- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087468175
感想・レビュー・書評
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上。
制服の着こなし。体育のサッカー。くしゃくしゃの茶髪。ぴかぴかの爪。ピンク色をした唇。
かっこよくて目立つ男の子。ピンクが似合う女の子。
それは、上だから与えられる特権なのかな?
うーん、やっぱ特権を授かって生きている子が上になるんだろうね。
努力しても追いつけない。これって一種の才能だよね。
上。
確立された格差社会で三年間、上を貫き通す。
不安定な足もとに広がるのは、きみたちが嘲笑する下の世界。
ほんの数ミリ目測を誤れば、滑り落ちる静寂な底なし沼。
自分を守るために築く脆弱な関係は、繊細で危ういガラス細工のようだね。
でもまだ、きみたちは気づいていない。
下。
目立たないように。失敗しないように。迷惑かけないように。
バカにした笑い声。存在を無視された扱い。
そんなもの気づかない振りをする。
それが、きみ自身が選んで決めた学校という逃げ場のない世界での生き方。
下。
ねぇ。自ら下の立場を決めたきみたちには、描きたい世界があるんだよね。
なかなか真似できないよ。
それは誰にもジャマ出来ない、きみたちの特権。
開けば風が生まれる扉を持っているきみたちは、ひかりなんだ。
ひかりの前では、上のかっこよさもくすんで見える。
気づくのは、まだまだ先のことかもしれないけどね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
男子バレーボール部のキャプテン桐島が部活を辞めたことで、5人の17歳の高校生の日常に少しずつ影響を与えていく物語。登場人物が抱えているそれぞれの想いや悩み、葛藤、心情がリアルに描かれている。スクールカーストはいつの時代も重苦しくやっかいだ。7つの物語それぞれで主人公は違うが、別の話の中にも出てくることがあり物語同士の繋がりがあっておもしろかった。個人的には「菊池宏樹」の物語が好きで、
「大丈夫、お前はやり直せるよ。と、桐島に言ってやろう。お前は俺と違って、本気で立ち向かえるものに今まで立ち向かってきたんだから、そんなちっさなことで手放してしまったらもったいない、って、言ってやろう。
という文章がよかった。
心に残った言葉
・「恋っていう文字には下に心があるから下心。愛は真ん中にあるから真心なんよ」(志乃)
・高校って、生徒がランク付けされる。なぜか、それは全員の意見が一致する。
・大きく分けると目立つ人と目立たない人。運動部と文化部。
・自分は誰より「上」で、誰より「下」で、っていうのは、クラスに入った瞬間になぜだかわかる。
・僕らは気づかない振りをするのが得意だ。
・自分達が傷つきそうなことには近づかない。
・ひとりじゃない空間を作って、それをキープしたままでないと、教室っていうものは息苦しくて仕方がない。
・僕らには心から好きなものがある。それを語り合うときには、かっこいい制服の着方だって体育のサッカーだって女子のバカにした笑い声だって全て消えて、世界が色を持つ。(前田涼也)
・くだらないかもしれないけど、女子にとってグループは世界だ。目立つグループにはいれば、目立つ男子とも仲良くなれるし、様々な場面でみじめな思いをしないですむ。
・どこのグループに属しているかで、自分の立ち位置が決まるのだ。
・だけど、時々、なぜだか無性に、どんな子でもいいからたったひとりだけの親友が欲しいと思うときがある。笑いたくないときは笑わなくてもいいような、思ってもないことを言わなくてもいいような、そんな当たり前のことを普通にできる親友が欲しいと思うときがある。私たちは、そんな気持ちを隠すように髪の毛を染めたり爪を磨いたりスカートをみじかくして、面白くもないことを大声で笑い飛ばす。(宮部実果)
・俺達はまだ十七歳で、これからなんでもやりたいことができる。希望も夢もなんでも持っている、なんて言われるけれど本当は違う。これからなんでも手に入れられる可能性のあるてのひらかあるってだけで、今は空っぽなんだ。
・ダサいかダサくないかでとりあえず人をふるいにかけて、ランク付けして、目立ったモン勝ちで、そういうふうにしか考えられないんだろう。
・一番怖かった。
・本気でやって、何もできない自分を知ることが。
(菊池宏樹)
・「友未が言ってくれたんやん、おいしいんやし、好きなんやから、食べればいいやんって。私、誰かが好きやからって、ヨーグルト食べたりするわけやないもん。自分が好きやから、食べるんやもん」(東原かすみ) -
ふむふむ、こういう内容だったんですね。うん、おしゃれ小説。
桐島くんは、どこに、、?
