貧楽暮らし (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087465860

作品紹介・あらすじ

いくらお金を稼いで貯めても生きる喜びにつながらなければ意味はない。潤沢なお金がなくても、日々をいかに楽しく暮らすのか。それが「貧楽暮らし」。著者の三人の子どもたちは自立へと旅立ち、四半世紀続けた地域誌『谷中・根津・千駄木』は終巻を迎えた。変わらずあるのは生まれ育った東京の古い寺町の四季と仲間たち。著者自らのターニングポイントをみつめた文庫オリジナルエッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • 文学

  • P133
    「二十歳の女は
    何も教えてくれないが
    四十の女はすべてを教えてくれる」(バルザック)

    いくらお金を稼いで貯めても
    生きる喜びにつながらなければ
    意味はない(最終頁)

  • 「楽しんでる?」と声を、私もかけられたいと思った。

  • 「女三人シベリア鉄道」を読み終わったらなんだか寂しくて、もっと森まゆみさんの作品を読みたいなと思い、エッセイを。以前に「寺暮らし」を読んでいるけれど、あまり覚えてない……。
    この「貧楽暮らし」も日常のいろいろなことがさらさらーと書かれていて、読みやすいしおもしろいけれど、あくまでさらさらーと。読んだら忘れてる(失礼)感じだけど、読んでいるときにここちよいのでいいのです……。
    森さんと言えば「谷根千」の地域誌をつくり、地域的、社会的な活動をしている、という印象なんだけど、もっと評伝の仕事について詳しく知りたい、と思った。なぜ評伝を書くようになったかとか、どんなふうに調査してるかとか普段どんな本を読んでるかとか。
    これから森さんの評伝もいろいろ読んでいくつもりです。

  • 人間を育てるのは「恥じ」の概念、最近はかなり薄れていると、私的にも思う。パジャマで買い物に着たり、電車や歩道で化粧をしたり、常識もなく老若男女が壊れているんですね。

    「雑草の庭」も、生物は殺生しない観点からは理解でき、すばらしい考えだと思う。しかし、自給率が不足している我が国の農業で、農薬を散布せず生産物を作ることは、可能であろうが価格に崩壊に、繋がりこれもまた安直には済まない。

    理想と現実の矛盾であり、二律背反になるのかな。

    安らいで読める本でした。

  • 書店でタイトルの「貧楽」と帯の「老後に安心を求める方に」というコピーに惹かれて購入。
    その両方から、お金がなくても楽しく暮らす知恵が書かれていると思って読んだが、そういう内容のことはほとんど書かれていななかった。
    著者があちこちの雑誌等で書かれたエッセイを集めた本で、どの項も共通して「人とのつながり」というテーマは感じられるものの、前半は特に1話ごとの内容がバラバラで、流れに乗って読むということが出来なかった。
    しかし中には興味深いお話があったり、巻末の娘さんの文章が面白くて、読んで損したというかんじではない。
    もっと、この著者の、もっと内容や順序がまとまった本が読んでみたいと思った。

  • 東京を離れてだいぶ経つが、谷根千近隣に住んでいたこともあって、森さんのエッセイを読むと東京の空気を思い出す。私にとっての東京は、路地と坂と古い寺社の街だ。相変わらず、ちょっとつっけんどんな感じもする簡潔な文章が、根っからの記録者という印象。巻末に娘さんが一文を寄せているが、内容は容赦がなくて壮絶。「家族」から見た森さんの別の一面が覗けて「物書き」の家族はやっぱり大変なのだなあ、と納得する。

  • 短い2月にできるかどうかギリギリな気はするが、「ブックマーク」の次号をつくろうと、合間をみては読者からの「本のアンケート」を入力し、書いてもらった「表紙のしおり」テキストを入力し、さてPさんの古文書は何を探すかと思い、自分は何を書こうかと考える。

    「本のアンケート」を整理しながら、目にとまった本をひょいと図書館で借りてくる。『貧楽暮らし』もアンケートにあった一冊。これは、あちこちの雑誌などに書いた短い文章を編んだ本。森まゆみを読むのも久々。

    ▼一生懸命働く人が好きだ。黙々とヒノキの桶を削る人。鮨を握る人、オートバイを修理する人、ねんねこ半纏でコロッケを揚げる人。そんな人が町に多いから、がんばらなくちゃ、と思う。暮らしの士気みたいなものである。(p.56)

    「がんばる」とか「一生懸命」は時と場合によっては(ちょっとパス…)と思うが、暮らしの士気はエエなあと思った。

    学校嫌いで、不登校でもあった末っ子のことを書いた文章のここを読んで、祖母から聞いた女学校時代の話を思い出す。
    ▼たしかに昔は、学校さえいけば家のつらい労働や子守から解放された。学びの場は学校だけだった。今や家に本はあり、テレビやパソコンからも様々な知識が吸収できる。(p.166)

    祖母は、フウがわるい(体面がわるいという意)と、小学校から女学校へすすむことをその祖父から反対されたという話をよくしていた。どうしても女学校へ行きたかった祖母は、朝から家族全員のご飯の支度をすることで、進学をみとめられたのだった(たしか、朝から一升の米を研いで炊いていたのだったと思う)。

    女学校では、入れるクラブには全部入って、なるべく学校にいられる時間をつくっていたとも聞いた。テニス、バスケットボール、裁縫、それから何だったか。「学校」は、この100年くらいのあいだに、イメージが大きく変わったもののひとつかもなと思う。祖母は1912年のうまれだった。

    森まゆみのエッセイは、むかし読んだ頃ほどわくわくとはしなかったが、巻末に至って、森の娘が「母との三十年」という解説を書いている。娘からみた母親の姿が書かれている、この解説がじつによかった。娘がしたことを、まるで自分がしたかのように書いたエッセイに、娘はかつて「なんという嘘つき」と憤慨したらしい。森は「話を面白くするためには、そのくらいは許されるのよ」と言ったそうだ。その他のエピソードも、娘の視線に共感するところがいろいろあった。

  • 母子家庭。三人の子供。
    娘さんのあとがきから森さんの人柄が見えてくる。

  • 著者の名前から上品な、知的な方と想像していた。が、子供を育てるおおらかさにびっくり。けっこういい加減でありながら、町の歴史はきちんと整理して押さえられてて、作者のイメージ像が変わった。

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著者プロフィール

1954年生まれ。中学生の時に大杉栄や伊藤野枝、林芙美子を知り、アナキズムに関心を持つ。大学卒業後、PR会社、出版社を経て、84年、地域雑誌『谷中・根津・千駄木』を創刊。聞き書きから、記憶を記録に替えてきた。
その中から『谷中スケッチブック』『不思議の町 根津』(ちくま文庫)が生まれ、その後『鷗外の坂』(芸術選奨文部大臣新人賞)、『彰義隊遺聞』(集英社文庫)、『「青鞜」の冒険』(集英社文庫、紫式部文学賞受賞)、『暗い時代の人々』『谷根千のイロハ』『聖子』(亜紀書房)、『子規の音』(新潮文庫)などを送り出している。
近著に『路上のポルトレ』(羽鳥書店)、『しごと放浪記』(集英社インターナショナル)、『京都府案内』(世界思想社)がある。数々の震災復興建築の保存にもかかわってきた。

「2023年 『聞き書き・関東大震災』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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