幻獣ムベンベを追え (集英社文庫)

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著者 : 高野秀行
  • 集英社 (2003年1月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087475388

幻獣ムベンベを追え (集英社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • トークショーと「ソマリランド」本そのものの両方があまりに面白く、当分私的高野フィーヴァーが収まりそうにない。これがデビュー作だったよね、とパラパラめくっていたらあっという間に夢中になって終わりまで読んでしまった。他のも片っ端から読み返したくなる。

    文才っていうのはやっぱり、ある人にはあるものなんだなあ。「学校の作文以外文章を書いたことがない」大学生がいきなりこんな読ませる文章が書けるんだもの。ジャングルでのキャンプの日々が臨場感たっぷりに描かれていて、もうワクワクハラハラする。無謀で未熟で、でも「頑張れ!」と応援せずにはいられない若さに満ち満ちている。

    あらためて思うのは、「楽天的」っていうのは本当に大事な資質だなあということ。ジャングルでの厳しいキャンプ生活で、体力とか知恵とか生活技術とか、必要なものは色々あるだろうが、必要以上に深刻にならず不安や不機嫌を引きずらないこともとっても大切で、実際にはなかなかできないことじゃないだろうか。高野さんは、語学力や交渉力の凄さは他のメンバーも認めるところのようだが、この点でも優れていたのだろうと思う。

    巻末の写真の若いこと!ちょっと不敵な感じの表情がいかにも若者らしくて好ましい。現在の風貌と思い合わせるとなんだかしみじみとした感慨がある。ムベンベってずいぶん前のことになったんだなあ。

    感慨と言えば、私は今回解説の宮部みゆきさんの文章を読んでちょっと泣いてしまった。
    「今の世の中には、絶対に、こういう本が必要なんです。みんながみんな、探検部のメンバーみたいに生きることはできないからこそ。」
    天下の宮部みゆきにこんなに熱のこもった真心のある解説を書かせた人って他にいるんだろうか。

    初めてこれを読んだとき、わが息子はまだ幼かった。この子が大きくなって大学生になり「探検部(もしくは山岳部)に入る!」って言ったらどうしよう?と思ったのを昨日のことのように思い出す。反対はできない(したくない)けど、死ぬほど心配するだろうな、と。月日は流れ大学生となった息子は、テニスやスノボが好きなフツーの人で、母の心配はまったく杞憂であった。めでたしめでたしなんだけど、ほんのちょっとだけつまんないような気がしないでもない。

  • 高野さんの探検記を初めて手に取った。
    コンゴの奥地テレ湖に現れるという幻獣(未確認生物)ムベンベ。
    コンゴ政府の厳しい入国制限と監視、原住民の抵抗と物資の横領、大量のハエや蚊に、ワニやゴリラの野生動物、そしてマラリア。
    たくさんの障害を乗り越えて、早稲田探検部の隊員11人がムベンベ発見に挑む。

    えーと、この人たちは、どこまで本気だったの?
    と思いながら読み出したけど、少なくとも高野さんは大真面目、他の隊員も程度の差こそあれ、行楽気分、お遊び気分では断じてなく、ムベンベ発見に期待を抱いていたようだ。
    企業から提供を受けたという本格的な撮影機材一式もすごい。
    これが男のロマンってやつですか。お母ちゃんたちはみんな心配だったことだろう。

    旅は順調には進まないが、問題をひとつひとつ解決したり、応急処置をしたりしながら、36日間、24時間交代制で湖を監視し続けた彼ら。
    若さや勢いもあるだろうけれど、並大抵の気持ちじゃできない。
    帰ってから、友人知人から「それで怪獣見つかったの?」と小馬鹿にされるような口調で聞かれることが多かったという。
    私が近くにいたら同じように聞いていただろうけど、おバカでも無意味でも、こういう探検をしたこと、胸はっていいと思う。

    早稲田の学生だった彼らのその後の人生も、会社員になる者、その道のプロになる者など色々で、なかなか考えさせられるものがある。
    特にほぼ全部の期間、病気で寝ていただけの田村さんは印象的。
    彼は、コンゴの奥地のそのまた奥地、多少の薬以外は医療機関も医者も何もないところで、到着直後からマラリアに罹患し、猛暑の中、テントで一人闘病を続ける。
    周りの隊員から優しい言葉はほとんどなく、病は気からだと言われ…。
    この本からも、まだ田村の奴寝込んでんのか、といった雰囲気が漂う。
    孤独でただひたすら辛く長かった探検を終え、他人は当てにならない、守ってくれるのは両親なのだという思いを抱く。
    この壮絶な体験は、他の人以上に彼の人生観を変えたようだ。
    しかしそんな田村さん、探検から足を洗うのでなく、似たようなことを続けているというから不思議だ。

    角幡さんとはまた一風変わった探検記で、面白かった。

  • 私は子供の頃から、未確認生物に目がなかった。
    ネッシーはもちろん、屈斜路湖のクッシー、ヒバゴン……
    川口浩探検隊シリーズは夢中になって見たし。

    それを本気でやってしまう強者たちの物語が本書だ。
    アフリカのコンゴの奥地にあるテレ湖に住むという謎の怪獣「ムベンベ」。子供の頃には夢中になったものの、大人になるにつれて、本当にいるのか??と、昔の熱い情熱は半ば諦めムードに支配されてゆく。しかし、早大探検部の彼らの熱意はハンパない。読んでいて気持ちがいいくらいだ。

