絵はがきにされた少年 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087466072

感想・レビュー・書評

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  • アフリカで新聞記者の特派員だった著者による、アフリカ考察。主に現地人と入植者の確執や人種差別問題などを、現地人や白人系アフリカ人にインタビューしながらノンフィクションにしたもの。特に南アフリカは本当に複雑な問題を抱えているな、と改めて暗い気持ちになった。
    1994年のルワンダの大虐殺のことも書いてある。一番興味深かったのは、キューバ革命で英雄になったチェ・ゲバラがアフリカ各地で革命を起こそうとしていたというところ。彼がキューバで成功した後、アフリカも変えようとしたが、現地人がイマイチ乗り気にならず、計画はあきらめて失意のうちに南米に戻ったというのを初めて知った。また、援助されることに対するアフリカ人の意識も、なるほどと思いながら読んだ。
    学ぶことが多いが、正直なところ、読んでいて気持ちが良いとは言えない一冊。

  • 毎日新聞の記者である藤原氏による、アフリカを題材にしたエッセイ11編が収められている。

    僕等はつい、アフリカという地域を一括りに考えてしまいがちだが、国や民族によってかなり気質の違いがあるようだ。実はゲバラが主導したコンゴ革命も、コンゴ人の意識があまりにも低いので、ルワンダ人が活躍したらしい。

    そのルワンダの中でも王族を中心としたツチ族と、民衆を中心としたフツ族が対立し、悲惨な内戦を繰り返している。民族間の違いについて、地元の人はあまり多くを語らないが、きっと何か歴史的な背景があるのだろう。

    本書では貧しい国や地域に対しての、援助の在り方にも触れている。受け取る側にも尊厳があり、まずは相手を知る事が重要なのだそうだ。
    マスコミに切り取られた断片のような報道を鵜呑みにせず、自分なりの方法で調べ理解する事が大切なのだと思った。

  • 「老鉱夫の勲章」が興味深かった。

  • 第3回開高健ノンフィクション大賞受賞作。アフリカ駐在記者の筆者による本作。知識として知らない事象も多く、また、「アフリカの国」というものに対して何も知らない上に、なんとなく画一的なイメージをもってしまっている先進国の私に、ひとつの示唆を与えてくれるような内容。文章は読みやすく、読んで何か残るという意味では◎。ルワンダ虐殺なんてつい最近のことなのに内容すらろくに知らかった自分が恥ずかしい。

    著者もかいてあるように、タイトルもひとつのモデルケース。
    「絵はがきにされた」少年(今は老人)は、決して被害者意識などなく、前向きに絵はがきになったことを喜んでいた。

    慄然と存在する人種差別や貧困の複雑な実態に対し、先進国のマスコミに主導される勝手な先入観は、表面的な解釈のための自己満足でしかない。  ・・・ということを等身大の体験を通して伝えています。

    >以下本文より引用
    漠然と無数の人々への援助を考えるよりも、救うべき相手をまず知ることから始めなければならない。先進国の首脳会議などの会場を取り囲み、「貧困解消、貧富の格差の是正」を叫ぶ若者たちがいる。こうしたエネルギーを見ていると、一年でいいからアフリカに行って自分の暮らしを打ち立ててみたらいいと思う。一人のアフリカ人でもいい。自分が親しくなったたった一人でいい。貧しさから人を救い出す、人を向上させるということがどれほどのことで、どれほど自分自身を傷つけることなのか、きっとわかるはずだ。一人を終えたら二人、三人といけばいい。一般論を語るのはその後でいい。いや、経験してみれば、きっと、多くを語らなくなる。

  • 私たちが思い描く「アフリカ」から一歩踏み込んだノンフィクション。貧困や紛争そのものではなく、その中の人々について書かれています。読みかけを放置してたので、後半に印象が残ることになったけど、中でもルワンダについて、更に知りたくなりました。

著者プロフィール

藤原章生(ふじわら・あきお)1961年、福島県いわき市生まれ、東京育ち。北海道大工学部卒後、エンジニアを経て89年より毎日新聞記者として長野、南アフリカ、メキシコ、イタリア、福島、東京に駐在。地誌、戦場、人物ルポルタージュ、世相、時代論を得意とする。本書で2005年、開高健ノンフィクション賞受賞。主著に「ガルシア=マルケスに葬られた女」「ギリシャ危機の真実」「資本主義の『終わりの始まり』」「湯川博士、原爆投下を知っていたのですか」。

「2020年 『新版 絵はがきにされた少年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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