楊令伝 4 雷霆の章 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087467376

作品紹介・あらすじ

楊令を頭領に迎えた梁山泊は新たな寨に替天旗を掲げ、兵力を結集させていく。禁軍の趙安は、金国との海上の盟により燕京攻略に向けて北進し、耶律大石ら燕国建国の夢を賭けた旧遼軍と対峙した。一方、方臘は、精強な軍と信徒の圧倒的な数の力で江南を席巻する。南下した童貫が、ついに叛乱鎮圧に動き始めた。信徒の熱狂渦巻く中、呉用は方臘の軍師として、童貫軍を迎え撃つ。楊令伝、熱戦の第四巻。

感想・レビュー・書評

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  • 「なんだったのでしょう、史進殿?」
    花飛麟がそう訊いたのは、宮殿を出てからだった。
    「さあな。国とはこの程度のものだ、と楊令殿は、俺たちに見せたのかもしれん」

    第四巻は、いままでとは打って変わって、大きな戦いが立て続けに起きる。けれども、なんだか満足度が少ないのはおそらく私だけではない。梁山泊の戦い自体が少ないのである。宋対梁山泊という単純な戦いだった前シリーズとは違い、今回は複雑な様相を示している。南では宋禁軍童貫対宗教反乱方臘との戦い。北では禁軍の趙安対燕国を建てようとする耶律大石たちとの戦い、そして金国と絡んだ楊令が入っていく。梁山泊が絡んだときだけ、すぱっと気持ちのいい読後感がある。ほかの戦いは仕方ないけど、どろどろとしている。

    思惑が入り乱れ、金国でクーデターを起そうとした企みを、楊令はあっという間に沈めていく。その政変の決着を部外者であるはずの花飛麟たちが眺めるということも起こる。そして冒頭の呟きにつながるのである。

    もう、戦いに勝てばいい、というような物語ではないのだと、著者は私たちに見せたのかもしれない。

    花飛麟は成長しているだろうな、とは思っていたけれどもまぶしいくらいにいい男になった。堅物の花飛麟をからかう史進が面白い。また、子午山メンバーが二度集まってしんみりするところも今回の見所ではある。

    もう出て来ないと思っていたが、案外新しいキャラも次々と出てきており、前回の英傑たちの人数に迫ってきた。あたらしい将校の穆凌を評して公孫勝が楊雄を思い出し、しみじみというのだ。
    「黙々と、ただ自分のなすべきことをやる。腕が立つことも、人に知られようとせず、ひたすら致死軍で働いた。働いたことについて称賛を求めることもせず、私の眼から見て充分な働きをしたが、名を残すことなく、同志の胸になにか刻み付けることもなく、死んでいった」
    著者はあっさりと死なせてしまった梁山泊の英傑たちにこのように一人づつ、言葉の勲章を与え、同時に穆凌の紹介も果たしてしまった。

    あっという間に読んでしまった。また、一ヶ月が長い。

  • 花飛麟がついに頭角を現し始めました!
    馬上で上体をのけ反らせて続けざまに放つ矢は百発百中。
    いや~カッコイイな。父親の花栄に勝るとも劣らない技量の持ち主です。

    そして楊令は、、、どうしちゃったの?ってぐらい無敵状態(笑)
    「水滸伝」の幼い頃から見てきているので、何だか不安になっちゃいます。
    一つくらい欠点があっても良いのでは…と思うのですが。

    敵側の童貫とはやがてぶつかる事になるのでしょうが、
    それが惜しくなってくるほど、童貫は「軍人」として魅力的な人物ですね。
    どこまでも潔く漢らしくて、梁山泊にいないのが悔やまれます…。

  • 4.1

    楊令伝は梁山泊側以外にも魅力的な人物が多い。
    燕京の三武将カッコ良かったな〜〜。キングダムっぽいね。

  • 宋が抱えた南北の大戦が動く動く。
    童貫対方臘戦はどこかで器のぶつかり合いになってて、それがワクワクする、男として。

  • 禁軍の北と南の戦いが本格的にスタート!

    南は安定感抜群の童貫元帥!
    方臘率いる百万の信徒による度人に対して懐かしい戦法が炸裂!
    それと呉用!?どうすんの!?
    方臘が食べている生肉は本当に羊の肉なのでしょうか?なんか想像すると気持ち悪くなります。

    北の趙安率いる禁軍からは軍略上は問題ないのですが、色んな謀略が渦巻きます。
    謀略に巻き込まれて趙安の大敗なんて事もあり得るのでしょうか?ちょっと不安です。


    梁山泊は花飛麟が急成長!彼の活躍する場面多数です。

    史進をはじめとする王進の門下生達が一堂に会する場面があります。なんか皆んな立派になったなぁと思わされます。


    次作では北と南の戦がどの様に決着するのか?
    楽しみです。

  • ついに梁山泊軍が宋軍に牙をむく。
    でも...楊令を超人にしてしまったことで
    水滸伝とは趣が違ってきた。
    108人の豪傑が集まった水滸伝では、
    それぞれ長所もあれば短所もあり、往々にして
    その短所のために死んでいった。
    そこに切なさや愛おしさがあった。
    しかし楊令は完璧すぎるのではないか?
    比類ない強さと賢さを持ってしまって、
    今のところ欠点がないように思われる。

    ちょっと心配です。

  • 鮑旭号泣のシーンで涙こぼれた・・・T_T

  • 花飛麟、ヤバイです。

    いま生きていたら、アーチェリーでオリンピック金メダルとかなんだろうなぁ。


    そして、とうとう王母様が亡くなってしまう。
    子午山の子供たちの、静かな語り合いは、
    とても胸打つものがあります。

    聞煥章と李富の、当人同士が出てこない戦いも、
    注目です、まさに暗闘。

  • 著者:北方謙三(1947-、唐津市、小説家)
    解説:後藤正治

  • 水滸伝に引き続き、一気読み。
    単なる国をかけた闘争を描くだけでなく、『志』という不確かなものに戸惑いつつも、前進する男たちの生きざまが面白い。壮大なストーリー展開の中で、たくさんの登場人物が出てくるが、それぞれが個性的で魅力的。よくもまー、これだけの人間それぞれにキャラを立たせられな。そして、そんな魅力的で思い入れもあるキャラが、次から次へと惜しげもなく死んでいくのが、なんとも切ない。最後の幕切れは、ウワーーっとなったし、物流による国の支配がどうなるのか気になってしょうがない。次の岳飛伝も読まないことには気が済まない。まんまと北方ワールドにどっぷりはまっちまいました。

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著者プロフィール

北方謙三

一九四七年、佐賀県唐津市に生まれる。七三年、中央大学法学部を卒業。八一年、ハードボイルド小説『弔鐘はるかなり』で注目を集め、八三年『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞、八五年『渇きの街』で日本推理作家協会賞を受賞。八九年『武王の門』で歴史小説にも進出、九一年に『破軍の星』で柴田錬三郎賞、二〇〇四年に『楊家将』で吉川英治文学賞など数々の受賞を誇る。一三年に紫綬褒章受章、一六年に「大水滸伝」シリーズ(全五十一巻)で菊池寛賞を受賞した。二〇年、旭日小綬章受章。『悪党の裔』『道誉なり』『絶海にあらず』『魂の沃野』など著書多数。

「2022年 『楠木正成(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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