この落語家を聴け! (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087466256

作品紹介・あらすじ

面白い落語を聴きたければ演者を選べ!年間1500席以上の高座に足を運び、「今こそ落語の黄金時代」と主張する著者が「誰を聴きに行けばいいのか」を伝授する、画期的な同時代的落語論。随所に盛り込まれた高座の再現に泣き笑いしながら、ナマで聴きたい「旬」の噺家の見どころ聴きどころが楽しめる。「観客の目線」による鋭い分析が大きな話題を呼んだ革命的名著、文庫化にあたり大幅加筆。

感想・レビュー・書評

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  • <内容>
    ハードロック誌の編集長である広瀬和生による、現代落語家の手引き。徹底した観客目線による現代落語界を分析し、今最も聞くに足る「旬」の落語家について語る。

    <感想>
    落語協会と落語芸術協会、さらに立川流に円楽党と、東京の落語界の状況について概観し、さらに「六人の会」や「SWA(創作話芸アソシエーション)」などの若手の動きについても網羅されている。落語界の政治というか、動きを眺めながら、個々の落語家についての細やかな観察も秀逸で、読んでいてすぐに落語を観にいきたくなる。

    冒頭で志ん朝の死について「観られるうちにどんどん見ておかなければ後悔する!」と痛感したという件があった。時は流れて「現代の名人」と称された談志も亡くなり、同じことで悔やむ自分がいる。何年も前の名人のCDを聞く楽しみ方もあるし、今ではyoutubeなどで見られる噺もたくさんあるが、やはり「ライブとしての落語」の魅力を語る本書に感化され、どんどん足を運んでもっと生の落語に触れてみたいと思うようになった。

    実際にリアルな描写と本寸法な語り口で聞かせる「上手さ」やイキイキとした描写と破天荒なセリフ回しで爆笑を誘う「上手さ」など、評価基準が一定では無い「お笑い」あるいは「落語」。実際に毎日のように寄席に通い、いくつもの高座を見てきた著者が、どこまでも観客目線で落語の魅力に迫った本書は、少なからず落語の手引書としては有益なものだと思う。また、文庫化にあたり、この2年の間に起こった変化についても加筆されており、伝統芸能として取り上げられがちな落語の「今」という視点がとても明確で面白い一冊だった。

  • 僕はこの落語家と落語への愛情のこもった本を楽しく読んだ。こういう本を嫌う人はいるだろうな、とは思う。でも、よい本だと思う。

    ひいきの引き倒しは微妙なのだけど、ここまで露骨に引きだおせばそれもよし、という感覚だ。落語を評論するというのは、とくにそれを聞いたことがない人に対してするというのはとても難しいのだけれど、そういう意味ではうまくできていると思う。

  • 本書を手にしたのは、どんな落語家をリストアップしてるか知りたかったから。

    残念ながら、著者を知らない。
    京須さんや小佐田定雄なら知ってる。

    2007年現在の情報で、文庫版後書きで2010年現在を追記している。
    追記分でその中で知っているのは、春風亭一之輔だけ。
    目次で上方落語家は皆無だ。

    唯一鶴瓶の名前が上がっている。
    MCとしての実力は誰しも認めるだろうけど、
    落語家としては、どうか?
    多分鶴瓶にしても、本書では、上方落語家としては認識していないのだろう。

    何にしろ、手にするのが遅すぎたのでここまで。

  • 現在の落語家評
    2007年現在の情報だが、あとがきで2010年までアップデートされている。
    立川流の過大評価を除けば、概ね賛同できる。

  • 編集長の文章が無性に読みたくなったので購入。
    一度処分も再購入(108)

