聞き屋与平 江戸夜咄草 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087464566

感想・レビュー・書評

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  • Lampのマスター、岩さんからオススメされた短編連作集です。最初の「聞き屋 与平」を読み終わったところですが、とても面白く一気に江戸・両国界隈に引きずり込まれました。最後まで読み終わったら、コメントを足すことにします。
    (2020/10/04)

    読み終わりました。なんて素敵な物語だろう!ネタバレはしませんが、このお話がシリーズものでないのが残念です。与平さんの聞き屋に僕もお話を聞いてもらいたい気がしました。
    (2020/10/19)

  • 黙って客の話を聞く。
    ただ聞くだけで助言は一切しない。
    日頃他人には言えず心にためているあれやこれやを、聞いてもらうことで頑なな心をほぐしてくれる。

    江戸の繁華街・両国広小路で「聞き屋」をしている与平の連作短編。
    時代が違えど人の悩みは相も変わらず尽きることはない。
    仕事や旦那、姑、浮気、先行きについての愚痴や不安を、あらゆる世代の男女が与平を前に語る。
    この職業は現代にも通用するはず。
    自分の話を黙って聞いて、時々合いの手を入れつつ頷いてくれるだけで嫌なことも吹き飛びそう。
    これもひとえに、自分の考えを押し付けることなく、適度な距離感を保って客と接する与平の聞き上手な人柄によるもの。
    私の周りにも与平みたいな聞き上手いないかな。
    読み終えた後、人の優しさ温かさがゆっくり染み込んでくる物語だった。
    解説が木内昇さんとは、これまた嬉しさ倍増の一冊。

  • 三人の息子はそれぞれ商売も順調で、家族にも孫にも恵まれている与平が主人公。
    そんな与平が、本人曰く「毒にも薬にもならない」、人の話をただ聞くだけという聞き屋なるものを始めた。
    終盤になって、そうせざるを得ない与平の過去が明らかになるというミステリー性も加味された心温まる時代小説。
    江戸情緒たっぷりなこのような小説も、新作はもう望めない。合掌。

  •  話し上手はよく聞きますが、聞き上手はあまり聞きません。そして、人間、ある年齢に達すると「聞く人」と「聞かない人」に分かれると。岸田総理ではありませんがw、聞くということは大事ですね。宇江佐真理「聞き屋与平」、2009.7発行。聞き屋与平、どくだみ、雑踏、開運大勝利丸、とんとんとん、夜半の霜 の連作6話。読み応えがありました。この世には毒にも薬にもならないことが時には必要。はい、最近、無駄話、長電話の効用、なんとなくw。生きていくためには苦労がつきもの。不思議なことに誰でも自分ほど苦労した者はいないと思いたがる。はい、そんな傾向、確かに(^-^)

  • 大好きな宇江佐真理さんの作品。

    生薬の問屋を営む与平は、息子たちに身上を譲り隠居となった。いつまでも口を出していては一人前にならない。

    湯屋で、身の上話を耳にするたび、こうして聞いてくれる人がいる人はいいが、誰もいない人はどうしているのだろう?
    「聞き屋」を始めようと店の裏口に机を出して商売が終わった時間から始めることにした。


    与平はこの聞き屋で知った貧しい娘を救ってやろうとしたり、また、ただ聞くことで心を休ませる場所にした。

    与平の父親は、生薬や問屋の番頭だった。
    その店の一人息子はどうしようもない男で、店を潰しそうな浪費家だった。

    ある時火事に巻き込まれ死んでしまった。
    与平は他の薬屋で手代をしていたが、店の後始末をして看板だけもらった父親の手伝いをして店を大きくした。
    その火事のことで地元の岡っ引きにしつこく見殺しにしたのではないか?と言い寄られている。
    そんな岡っ引きも死に、、、。


    この作家さんの物語は眼に見えるような江戸情緒と、しっとりと貫かれた登場人物の心模様の緻密さリアルさが身上。
    まるでそこに自分が立っていたのではないか?と思えるほどの作風。

    2度目の読書だが、今回も大満足だった。

  • 温かい気持ちになりました。
    シリーズになるのかと思いきや最後はまさかの展開でした。

  • 夜が更けるとともに、ある商家の通用口に、男がひっそりと座る。「お話、聞きます」。与平は人の話を聞く、聞き屋。姑の愚痴をこぼす嫁、主人への不満を募らせる奉公人。過去に犯した過ちを告白する者……。みな、そこで重荷をそっと下ろして家路につく。聞き料はお客の気持ち次第。温かい家族に囲まれ、商売も順調。儲けのためでも酔狂でもない。与平はなぜ話を聞くのか。心温まる連作時代小説。
    (2006年)
    — 目次 —
    聞き屋 与平
    どくだみ
    雑踏
    開運大勝利丸
    とんとんとん
    夜半の霜
    解説 木内昇

