なつのひかり (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 323
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087470482

感想・レビュー・書評

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  • 風変りな物語なのに、なぜか心地よい。
    童話を読む子どものように無防備になって、迷路に迷い込んだように楽しめました。

    探し物とは、遠い記憶とか、もっと大切なもの。目に見えないもの。
    読み終えて、21歳になった主人公とともに、すがすがしい気持ちになれました。

  • 今から24年前、高校の図書館で出会い
    何度も何度も、夏が来るたびに、咀嚼するように読みました。

    簡単に変えられない、同じことの繰り返しの日常に、足を取られて進まず、もがく感じがよく表現されていて。
    でも、最後に大きな変化が起きて(当事者たちにとって)それでも世界は変わらない。

    何度読んでも色褪せない、
    なつのひかり。
    大好きです。

  • わくわくします。不思議な世界に引き込まれます。
    江國さんの描くエキセントリックな世界。絶対にありえない。
    けど、目が離せない。
    解説で、これは青春を描いているということが書かれていた。
    あっという間の季節の不思議な物語。
    何かを得ることは何かを失うこと。まさに青春そのもの。

  • 江國香織さんが好きだし、このおかしなファンタジーな世界観が好きで、
    持っていたい本、時々読みたくなる本になった。
    きっと、夏に読むと良いかも。

    35歳、独身
    転職活動はうまくいかず、婚活はよくわからない。
    休みの日は、なんだか空っぽになって、
    スマホに支配される毎日

    読むきっかけは、江國香織さんの世界が好きで、
    読みたくなって図書館に行ったらこの作品があった。
    読み始めて気づいたけど、2回目だった。

    あらすじにもかかれてたけど、
    シュールなファンタジーな作品。
    登場人物は、
    ・あと一週間で21歳になる函崎栞ちゃんかんざき
    ・ナポレオンというヤドカリちゃん
    ・ナポレオンの飼い主の薫平 くんぺい 
    ・兄 幸裕の愛人 推定50代の順子さん
    ・兄の幸裕 独特な人物 でも栞はそんな兄を愛しているの
    ・兄の妻の遙子さん 江國香織さんの作品に出てくる、
    私の最もな憧れな女性像 色が白く、細く、儚く、何か不思議なものを持っている美しい人
    ・そして、姪っ子の陶子ちゃん
    ・陶子ちゃんが赤ちゃんの頃、盗んでた中学生のなつみちゃん
    ・お野菜屋のおばあちゃん
    ・鳥の巣頭みたいなめぐみさん
    ・同じマンションに住む、くすくす笑ってばかりの双子の女の子

    なんなんだろう。
    栞の大好きな兄夫婦の、宝物探しというなの、
    すれ違っていた感情を、
    こう、見つける、再確認するために、
    栞の周りでは、おかしなファンタジーが起こる物語

    登場人物の個性や表現が素晴らしく、好きになる。
    特に、ヤドカリのナポレオンが出てくるシーンには、
    栞と同じ気持ちにもなり、くすっと笑えた。

    一番良いと思ったところは、
    栞が夏の明かりが好きなところ。
    わたしにもなんとなくあり、夏の明かりはなんか昔や地元を思い出させてくれる。
    あの頃の自分、あの時何かしてた自分を。
    今の自分が取り残されたみたいになってしまうけど。
    あと、もう一つは栞が過去の数々のエピソードを合間に話しており、それもとても好きだった。

    ガラスののすのこ棒の話。

    ホテル・モンパルナス

    解説は三木卓さん
    冒頭が、小説家目線の内容で面白い。
    読み手は主人公の栞と自分を置き換えて考えてるだろうか。ところが、小説の展開が意表を得ており、その効果でその先のページを繰る意欲が湧かせることができるなら、最初の部分がまず成功している結果とのこと。
    わたしも、ナポレオンが銭湯へ入っていく姿には笑えました。落語的なことがおこったとのこと。
    とても面白い解説で、現実の男と女の間の出来事をファンタジーに仕立てているとか。
    文末で、
    そして、こういう作品は、細かい部分部分の生き生きした表現箇所を楽しんで下さい。
    わたしは、なつみちゃんがゴムのヨーヨーに、きゅっきゅっと歯をたててみるのも好き、とい
    うようなところでとてもうれしくなりました。
    女の子の世界にも、そういう楽しみがあるんだと具体的に知った、と思ったからです。そういう生きていることの単なる、というか、何
    でもないというか、しかし生きているということを価値づける感覚の快楽、ともいうべきも
    のが、あちこちに光っているからです。

    よかった。好きな作品になった。

    この本を読んで、改めて読書を日々の習慣にしたい。
    小説が好きで、好みはあるけど、
    本を読むことによって、現実の世界から離れる空間が好きで、自分に必要。
    いかに、日々空っぽに過ごしているか痛感する。

    ヤドカリを見に行きたくなった。

  • これは私にとってとても大切な物語です。

  • ビールを飲むときは、ひろびろとした麦畑を想像しながら飲むの。そうすると、飲めば飲むほど健康になりそうな気がするでしょう?

  • かなり混沌とした内容だが、すんなり世界に入り込める。江國さんのみずみずしい文章のおかげかな。登場人物が皆魅力的で、情景描写もありありと思い浮かべる事が出来る。愛おしい作品。

  • 子供の頃に読んで、パルレモアダムールってどんな曲だろう…と思っていた。
    パルレモ・アダムールだと思っていたけど、
    フランス語をかじって、パルレ・モア・ダムールだとわかった。
    曲を聴いてから、またこの本を読んだ。
    大人になって再読してみると、また違った登場人物に感情移入できる本。

  • 江國さんの作品の中ではおそらく一番好きです。
    なつにふさわしい不思議とミステリーと哀しさでした。

  • 夏休みに歩いた道の眩しさ、夕方の懐かしい風、マンションの外階段の日陰でお菓子を食べた時の涼しさ、夏の特別が全部詰まってる大大大好きな本。内容も寓話的で読み手側が色々な解釈をする余白があって好き。逆に起承転結がハッキリした本が好きな人にはつまらないだろうな。

著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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