- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087466324
作品紹介・あらすじ
激動の21世紀。世界の動向は、巨大国家間のパワーゲームに握られている。国際社会を舞台に、覇権を競い、軍事、経済、資源を巡って衝突するアメリカ、中国、ロシア、EU、サウジアラビア。勝者となるのはどこなのか?そして日本はどうするのか?その対立の隠された構図と実際の国力を、豊富なデータと池上彰ならではの鋭い分析眼で、わかりやすく解きあかした『大衝突』待望の文庫化。
感想・レビュー・書評
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分かり易い。表面だけなぞってるのとは違い、その事象に至る背景・経緯がちゃんと書かれているのでとてもありがたい。自分にとっては知っていることもいくつかあるが、他の事象とも合わせて理解できるので全体をバランス良く把握できる。
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米国の凋落、EUの台頭、中国の急速な発展、復活したロシアによる東欧再進出の気配……。大国間のパワー・バランスはいま激変の渦中にある。本書は、先の見えにくい現今の国際情勢を、鮮やかに整理した質の高い概説書である。
著者は本書で、現在の世界を巨大国家群の「5つの対決」に絞って概観する。中国対日本の「アジアの覇者を掛けた対決」、ロシア対米国・EUの「異質な国との対決」、サウジアラビア対米国の「中東への影響力をめぐる対決」などである。
「対決」といっても、それは軍事衝突のみを意味するものではない。たとえば、EUと米国の「対決」を展望した章は、ユーロと米ドルのいずれが今後の基軸通貨となるかというテーマを核に論が進められる。
著者はこの章で、欧州統合運動の歩みを手際よくたどるなど、歴史にも目を向ける。また、経済力競争のみならず、EUと米国の環境政策や社会保障政策の相違などにも触れていく。そこから、EUと米国の「対決」が、グローバルスタンダード制定の主導権争いでもあることが浮き彫りにされていくのだ。
そして、本書の通奏低音となるのは、「我が国は今後の国際社会をどう歩むべきか?」という真摯な問いかけである。たとえば、中国と米国の「対決」を扱った章には、両国の間に位置する日本の立場への言及が随所にちりばめられている。
読めば国際ニュースの見方が深まる好著。図版・データも豊富で、理解を助ける。 -
イラク・アフガン戦争で覇権を失いつつあるアメリカ、アメリカに肩を並べようとしているEU、国際社会の中で存在感を急激に増している中国。まさに千変万化・一触即発の世界情勢を、各国の対立軸や利害関係を元に読み解いていく。個人的に興味深かったのは第5章「日本VS中国」。この中で、中国国内における反日意識を取り上げているのだが、「アニメ好きな若者たちには親日的な考えが広まっている」という実情には笑ってしまった。なるほどアニメ・漫画業界が、近年中国市場への進出に積極的なのは、こういう理由もあったのネェ?。
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各国の対立を軸に国際関係を詳細に説明しています。
特に日中関係は愛国教育=反日教育が露骨に表れた2004年アジアカップ日本優勝から延々と悪化してきていることがよくわかりました。
今は経済的相互依存関係にあるのでどうやって離間するのかが問題かと思いました。
池上彰先生は色々と賛否ありますが僕は読み続けたいと思います。 -
「そうだったのか!」シリーズと内容的に重複する部分もあったが、サウジアラビアと米国の対立の章では、アルカイダの活動の遠因がソ連のアフガニスタン侵攻にあり、イラクのクウェート侵略に端を発した米軍のサウジアラビア進駐が引き金になって開始されたこと、サウジアラビアがイスラム原理主義の国であることなど、知らなかったことが多かった。。また、EUと米国の対立の章も、EUやユーロの経済的な力が思っていた以上に強いことが分かって、なかなか面白かった。圧巻なのが、ロシアによるウクライナへの介入のシナリオ。予言していたかのように、その後現実に起こってしまった。他のシナリオは?考えるとそら恐ろしくなる。
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池上さんの本はとてもわかりやすく書かれている。驚かされるのは、彼の参考文献の量。200冊以上も読んで私達に約400ページの一冊の中にまとめて教えてくれる。私も読書量を増やしたい。
ロシアも中国も危うさを感じる。ロシアは資源以外の産業が育たないことにより、力による支配を広めていくのではないかという懸念。中国は餃子問題にも現れたように、自分の非を認めようとしない傲慢さと無理矢理に国民を反日に仕向け、共産党独裁を堅持しようとする強引さ。国と国との付き合いは国益だけを追及した上辺だけの付き合いで簡単に壊れるものだと感じる。友人関係で言えば、そんな友人はいらないと言える。それが国と国ではできない難しさを感じる。国と国との真の友情は育たないものだろうか。
中東の問題はあまりにも複雑だ。同じ宗教を信じても様々な解釈の違いから宗派が存在し、多種の民族対立もある。おそらく、欧米は中東にかかわってはいけなかったし、とても根の深さを感じる。 -
世界の大国の関係がわかりやすく説明されていて、とても勉強になった。特にサウジアラビアについては、何も知らなかったのでためになった。
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やはり池上さんの本はわかりやすくかつ楽しくて良い。巨大国家の対立という切り口で世界を見るという本書の視点も明快でわかりやすくてよいですね。複雑な国際情勢が明快に整理されています。
特に印象的だったのはサウジアラビアの話。正直サウジアラビアという国はあまりイメージが沸きにくかったのですが、サウジ家が支配する専制君主国家であり、厳格な宗教国家であること、といったイメージが沸きました。ビン・ラディンらが何故9.11テロに至ったかといったこともわかりやすく解説されています。
国際情勢に疎い私は、9.11テロが起こったとき、正直何が起こったのか、誰が何のために、といったことがよく理解できませんでした。そのとき以来中東情勢を理解しておかないとまずい、という危機意識を持っています。理解を深めていきたいところです。