  • 悩み事と聴くだけで、解決策などは授けない与平のお話。
    江戸の巷には割り切れないことで悩む人が沢山。

  • 市井の人々が胸に抱える辛さ、哀しみ、痛み、怒り等々を隠居の身となった与平が受け止めます。いつの世も人は気づかぬうちに心の底に幾重もの思いが積み重ねてしまうなあ。まるで映像を見ているように宇江佐さんの世界に浸ることが出来ました。「家督を譲る」「泥水を啜る女の気持ち」「業を煮やす」など、普段の生活からは縁遠くなってしまった日本語に触れることができ、言葉の引き出しは多い方が豊かだなとも感じました。宮部さんの「三島屋」シリーズにも似ていて、好きなジャンルでした。

  • 宇江佐真理氏の本は、ホンワカの江戸時代の下町人情物語も多い中、この本は、連作短編のなのに、先代からの火事の事故からの発端が、底辺に流れている。

    薬種屋『仁寿堂』の十代目の主 与平が、隠居して、聞き屋という仕事(?)をし始める。
    人の話を聞くだけで、占うわけでもなく、口をはさむこともないのだが、人は皆、心の奥にわだかまっている愚痴や不満がある。

    奇妙な商売で、見料は、話す人の気持ち次第で、お布施のような金額、無しでも構わないと。

    しかし、与平の身体が、弱って来て、最後に、話し手が、妻のおせきが、口にしたのは、まさに、与平が今まで、墓場まで、もっていこうとしていた事実であった。
    おせきも、今まで、誰にも言わずに、心に留めていたたのであった。

    与平の死後、継ぎは、おせきが、聞き屋を始めるのであった。

    一つのドラマのような話であり、理不尽なことが、多かった時に、自分だったら、どのように対処できるのだろうか?と、問いかける本であった。

  • 面白い。江戸の人情や生活がよく表現されている。一作で終わるには惜しい作品。

  • nizaco.blog91.fc2.com/blog-entry-664.html

  • 夜が更けるとともに、ある商家の通用口に
    男がひっそりと座る。
    儲けのためでも酔狂でもなく、
    ただ話を聞く与平。
    与平はなぜ話を聞くのか。
    心温まる時代小説。

  • 与平のすごさは、「聞く」ところ。
    聞き屋なのだから当たり前のことなのだろうけれど、突っ込まずに話を「聞く」のって、案外難しい。
    人の話を聞く機会は多いけれど、
    「ここでも相槌うった方がいいのかな」
    「何かアドバイスとか求められているのかな」
    「ちゃんと話聞いてるってこと伝わってるかな」
    と頷きながら悩むし、時には
    「これいつまで聞かないといけないのかな…そろそろ飽きたぞ…」
    なんて思ってしまうこともある。
    与平自身、その難しさは自覚していて、それでも話を「聞く」。
    それって、多分人に色んな影響を与える言葉を発する人より、ずっとすごいことなのだと、私は思っている。

  • 人の話をただ聞く「聞き屋」
    お代は話を聞いてもらった者の心次第。
    その「聞き屋」をするのは薬種屋の隠居、与平。
    与平に話を聞いてもらうのは、父親が博打狂いで困っている少女、駆け落ちをした過去をもつ夜鷹など様々で、その話の内容も愚痴や悪口、懺悔など様々。
    『「聞き屋」。いつしか奇妙な男の商売は両国広小路の陰の名物ともなっていた。』

    何故、与平が「聞き屋」などを始めたのか、それは最後の最後に明らかになります。
    人の吐露する話、秘密を聞いていた彼にも実は大きな秘密があったのです。

    それにしても、ただ人の話を聞くって簡単なようで難しい。
    相槌ひとつにしても人の話の腰を折ることもあるし、どんな退屈な話でも真剣に聞かなきゃいけない。
    そういう事ができるのは、与平自身、人には言えない秘密を抱えていたからなのかも知れない。

    こういう「聞き屋」が今の時代にもあればいいのに・・・。
    似たようなもので心理カウンセラーがいるけれど・・・。
    料金も時間もきっちり決まっていて訓練された聞き方をされるより、聞いて欲しい時ふらっと、ふと見かけた「聞き屋」に話を聞いてもらえたら敷居も低くて心を開けるような気がする。
    それにこの「聞き屋」ただ話を聞くだけと言いながら、その相談相手に何となく関わっていて血が通っている。
    そういうのがあったかも知れないと思える時代がいいな・・・と思いました。

