- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087467536
作品紹介・あらすじ
"ずっと好きだったんですと言うまでの長い旅路のここは途中だ"一途な女心を鮮やかにうたい上げる歌人・佐藤真由美が、古今の名歌をひもときながらつづる、甘く切ない記憶の数々。誰にも言えない片想い、失恋で流す涙など、千年の時を経ても変わらぬ恋心に迫る、恋愛短歌&エッセイ集。『乙女心注入サプリ』を改題し、単行本未収録エッセイと震災直後の心境をうたった新作短歌も収録。
感想・レビュー・書評
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どうしたらいいのかはまだわからないから考えている今を書く
佐藤真由美
短歌の二大ジャンルと言えば、相聞歌(恋の歌)と挽歌【ばんか】(死を悼む歌)。恋愛の渦中にいる女子学生たちは、現代の相聞歌の名手として、佐藤真由美の名前を挙げる。
1973年、新潟県生まれ。大学卒業後、出版社で女性誌の編集を担当したときに歌人枡野浩一に出会い、作歌を始めたという。歌集「プライベート」や、短歌とエッセーを組み合わせた「恋する短歌」など数冊の著書がある。
傷ついたことなんかないふりをして淡いピンクのブラウスを買う
東口バスターミナルでキスをして別れるために出会ったふたり
日常から離脱しない口語遣いで、どちらかと言うとビターな恋の設定を、加減良く歌にしている。
現在はさまざまな連載を抱えながら、3児の子育て中とのこと。ママ友達とも交際を広げつつ、恋心をふと思い出させる、いや味のない文体が心地よい。
ほめられてがんばるタイプだからつい恋人未満を常備している
こんな本音の歌などに、笑いつつ反応してしまう女性も少なくないのでは。
近刊の「恋する言ノ葉」は、刊行直前に起こった東日本大震災を受けて、巻末に書き下ろし短歌連作「悲しみに負けないように」を収録。掲出歌はその中の一首だ。行動に迷いつつ、その「考えている今」をこそ「書く」という誠実な声。考える、ということからは逃げてはいけないのだ。
(2013年6月23日掲載)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
当店の販売コーナーを担当くださる、
「さっぽろブックコーディネート」の尾崎さんが
どさっとシリーズでお持ちくださったので。
こんなにどっさりしているのだから、
きっと一段上行くオススメなんだろうと。
以下、抜粋。
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・誰かと恋をするときは、せいぜいきれいな傷をつけてあげたいと思う(僕がつける傷は輝きますように)
・正しいことを言う人というのは、恋をしていないのだ。
・背伸びしたら背が伸びるかと思って、けっこう無茶をやるほうだ。幸せになりたかったから、なまけたくなかった。
・待つ価値のある男だと今日証明してくれるなら
待っててあげる
・「いい人であることを恐れない潔さ」「よけいな心配を女にさせない男らしさ」というものが存在するのだ
・花の色は移りににけりないたづらに
わが身世にふるながめせしまに/小野小町(古今和歌集)
※ぜひ声に出して読んでみてほしい。なめらかにくり返されるラ行音がなんともなまめかしいから。
・結婚してずっと別れずに一緒にいることだけが、最高の関係とは限らないのでは?
・大丈夫、大丈夫と言い合うために、女友達は存在する。 -
佐藤さんは見かけによらず(失礼!)本当に良く短歌を読んでいらっしゃる。感心する。
そして、旧来の解釈に捉われずに自由に自分の経験、人生観から読み解いておられる。
それが素晴らしい。
特に3・11以降の作品は素晴らしい。 -
前述の枡野浩一さんプロデュースで歌人デビューされて、
短歌以外にも小説やエッセイなども書かれている佐藤さん。
3人のお子さんとの日々が垣間見れるツイッターも好きです。
アカウントは→https://twitter.com/mayumist1120
前半の短歌+エッセイの部分は恋愛成分多めで軽妙・痛快。
描かれている佐藤さんの記憶や経験のどこかに、
自分を重ねたりつなげたりしてしまいます。
p.76の一部の文章を抜粋。
"単細胞生物は、恋をしない。死という概念もない。どの個体も同じだからだ。違うから人は惹かれあい、その代償として死や別れが訪れる。"
短歌も引用しようと思ったのだけれど、うまく選べなくて、
エッセイと一緒でないと…という気持ちもあって迷って、
あとがきに添えられたこの短歌にしてみました。
"ずっと好きだったんですと言うまでの長い旅路のここは途中だ"
また、後半の震災後に書かれた文章や短歌は、
そのときの空気感をそのままとどめています。(この文庫は2011年10月刊行)
例えば<子どもへの手紙>のエッセイ、しみじみと染み入ります。
その中に出てくるこの文章、読書好きとして、とても共感しました。
"本があれば、死んだ人にも会えるし、本を通じて、ずっと後に生まれてくる人と同じ気持ちを感じることができる。"-p.193 子どもへの手紙
ちなみにこの文庫、解説が
3冊目に紹介する「誕生日のできごと」の著者・加藤千恵さん。
"大切な友だちから失恋したと連絡がきたときに、わたしがするのは、できるかぎり話を聞くということと、佐藤真由美さんの本を貸すことだ。"
とのこと。 -
解説を書かれている加藤千恵さんも好きだけど、佐藤真由美さんは加藤千恵さんのものよりちょっとだけ大人な感じで好きです。
こうやって読んでいると、恋には切なさを欠くことができないものだな、と思いました。
だからこそ、過ぎた恋もいつまでも心の隅に残り続けるのかな…。
震災直後の心境を歌った短歌にも心をうたれました。 -
やっぱり、短歌だけ、の佐藤さんでいてほしかった。物語、エッセイは短歌のよさを霞ませてしまうから。
正しいことを言う人というのは、恋をしていないのだ。 -
しみじみ読んでしまった。同意できることも同意できないことも知ってることも知らないこともあるけれど、しみじみと心に沁み入った。
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作者当人の短歌やエッセイはもちろんだが、
引用される歌や詩が素敵だなぁ、と思う。 -
2011年の本、61冊目。
何度も読み返したいな~と思える貴重な一冊。
今はわからない歌や言葉も、いつかわかるように。
「僕がつける傷は輝きますように ケースの隅のきれいな画鋲」
(千葉聡)
「泣くおまえ抱(いだ)けば髪に降る雪のこんこんとわが腕(かいな)に眠れ」
(佐々木幸綱)
今はわかりすぎる歌や言葉が、いつかわからなくなるように。
「いいやつで終わる恋など嘘だけど本当なんて特にいらない」
(佐藤真由美)
「もう二度と恋はしません
痛いのも痛かったの忘れるのもイヤ」
(佐藤真由美)
・・・・・・うーん、女々しい。笑