プリズンホテル 2 秋 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087473391

感想・レビュー・書評

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  • H30.12.12 読了。

    ・木戸仲蔵オーナーや番頭の黒田や「任侠エレジー」の真野みすずなど、個性派キャラ達が生き生きとしていて、面白かった。この世界観は心地良いですね。

    ・「俺にかまわず、お客人を精いっぱいもてなしたってくれ。何のわけへだてもするんじゃねえぞ。幸不幸、貧乏金持、老若男女、渡世の内外、みなひっくるめて面倒みたれ。」
    ・「人相風体が決してその人間の本質を語らぬことを、このホテルに赴任して以来思い知らされていた。」
    ・「弱く優しい人間はそれをかばうためにいつも顔をしかめ、肩をいからせている。凶悪で粗暴な人間ほど、己れの本性を隠すためにことさら紳士を装う。えてして、そんなものだ。」
    ・「苦労てえのはよ、しょせんてめえひとりでしょって行かにゃならねえんだな。」
    ・「何が何でもそれを息子から取り上げようとした自分に比べ、それの魅力と本質とを語った黒田は何と聡明な人間なのだろう。これこそ極道の訓えだ。」

  • ホテルは続くよどこまでも。

  • 極道が経営し、「その筋御用達」の、通称プリズンホテル

    1泊2日の慰安旅行に来たのは
    なんと警察署ご一行さま(笑)

    当然巻き起こるハチャメチャドタバタ。
    ワケありの泊り客たちも巻き込んでの人情ストーリー。

    支配人がずいぶんキモが座ったいいオトコになったなぁ

  • 浅田次郎のコミカル小説、プリズンホテルシリーズの第2巻。

    極道小説で売れっ子になった作家・木戸孝之介は驚いた。
    たった一人の身内で、ヤクザの大親分でもある叔父の仲蔵が温泉リゾートホテルのオーナーになったというのだ。
    招待されたそのホテルはなんと任侠団体専用。人はそれを「プリズンホテル」と呼ぶ―。
    熱血ホテルマン、天才シェフ、心中志願の一家…不思議な宿につどう奇妙な人々がくりひろげる、笑いと涙のスペシャル・ツアーへようこそ

    「木戸孝之介」は、まさに浅田次郎自身をモデルにしているのかな?浅田次郎の人生経験の豊かさが、小説の厚みを支えていると思った。

  • 警察署の慰安旅行が来る。刑事に対して「てめえらの仕事のことしか考えてねえよな。ああ、いやだ」と評される(25頁)。相手の負担を考えない公務員の体質を言い当てている。

    警察署の慰安旅行のマナーの悪さが描写される。「千鳥足で仲居の列に倒れこむ者、いきなり植え込みに立小便する者、土足で上がり込んだなり絨毯の上に吐き散らす者、すでにマナーの悪さは目を被うほどである」(39頁)

    コロナ禍でも警察官の酩酊は問題になっている。兵庫県警神戸西警察署の男性警部補ら複数の署員は2021年7月9日に深夜まで飲食店で飲酒した上、路上でトラブルを起こし110番通報された。これは神戸市の新型コロナウイルス対策まん延防止等重点措置に違反する。神戸市は11日まで新型コロナウイルス対策まん延防止等重点措置期間中の対象区域に指定されており、酒類の提供は4人以内のグループに対し、午後7時までである。

    「日ごろ接待もされないおまわりは、サイテーなんだ」とのセリフもある(159頁)。警察官の宴会が最低であることは正しいとしても、接待されないからという点は疑問である。過去には公務員のノーパンしゃぶしゃぶ問題があった。接待でも公務員は最低な振る舞いをするだろう。顧客に価値を提供するという民間感覚を持っていないから最低になる。

    婦人警官も厚顔であり、無礼である。小説家にサインを強要する。「ありがとうとか、ごめんなさいとか、そういう言葉には慣れてない」(172頁)。特に他人の時間を奪って申し訳ないという感覚が皆無である。この公務員感覚が最低さの原因である。

  • 木戸孝之介は相変わらずクソ野郎だった。

  • 木戸孝之介は、極道小説の売れっ子作家である。出版社から、関東桜会の相良総長が亡くなったから葬式などの義理事の実態を見てきてほしいと言われた。叔父の木戸仲蔵に頼み込んだら会場の寺に来たらよいと返事が来た。「ええ、鶴と亀との相生に、極楽往生いたすのも良うござんしょうが、一天地六の賽の目次第に罷りますのも、また乙なもんでござんす。上は吉原泪橋、本所駒形向島までの百余町、盆の内外、決してぬかりゃあござんせん。桜の一門打ち揃いやして、これよりお送りいたしやす。いやさ八代目、とくとお立ちなせえ。」長老の声で、親分五人衆が担いだ棺はしずしずと寺を出ていった。またまた極道ホテルの面々が帰ってきた。今度はどんな騒動が起きるやら。なんと、極道と警察が一緒のホテルに泊まるとは…。これで騒動が起きなかったら不思議である。

  • 死ぬことに理由はいらないけど、生きてくためには理由が要ります
    タキシードを着た極道でございます。ホテルマンという男の道を極めようとしている、ひとりの極道でございます。
    「天才って?」「才能を信じ続ける才能のことだよ。」

    一巻から二巻の間にこんなにクオリティがあがるのか。すげーな浅田先生。そして、ぐっと浅田さんらしい雰囲気になって、もうめっちゃいい・・・先生が歪すぎながらも少しずつつ変わっていたり、叔父がとにかくかっこよかったり、あとは支配人も厨房も息子も、とにかく全員がかっこよすぎる

  • いつも宿泊者の人生を良い方向に導くプリズンホテル。今回も宿泊客の人生の転機を迎え入れる。大物歌手のみすず、ヒモ付きで売れない元アイドル歌手のナナ、集金強盗の香川、警視庁警部補の渡辺。各々が過去を背負い、哀愁漂う背中に切なさを感じたが、それぞれの人生を歩むことを決意できたことが嬉しい。また、任侠作家の木戸孝之介のドタバタも面白い。清子の娘の美加を蔑ろにするものの、愛おしく感じているところが可愛らしい。最後、孝之介の電話越しで、過去に自分を捨てた母と対峙する場面は孝之介の質朴な一面が垣間見えた。④

  • 2巻です。
    さすが浅田次郎!1巻に勝るとも劣らぬ面白さでした。
    っていうか本作は(清子や富江が登場しなかったため)主人公の小説家のDVシーンが減って胸糞悪さが半減したため、1巻より面白かったと言ってもいいかもしれません。
    美加ちゃんの「あい!」がかわいすぎるし。

    今回は任侠団体と警察団体が同時にプリズンホテルに宿泊するという設定。
    警察とヤクザの体質が似ているという風刺がイキだし、ドタバタコメディの中でホロリと泣かせる人情オチも健在で、いや~あっぱれでした。

著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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