楊令伝 10 坡陀の章 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087468021

感想・レビュー・書評

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  • 楊令の国造は財源確保の為にシルクロードから東北藤原京までの道作りを目指そうとしていた。発想やよし、まだ鎌倉幕府誕生まで間がある、史書には載っていない彼らの国だけど、見守りたい。

    「役に立つのかな、それ?」
    「ああ」
    「よかった。あたしは、働いたよね」
    「働いた」
    徐絢が、眼を閉じた。唇は、動いている。羅辰が、かすかに首を横に振った。縫った傷のところから、出血が続いている。
    「死ぬのかな、あたし」
    「俺がついている」
    おまえには俺がいる。いまさら言っても、空しいだけだった。
    「何か、足りない、と思ってた」
    徐絢が眼を開いた。
    「いつも、なにか、足りなかった」
    徐絢の眼から、涙が流れ出してきた。
    「ありがとうって言ってみたけど、それでも、足りない」
    徐絢の躰に、なにかが襲いかかっているのを、候真は感じた。
    「いま、わかる。ありがとう。続きがあるのよ。ありがとう、あたしみたいな女、好きになってくれて」
    徐絢がいなくなるということが、候真にははっきり分かった。(226p)

    楊令伝、ちょっと女性に厳し過ぎはしないか?徐絢には生きて欲しかった。

    国造り、それぞれの処で闘いは続く。

    泰容が遂に動き始めた。

  • 久々に仄々・・・

    子午山の面々も久しぶりに登場します。


    水滸伝時代からのGeneralクラスの登場人物達がもはや残すところ史進のみ・・・
    変わりに若くて新しい戦力は入って来るのですが寂しいですね。
    梁山泊サイドは取り敢えず一定程度の落ち着きを見せている様ですね。

    一方、宋の話は置いておいて岳飛にもこれから上に立つものとして色々な仲間が集まって来たようです。何だか梁山泊の創成期のような懐かしさを感じます。

    何れにしても残り5巻で楊令伝が終わってしまいます・・・

  • 大きな戦が終わり、新しい国家作りへの第一歩。
    手に汗握る戦闘描写が大好きな読者には、少し物足りない印象(笑)
    でも、ずっと戦をしている訳にもいきませんからね…

    何のために闘うのか、ひとつの大きな目標を達成してしまうと、
    ちょっと寂しい感じがします。

    梁山泊がやがて国という形をとり、帝が即位したとする。
    そうすると、やがては腐敗した役人が増え、賄賂が横行する。
    すると国を倒そうと叛乱が起こるのは必然。
    結局それは宋と同じ道を辿るのではないか?
    それとも梁山泊だけは違うのだと言い切れるのだろうか?

    国の在り様は難しいものです…

  • 停滞期?過渡期?そんなに劇的に動いているわけでない時期での人の動き。なのになんかグッときてしまいました。
    またよく聞くフレーズだったりするんだけど
    「さらば、韓成。生きているというのは、別れの積み重ねだと、私は思っている」
    そうだよね〜と思うのでした。

  • 水滸伝に引き続き、一気読み。
    単なる国をかけた闘争を描くだけでなく、『志』という不確かなものに戸惑いつつも、前進する男たちの生きざまが面白い。壮大なストーリー展開の中で、たくさんの登場人物が出てくるが、それぞれが個性的で魅力的。よくもまー、これだけの人間それぞれにキャラを立たせられな。そして、そんな魅力的で思い入れもあるキャラが、次から次へと惜しげもなく死んでいくのが、なんとも切ない。最後の幕切れは、ウワーーっとなったし、物流による国の支配がどうなるのか気になってしょうがない。次の岳飛伝も読まないことには気が済まない。まんまと北方ワールドにどっぷりはまっちまいました。

  • 童貫を討ったことにより、戦いは一度終結する。
    宋をめぐる思惑は、あちこちに不穏のたねを残しているけれど、楊令はこれ以上梁山泊を大きくするのではなく、民が安心して豊かに暮らせる国づくりを考える。

    ここからみんなが幸せになっていければいいのだけど、そうはならないのが哀しいところ。
    侯真は失うために人生を生きているような気がして不憫。
    花飛麟のような感じで生きていくのかしら。

    戴宗はもう使えないのではないか。
    宋江と出会ったばかりの頃の戴宗は、懐の大きな人だったのに、今は何よりも心が老いて、小さく凝り固まってしまっている。
    それなのに肉体の衰えがほとんどないせいで、心の老いに気づくことができない。
    いつか、きっととんでもないことを仕出かしてしまうのではないかという予感と、妙に公孫勝が戴宗をさりげなくフォローしているので、最終的にはたいそうのせいで公孫勝が死ぬんじゃないかと不安になる。

    李媛もそうだけど、想い描く理想の国の姿が楊令と違う場合、それは梁山泊にとっての大きな穴になってしまうのではないかと思う。
    それを埋められるほど、まだ梁山泊は大きくはない。
    なんとかみんな足並みをそろえて欲しいけれど、それでは小説にならないもんなあ。

    岳飛が急激に成長した。
    童貫が生きていた時は、童貫の言うことを聞いているだけの、まだまだひよっこだったのに、急に一軍を率いる将の風格がついてきた。
    経験と置かれた立場がひとを成長させるんだなあ。

  • 童貫戦後の宋が倒れていく
    それぞれ次の道を模索する。
    梁山泊、金、宋、
    岳飛、張俊、楊令、
    史進と、葉敬の稽古の場面も印象的だった

  • 岳飛は主人公に匹敵する存在感がある。流石は中華で最もメジャーな英雄である。

  • 金が宋の首都開封府を落とし、宋の皇族や貴族を捕虜として金に連れ帰ったことにより、旧宋領は乱れた。
    青蓮寺の李富は我が子をいずれ帝に押し上げるため南で康王を帝とした宋(南宋)を興す。
    梁山泊は主な財源予定である日本から西域までの交易路の開拓に力をいれていた。

  • 3.9

    複雑さがかなり増してきた。
    今までの北方水滸シリーズには無かった、群雄割拠時代特有のGOT的要素が強くなる。国を操る調略の部分を覗くことで、なんとなく現代社会の裏側も知れるような気がする。

    なんとも懐が深い作品だ。学べることが多い。

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著者プロフィール

北方謙三

一九四七年、佐賀県唐津市に生まれる。七三年、中央大学法学部を卒業。八一年、ハードボイルド小説『弔鐘はるかなり』で注目を集め、八三年『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞、八五年『渇きの街』で日本推理作家協会賞を受賞。八九年『武王の門』で歴史小説にも進出、九一年に『破軍の星』で柴田錬三郎賞、二〇〇四年に『楊家将』で吉川英治文学賞など数々の受賞を誇る。一三年に紫綬褒章受章、一六年に「大水滸伝」シリーズ(全五十一巻)で菊池寛賞を受賞した。二〇年、旭日小綬章受章。『悪党の裔』『道誉なり』『絶海にあらず』『魂の沃野』など著書多数。

「2022年 『楠木正成(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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