風花 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087466843

作品紹介・あらすじ

ねえ、わたし、離婚したほうがいいのかな。普通の夫婦を続けていくって、どういうことなんだろう-。のゆり、33歳。結婚7年目の夫・卓哉の浮気を匿名の電話で知らされた。卓哉に離婚をほのめかされて、途方に暮れながらも日々の生活は静かに続く。やがてのゆりは少しずつ自分と向き合い、一歩ずつ前へと進み始める。移ろう季節のように、ゆるやかに変わっていく愛の形を描いた傑作恋愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • 普段恋愛もの読まなくてもついつい物語に入っていってしまうのは川上さんの術にはまったため?のゆりと真人の関係は恋愛とも友情ともちょっと違っていいなぁと思う。

  • のゆりの気持ちを代弁しているような粋な表紙。

    登場する人物が誰かを悲しくさせるようなもしくは悲しくなったことがあるような方々で絶妙な心的距離感、とても魅力的。主人公と関わる人達との食事やお酒は緊迫した場面を色づける。
    沖縄旅行での唐沢さんと一緒にお酒が飲みたい。
    卓也と一緒に登る山。行ってみたい。

  • 主人公のゆりの複雑な思いを重ねて、ゆるゆると物語が進んでいく。
    何か独特の空気が流れている。
    この小説は、のゆりのまわりで起こった出来事を書いたものではなく、のゆりの心情を綴ったものだ、と思った。
    読む人によって、いろんなとらえ方ができる小説だと思う。
    のゆりはまわりから見ると、「おとなしいひと」なんだけど、離婚を決意するまでの心の動きが、うまく書けているなぁと思った。

  • こういう感じの本久しぶりに読んだ。
    (ぼーっとした主人公。全体的に現実感は薄めだけど妙にリアルな描写もあり。)
    一見淡々とした表現が多くて人物に感情移入しづらいけど、いつのまにか主人公や夫が身近な人に感じる。
    江國香織のホリーガーデンやウエハースの椅子が好きな人は好きかも。
    誰かに傷つけられた時、自分もこうしてのゆりのように静かに乗り越えていきたい。

  • かなり昔に読んだときは、もっと淡々と
    読み終えたように思う。
    それほど共感を感じなかったのか
    あまり記憶に残っていなかった。

    時を経て、再読すると、こんなにも繊細に
    描かれている主人公の心もようが
    痛いほど響いてきた。

    何も解決しない。
    答えなど見つからないし、
    見つけたところで、そうできるものでも
    ないかもしれない。
    そんな心の曖昧な部分が理解できる年齢に
    なったからだろうか。

    小さくても、変わっていないように見えても、
    自分の今の心とむきあう主人公に
    いっしょに迷いながら、進むように
    読み終えた。
    そうして、読み終えたあとも、まだ
    ゆっくりと共に歩いているような
    たよりなく、やさしい気配を感じる。

  • 主人公の、のゆり。今の私と同い年。
    まったく違う人生。違う性格。
    だけど何か好きだし、理解できる。

    描かれているのはとても俗的なことで、冷めた結婚生活、夫とのあれこれ、パート先での出来事や人間関係、不意に仲良くなった年下の男の子と少し遊んでみたり、気の置ける存在である叔父にいろいろ相談してみたり。
    そんな日々。
    離婚すればいいのか悩むのゆり。簡単に答えは出せない。
    そういう俗っぽい出来事がたくさん詰まっているのに、どこか淡くて、童話を読んでいるような雰囲気で淡々と物語は進んでいく。
    風花、というこのタイトルがとてもしっくり来る。

    のゆりは物静かで、感情を荒立てることがない。嫌な相手を罵ることもない。
    そっと心のなかで考えて、時々大胆に行動する。
    そんな不思議な魅力がある彼女が引っ張る物語だから、全体を静けさが覆っているような感じ。
    江國香織さんの小説が好きな人はきっと好きだと思う。

    川上弘美さんの小説を今年はよく読んでいて、近々ならセンセイの鞄と蛇を踏むを読んだのだけど、印象としてはセンセイの鞄に近い。蛇を踏むのような(良い意味での)気持ち悪さはない。

    浮気男って都合がいいのね、と思う。笑
    追えば逃げて、そのくせ諦めたと分かれば淋しくなるのか追ってきて。
    そのときには既に遅し、だったりするのにね。

    読み手に委ねるような、余韻が残るラストもよかった。

  • 最近は本当に川上弘美が好きすぎる。
    彼女の表現力がものすごくしっくりくるのは、
    自分が老けてきた証拠かな。
    30代突入してから、特にしっくりくるようになった。


    不倫してしまった夫に離婚をつきつけられた妻。
    でも別れない。
    なんとなくふわふわ毎日を過ごしている。
    ふわふわしてはいるものの、徐々に自立していく妻。
    夫が間違いに気づいたときには、妻はもう気持ちが自立しちゃってるんだろうな。
    ふわふわしてるけど、でももう決まってるんだ。
    妻が別居を自ら申し出たあたりから、急激に加速してしまった気がする。
    夫はそれからきっと、気づくんだろうね。
    夫が謝ったときにはもう、遅いんだよね。



    女って気持ちがはっきり定まるまでは、
    ふわふわしてるからね。
    「現状維持」「見て見ぬふり」大好きだからね。
    でも、結論出しちゃうと、意外にサッパリしちゃうからね。
    夫に謝らせて勝ち!!みたいに思えちゃったわ。
    きっと終盤には、妻の気持ちはこれくらいサッパリしちゃってると思うよ。


    大きな事件がない日常の生活なのに、
    どうしてここまで、人の気持ちを深く表現できるんだろう。
    印象深い文章や表現が多すぎる。
    独特な世界観もった人だなぁ。川上さんは。



    風花のようにふわふわした話でした。

  • 離婚を通じて、主人公、のゆりの変化を丁寧に描く。

    ドラマチックな事は起きず、ただ淡々と、ゆっくりと、様々な人との出会いの中で、自らの人生を見つめ直す。

    よい本であると思う。

  • 若い頃に読んだらきっと
    主人公にイライラしていたと思う。
    でも歳を重ねて白と黒だけで割り切れない部分があって、自分がどうしたいかが分からなく、どうしようも出来ない時がある。
    妙にリアルな小説だった。
    不倫ものだけど読み終えて悪い感じはしなかった。
    逆になんか爽やかささえ感じた。

  • なんだかんだと一気読みさせてくれた一冊。
    川上弘美は大好きだけど、この主人公は少し好きになれなかった。でも、自分と重なって見えるところがあったりしてズキズキした。
    文体は柔らかく美しい川上弘美そのもの!なので良いんですが、なにせお題が不倫絡みなので、鬱々としながら読みました。でも最終的には読み終わった後に良い余韻に浸れたのでなにはともあれオッケー。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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