スクランブル (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087472165

感想・レビュー・書評

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  • 高校時代を思い出しました。

    分かりそうでわからない犯人にやきもきしながら、読みました。
    ラストがこういう終わり方もあるんだなと考えさせられました。

    事件の真相がどうこうじゃなくて、その事件によって生じたことと(その事件を取り巻く人たちの青春)に焦点があったような気がします。

    ミステリでありながら青春小説でもあると思いました。

  • 好きな作者だったので。

    衝撃的な冒頭だった。
    高校時代の友人の結婚披露宴に出席したその場で、
    過去の殺人の犯人が判るとは。
    しかも当然のごとく、作者のミスリードにひっかかって、
    犯人は新婦なのか、新郎なのかとハラハラしてした。

    中高一貫教育の名門私立女子高「新国女子学院」では、
    高校から入学した生徒たちは〈アウター〉と呼ばれていた。
    学校で起こった殺人事件に、ほぼアウターの文芸部のメンバーは、
    勝手な推理を繰り広げる。

    他にも、弁当の盗難、体育祭での毒物混入、生徒の交通事故死と続くが、
    この作品の中心は謎解きではない。
    少女たちの焦燥と葛藤と傷心のお話。

    章タイトルに「スクランブル」「ボイルド」「サニーサイド・アップ」と
    卵料理の名前がついていた。
    人生は卵の殻を割り続けなければならないと話し合うラストに向けて、
    物語の内容になぞられたタイトルだと思い、
    その関係性を読み取るべく、もう一度読みたいと思った。

    が、読めなかった。
    それは自分自身の卵時代を、
    ひりひりとした痛みを感じて振り返れないのに似ていた。
    まだ割る殻が足りないのだろうか。
    いつか、読み返したい。

  • 再読。初読の時は特にいいと思わなかったけど、今読んでみると秀逸だと思った。

    これは、ミステリではあるけれど、どちらかというと青春小説ですね。犯人や謎がどうの…というのがメインではないよね。
    自分たちの世界以外にも世界はあるのを知っているくせに、それを馬鹿にして、自分たちの世界で完結させようとしてしまう彼女たち。そういう年頃なんですよねえ。良くも悪くも微妙な、ボーダーライン上にある。
    それを抜けて──15年経って、やっと真実がわかるというのは当然のことなのかもしれない。私も、今になってわかったことがたくさんあるもの──思い出したくもないが。(笑)

    ちょっと(イヤかなり)ネタバレ↓


    唯一本当の犯人がわかっていた人間というのが、初読のときは意外だったのだけど、彼女が「持ち上がり組」でああいう性格で立場だったというのも当然といえば当然なんだろうな。

    ラビは、飛鳥に向かって犯人の名を口にはしないという。
    「あたしに断罪の資格なんか、ないからさ。~中略~そいつはずっと背負っていくんだ。誰にも告げられない罪を。~中略~犯人を楽にしてやらなくちゃなんない義理なんか、あたしにはないね」
    そのとき宇佐は飛鳥が犯人だと思っていたからそういったのだと思うのだけど。もし、もし宇佐がそのとき犯人=飛鳥だと思っていなかったら、彼女はどう言っただろう?犯人をマナミや夏見、サワだと思っていたら同じ答えになったかもしれないと思うけど、他の世界の人──クラスの持ち上がり組の人が犯人だと思っていたら?教師だと思っていたら?
    彼女の口からは違う言葉が出てきたのではないか…と思う。

    あとさ、どうでもいいんだけど、最近の結婚式って仲人立てないことが多いから、大抵の人はダマされる気がする…;; 私、仲人がいる結婚しきって出たことないもん。だから、仲人がどこに位置するのか知らない……。ええ、もちろんダマされたさ!それに、金屏風に座っているのが誰なのか、最後の方までわかんないんだもんなー。もちろんそこがミソなんだけどさ。

    ↑ネタバレここまで

    夏見、宇佐、飛鳥はキャラがはっきりしてるけど、マナミ、洋子、サワは微妙ですねえ。夏見とマナミは表面的に非常に似ている気が。表面的に同じようになってしまうのはわかるんだな。なんだかんだいって微妙に似通うんだよね、特にツルんでる子同士は。だから、その分バックグラウンドを出さないとキャラ分けがはっきりしなくなってしまうのだと思う。マナミも洋子も、自宅での描写がでてきて初めて違いがわかってきたもの。これは、作者がとかいう問題ではなく、事実として、ね。逆にいえば、そういう部分までよく書けてるともいえるのかも。
    ただ、この話でこの長さ(一編が)だと、バックグラウンドを多く書くと蛇足的でだれるので仕方ないところか。

