自分の一生を見つめ直すきっかけを与えてくれる本であることは間違いないと思います。

  • 久しぶりの伊坂幸太郎、9か月ぶり。伊坂節がたまらない。「8年後に地球に小惑星が衝突する」という設定。その発表以来日本では暴動、略奪、殺人、強姦、自殺が横行する。必ず死ぬことに直面すると、①そのストレスに耐えられなくなる人、②何もなかったかのように生きる人に分けられる。①が上記のような犯罪を犯す。人間は弱い生き物なのだなと感じる。書中に「じたばたして、足掻いて、もがいて。生き残るってそういうのだよ。きっとさ」という言葉(BY 華子)があるが、自分は「死ぬまで8年もある」と思いたい。そう思う人生を送りたい。

  • 読み終わってから、すでに3か月以上経ってしまった。

    「今日を生きることの意味」を否が応でも考えさせられる小説で、なかなか思いが溢れてまとまらないわけですよ…と言い訳しつつ…

    Today is the first day of the rest of your life.
    今日という日は残された日々の最初の一日。

    と言う、チャールズ・ディードリッヒ氏の名言が冒頭に引用されている。この言葉だけで深い。
    我々には残された日々がどれくらいあるのだろう?

    8年後に小惑星が衝突し、地球が滅亡すると予告されてから5年経過したヒルズタウンの住民を描く連作短編集。

    凪良ゆうさんの「滅びの前のシャングリラ」は1ヶ月後の滅亡。こちらは8年後。設定は似ているが、こちらの登場人物たちはパニックを超えて人生を見つめ直している段階。達観しているところが違う。


    さて、
    「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」
    と言う問いに対し、あなたならどう答えますか?

    僕は…正直、永遠に生きるつもりの生き方をしているなぁ、と思う。人はいつか死ぬのに死ぬことを意識した生き方ってしていない。
    それが悪いことと言うつもりはないけれど、永遠に生きるつもりで後回しにしていることとかある気がする。
    死を意識してこそ大事に生きられるものなんだろうな、と言うのは最近朧げながら見えてきた結論。どうやって死を意識するのかって言うのは難しいんだけど。

    じゃあ、
    「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」という問いにはどう答えますか?

    これも、難しい問い。
    人は今まで生きてきたようにしか死ねない、と最近読んだ「エンド・オブ・ライフ」に書いてあった気がする。
    だから根本的には「生き方は変わらない」のだろう。

    でも、間違いなくジタバタするんだろうな。

    この短編集は、そんなジタバタも包み込んで、

    「生きてられる限り、みっともなくてもいいから生き続けるのが、我が家の方針だ」
    「生きる道がある限り、生きろ」

    と言ってもくれる。

    考えてみれば、我々はみな、必死に足掻いて、もがいて、絶滅の危機を何度も乗り越えて、生き残ってきた者の子孫だ。

    生きるってジタバタすることなんだ、と思う。

    • さてさてさん
      たけさん、「終末のフール」、早速ありがとうございました!なんだか急かせてしまってすみません m(_ _)m
      そうですかあ。八年後なんですね...
      たけさん、「終末のフール」、早速ありがとうございました!なんだか急かせてしまってすみません m(_ _)m
      そうですかあ。八年後なんですね。凪良さんの一ヶ月後とは随分と開きがありますね。どちらがいいんだろうって、どちらも嫌ですが、実生活において、例えばある病気で余命一ヶ月と言われるのと、余命八年だとその先に描かれるものは全く違ってくるようにおもいます。これは、読んでみたいなあ!と強く思いました。
      読んでみようか、どうしようかで、当面ジタバタすることにします(笑)
      いずれにしましても、どうもありがとうございました!
      2021/03/15
    • たけさん
      さてさてさん。

      そうなんですよ。
      1か月と8年、人生との向き合い方は変わってきますよね。
      レビューに書き忘れたのですが、読む順番は「滅びの...
      さてさてさん。

      そうなんですよ。
      1か月と8年、人生との向き合い方は変わってきますよね。
      レビューに書き忘れたのですが、読む順番は「滅びの前のシャングリラ」→「終末のフール」がおすすめなんだと思います。深く理解できる気がします。

      さて、さてさてさんは自らの制約の前でジタバタするわけですね(笑)
      健闘を祈ります(笑)
      2021/03/15
    • さてさてさん
      たけさん、ありがとうございます。
      私の場合、読む順番的には大丈夫という感じですね。良い情報をありがとうございます。
      あとは、自分自身との...
      たけさん、ありがとうございます。
      私の場合、読む順番的には大丈夫という感じですね。良い情報をありがとうございます。
      あとは、自分自身との戦いでジタバタしたいと思います。なんだか、シュールな気もしますが(笑)
      どうもありがとうございました!
      2021/03/16
  • 私の中で、人生の中で何度も繰り返して読む本の中の一冊です。8つのオムニバスによる独立した物語ながら、物語の重なりがあり、読書の楽しくなる伊坂ワールド全開です。

    地球に惑星が衝突するという壮大過ぎる設定がちょっと、、、と思いながらも、死を強烈に意識することで日常の生が輝いていきます。地球をどうするとかのテーマでなく、地球滅亡を目の前にしても日常を精一杯いきている人々の明るさが大好きです。

    (個人的に好きな話)
    ◾️太陽のシール
    障害のある子どもをもつ親の生き方がたまらないです。隕石の接近で親の不安が消える。親になってから読むと涙が止まりません。
    ◾️鋼鉄のウール
    実直に、愚直に生きるキックボクサーのお話。地球が滅ぼうが、できることはローキックと左フックだけの生き方。痺れます。
    ◾️深海のポール
    生きられる限り、みっともなくても生き続ける人々の姿。日常を精一杯生きる姿に感動です。

    生きることが力強くなる一冊です。

  • 久々の伊坂幸太郎作品。
    伊坂さんのこういうあったら嫌だなぁみたいな設定の本好きだなぁ。
    人の心の機微をよく捉えていてとても面白かった。
    もしも私だったらどうするんだろう…

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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