女三人のシベリア鉄道 (集英社文庫)

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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087468106

作品紹介・あらすじ

与謝野晶子、宮本百合子、林芙美子。明治末から昭和初めの動乱期に、シベリア鉄道で大陸を横断した逞しい女性作家たちの足跡を辿り、著者もウラジオストクから鉄道で旅に出た。愛と理想に生きた三人に思いを馳せながら、パリを目指す。車中での食事、乗客とのふれあい、歴史の爪跡が残る街…世界で最も長い鉄道旅をめぐるエピソードの数々。三人と著者の旅が、時を超えて交錯する評伝紀行。

感想・レビュー・書評

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  • 与謝野晶子のことは学校の教科書レベル、宮本百合子は映画「百合子ダスヴィダーニャ」。
    林芙美子は従軍作家だったことと放浪記。

    その少ない情報で自分の中で持ってたイメージがすでに先入観となっていたみたいで、「意外〜!!」っていうことが何度かあった。

    与謝野晶子はほんと率直なひとだったんだなー。
    産んだ子どもを母親がかわいくないって思う事も、子が母親を食らって産まれてくることとかそんなこと言うひと最近いないよね。

    まー晶子が多産だったこともあるにせよ。

    百合子と芳子の関係も興味深く。
    お嬢さんな彼女たちと芙美子の視点の圧倒的な違いも。

    そしてやっぱりロシア!!!
    ほんとプーチンとか怖い国だし、戦争のとき日本より圧倒的に多い戦死者をだしてるとか。

    でもチェブラーシカやマトリョーシカとか惹かれるものもたくさん。

    アエロフロートには乗りたくないってのもあるけど、やっぱりいつか旅してみたい。シベリア鉄道で。ロシアを。

  • “シベリア鉄道”というタイトルにロマンを感じて買いました。
    加えて、女三人!
    勝手に想像した騒々しいおしゃべり旅ではなく、文学と社会主義を感じる紀行文でした。
    与謝野晶子については、以前も読んだことあり、この本で注目したのは、宮本百合子。
    いずれにしてもこの時代に、言葉もよくわからない異国に旅した女性たちの度胸に脱帽する。
    私はロシア人の名前が覚えられず、ロシア文学はほとんど読んでいませんでした。
    これからも、ロシア“文学”は読めないかもしれないけれど、この期に興味を持った、シベリア鉄道についての旅行記は、読みあさってみたいと思います。

  • いかにも文系の紀行文だなぁ。
    与謝野晶子、宮本(中條)百合子、林芙美子。
    近代文学史上大きな仕事を残した三人の文豪が時をずらしながら、シベリア鉄道をつたってパリへと旅をした。
    その軌跡を追いながらシベリア鉄道の追体験をする鉄道紀行。
    分厚い本ながら、あとがきでの総括と酒井順子の解説が本著を上手くまとめていた。

  • 気楽に読めるかと思ったが、誤算だった。
    一週間かかってしまった。

    与謝野晶子、宮本百合子、林芙美子のシベリア鉄道の旅を追体験する森まゆみの旅の記録。
    読み始めるまでは、それぞれの旅が個別に辿られているのかと思っていた。
    ところが、四人の女のユーラシアの旅が、渾然一体となっている。
    一人についてだけ知りたい読者には、ややまどるっこしいかも。

    ただ、逆に三人に通り一遍の興味しかなかったわたしには、森がガイドとなってくれたようにも思う。
    晶子にしても、百合子にしても、偉大ではあるが、自分にとっては遠々しい存在だ。
    芙美子は親しみやすいけれど、やはり時代の違いからか、十分理解できているとは思えない。
    森は、彼女たちの日記や作品、記録を丁寧に読み込んでいく。
    もちろん、盲目的に彼女たちを崇拝しているわけではないが、どうしてこの人はこんなに感情移入できるのだろう。
    どうしてそこまで、この時代の違う、そして「特別な人たち」に寄り添えるのだろう。

  • 着眼点がとても良いと思ったが、ちょっと読みづらい。
    3名もの著名な文筆家が交互に出てくるだけでなく、自分の体験やら知り合いの体験やらが唐突に出てくるので、誰の事を書いているのか一瞬分からなくなる事があった。

  • 与謝野晶子、宮本百合子、林芙美子の女性作家3人は、明治の末から昭和の初めにかけて、いずれもシベリア鉄道を使ってヨーロッパに旅をしている。
    これらの作家達の足跡をさぐりながら、実際にシベリア鉄道でパリまで旅をした作者の、女性作家3人の評伝(兼)紀行文とでも言うべきもの。

  • 近代日本文学を学びつつ、シベリア鉄道に乗った気分を味わえ、著者とともに旅をしたような気持になれる。

  • 与謝野晶子、宮本百合子、林芙美子についてたいして知らなくて、中国やロシアの歴史にもとんとうとく、旅行も別に好きじゃないわたしなのに、すごくおもしろく読めた。この「女三人」のシベリア鉄道での旅を追った著者森まゆみさんの旅行記のあいまに、この「女三人」についての説明や作品からの抜粋などがうまい分量ではさみこまれている感じで、まったく飽きずに読めた。なんだか、森さんの訪ねた場所に今も三人がいるんじゃないかっていう気がするような。
    森さんの旅行記部分の、トルストイとかゴーリキーとかの記念館みたいなゆかりの地を訪ねるところも興味深かったし。
    もっと共産主義とか、日本の社会主義運動について知っていたらもっと楽しめたのかなと思うけれども。
    森さんについても、「谷根千」のことくらいしか知らなかったのだけれど、いやいやすごい人なんだなとわかり(いまさら大変失礼)、もっともっと著作を読みたいと思った。

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著者プロフィール

1954年生まれ。中学生の時に大杉栄や伊藤野枝、林芙美子を知り、アナキズムに関心を持つ。大学卒業後、PR会社、出版社を経て、84年、地域雑誌『谷中・根津・千駄木』を創刊。聞き書きから、記憶を記録に替えてきた。
その中から『谷中スケッチブック』『不思議の町 根津』(ちくま文庫)が生まれ、その後『鷗外の坂』(芸術選奨文部大臣新人賞)、『彰義隊遺聞』(集英社文庫)、『「青鞜」の冒険』(集英社文庫、紫式部文学賞受賞)、『暗い時代の人々』『谷根千のイロハ』『聖子』(亜紀書房)、『子規の音』(新潮文庫)などを送り出している。
近著に『路上のポルトレ』(羽鳥書店)、『しごと放浪記』(集英社インターナショナル)、『京都府案内』(世界思想社)がある。数々の震災復興建築の保存にもかかわってきた。

「2023年 『聞き書き・関東大震災』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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