自分の高校時代、部活に命かけてたからうなずけるとこもあったけど、時間が経ちすぎちゃたのかな。今の高校生たちはこんなこと考えながら生きとるのかな?
自分のことしか考えてなかったからわかんねーんだな。
比べて、なかったことにして、イライラして、ホッとして。
宮部実果さんのお話しが良かった。がんばれー!
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誰しもが共感できる内容。
17歳という繊細な時期に揺れ動く、感情の機微を上手く表現していると思う。
学校という小さな空間にも、確かに存在するヒエラルキーにもがく、上層と下層の苦悩や葛藤がリアル。 -
著者のデビュー作
高校生の各人が章名になり語っている
それぞれの思いなどはまぁ伝わるが
で、桐島は?
桐島の言葉も読みたかったです -
ついにこの本を手に取って読んでしまった....。
高校時代なんて何十年前だ、共感なんて出来るのか、絶対これは読まんだろうと思ってたけど、読後にはなんというか心がキュッ?となった。
楽しい?苦しい?悲しい?迷い?よく分からない確かにあった、あの時のこういう思い。それが話の全編にキレイに出ていたように思う。
意外に渦中にある年代の人でなくとも、数年経った人でも心がキュッとなる本かも。(だからキュッて何だ) -
思い返してみて、自分の高校時代にこんなカースト的な青春世界は経験しなかったと思う。もちろんクラスでのポジション取りに微妙に牽制しあってた人もいたんだろうけど、気づかなかったな、そういう攻防。スクールカーストなんて言葉を知ったのも良くも悪くも大人になってからだった気がする。
この小説の中で近いのは映画部の話。吹奏楽部にいたわたしには部活とコンクールの目標だけにひたむきで、自分に見えてる狭い世界だけが全てだった。実際、その世界の外にあった誰と誰が付き合ってるとか、かっこいい先輩が何組にいるとか、どんな髪型がかわいいとか気にしたことなかった。認識できてなかった。幼かったのか鈍感だったのか…。ただ幸いいじめられることもなく、のほほんと卒業したんだと思う。
いまだにこの小説にあるような繊細さはわからなくて、桐島が部活を辞めたからなんなんだってなってて、悔しく情けない気持ちになってる。実写は必ずみたい。 -
タイトルが秀逸。読みたいと思いつつ、長いこと積読していた本。
キラキラしていてエネルギーに満ち溢れているのに、空虚で刹那的。世代を超えて共感できる感覚なのだろうか。ちょっとの気恥ずかしさをもって読み進めた。映画も観てみたい。そして朝井リョウ氏の作品も追いかけたいと思う。 -
まずタイトルが秀逸。さらに話題の桐島本人がでてこないのがおもしろい。取り上げられるのは桐島と親しかったり接点がなかったり、外の人である。
この物語は(失礼な言い方かもしれないけれど)若いからこそかけたのかなとも思う。それなりの年の人が描く高校生って憧れとか上からみてる感じとかが投影されてしまうけれどそれがない。勿論青春群像だからある程度の美化やデフォルメはあるけれど嘘臭くない。
ほとんどの高校生にとって学校は世界そのもので上とか下とか常に立ち位置を気にしてて、無難に傷付かない方法を探している。大人は彼らに白いキャンバスだ、好きな絵の具で好きな絵が描けるんだ、なんていうけれど未来に夢を描きながらも彼らは自身に絶望している。光をみながら闇に埋もれる。きっとそうだ。朝井リョウはそれをわかっている。
悪くない。とりあえず他の作品も読んでみようと思った。
そしてーー、その狭い世界を出たとき、彼らが上とか下とかそんなものを越えた価値あるものを見つけられますように。-
いったい桐島本人の物語はいつなの?とわくわくした気持ちでいっぱいになりました♪。
以前読んでいた本でしたので、楽しくレビューを拝見させていた...いったい桐島本人の物語はいつなの?とわくわくした気持ちでいっぱいになりました♪。
以前読んでいた本でしたので、楽しくレビューを拝見させていただきとてもうれしかったです★2013/02/22
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多感な時期の学生の繊細な気持ちが、リアルに描かれている。
恋愛、友人関係、将来。
高校生にしか感じられないもどかしさが詰まっている。
なんとも言えない気持ちを描くのが本当にうまいなと思いました。