最後の冒険家 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087467420

作品紹介・あらすじ

熱気球の滞空時間と飛行距離で世界記録を樹立、ヒマラヤ8000m峰越えも達成した日本人がいた。その名は神田道夫。2008年に自作の熱気球で太平洋単独横断に挑み、海上で消息を絶った。命がけの空中散歩に魅せられ、あえて難しい挑戦ばかり選び続けた姿勢。かつて一緒に飛んだパートナーである著者が、不屈の精神で駆け抜けた稀有な冒険家の軌跡を追う。第6回開高健ノンフィクション賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • "地理的な冒険が消滅した現代の冒険とは、この世の誰もが経験している生きることそのものだとばくは思っている"

  • 気球でいろいろな世界記録を達成した日本人がいたということにまず驚いた。でも所詮物好きの道楽かと思ったら、公務員として働いていたという、全くのアマチュア冒険家だった。
    そんな冒険家、神田道夫が一回目の気球による太平洋横断に挑戦する際にパートナーとして選ばれた石川直樹による著書。
    結局一回目は失敗に終わるのだが、生還できたのも周到な準備のおかげ。二回目の挑戦では石川は参加せず、神田は行方不明になってしまった。
    そういった事実が、石川の視線で淡々と描写されている。
    そういえば風船おじさんってのもいたなあ。と本書を読んでうっすらと思いだした。

  • 新政府総理大臣・坂口恭平トークショーにて

    新政府総理大臣であられる坂口恭平さまのトークショーの対談相手として、坂口総理の支離滅裂かつ同じところをグルグル地球ゴマのように回り続ける話を的確なツッコミと相槌で見事に面白トークショーに仕立て上げたその手腕に惚れ込みました石川直樹先生。本職は冒険写真家なのですね。本書は石川先生が初めての空の冒険。気球による太平洋横断を「最後の冒険家」神田道夫に連れられてチャレンジし失敗したその過程と神田道夫本人を描いたノンフィクションでございます。


    最後の冒険家

    とは申しましても「なぜ失敗したのか」「どうやって生存したか」といった部分への言及は本書の半分以下に過ぎません。そう本書のタイトルを思い出して頂きたい。「最後の冒険家」でございます。つまり、本書はその最後の冒険家である神田道夫を石川先生が描いた作品なのであります。もちろん共に経験した太平洋横断がベースになっていることは間違いないのではございますが、人間が行ったことがない場所はないと言われるまでになった世界において、なぜ石川先生は神田道夫を最後の冒険家と呼ぶのか。そこに本書のすべてがあるように思えてなりません。
    本文を読んで頂いております奇特な読者の皆さまにおかれましては本書を通読し幼き日に置き忘れたあの冒険心を一部でも取り戻して頂ければ幸いでございます。

  • 著者は、陸と海をフィールドに活躍する写真家さんだけど(本書で「冒険家ではない」と明言されているので冒険家とは書かないが、北極点から南極点まで人力踏破プロジェクトに参加した経験を持つ人で、その記録も読み応え抜群だけど、K2の写真が本当に美しくて素晴らしいんで、そちらも是非)、本書は空、気球での太平洋横断。
    読み始めた時は「すごい!夢みたい、できるんだー!」とワクワク読み始めて、だんだんと現実(上空8000m以上の酸素が薄くてボンベが必要なエリアをを偏西風に乗って時速120kmで飛ぶ。しかも気球で。生身の人間が。)が見えてきて、ドキドキとハラハラが嫌な方向に振れてきて、著者の横断失敗の話では本当に怖くなってしまった。
    著者と一緒に挑戦した方は、そのあとの挑戦で行方不明になるのだけれど、著者がその最後の冒険についての考察を淡々と綴って文章は、根底に怒りにも似た深い慟哭が聞こえるようで読んでいて辛い。
    漂着した2人の冒険の証が、私の中の「なぜ、どうして」を増幅して、その先の日々を生きている著者を思った。この本は墓標なのかもしれない。

  • 熱気球で長距離飛行に挑戦していた神田道夫について。

  • 比較的初期の作品なのではないか。
    最後の「冒険」に対する考察がとても印象的。
    現代的な冒険とは、これを胸に生きていきます。

  • 上空は寒い、酸素が薄い、気圧が低い。登山と違って、海抜〇メートルから一気に上昇するので体の負担は相当のものと思われる。
    熱気球の世界ってのがあるんだなってことがわかった

  • わたしも自分の人生を“冒険”したい。
    些細な一歩でも、少しでも昨日と違う自分に踏み出せるなら、それは自分にとっての“冒険”であり、“生きている”ということなのだと、教えてくれた。

    彼らの乗っていたゴンドラが漂着した悪石島にも一度足を運んでみたい。

  • ヒマラヤの8000m峰に幾つも登頂したり、当時の最年少7大陸最高峰の登頂記録、北極点から南極点までを人力踏破した地球縦断プロジェクト「Pole to Pole」への参加など、写真家というよりも冒険家の一面があるように思える。

    だが、石川さんは明確にそれを否定する。

    「ぼくは自分のことを冒険家だとは思っていない。ある世界のなかで未知のフロンティアを開拓してきたわけではなく、まして前人未到の地に足を踏み入れたわけでもない。他人にもてはやされるような、いわゆる“冒険行”など、ぼくは一切おこなっていない」

    その石川直樹さんが「最後の冒険家」と称した人物、それが熱気球で旅をした神田道夫だった。

    高度世界記録、長距離世界記録、滞空時間世界記録と、さまざまな記録を打ち立ててきた神田道夫と、石川さんは自作の熱気球による二人での太平洋横断を試み、失敗した。

    そしてその数年後、神田道夫は一人で再挑戦し、姿を消すことになる。

    冒険家について書かれた至極の一冊。

  • <目次>

    <内容>
    2008年2月。気球による太平洋横断飛行中に消息をたった神田道夫。これが二回目のチャレンジだった。著者はその一回目のチャレンジに同乗していた人物。このときは失敗後、航行中の船に助けられている。本はその話を中心に淡々と進む。行方不明になったチャレンジは、単独行なので、飛んでいる時の様子はわからないから、その前で話が終わり、終章は、一回目の時の気球のゴンドラが悪石島で見つかるところで途切れる感じだ。ちょっともの悲しいドキュメントだったかな?

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著者プロフィール

冒険家、写真家

「2019年 『いま生きているという冒険 増補新版 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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