    私も女子高だったんですよねえ。ただ、県立だったし中学や大学は併設されていなかったので、「持ち上がり組」「アウター」みたいな枠はなかったけど。
    そのせいもあって、非常に共感を覚える…というより、痛い、痛いよ!まさに今自分が30歳で、結婚式場にいる彼女たちとほぼ同じ年齢で、同じ年のころを振り返って読んでいるので…あまりにも自分にハマり過ぎてて痛すぎる。思い当たることばっかりで、今振り返ると、なんて何もわかってなかったんだろうと顔から火が出ますわ(苦笑)
    彼女たちみたいに、過去を振り返って、外側から物事を見ることはできるようになったよ。でも、まだ冷静に懐かしく思い出すことはできない──良いことも悪いことも。だから、同窓会には出られないし、出たくない。
    いつか良いことも悪いことも懐かしく笑えるようになったら、同窓会に出られるかなあ。それはいつのことだろう…。
    最後、夏見と宇佐だったかな?卵の話をするでしょう。あれがとても沁みました。まだキツいね。

    ところで、『ぼくのミステリな日常』で箱根に旅行した女子高生の話が出てくるんだけど…もしかしてこの子達?『ぼくの~』が手元にないから確認できないんだけど…。文庫出てたら『ぼくの~』も買おうかなあ。

  •  学園ミステリしかも舞台はバリバリの女子高というだけで、あんたはお呼びじゃないよと言われているようで、いささか敷居が高い。まあしかしお嬢様学校といったって内情は、というわけで主役級の夏見やマナミの言動は抱腹絶倒で楽しめる。文芸サークルの6人(夏見、マナミ、洋子、サワ、飛鳥、ラビ)が各章の主格となり、校内で起きた殺人事件をそれぞれの視点で順に推理するという趣向で、各章では付随して校内で起こるちょっとした謎とその解決もされており、日常謎解き短編プラス全体の長編推理という二重構造になっている。加えて、全体が6人のうちの誰かの結婚披露宴でのそれぞれの回想という形式になっており、冒頭に大胆にも犯人は金屏風の前にいると開示されている。しかしそれが誰かは最後までわからず、おおっとひっくり返されるという仕掛けにはうならざるを得ない。

  • 結婚披露宴の最中、女子校文芸部の仲間たちがそれぞれ回想を始めます。その内容は殺人から日常の些細なことまで様々ですが、これら全て15年前の事件が影響していることが次第に判ります。
    そして、最後に連作短編集ならではのあっと驚く仕掛けが施されています。
    登場人物があだ名や本名で呼ばれるので誰が誰だか把握するのに苦労しましたが、トリックは素晴らしいですし、女子校独特の世界観や思春期ならではの青臭さが丁寧に描かれています。青春ミステリーの傑作と言えると思います。

  • 久方ぶりのスペシャルヒット!短編連作、学園ミステリーは大好物!!恩田陸や辻村深月系列作品が好きな人はぜったいオススメ間違いなし。

  • 1995年1月。結婚披露宴会場。
    高校時代を同じ新国女子学園文芸部で過ごした私たち6名がここに顔を合わせた。エスカレーター式の学校で、高等部からの編入組《アウター》として阻害されてきた 彦坂夏見、貝原マナミ、五十嵐洋子、宇佐春美。そしてエスカレーター組でありながらも馴染めなかった 沢渡静子、飛鳥しのぶ。
    招待席で、そして金屏風の前で、彼女らはそれぞれ何故か15年前の学生時代を思い出していた。15年前に学校のシャワー室で17歳の女性の死体が発見された、それからの数ヶ月間の日々を―――。
    『スクランブル』(夏見):死体発見のざわめきの中、宇佐が盗難事件の犯人として疑われたこと。
    『ボイルド』(マナミ):クラスの中心的女生徒が文芸部員たちの目の前で階段から転がり落ちたこと。
    『サニーサイド・アップ』(洋子):スポーツ大会の最中、養護室で後輩が薬物入りお茶を飲まされたこと。
    『ココット』(静子):一緒に図書当番をしたのを最後に、同級生が私服姿でひき逃げにああって死亡したこと。
    『フライド』(飛鳥):修学旅行直前、級友達が班分けでもめている中で1人が「エンジェルさま」で妙な予言を言い出したこと。
    『オムレット』(宇佐):図書館で1冊の本が紛失し、文化祭での文芸部の展示内容が合致したことから文芸部員の中に犯人がいると疑われたこと。
    1980年、そしてエピソードとして1995年の彼女らの現在を間に挿入し1つの流れとなった連作短編集。

