平成大家族 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087466188

感想・レビュー・書評

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  • 隠居状態の元歯科医 龍太郎(72歳)、その妻の春子(60代後半)、春子の母親で要介護のタケ(92歳)、そして無職引きこもり状態の長男 克郎(30歳)が穏やかに(?)暮らす緋田家。母屋と離れ、それに物置小屋もあって、間取りは広々としている。

    そんな緋田家に、IT事業に失敗して破産した長女一家(柳井聡介、逸子、さとる)、離婚した身重の次女 友恵が次々戻ってきた。日常が乱され、内心穏やかでない龍太郎。「どこかで自分は子育てを間違えたに違いない」と嘆く春子。私立進学校から公立中へ転校し苦労するさとる、ウブな克郎の奇跡的な恋、聡介の農業への転職、友恵の出産等々、次々に起こるドタバタ。大家族コメディの良作。2008年の作品。

    訳あって一時的に古巣に集合した親族達は、核家族を基本としつつ親族の絆もキープしている。お互いに寄り掛かりすぎず、微妙な距離感を上手く保つのが今時の大家族を成り立たせる秘訣、ということかな。

    大家族はおろか、盆や正月に親族一同が賑やかに集まるシーンすら、世の中からどんどん消えつつある。少子化の影響で、"親族パワー" はすっかり失われてしまったな。本作品の緋田家も、次世代を担うのはさとると健太郎(友恵の子)の二人だけだもんな。本書を読んで、何だか寂しい気持ちにさせられた。

  • 楽しくて一気に読んでしまった。
    わりと身近に大家族がいるし、私も10年前はまあまあ多い人数だったから状況が想像できちゃう。

    作中の緋田家は夫婦と妻の母親と引きこもりの息子で暮らしてた。
    そこへ長女の婿が自己破産して一家が押しかけてきた。さらに、次女は離婚して戻ってきた。

    それぞれの視点で次々と起こる事件が語られる。

    引きこもりの息子が家族からは存在感の薄い人物なのに一番興味そそられた。
    実写化する機会があったら、この息子は宮下草薙の草薙をキャスティングしてほしい〜

  • 出だしの龍太郎が見ていた世界が1番分かってない場面だった。もしも家を出る兄弟が舞い戻るとか状況に自分がなったならとても上手く付き合うこと出来ない無理だ。本当に勝手だよ、でも結果全員を受け入れる。家族だけど家族じゃない家族の様な事、全員が食事したのが10話って、相当な相関関係だけど、所々で歪が出て物置小屋に克郎が住むとか、でも結果幸せになれるから不思議だね。それぞれの心の中が見て取れるのは良かったよ、克郎の章がなんだか1番印象的だよ、あとカヤノさん。東京バンドワゴン毎年読むけど、真逆だよ。

  • 夫の事業の失敗で自己破産に追い込まれた長女一家と、
    離婚直後に妊娠が発覚した次女が、次々と実家に戻ってきた。
    三十路のひきこもり息子と認知症のおばあちゃんを抱える緋田家は
    突如大家族となり、てんやわんやの大騒ぎ。

    有名私立中学校から地元の公立中学に転校を余儀なくされた
    長女の息子が、いじめに合わないようにサバイバルする様子や、
    不妊が原因で離婚した、次女の不可解な妊娠で湧き上がる父親の謎など、
    各章語り手が変わり各々の事情が明らかになる。
    ほんわかムードの、ありがちな大家族小説ではなく、
    各々が直面するシリアスな問題を抱えているところが平成の大家族である。

    部屋に引きこもり、まともに顔を合わせない息子を不愉快に思いながらも、直接対峙を避ける父親や、
    子供の父親は誰なのかを妹に直接尋ねられない長女など、
    プライバシーにずかずか踏み込まないのがいい。
    子供達を家に受け入れ、小さな不満がありながらも彼女らの選択を尊重する、
    のんびりやさんの母親のスタンスが好き。
    あっ、父親は何も考えてません。どこの家でもそうですが(笑)

    • 夢で逢えたら...さん
      まっきー♪さん、花丸&コメントありがとうございます。

      レビューを読み返してみたら、なんだか深刻そうなお話のようですが、そうではなくて、...
      まっきー♪さん、花丸&コメントありがとうございます。

      レビューを読み返してみたら、なんだか深刻そうなお話のようですが、そうではなくて、
      仰るとおり楽しいですよ。
      下手なレビューでお恥ずかしいです。
      すっとぼけたお父さんが、いい味だしてます(笑)


      2014/12/13
  • 大家族の話。でもバラバラ。一編が短くて、語り手がどんどん変わって行って、しかも何時の間にか2年ぐらい経過しているのが楽しいです。
    解説が終始「東京バンドワゴン」を引き合いに出していたのがなんだか嫌だったな。
    2012/8/18読了

