追想五断章 (集英社文庫)

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著者 : 米澤穂信
  • 集英社 (2012年4月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087468182

追想五断章 (集英社文庫)の感想・レビュー・書評

  • 〇 概要
     菅生芳光は,バブルが崩壊し,父が事故死したため,学費が払えなくなり,大学を休学する。そして,東京で伯父の古書店に居候している最中に,死んだ父親叶黒白という筆名で書いた五つの「リドルストーリー」の小説を見つけてほしいという依頼を受ける。依頼人は,一つ見つけるたびに,謝礼として10万円を支払ってくれるという。全て見つけることができれば,大学に復学できるかもしれない。そう,期待して,5つの「リドルストーリー」を探す。「リドルストーリー」を探していくと,依頼者の父親が,「アントワープの銃声」という事件の容疑者であったことが分かる。依頼者の父親が5つのリドルストーリーに秘めた思いとは…?

    〇 総合評価 ★★★★☆
     5つのリドルストーリーがあり,そのうち4つに2つの結末を用意し,結末を誤認させることで,誤ったメッセージを読み取らせるというプロットは,かなり面白い。5つのリドルストーリーも「奇妙な味」の話としてそれなりに読める。この「仕掛け」を楽しめるだけでも名作といえる。ずっと読み継げるようにしてほしい(創元推理文庫とかに入ってほしい。)。
     ただし,欠点がないわけではない。最大の欠点はキャラクターが希薄なところ。作品全体がビターな仕上がりだけに,もう少しキャラクター性があれば,最高レベルの名作になっていたと思う。惜しい。
     その分,余計な思い入れをせずに,作品の仕掛けを堪能できるともいえる。非常に玄人受けしそうな作品

    〇 サプライズ ★★★☆☆
     リドルストーリーを見つける話に併行し,主人公の菅生芳光が大学を辞めることになった状況,バブルがはじけ,店を売り損ねた古本屋店主の状況,そして5つのリドルストーリーの作者である北里参吾の生涯などが描かれる。アントワープの銃声事件の真犯人が,当時4歳だった北里可南子だったという点は,見せ方によっては大きなサプライズになったと思うが,サプライズを狙った見せ方になっていない。読者の多くは途中でこの真相に気付くだろう。「インシテミル」や,「折れた竜骨」でも同様の印象を持った。サプライズより論理を重視するタイプの作者なので仕方ないところか。★3。 

    〇 熱中度 ★★★★☆
     物語の作り方は,さすが米澤穂信と思うデキ。5つのリドルストーリーを探す展開はスピーディーで飽きさせない。5つのリドルストーリーのデキはそこそこ。飽きさせない展開ではあるのだが,やや盛り上がりには欠ける。久瀬笙子も,特に盛り上がりなく物語から退場する。無意味な盛り上がりは不要だが,もう少し起伏があってもよかったかも。

    〇 インパクト ★★★☆☆
     5つのリドルストーリーが存在し,それらに用意された複数の結末に,トリックが仕掛けられているというプロットは見事というほかない。作品のプロットそのもののインパクトはある。しかし,登場人物の魅力が欠けており,物語全体の起伏に乏しいので,作品の印象はそれほど強くない。★3程度

    〇 読後感 ★★☆☆☆
     菅生芳光は復学を諦め,実家に帰ることになる。北里可南子は,自分が殺人者であるということを確定的に知る。作品全体に,人間味があまりないので,そこまで読後感の悪さを感じないが,よくよく考えると,相当に読後感の悪い作品である。

    〇 キャラクター ★☆☆☆☆
     かろうじて印象に残るのは北里参吾だけ。菅生芳光,北里可南子を始め,登場人物のほとんどにキャラクター性がない。話そのものに集中させるために,あえて人間を描いてないのかもしれないが…。

    〇 希少価値 ☆☆☆☆☆
     人気作家の人気作品。希少価値はない。

    〇 メモ(5つのリドルストーリー)
    〇 奇蹟の娘
     ルーマニアに「奇蹟の娘」がいるという。その娘は,ずっと眠り続けており,この世の災いを,... 続きを読む

