宵山万華鏡 (集英社文庫)

  • 5043人登録
  • 3.71評価
    • (304)
    • (532)
    • (516)
    • (90)
    • (8)
  • 500レビュー
著者 : 森見登美彦
  • 集英社 (2012年6月26日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087468458

宵山万華鏡 (集英社文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 京都に生まれ育って23年、宵山には高校生の時に一度だけ行ったことがある。
    もちろん彼女連れなんてことはなくて、いつもつるんでいた友人五人と街に繰り出した。
    どこまでも続く人の波、むせ返るような暑さと湿気、ほんとうに方向感覚を見失うようなあらゆる方向からの音。
    この宵山万華鏡はその全てをありありと私に思い出させた。
    ほんとうに妖怪くらいいてもおかしくない。お祭りの夜だし。

    今年ももうすぐ祇園祭の夏がくる。
    数年ぶりにあの万華鏡の夜に繰り出すのも悪くないと思えた。

  • 永遠に終わらない「祭り」の物語。

    祭りは賑やかで楽しい。けれど祭りが賑やかであればあるほど、終わる時の寂しさもひとしおだ。いや、むしろ終わる時の寂しさを知っているからこそ、祭りは賑わうのかもしれない。せめて今はあでやかに咲けとばかりに、短いハレの日を祝うのかもしれない。祭りはどこか青春と似ている。また人生とも似ている。

    もともと祭りは神事であり、「ヒト」と「ヒトでないモノ」の交感の場であったという。今は宗教性より娯楽性が増したとはいえ、その起源を考えると、祭りの雑踏の中でふと異界へ迷い込んでしまう気がして不安になるのは、あながち迷信とはいえないのかもしれない。祭囃子の笛の音にどこか憂いを感じるのも、じつはヒトの本能なのかもしれない。

    賑やかなのに寂しくて、美しいのに恐ろしい。『宵山万華鏡』は、そんな祭りの本質を、ぎゅっと濃縮して一冊の本として封印したような作品だ。全6篇の連作短編集だが、同じ《宵山》を見ているのに、登場人物によって全く異なる世界が展開されてゆく。ある者にとっては壮大な茶番劇であり、ある者にとっては青春最後の打ち上げ花火であり、ある者にとっては異界への入り口であり、さらに、異界の入り口で踏みとどまる者、異界で永遠にさまようことを選ぶ者、異界と現世の境界に立つ者、完全に異界の存在と化した者がいる。文字通り魑魅魍魎の跋扈する世界。

    祭りの終わりは寂しいが、終わらない祭りほど虚しいものはないだろう。「死は悲しい。しかし、死がなければ人は死を望むに違いない」と言った人がいる。還るべき日常を失った祭りは、もはや祭りとは呼べまい。それは既に「ヒトでないモノ」の領域だ。

    どんなに美しく楽しげに見えても、永遠に変化しないものにはヒトは本能的に恐怖を抱く。一方で、抗いがたい魅力をも感じる。《宵山様》の弄ぶ玩具が万華鏡だというのは象徴的だ。あの無限に続く美しい模様に心奪われた経験のない者はいないだろう。だが、自分があのような鏡の中に閉じ込められたら正気を保てるだろうかと、恐怖を覚えたことのある者もまた多いだろう。にもかかわらず、或いはそれゆえに、万華鏡も《宵山様》も私の心を惹きつけてやまない。

    たった一冊の文庫本の中に、森見先生は《宵山》をまるごと閉じ込めてしまったみたいだ。本を開けば、溢れんばかりのイマジネーションの奔流を覗くことができる。まるで内田百閒か泉鏡花のような幻想的な世界を、どうして平成の舞台と文体で作り出すことができるのだろう。こんな作品が読めるなら何年でも私は待つ。だからゆっくり休養してください、森見先生。

  • 現実の世界と宵山様がいる別の世界とリンクしてその境界が曖昧でクルクルと万華鏡のように変化し、幻想的な世界を醸し出しているのが魅力的。あとがきで著者自ら祭りの神秘性について語られていますが、確かに祭りというのは異世界とまでは言わなくても、この世と別の世界とが何かの拍子に繋がってしまうような非日常の感覚がありますね。幼かった頃、人混みで迷子になるんじゃないかと思った怖さ、それを上回る祭りから得られる高揚感、そんな感覚を久しぶりに味わいました。恐るべし宵山、恐るべしモリミー!