    連作短編というのは若竹さんのお得意技ではありますが、確かに巻末解説(佐々木譲氏)のとおりこの作品は当てはまらないかもしれませんねぇ。17歳の少女(しかも生徒ではない)の死が大きな軸として存在している以上、長編…なのかなぁ?短編として分けてしまうと少々内容が薄くなってしまう面もあるし…。
    舞台が女子高で、好奇心旺盛な女子生徒が推理しようとする、というとつい「優しい密室」(栗本薫)を思い出してしまうのですが、ちょっと雰囲気が違います。大人への反発、自尊心、不安といった学生時代のゆらぎ(…というかイタさ/苦笑)は同じなんですが、この6人の間での友情や尊敬や苛立ち…そんなものまでがとても露にされている。”毒”が強い若竹さんですが、今回は懐かしいイタさ、かな?愛すべきともいえるくらいに感じられます。…まぁ、そう思えるっていうのは私がその時期を過ぎてるからなのかもしれませんが。 真っ只中な人にはちょっと苦しいかもね;

    各章のタイトルはすべて卵の調理方法です。卵=半熟を連想しました。15年前の彼女たちになぞらえてるのかな…?それともラストにあるように『これから殻を破る』という意味合いなのかしら。
    久しぶりにもう一度、いや、何度も読みたいと思った作品です。オススメ。

  • 女子高で起きた殺人事件を発端にして6人の女子高生の生活を6方向から見ながら物語は進んでいく。
    面白いのは、事件が中心にあるのか、ないのか。。。

    多分、実際に身近(校内)で殺人事件が起こったとしても、直接の関係者でもなければそれを生活の中心にもってくるような人はいないだろう。
    しかも、大小さまざまな事件(出来事?)で彼女たちは精一杯なのだ。
    そういった意味ではとても現実的な目線だと思う。

    しかし、純粋にミステリを読みたい人には「何ウダウダしてんだ、さっさと事件を解決しろいっ!」とじりじりとするかも知れない。
    しかも解決するのは15年後、メンバーの一人の結婚式の場面においてだ。

    私立の女子高というのは、経験していない者にとっては未開のジャングルのように思いも付かないような雰囲気をもっている。
    その中で彼女たちが学校や友達とどう関わり、どう感じ、どう育ったか。
    とても生々しく描かれているかと思う(私も未経験なので…)


    短編集だと思って読み始めたら、6章に分かれた長編だったので、結局のところ読み通してしまった。
    事件の解決というより、彼女たちのそれぞれの個性も面白いし、正直な気持ちの変容に読み入ってしまったという感じ。

  • 好きな作品。 自分が生まれる前の高校生、という感じがしないのは、結局が95年当時の30代になった彼女達があの頃のことを思い出しているから? 新国女子校に通う文芸部の6人は、内4人が高等部からの編入生「アウター」。異端児とされる彼女たちの周りで起こる事件。犯人にされたり、探偵になり損ねたり。 殺人事件の犯人は誰なのか。場所は仲間の結婚式。各々が回想の中で事件と、想い出を辿る。最後に辿り着いた犯人は… 女子高生の『通常』とはかけ離れた彼女たちが面白い。やっぱり子供と思うところも、達観しているところも。

  • 読者には冒頭の結婚式披露宴の時点で犯人の居場所を教えてくれるのですが、そこから過去に遡ったり現在に戻ってきたりして、最終的に犯人にたどり着く。という流れになっています。ミスリードに引っかからなければ、犯人の特定はしやすいかと思われます。私は引っかかりました。

    話が進むにつれて犯人の候補が絞られていくので、読んでいて面白かったです。読後にふと思ったのは、真犯人が警察に容疑者として疑われる事はなかったのか、疑われたとして容疑者から外された理由はなんだったのか...が、ちょっと気になりました。

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著者プロフィール

東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒。1991年、『ぼくのミステリな日常』でデビュー。2013年、「暗い越流」で第66回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。その他の著書に『心のなかの冷たい何か』『ヴィラ・マグノリアの殺人』『みんなのふこう 葉崎は今夜も眠れない』などがある。コージーミステリーの第一人者として、その作品は高く評価されている。上質な作品を創出する作家だけに、いままで作品は少ないが、受賞以降、もっと執筆を増やすと宣言。若竹作品の魅力にはまった読者の期待に応えられる実力派作家。今後ブレイクを期待出来るミステリ作家のひとり。

「2014年 『製造迷夢 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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