なつのひかり (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.12
  • (118)
  • (197)
  • (1012)
  • (166)
  • (44)
本棚登録 : 4086
感想 : 323
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087470482

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 妻を探す兄。その兄を探す主人公。"誰も彼も何かを探しているのだ。誰も彼も何かを探していて、だからどこかしら出かけていく場所がある。"夏の夕方5時、時が止まると、場面はカメラのシャッターを切るように何度も切り替わる。日常と非日常の境があいまいで謎に満ちた物語。

  • 夏になったら再読しようと思ったらすっかり夏の終わりに。最初の方の引用文、これはもしやと思ったらやっぱり谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」で、この本の夏の陽射しが作る日陰そして日陰から流れ出る空気感を、今まで読んだ時よりもずっと美しく感じられて、現実と幻想(というか妄想)の境は曖昧に溶け合ったような気がしたのでした。読み手の経験一つで、記された文章の立体感はぐんぐん増す。これが再読の楽しみというもの。これからも再読したくなる本に出会いたいし、そんな本たちを更に深く味わえる生活を送りたいものです。素敵でした。

  • なんとも不思議な物語。でも、語られる夏の雰囲気は本物っぽい。二重人格?の兄貴が元美少年ぽい。

  • 2014.09.18

  •  体も顔もすみずみまで洗い、小さなシャンプーで髪も洗うと、私はもう一度お湯につかる。夏の夕方、こんなふうにたっぷりのお湯につかるというのはほんとうに極楽だ。







    「来年の今月今夜、なにをしているだろう」
    「…………」
     たぶん、と言いかけて口をつぐんだ洋一の言おうとしたことが、怖いくらいはっきりとわかった。たぶんお互い別々の場所にいて、今夜の月の美しさなど思いだしもしない。まるで一度も会ったことがなかったかのように、涼しい顔で別々の生活をしている。
    「そうね、たぶん」
     それを淋しいとは思わなかった。淋しくも悲しくもなく、私たちはただそれを知っていて、とてもしずかな気持ちでその現実をうけいれる。いつだってそうだ。現実というのはうけいれる他につきあいようがない。
    (略)
    「でもさ」
    洋一がさわやかに笑って言った。
    「でも、いまはまだ今年の今月今夜だね」
    「…………」私はしみじみと幸福な気持ちになった。未来はどうすることもできないけれど、いつだって今はまだ今年なのだ。




    ・:・:・:・:・:・:・:・:・
    なつのひかりというタイトルに惹かれて読み始める。
    江國さんてこういうのもかくんだ!という驚き。
    よくわからないふわっふわの世界観のなかに光るグロテスクさは少し小川洋子さんに似ている。もっとマイルドで、素朴だけれど。
    日常の何気ないきらきらを丁寧に集めて、ファンタジー世界に移植して、セピアにしました。というかんじのおはなしだった。

  • 世界観がとても不思議で
    わくわくした♡

  • 140709*読了

  • 江國さんの作品を読むとお酒が飲みたくなります。
    今回はビール!

  • 江國香織作品の絵本の類には興味を示さずに恋愛小説しか読んだことがないので突然異色な作品を引いてしまったなというのが正直なところ。
    色々と引っかかったまま、それはつまりどういうことなのとミステリー小説を読まされてまった気分…。

  • ふしぎ。でも、なんだか引っかかる。

全323件中 61 - 70件を表示

著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

江國香織の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
江國香織
江國 香織
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×