  • 「夜は短し・・・」が少し読み進め辛いという印象だったので、不安に思いつつも装丁がきれいで思わず買ってしまいました。

    祇園祭宵山の一日を舞台にした不思議なお話。
    少し怖くて不気味・・・でもその不思議な世界に引きこまれました。
    それぞれのお話の繋がっている部分、お話の裏側、最後の「宵山万華鏡」で「???」ってなったと同時に鳥肌が・・・
    ありえないのに、ありえそうという舞台設定と各編各編の繋がりの描かれ方がうまいと思いました。

    語り方が独特な作者ですが、お話はやはりおもしろいので、慣れたらはまりそうです。

  • 森見さんの書く文章ってわくわくする。
    もしかしたらこういう世界があるのかもしれない、
    と思えるぎりぎりの現実感があるのがとてもすき

    私が一番好きなお話は、一番初めと終わりの姉妹のお話と、真ん中の偽宵山を作るお話。
    学生の頃の下らない感じ、好きです。

  • 幻想不思議ワールド炸裂。
    京都にゆかりのない人間でも、一度宵山に
    行ってみたくなります。

    読むと、自分の頭のなかに不思議世界が構築される
    感じが好きです。

  • 奥州斎川孫太郎虫って、
    無闇に言いたくなる。

  • すっかりはまった森見登美彦作品。読むのは5冊目。
    京都祇園祭、宵山の夜を舞台にした6作の連作短編集。

    頭から宵山姉妹、宵山金魚と読んで「何だか今回のは期待ほど面白くないなぁ」と思っていたら、そこから一気に加速。
    まるで魔法にかけられたみたいにグイグイと引き込まれる。
    特に宵山金魚の宵山様への道の描写が何だか冗長だなと思っていたが、それをドタバタと作り上げる過程を披露する宵山劇場、不思議な舞妓と大坊主に連れられトレースする宵山万華鏡を読んですごいと思った。
    一度読んだ場面が後から後から別の角度で語られ、その度に場面を読み返して感心した。

    宵山劇場の高藪さんの登場ににやりとしたりして楽しんでいたら、宵山回廊と宵山迷宮では背筋がヒヤリとする恐怖を味わわされる。繰り返す宵山、15年前に消えた娘、世界の万華鏡。
    同じ日が繰り返す系は度々書かれた設定だと思うけど、連作短編で2作やるのはすごいと思った。そしてどちらもタイトルが内容にぴったりマッチしていて秀逸。迷宮は抜けられるけど、回廊は…。

    始めの宵山姉妹の姉のほうが出てきて、全てが収束する宵山万華鏡。宵山様はやっぱり寂しいのかな。そこを考えると少し切ない。
    最後の妹の言葉は、はじめは意味が分からなかったけれど、最後に読むととても意味深。

    何度でも読みたくなる、大満足の一冊でした。

  • うーん、面白かったし、怖かった。内容としては『四畳半神話体系』に近いところがあったかな。でも、宵山、というお祭りの日が舞台であることで、神秘性が増してる気がするし、おどろおどろしいかんじも増してる。私は四畳半よりずっと好きだな。そも四畳半は世界が狭すぎて、話が矮小になりやすかった気がして。これは短編連作集なこともあり、主人公が色々変わるし、立場も変わる。話の裏を観てる気分でニマニマしたり、今までの森見ワールドを味わってる人なら、おお!あの人が!というシーンもある。そういうのはたまりませんねぇ。

  • お祭りの中で現実と幻想が入り交じる不思議な話。

    初めての森見作品でしたが、独特の世界観に見事に引込まれました。
    ただ、合う合わないの差は大きいでしょう。
    合えばとことんのめり込むし合わなければ全く読み進める気が起こらないかと思います。
    私は前者でしたので、お祭りのどこか異世界に繋がっていそうな幻想的な雰囲気にまるまる呑まれて、読了後には京都に行きたいという思いが強まりました。
    また、作品全体の雰囲気は幻想的でありながら、仕掛けも用意してあって、悪戯の話は笑えました。壮大な悪ふざけに全力になる彼らが好き。

全500件中 1 - 10件を表示

森見登美彦の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有川 浩
米澤 穂信
有効な右矢印 無効な右矢印

宵山万華鏡 (集英社文庫)に関連するまとめ

宵山万華鏡 (集英社文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

宵山万華鏡 (集英社文庫)の作品紹介

祇園祭の京都を舞台にした森見登美彦の連作中篇集「宵山万華鏡」(ヨイヤママンゲキョウ)が文庫化!表題作ほか計6編収録。森見流ファンタジーの新境地

宵山万華鏡 (集英社文庫)のKindle版

宵山万華鏡 (集英社文庫)の単行本(ソフトカバー)

ツイートする