  • とにかくラストが最高でした!!
    龍太郎は大好きな橋爪功さんを想像して読みました

  • ストーリーラインは極めて悲惨、72歳の当主に66歳の妻、30歳の引きこもり長男3人家族に、自己破産した娘婿家族、離婚して未婚の母となる次女、そして姑。よくここまで集めたなといったオールスター軍団がひとつ屋根の下で集う(正確には3つ屋根の下、なんなら一つの敷地でもよい)物語。一つ一つの家族の形は取り出してみると、昔ほどは悲惨ではないが、でもやはり厳しい状況である。そしてそれが一つの敷地に集うとなると通常は「親の育て方が悪い」となるが、それはほとんど感じないのである。なるべくしてなった、そんな自然な形で物語は構成されている。

    しかし、である。どことなく明るい。おそらく想像だが少しずつ上向き気味に描かれていて、この展開はあとから振り返るとなるべくしてなったと言いようがない。それは例えば引きこもりがいきなり結婚したり、自己破産した娘婿は新しい生きがいを見つけるし、いじめられないように慎重にストーリー建てした孫は、取り返しのつかない態度を悔い改めることで前向きに吹っ切れ等など。どこはかとなく明るかったものが、物語の展開とともにくっきりとした明るさに変化していうのだ。いつまにかシーンが置き換わる、これを映画ではなんというか知らないが、小説としてはかなり良くできた作りだと思う。

    『平成大家族』は『小さなお家』で直木賞を受賞した中島京子の作品。『小さな~』には到達できていないが、全体のトーンを垣間見ることはできる。しかも完全にダークグレーという世界ではなくどちらかと言うと青空が広がる爽快感に包まれる物語で読後感が非常によい。だって、どうみて暗い状況が無頓着な家族のおかげで、明るい喜劇的な小説に仕上がっており、そして最終的には世界と自分の平和を祈ることができるかな!(ご長男とご相談)

  • 最近、中島さんばかり読んでいるけれどこの作品が今のところ一番面白い!計8人、後に9人の大所帯をとてもうまくまとめている。中だるみもない。それぞれに個性の強い緋田家の面々、長男が30歳にしてひきこもりというのがすごく現代ぽいのに悲壮感まるでなし。長男はある時から悟り、むしろ外に出ないということを決断したから天晴。でもその長男がなんと。。タケおばあちゃんのエピソード、長女夫のエピソード素敵だった。山田洋次監督の『家族はつらいよ』を彷彿とさせる。話は違うけれど。誰も不幸にならない良質なホームドラマ、ここに有り。

  • 状況的に最悪なのに、なんだか和やかな雰囲気で暖かい。
    個々のキャラからの視点があるので、深い事情や思いが分かるのも嬉しい。
    家族がいるからか何となく先が明るく見えていて、内容的に暗くないので読みやすかったです。

  • 『小さいおうち』しか読んだことがなかった中島京子。直木賞受賞作のそれは映画化されたさいに原作ということで読み、とても心に沁みました。その作風しか知らなかったら、これは森見登美彦などにも通じるコミカルなタッチ。びっくりしましたがさらに好きになりました。

    72歳の緋田龍太郎と66歳の妻・春子。90歳を過ぎた姑と30歳のひきこもりの息子との4人暮らし。いろいろ文句はあるものの、穏やかに暮らしていたはずだった。ところが、事業に失敗して破産した長女一家が同居させてくれと言う。続いて次女が出戻ってきて、一気に倍の8人所帯に。

    本作はそのひとりずつの目線で語り継ぐ11話。なにしろ1話ごとのタイトルからして面白い。龍太郎が好んで使うややこしい横文字に始まり、「酢こんぶプラン」、「公立中サバイバル」、「時をかける老婆」などなど。特に好きだったのは長女の息子編。家にお金がなくなったせいで、猛勉強して入学した私立から公立への転校を余儀なくされ、公立でどう生き延びるかをひたすら考えます。各話にたびたび姿を現す少しボケ気味の姑もなくてはならない存在。時折声に出して笑ってしまうほどユーモラスでした。

    『小さいおうち』以外ノーマークでしたが、これは大人買いしたくなってしまう作家です。

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著者プロフィール

1964 年東京都杉並生まれ。小説家、エッセイスト。出版社勤務、フリーライターを経て、2003 年『FUTON』でデビュー。2010 年『小さいおうち』で第143 回直木三十五賞受賞。同作品は山田洋次監督により映画化。『かたづの!』で第3 回河合隼雄物語賞・第4 回歴史時代作家クラブ作品賞・第28 回柴田錬三郎賞を、『長いお別れ』で第10 回中央公論文芸賞・第5 回日本医療小説大賞を、『夢見る帝国図書館』で第30 回紫式部文学賞を受賞。

「2022年 『手塚マンガで学ぶ 憲法・環境・共生 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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