夏から夏へ (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087465778

作品紹介・あらすじ

速く走るだけでは世界を相手に戦えない。リレーでは、速く確実なバトンつなぎも重要だ。2007年世界陸上大阪大会でアジア新記録を樹立。08年北京五輪のメダルにすべてを賭ける日本代表チームに密着した、著者初のノンフィクション。酷暑のスタジアム、選手達の故郷、沖縄合宿へと取材は続く。大阪と北京、2つの夏の感動がよみがえる!2大会のアンカー走者・朝原宣治との文庫オリジナル対談つき。

感想・レビュー・書評

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  • 高校の陸上部を描いた『一瞬の風になれ』の著者である佐藤さんが、そのときの取材を通して陸上競技と競技者を深く知るようになり、魅力に取りつかれ、2007年に大阪で開かれた世界陸上での100m×4リレー(4継)の選手、塚原、末績、高平、朝原、小島と周囲の人たちを取材して書いたというノンフィクション。このあと2008年北京五輪で同じメンバーで銅メダル取ったんだよねぇ、ということをしみじみと思いながら読了。水泳の北島が、ピークを合わせることのむずかしさ、を言ってましたが、陸上選手も同じで、それは競技者でないと説明されないとなかなかわからないことではあるが、走るのは10秒ほどでも、そこにつながるそこまで持っていく時間が全て勝負なのだなぁ、と、改めてすごいな、と思いました。5人目のメンバー、2007年の世界陸上では万全の準備をしながらも結果として一度も走る機会のなかった小島さんの話がとても印象に残りました。とても読み応えがあり、おもしろかったです。

  • 私は陸上競技を観るのが好きで、世界陸上大阪大会や北京オリンピックは私でも記憶に残っています。
    本作にはその時のリレーメンバーの方々のお話が綴られていて、じっくりと読みました。
    走者それぞれのことを知って、あの40秒にも満たないレースを観ると、素人でも視点が今までとは少し変わり、感動もレベルが変わる気がしました。
    陸上競技のことやトップアスリートのことが書かれていて、私とは次元の違うことが多いとは思いますが、とても興味深く楽しく読めてよかったです。

  •  虚構の入る余地が少ないからでしょうか、スポーツ観戦は競技を問わずに好きです。また、実際に体も動かそうと(メタボ対策もかねて)今年の夏前位から、週一目標で泳ぎにいくようにもなりました。前後するように2020年の東京五輪開催が決まり、これから7年、“スポーツ”への注目度も上がるかなとも感じています。

     そんな五輪競技の中でも人気の高い“陸上競技”を題材にしたノンフィクションが、こちらです。

     日本で陸上競技と言うと、昔から活躍する方の多いマラソンに代表される長距離をイメージされる方も多いかと思いますが、取り上げたのはトラック競技、その中でも100M×4人で走る「400Mリレー(四継、ヨンケイ)」となります。

     ただ速く走れるだけでは“ヨンケイ”は勝てない、事実、陸上王国たるアメリカも、ことリレーにおいては決勝進出すらできずに消えていくことも多いそうです。それでは勝つためには何が必要となるのでしょう、、速さはもちろんのこと“確実なバトンつなぎ”が求められる、とのこと。

     伝えていきたい、つないでいきたいとの想いがこめられているからでしょうか、行きついた果てで「幸せでした」との言葉を異口同音に紡ぎ出したメンバーの皆さんを、心の底から“羨ましい”と思いました。

     物語の始まりは2007年の世界陸上大阪大会、その舞台を駆け抜けた、塚原選手、末續選手、高平選手、朝原選手、そして小島選手のリザーブを含めての5名の選手の生い立ちや陸上への想い、ちょっとほんわかなエピソードなどを交えながら、綴られていきます。

     実際に走る時間は4人を併せても40秒足らず、しかし、その数十秒に全てをかけるひたむきさが伝わってきました。そしてその瞬間の時間を、濃やかに臨場感たっぷりと描き出されている佐藤さんの筆致に一気に引き込まれます。

     「(佐藤さんは)陸上選手の心理描写に詳しい」との朝原選手の言葉を映しとっているかのように、まるで自分もその場で一緒に走っているかのような気持ちになれるのは、ヨンケイが個人ではなく団体での戦いとの様相を見せてくれるからだと思います。

     これは同じく佐藤さんの著書で、高校の陸上部を題材にした『一瞬の風になれ』でも感じたのですが、つないでいくのはレースを走る4人のバトンだけではない、それまで連綿と引き継がれてきた日本陸上界の先達の想いも、一緒につながっていくのだなぁ、と。

     この大阪大会では「38秒03」というアジア新記録(例年なら優勝してもおかしくない記録)を残しながらも、アメリカ、ジャマイカ、イギリス、ブラジルに続く5位入賞止まり。でもこのステップがあったからこそ、翌年2008年の北京五輪で3位入賞という快挙へとつながったのかもしれません。

     “一瞬”に全てをかけるために、連綿と、陰に日向に、ただひたすらに試行錯誤を積み重ねていく、そんなことの大事さを気付かせてくれる一冊でした。

    • マサトさん
      はじめまして。
      佐藤多佳子さんの「一瞬の風になれ」を読んで、すごく感動しました。それで、同じ陸上競技をあつかった「夏から夏へ」も読んでみた...
      はじめまして。
      佐藤多佳子さんの「一瞬の風になれ」を読んで、すごく感動しました。それで、同じ陸上競技をあつかった「夏から夏へ」も読んでみたいと思っていたのですが、ohsuiさんのレビューを読んで、ますます読んでみたくなりました。ありがとうございます。