  • 落語入門レベルの私の指南書です。

    みた噺家さんの部分を読むとなるほど〜と思います。

  • 年間1500席以上の落語をナマで聴いているという著者が選んだ、今旬の落語家を紹介した本。著者曰く「現在また面白い落語家が増えてきている」と言う。その中で著者おすすめの落語家を何人かピックアップし、各個人について紹介している。
     さすがに年間1500席もの落語を聴いている筋金入りの落語ファンダけあって内容に説得力がある。落語家によっては紹介が長かったり、短かったりするのも著者の個人に対しての思い入れが分かって面白い。もちろん好みもあるので私自身完全には同意できない部分もあるが、柳家喬太郎、柳家喜多八、桃月庵白酒など自分が実際に寄席などで聴いて「この落語家面白いなぁ」と思っており、また注目もしていたのでこれらの落語家の項目に関しては特に興味深く読むことが出来たし、またこれまで聴いたことがない落語家に関してはこれを読んで今度聴きにいってみようと思った。
     最近確かに寄席で若い女性客を見かける事も多くなり、落語の人気も上がってきている気がする。個人的にはチケットが取りづらくなったり、気楽に寄席に行けなくなるのはちょっと困るのだが、更に落語の人気が上がり、それによってまた面白い落語家がどんどん増えてくれれば、少し大げさな言い方ではあるが私の人生もより豊かなものになると期待している。

  • 唐突に「落語」に興味をもって一ヶ月そろそろ寄席や落語会に出かけてナマの高座にも触れてみたい…… この本と出会ったのは、まさにちょうどそんなタイミングのことだった。

    著者はヘヴィメタ専門誌「BURRN!」の編集長にして、年間1500を超える高座を観続けてきたというライブ至上主義の、筋金入りの「落語好き」である。著者によれば、現在の落語シーンは「名人」と呼べるような存在こそ極端に少ないものの、その一方で若手や中堅の噺家のなかに数多くの逸材が存在する、いわば「黄金時代」なのだという。そして、そのせっかくの「黄金時代」を満喫するために、いままさに寄席や落語会で聴くことのできる噺家たちを取り上げ、紹介したのがこの本『この落語家を聴け!』である。

    寄席や落語会に出かけようと思ったが、いったいいまどんな噺家がいて、どんなネタを高座にかけているのか皆目見当がつかない。寄席の番組表を見たはいいが、なじみのない名前ばかりで誰を目当てに足を運べばいいのかわからない。そんなとき、この本はとても役に立つ。なぜなら、いくら百花繚乱の「黄金時代」とはいえ、すべての噺家が面白く、わざわざ時間を割いてまで聴くに値する噺家とはかぎらないからである。

    しかしぼくらの生きるこの時代には、幸いなことにインターネットという文明の利器がある。まずはこの本でとりあえず聴いてみたい噺家をチェックした上で、ネットでさらに検索をすればその噺家のさまざまな情報(プロフィールや本人によるSNS、落語会の情報から、場合によっては高座の動画まで)にかんたんに触れることができる。これだけで、初心者にとってはひどく「敷居が高い」と感じていた寄席や落語会がぐっと身近なものになる。そして寄席や落語会といったライブ空間では、ときには新たな魅力的な噺家との出会いが待っているかもしれない。

    落語をまったく知らないひとではなく、落語にちょっと興味をもったひとがさらなる深みにハマろうというとき紐解くと恰好の手引書になるにちがいない。

  • 実用性たっぷり<br /><br /><br />BURRN編集長による、現代落語解説。<br />立川談志の死を機に、いちど勉強しておこうと思って手をとった。<br /><br />たまたまこの本の読了後、立川流のファンというオッサンに飲み屋で絡まれ、<br />読んだばかりのうろ覚えの知識で色々相槌うっていたら、「あなたわかってるねー」としきりに感心されてしまった。<br />それくらいの力はあります。

  • 2010年120冊目

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著者プロフィール

広瀬和生(ひろせ・かずお)
1960年、埼玉県生まれ。東京大学工学部卒業。へヴィメタル専門誌「BURRN!」編集長。落語評論家。1970年代からの落語ファンで、毎日のように生の高座に接し、自ら落語会のプロデュースも手掛ける。『この落語家を聴け!』『現代落語の基礎知識』『落語評論はなぜ役に立たないのか』『談志の十八番』『「落語家」という生き方』『僕らの落語』『噺は生きている』『21世紀落語史』など、落語関係の著書を多数上梓。


「2022年 『小三治の落語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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