    本書の途中で著者が、ある矛盾に気づいてしまうところが、残念だけれどゾクゾクする場面でもあった。
    テレ湖を熟知する村人たちに、ムベンベのことを聞けば聴くほど、適当なサービス心で怪獣のことを描写する彼らは、実はムベンベのことをよく知らないことに。最も詳しい者たちが知らないとはどういうことなのか?と疑念を抱く、この中盤が、私には本書の中で最も感銘を受けたシーンだ。

    この旅の中では、ムベンベは見つからなかったが、夢はいつまでも続いたほうが楽しいに決まっている。

  • 赤道直下のコンゴ共和国のテレ湖に巨大怪獣ムベンベが生息しているらしい。ネス湖のネッシー、ヒマラヤの雪男は聞いたことがあるが、ムベンベなんて知ってる日本人なんてほとんどいないだろう。

    著者の属する早稲田大学探検部はこの幻獣を発見しようとコンゴへ向かう。なんともバカバカしい若気の至り的な発想だが、プロジェクトの準備は本格的だ。早稲田OBのコネを頼り、カメラや食料、薬などの寄付を募り、現地語を学習し、調査隊の出発前には情報収集を目的とした少数チームをコンゴへ向かわせる。意外と準備周到。

    コンゴへ入国しても、政府や原住民のコロコロと変わる対応に振り回され、隊員の中ではマラリアが流行するという、冗談ではすまされない命がけのアドベンチャー。そんな中で40日間、24時間体制でテレ湖を監視し続けたムベンベ捜索隊の根気と組織力は想像を絶する。彼らを突き動かすエネルギーは若さ以外にない。が、本書を読んでいても、その凄さや悲壮感、深刻さが伝わらないのは、著者のテキトーで軽い文体と川口浩探検隊のイメージとダブるからだろう。こうした若者の無謀な冒険に対して、まずヤラセと疑わせてしまう「川口浩探検隊」の存在はなんとも罪深い。が、著者はそんな世間の見方に便乗し、トンデモ冒険ルポという新ジャンルの作家としてデビューしたのだから、川口浩サマサマか。

    結論としては、最初からわかっていたけど、幻獣ムベンベは見つからず。本書の一番の読みどころはこうしたドタバタ冒険を経験した若者の数10年後を描いたあとがきだ。

  • 探検部の実録本。

    アホです。でも、本気です。すがすがしいです。
    エネルギーあります。

    年配の方に
    「『まじめ』に生きるんじゃなくて、『本気』で生きろ」と
    諭されたことがあります。
    この本は、それを実践したと思われる若者の記録です。

    何かを成すのは確かにすばらしい。
    でも、生きて全力で感じること以上にすばらしく
    また、学び甲斐のあることがあるだろうか?

    なんだか生きるのがめんどうになった…
    一体、生きるだけの生活に何の意味があるの?
    生きることになんの意味が…

    そんなネガティブ思考スパイラルにはまって、元気がうばわれ、
    一歩も動けない、と膝をかかえている
    モラトリアムな大人子供に告ぐ。

    意味なんかない。
    目的があるから生まれてきたとか、難しいこと考えるな。
    本書を読め。
    ばかばかしくなる、でも、いっか、それで。いいんだ、これで。

  • 早稲田大学探検部が未知の生物を探しにコンゴに行く。後先考えなしの受け狙いかと思うような設定ですが、スポンサーを見つけ、現地の言葉を勉強し、実行までに万全の体制を整えようとする彼らの姿、現地でのたくましさはまぶしいほど魅力的です。時には大笑いしながら、時にはほろっとしながら読了。これだから高野さんの本は止められません。一番心に残った言葉は、田村さんの「自分を守ってくれるのは両親」かな。あの状況に耐えた田村さんだからこそ言える言葉だけれど、こんなに気持ちを率直に表現した言葉に出会えたのはもう一つの収穫でした。

  • 最初、「なんと無謀な…」と思ったのですが、「ムベンべを探す!」と決めてから、コンゴに行くまで、その下調べから現地との交渉、下見などにかなり時間を割いています。
    ただの無鉄砲ではありませんでした…。
    大学からも許可を取り、調査機材を援助してくれる企業との交渉など、参加部員それぞれが、役割を負って臨みます。

    ジャングル生活は、マラリアや飢餓に悩まされつつも、現地サポーターが狩猟、解体するワニ、カワウソ、チンパンジーにゴリラまで食するようになります。
    「ついに解体現場で生唾が湧いてくるようになってしまった。」と言うように、彼らの生きる力には敬服します。

    最後に、隊員の一言コメントが載っていますが、みなさん懲りていないところが、素敵です。

    .

  • 私が天才・高野秀行を知った作品。
    彼を読むまで私は、冒険紀行文の最高峰は椎名誠だと思っていたが、そのヒエラルキーが変わった。
    椎名誠がもっとも“プロらしい”ネイチャー・ライターだとしたら、高野秀行はもっとも“アマチュアっぽい”天才ライターだと言えると思う。

  • 羨ましい青春。それにしても高野さんは内面の葛藤を全然書かないな。

  • ソマリランドで高野さんを知って他の本も読み始めたらムベンベはまず読んどかないといけないっぽいなーと思って。
    ジャンル的にあんま興味ないとか思ってたけどこれは興味なくてもおもしろいね。
    読んでよかった。

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