  • 隠居後に聞き屋を始めた与平

    様々な人の話を聞き、
    時には客の人生を左右することもしばしば

    息子夫婦の間のゴタゴタや
    土地の岡っ引き鯰の長兵衛からは、先々代の死の真相を問い詰められる日々

    聞き屋は与平にとって何だったのか…

  •  前作を散々くさしておきながら性懲りもなくまた読んでいる。それほど宇江佐真理に惚れ込んでいるわけではなく、単に2冊買ってあったというだけの話ではあるが。
     本書、とりあえずは水準作でほっとした。これがダメだったらもう二度とこの著者は手に取らないところだった(除く「髪結い伊三次」)。聞き屋なる商売というか役割が成り立つものかどうかわからないし、設定としてちょっと無理がある気はするけれど、主人公与平とその家族を含む周囲の人々、その温かい交歓が心地よい。鯰の長兵衛、おうの、おまさとちょい悪役も配されてはいるものの、底が浅く罪がない。聞き屋の客の話も他愛ないし、悪くいえば微温湯的で緊張感には乏しいけれど、一応全編を貫く謎というほどではないものの過去の秘密があって、それが最後に意外な明かされ方をする。ただ、それがこの作品の主題ということではなく、ひとつの大きなエピソードというのが正しいのだろう。
     およし、おなか、おさく、おせき、脇役の女性陣がそれぞれに魅力的。「七人のおば」ほど明快ではないけれど似たような人物をそれぞれに書き分けてみせるというのは、それなりの筆力なのだとは思う。

  • 図書館より。
    薬屋の経営から退き、人の話を聞く聞き屋を始めた与平を主人公とした時代連作短編集。

    与平を始め登場人物たちの生き生きとした雰囲気や悩んだり苦しんだりしている様子が伝わってきました。だからこそ登場人物たちが幸せをつかむとこちらもなんだか温かくなります。

    そして優しい目線で聞き屋のお客や息子たちのことを見守る与平の姿も読んでいて、読者である自分もほっこりとしました。

  • 宮部作品の直後に読んだせいか、物語・文体(文章と言った方が適切か、要するに説明過多)が少々冗長に感じられる。
    違ったタイミングで読んでいれば★3つといったところだろうが、如何せんタイミングが悪かった。



  • しみじみとしたいい話。派手さはないけれど心地いい重み。
    宇江佐作品で泣かないか、と思ったけど、やっぱり最後に泣かされた。

  • ☆3個半

  • 薬種問屋の隠居与平が先々代の主人が火事で逃げ送れた事件について、助けなかった罪を誰にも告げず心に蟠りを持ったまま生き続けて、夜な夜な人の話を聞くという商売(?)を始める。

    多い時は一晩10人ほどになると書いてあるが、江戸時代の人だってそんな酔狂じゃないだろうと思いつつ、それでもまあ江戸時代という設定でアリにしてしまおうという感じ。

    宇江佐らしいしんみりとしながらほのぼのと明るい話。

  • 時間の流れを感じた。人生、楽あれば苦あり。明けない夜はない。日々精進。私にも聞いて貰いたいことあります。何故続巻が出ていないのーと思ったら宇江ささん、すっきりしてる。合点がいった。

  • 誰もが心の中に1つは他人に語れない暗い過去を持っている。でもその過去に大小の差こそあれ、みんなはひっそりと幸せに暮らしていきたいと思っているのだろう。聞き屋も語りべも、みな同じだ。そんな人情話盛りだくさんの、宇江佐さんらしい連作。

  • 人の話を聞く。
    それだけが どんなに その人の人となりを表すか。
    私は 与平さんのように 聞き屋は出来んだろうなぁ…。
    そして、彼のように罪を抱えて生きていけないだろうな。
    それともいざそうなった時にはできるのか?
    宇江佐さんの作品には
    いつも「どうしようもない」とこどもにまで悪態をつかれる家族が出てくる。
    でも、そういう人へも向けられるまなざしが やはり良い。

  • 大店の薬種問屋の隠居である与平が始めた、ただ客の話を聞くだけの商売「聞き屋」。そこに訪れる客や、ご近所さんに身内、そして自分の過去なども織り交ぜた連作短編集。またミョーな商売を考えましたな。ま、でも、意外としっくりきています。需要はけっこうあるようです。支店(?)もできました。後継者もいます。以上!・・・・・・・・・なんのこっちゃ。

  • お店を息子に任せ隠居した与平は五と十のつく日に、ただ人の話を聞く、という聞き屋を開いている。
    お客が話す内容は様々で、人間とはこんなにもたくさんのことを身の内に抱え込んでいるのかと改めて思い知らされた。
    聞き屋の客が話す秘密や愚痴、聞く側の与平が抱える秘密が丁寧に描かれてラストはじんわりとした優しさがあふれてくる一冊。

  • 人生なんて平凡で、でも楽ではなくて。それでもどこか幸せで。最後はじわりと泣けました。

  • 私の大好きな時代小説の中の一つ。

    主人公の薬問屋の御主人、
    与平さんが隠居後に始めた 『聞き屋』
    誰でも一人じゃ抱えきれず誰かに聞いてもらいたい話の一つや
    二つある。
    答えを教えて欲しい訳でもなくただ聞いてもらいたいだけ。
    自分は何故聞き屋という生業にひかれていくのだろう....
    色々な人々話を聞いて行くうちに、次第に与平さんの過去もあきらかに....

    全6話の短編の短い話ですが、個人的にはもっとシリーズ化して
    与平さんの客の話も聞きたかったです。

  • 江戸時代の臨床心理士ですな。
    実は初めての時代小説なり。やっぱりちょっととっつきにくいけど、まぁ、それなりに楽しめました。

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著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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