  • 犬はどこだっぽかった。5つの小説は奇妙やし昔風の言い回しがあんまり好きではなかったけど、最後のつながりは面白かった。

  • 綺麗な謎解きと辻褄合わせ。まさに筆者の面目躍如といった作品。
    ただ、鮮やかではあるが、その反面、特に強く印象に残った場面はない、かな。
    読み返すことはしないと思う。

  • ブックオフで。古本屋の店員がひょんなことからある女性より父親が書いた物語を探して欲しいとの依頼を受けるところから話がはじまります。1話、2話…と見つけて行くうちにその父親絡みの過去の事件を知ることになって…という展開。非常に構成が面白いし、内容もよく良い小説でした

  • なんだろう、伝言ゲーム的な感じ。ドラマ化しやすそうな作品だったなぁ。作中作の意味合いを考えるという点において、ミステリー感があるというか、いろいろ考えさせられる。ちょっと混乱するけど。

  • 大学に復学するために金が必要だった芳光は、報酬目当てに小説探しを伯父に内緒で引き受ける。
    調べていくうちに、小説を書いた依頼人の父親が未解決事件の容疑者だったことを知る。
    事件の真相は何だったのか?
    不景気をまともに受けた芳光の父は、金策に疲れ果てて事故死した。
    ひとりきりになった母は、学業が途中の芳光を案じながらも家に戻ってくるように懇願する。
    そして、大学生活を謳歌していた芳光は、突然の環境変化についていけずに大学へ戻ることを諦めていない。
    五編の小説を探していく中で芳光がたどり着いた真実は、愛ゆえの哀しみにあふれたものだった。
    いい物語だったとは思う。
    でも、残念なことに登場人物の誰にも共感できなかった。
    どうすることが一番いいのか、自分はどうするべきなのか。
    芳光が迷っている間も時間は過ぎていく。
    なぜ依頼を受けてしまったのか。
    その答えに気づいたとき、初めて芳光は現実を受け入れ明日を考えるようになったのだと思う。
    ミステリーではあるけれど、青春の真っ只中にいる挫折を知った人間を描いている物語でもある。
    派手さはなく、どちらかといえば重い空気が漂っている。
    結末には「なるほど」と思えるものがあったけれど、ミステリーとしての面白さはあまりなかったように思えた。

  • 古書店員(バイト)が、父の残したリドルストーリー5編を集めたいという女の依頼を受けて、父子の歴史を追っていく物語。
    大どんでん返しはないけれど、引き込まれる。物語の変化があったとき、主人公の感情の動きは大きいものの、穏やか。彼自身が淡々として知的だから、ガチャガチャした激情ミステリーにならないところがいい。

  • 米澤さんらしい繊細な描写。北里氏のリドルストーリー普通におもしろかった。

  • 散らばった5つのリドルストーリーを探す話。

    叙述トリックはないのに、はじめから読み直したくなる。

  • 地味で淡々としているのだけど、あっと驚くミステリーとは違った良さがあった。

    父親の娘に対する心情を想像できる余韻もよかった。

    夫婦間の感情は藪の中ってところも意外と好き。

  • 初めて、リドルストーリーというものを意識した。
    アントワープの銃声など耳馴染みがある気がするワードがあったり、作中作もどこか親しみを感じた。
    劇的な印象はないが、トリックは好みだった。

  • はじめはかったるく読んでいたんだけど、途中からいろんな物語が絡み始めて、どんどん面白くなってきた。
    良くできたお話でした。
    作中に出てくる短編の雰囲気も好みだった。

  • これもまた日常の謎
     巧というかドライというか、米澤氏の人物描写は特有です。本作はそれがよく表れていると言えますし、また違った趣があると言えるかもしれません。
     まるで灰色の曇り空が覆っているかのように、薄暗く、静かに物語は進行していきます。そこに登場人物の個性や人生を描くのは無用ということでしょうか。見方によっては、作品全体がリドル・ストーリーになっていると捉えることもできます。
     故人が残したとされる5つのリドル・ストーリーに隠された真相とは。暗く調子を落とすことで、アイデアがより一層引き立っています。大人の本格ミステリという異名の通りでした。

