藩校早春賦 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087474657

感想・レビュー・書評

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  • 高校生以来、約10年超ぶりの再読。歴史小説にハマった小説の1つ。再読でも変わらぬ興奮。より知識が付いた今の方がより楽しめたかもしれない。

    本作は江戸時代版の「ズッコケ三人組」と人知れず呼んでいる。(ただ妻に概要を話したら「忍たま乱太郎」の方が近いのではないかと言われた。確かに…)

    新吾・太郎左・仙之助の三人が藩校で学びながら藩政の黒い敵に次第に巻き込まれ立ち向かっていく。本作の良さはテンポの良さにあると思う。例えば対抗試合で新吾たちが勝利した際、劇的な勝利であったにかかわらずその後の歓喜や相手の悔恨などは省略され次の話の中で触れられる形。読者への余韻を大きく残してくれている部分が余計にキャラクターへの愛着を生む。

    そして三人のキャラ造形も素晴らしい。目立った特技もなく成績も下の方だが清い心と正義感に溢れる新吾。若手のホープ石原栄之進との初対面のシーンで彼に恥ずかしくない剣技をしようと決意するシーンが新吾らしさを全面に出していて好きだ。粗雑でお調子者だが武道に秀で自信家の太郎左と誰よりも優しく仲間想いの仙之助。それぞれの信頼と連帯が本作を歴史小説というより青春小説と呼ばせていると思う。

    次は夏雲あがれへ。こちらも負けず劣らぬ名作。再読が楽しみである。

  • 江戸時代後期、鎖国を続ける日本も諸外国からのプレッシャーを意識せざるをえない時代、文武両道の青少年を育て上げる必要性に迫られ、東海のとある小藩に藩校が建てられることになり・・・。主人公とその友人二人の友情と成長の物語。面白かった。身分の低い武家の子は身分の高い者には逆らうことが許されず、屈辱に耐えることも多々ある。けれど、その中でもまっすぐにやんちゃに育つ十代の少年たちは微笑ましい。脇役も良かった。続編もあるようなので楽しみ。

  •  時代小説幅広げ企画その2。というわけでまたまた初めての作者を手に取ってみた。これもAmazonのリストマニアから。軽い読み物という感じですぐ読めてしまう。まあいいんじゃないかな。本好きの中には、読んでも何も残らないものはちょっとという人もいるけれど、ぼくは間口が広いのかそうは思わない。あははと楽しんでヒマがつぶれるだけのようでもいいのでは。なんていうと作者に失礼だな。これはヒマつぶしではなく、青春小説としても出色だと思う。
     江戸時代後期、東海道は浜松あたりとおぼしき藩の筧新吾、花山太郎左、曽根仙之助の3人の若者をめぐっていろいろな事件が起こり、彼らの正義感からそれらに巻き込まれていって、それぞれが成長していくという話だ。ストーリーは他愛ないしそれぞれの事件は底が浅いけれど、藩内のお家騒動をめぐる一連の流れが根底にあって、全体の統一感を与えている。脇役としてでてくる登場人物もそれぞれ魅力的に書けていて悪くない。文章も達者だしなかなか読ませる。続編があるらしいのでぜひ読んでみたいと思う。

  • 藤沢周平的な青春もの。登場人物がいきいきしていてよかった。続編に期待。

  • 個人的に「青春」ブームなので、たまたま見かけて手にとってみた。まさに江戸時代の青春小説。

    同じ作者の『剣豪将軍義輝』『海王』が好きだったので、読む前から期待してたけど、期待通り面白かった。考えてみれば、『剣豪将軍義輝』も『海王』も青春小説だし「ビルドゥングスロマン」だった。本作もそこは通じてる。

    主人公の新吾とその友人の太郎左、仙之助の三人が、様々な事件に巻き込まれていく連作小説。三人はもちろん、脇を固める登場人物も面白い。

  • いっそ突き抜けてしまって御伽噺にでもしてしまえばいいのだが、通常の時代小説に使うには主人公達の造形が極端過ぎる。またストーリーも本格的な時代小説を目指しているようで、突然貞操帯だとか真言呪術などが出てきたりして、なんかガチャガチャした感じで落ち着きが無い。と、いきなり批判ばかり書いてしまったが、これは似たようなテーマに藤沢文学の最高峰「蝉しぐれ」があり、どうしてもそれと比較してしまうため。「蝉しぐれ」の情緒は期待すべくも無いが、軽快で明るい(悪く言えば軽薄?)青春時代小説でした。

  • 江戸時代後期の3人の少年剣士の冒険譚。個性的な3人の少年がさまざまな事件に首をつっこんで事件を解決していく爽やかな物語。

  • 青春時代小説。一人一人のキャラ設定とかは好きなんですが、青春物には必須となる個々のキャラの成長の過程に、今少し工夫が足りない感じがしました。

  • 全1巻。
    時代小説。

    江戸時代が舞台な青春もの。
    ドラマになったらしい「夏雲あがれ」の
    前作。
    これの続編が「夏雲あがれ」の原作らしい。

    や。
    面白い。

    でこぼこな3人組の少年たちが、
    ドタバタしながらいろんな事件に巻き込まれ、
    最終的に1つの大きな事件に発展していく感じ。
    構成的には藤沢周平•用心棒日月抄に近いかも。

    あいかわらず背景描写がうるさくて、
    逆に解りにくい部分も若干あるけど、
    (特に冒頭は入り込みにくい)
    少し慣れれば気にならなくなる。
    1話完結な流れなんだけど、
    話の終わりの風景描写とかは
    余韻が残って凄く良かった。

    で、
    なによりこの3人組が好きすぎる。
    ずっとニヤニヤが止まらない。
    それだけで不満点は全て帳消し。
    あれだ。
    ズッコケ3人組思い出した。
    あんまり覚えてないけど。
    イメージ。

    キュートな少年たちが、
    大人の世界に戸惑いながらも
    情熱的に、純粋に突っ走る、
    青春小説らしい青春小説。
    どんな時代にも若者達はいたのです。

    ニヤニヤだけど切なく、
    なぜか涙が出てくる。
    きっと自分が年取ったから。
    ぜひ昔男子だった大人達に読んでほしい。


    続編は少し大人になってるらしい。
    このいい感じが壊れないかちょっと心配。

  • 一応短編集のような形式をとってはいるけれど、後半の物語で前半の物語のストーリーを少し絡ませるから、後半の物語になればなるほど長くなっていくっていう。こういう形式は少しダルイかも。

    本書は「小説すばる」(中略)に掲載された作品に大幅に加筆、長編としてまとめられたものです

    なるほど。

    内容は砕いて言ってしまえば「ズッコケ三人組」*1みたいな感じで。毎回、「結局最後は大丈夫、爽やかに終わる」っていうお約束展開。これ内容としては12歳くらいの子が読んだらドキドキするそれなんだろうけど。一応時代小説っていうジャンルと漢字の多さとかが平気なら、それくらいの子が読んで楽しめるような。そんな感じ。

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著者プロフィール

1955年静岡県生まれ。日本大学芸術学部卒業後、手塚プロ勤務を経て執筆活動に。95年、『剣豪将軍義輝』で、一躍脚光を浴びる。おもな代表作は『海王』『ふたり道三』『夏雲あがれ』『家康、死す』『風魔』『陣借り平助』など。『乱丸』で2015年第4回歴史時代作家クラブ賞作品賞を受賞。近著に『天離り果つる国』がある。

「2023年 『義輝異聞 将軍の星 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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