      2013/10/24
    • ohsuiさん
      しんごさん
      はじめまして、コメントありがとうございます。
      『一瞬の風になれ』、いいですよね~、大好きな小説の一つです。
      こちらをお好き...
      しんごさん
      はじめまして、コメントありがとうございます。
      『一瞬の風になれ』、いいですよね~、大好きな小説の一つです。
      こちらをお好きであれば、是非オススメです!
      2013/10/24
  • 『夏から夏へ』佐藤多佳子さん

    最初に大阪で行われた世界陸上での4継の話から始まり、それぞれの選手の陸上での歴史、社会人での陸上の話になっていく。
    最初の世界陸上の話はとっても臨場感があった。私は覚えていないが、とっても盛り上がったんだろう。
    その後それぞれの選手の話は色んな陸上に対する考え方や、顧問の先生や監督からみた選手など、その選手の人となりが知れる。

    0.01秒を縮めるため、大変な努力をしている。

    勝手に北京オリンピックの銅メダルの時の話もあると思ってたので、そこがなかったのが少し残念。


    〈裏面のあらすじ〉
    早く走るだけでは世界を相手に戦えない。リレーでは、強く確実なバトンつなぎも重要だ。2007年世界陸上大阪大会でアジア新記録を樹立。08年の北京五輪のメダルにすべてを賭ける日本代表チームに密着した、著者初のノンフィクション。酷暑のスタジアム、選手たちの故郷、沖縄合宿へと取材は続く。大阪と北京、2つの夏の感動がよみがえる!2大会のアンカー走者・朝原宜治との文庫オリジナル対談つき。

    〈本文より〉
    ・日本代表クラスの選手は、絶対どこかに不安を抱えていると末續は言う。ハードラーの為末大を"究極的に不安材料を抱えた人間"と評する。彼の強さはそこにある、だからどん欲に上に行けるんだと思う、と。彼はすごく弁がたつから、みんなに納得させられているけど、と笑った。

  • ーまるでスタジアムの観客席にいるかのような、光景と緊張感。そして期待。

    2007年世界陸上大阪での4継。100メートルずつの区間を日本代表の選手が走り、バトンを渡す。予選、そして決勝戦への高まり。大阪というホームグラウンドでの大会。そして2008年の北京オリンピックでメダルをかけた4継に向けて、著者が密着取材した試合と選手たちのドキュメンタリーが描かれる。

    ノンフィクションって初めて読みました。
    一瞬の風になれ、の著者の佐藤多佳子さんが感じたスタジアムの空気、緊張感……。
    もう、ドキドキが止まりませんでした。
    そして読者である自分の鼓動が聞こえてくるかのようなスタート前の静寂まで体感できてしまうという、、、。

    スポーツのこと知らなくても、この試合前の高揚感や選手への期待は手にとるようにわかります。
    感動をありがとう、誰もが絶対にそう思います。

    後半は選手たちの生い立ちや性格、アスリートとしてのプライドなど、個性を感じる展開になっています。
    ノンフィクションって、著者の心の声が聞こえてくるからなんか面白いです。

    世界で戦う、日本の誇りの選手たち。本当にかっこいいです。わたしたちには結果しか見えないところが多いですが、結果を出すための、信じられないような努力の一部がこの本から垣間見えて、「感動をありがとう」と心から感謝せずにはいられませんでした。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99248411

  • 大阪世界陸上の400メートルリレー、通称4継にスポットを当てたノンフィクション

    塚原選手、末次選手、高平選手、朝原選手、小島選手

    レースの臨場感、内面の葛藤、本人たちの胸の内

    陸上のだいご味にどっぷりつかれる1冊

    読み終えた後走りたくなる自分がそこにいます。

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  • 『一瞬の風になれ』で短距離リレーの面白さ・難しさを教えてもらい、この本でさらに深く感じ入ることができた。

    いろんな物語が書ける作者なのに、ドキュメンタリーに徹してる印象がまた新鮮だった。

  • 再読。取材を通してノンフィクションとフィクションの両方を描くのは難しそうだが、成功すれば相乗効果的に感動する。道具を使う技術を磨くことが必要なスポーツと違って、陸上は自分の身体を磨き上げていく魅力がある。佐藤さんの目を通してみると、スプリンターというのは内省的に自己の肉体と向かい合い走りを追究していくところが、修行僧か哲学者のようでクール。水泳、フィギュアスケート、卓球、体操などの日本代表にもあてはまるが、個人競技なのにチームワークがいいのって見ていて楽しい。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。1989年、「サマータイムで」月刊MOE童話大賞を受賞しデビュー。『イグアナくんのおじゃまな毎日』で98年、産経児童出版文化賞、日本児童文学者協会賞、99年に路傍の石文学賞を受賞。ほかの著書に『しゃべれども しゃべれども』『神様がくれた指』『黄色い目の魚』日本代表リレーチームを描くノンフィクション『夏から夏へ』などがある。http://www009.upp.sonet.ne.jp/umigarasuto/

「2009年 『一瞬の風になれ 第三部 -ドン-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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