  • 温存してた米澤穂信をとうとう読んだ。
    相変わらず、大きな山があるわけではないけど、しみじみと面白いというのか、読み終わると、うん、面白かったな、となるお話。
    リドルストーリー、という言葉をそもそもこの小説で初めて知って、さらにその逆展開で物語が進んでいくところが、自分にとっては興味深かった。
    160504

  • 再読になる。前に読んだ時に感じたことをはっきり覚えていないのだが、前より今回の方が引き込まれて読んだ気がする。5つのリドルストーリーと、全体で1つのリドルストーリーとして楽しめる。楽しい気持ちになる…とは少し違う。
    2016/4/21

  • 2016/4/6読了

    積読していて、時間ができたのでやっと読了。
    リドルストーリーって初めて聞いた。

  • 五つのリドル・ストーリーを探していくお話…と見せかけて、読み進めていくうちに物語の本当の顔が見えてくる。不思議な作品でした。リドル・ストーリーの残された一行が気になるがそう簡単には読ませてくれないところには焦らされますが、だからこそ先が気になって読んでしまいます。 冒頭の作文が、物語の終盤で大きな意味を持つのも面白い。2回目を読むと、全く印象が変わる作品だと思います。(図書館)

  • 不思議な世界に迷い込んだ気分で読み続けてしまう。
    事の真相は何なんだ?というのは一番の誘惑。

  • 暗い。そこはかとなく暗い閉塞感の中に、奇妙な情熱があって。つい、読み終えてしまった。

  • 「父が遺した5編の小説を
    探してほしい」
    古書店に居候する主人公が、
    とある女性に、依頼される。

    5編の小説は、
    リドルストーリー【結末のないお話】。
    最後の一行だけを抱えたその女性と、
    一編一編を辿るうちに
    過去の 不可解な事件が浮かび上がり...

    よくできてます

  • 読み始めてからしばらくは
    何が物語られるのかすらわからない。

    かなり読み進めてからようやく
    これは20年以上前に起こった
    ひとつの事件の真相に迫りつつ
    あるのだと理解する。

    ひとつの真相にたどりつくまでに
    一人の男が 自分の人生には
    欠片ほどの物語も含まれては
    いないのだと知る。

    そうして
    五つの断章が指し示す真相に
    行き着くことをやめ
    何ひとつ物語を残さぬ人生に埋もれることを
    諦めとわずかな失意の中に選んだその男の心に
    期せずして物語は その素顔を明らかにする。

    もはや誰にとっても意味を持たぬ…
    しかし知り得た者の心の深奥には
    一生巣食い続けるに違いない真相は
    その物語の衝撃的な華々しさとは裏腹に
    この世からはただ埋もれ 忘れ去られ
    消えてゆく。

    そこには幸せも 不幸すらも生まれずに。

    読み応え充分。ただし読み終えて心は重い。

  • “ある年代以上”ながら、“あの事件”には思い至らなかった。「ビブリア」とは似て非なる古書店ミステリー。事件の“真相”は途中で見えたが、リドルストーリーに引っ張られて最後まで楽しめた。

  • ≪問題は,わたし自身のことです≫

    リドルストーリー好きなので,「え?結末をその都度出しちゃうの?!」と思ったけど,いやー面白かった.
    5つのリドルストーリーも面白いし,「アントワープの銃声」の真実につながったカタルシスはため息がでちゃう程に驚きと悲しみがごっちゃまぜ。
    こんな読後の感覚を味わえてよかった.

    さて,僕の物語はどうだろうか.
    あなたの物語は,どう続いていくのだろうか.
    どう,語られるものだろうか.
    どう,語ってきたのだろうか.
    覚えていること,感じたこと.
    本当にあっていますか?

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追想五断章 (集英社文庫)の作品紹介

5つのリドルストーリーに秘められた物語
古書店アルバイトの芳光は、依頼を受け5つのリドルストーリーを探し始める。実はその著者は生前「アントワープの銃声」事件の被疑者だったことが明らかになり……。

追想五断章 (集英社文庫)の単行本

追想五断章 (集英社文庫)のKindle版

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