巨流アマゾンを遡れ (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 58
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087475593

作品紹介・あらすじ

河口幅320キロ、全長6770キロ、流域面積は南米の4割にも及ぶ巨流アマゾン。地元の船を乗り継ぎ、早大探検部の著者は河をひたすら遡る。行く手に立ちはだかるのは、南米一の荒技師、コカインの運び屋、呪術師、密林の老ガイド、日本人の行商人…。果たして、最長源流であるミスミ山にたどりつけるのか。波瀾万丈の「旅」を夢見るあなたに贈る爽快ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 未読だった高野作品。文庫版あとがきを読んで驚く。これをガイドブックとして出すつもりだったとは!「普通の旅行者が普通に行える旅」だなんて序章で言ってるけど、そりゃ高野さんにとってはどうってことないかもしれないが、行きませんって、普通の人は。ボツになりかけた原稿を、新シリーズを作ってまで本にした編集者は立派だ。(その「シリーズ」がこれ一冊で終わったというのが悲しくもおかしい)

    大体高野さんの旅への姿勢は「ガイドブック」的なものとはまったく違う。アマゾンをさかのぼる船旅の準備をするところで、旅の本やガイドブックのあれを持って行け、こういう格好をしろというのは「余計なお世話である」と書いている。 「私とあなたはちがう人間であり、必要としているものもちがうのである」 いやまったくね。

    本の成り立ちからして、旅のトンデモ度はそれほど高くないけれど、アマゾンを高野さんとは逆に下ってきて合流する予定だった宮沢さんという人が、なんともまあエライ目に遭うくだりにはのけぞる。やっぱり普通じゃないよね。

  • 初期の高野秀行氏の面白さが出ています。旅行案内を発注されて何故か旅行記になってしまう辺り、大学卒業の為のフランス語の課題提出を、何故かフランス語のコンゴ文学の和訳で提出し紛糾した末に無事卒業を勝ち取ったエピソードを彷彿とさせます。
    顔見るとそんなに押し強そうに見えませんが、やはり知らない国に行ってバンバン突き進める行動力からすると、相当の粘り腰なんでしょう。
    旅行案内なのに麻薬の売人とのやり取りを書いていたりして、全く役に立たない案内本だと思います。でもこれが読み物としては最高に面白いです。後年の「西南シルクロード」のような大冒険ではありませんが、そこはやはり高野氏の筆の力がぐいぐいと魅力を振りまいています。
    元々の本は全く売れずに廃番になったようなので、よくぞ文庫化してくれた!と言いたいです。パチパチパチ!

  • 地名が覚えられず、どこの話だっけとなって苦労した。面白いけど、高野さんの著作の中だと3点くらいかな。

  • わりとまともに書かれたなアマゾン遡上記。
    まともすぎて、これって高野サンが書いたの?
    と思うくらい。

    いつもの面白おかしい紀行を想像した人は
    肩透かしをくいます。

  • 高野さんのノンフィクションを読み始めて3冊目。
    高野さん的にはどちらかといえば普通の旅行かもしれないが、普通の人が普通に行える旅行ではない。笑
    これが元の本ではガイドブックとして出版されていたのが驚いた。元の本ではガイド的なものもつけていたというが、大部分が本書の内容では読み物としては抜群に面白いがガイドブックとしては役に立たないでしょう笑。

  • ブラジルからペルーのアマゾン源流まで行く話。
    ちょうどアマゾンに行くタイミングで読んだから、レティシアやペルーでの話はすごくリアリティあった。
    南米住みの私からしても、アマゾン一人旅はなかなかのいろんなトラブル続きで、「あぁこれがほんとの南米だなぁ」とも思ったけど、彼の時代のアマゾンはほんとスリリング。
    WifiもGoogleマップもない昔のアマゾンは、ほんとアマゾンだなぁとちょっと羨ましい。
    夜、ジャングルロッジのベッドに寝転がりながら文明の利器なKindleで読みながら、そんなことを思った。

  • 本流から最長源流・ミスミ山まで。現地人との交流、部族民との遭遇、船内や町の雰囲気など、ディープな取材旅行の様子を楽しめた。ホテルだけでなく集落にも寝泊まりし、古代魚ピラルクや、ピラニア、ワニ等の漁や猟に同行しており、それでいて初版はガイドブック扱いだったことに驚く。冒険家向けにしかならなそうなので、文庫化でガイド部分を潔くカットしたのは英断。アマゾン川体験記としては非常に面白かった。

  • クレージージャーニーに出ていた人の本。図書館で見つけた少し古めの本。
    これが「地球の歩き方」のシリーズ本として出版されたというのが驚き。案の定、売れなかっと。
    1991年に出版され、2003年に文庫化。ブラジルのアマゾン川の河口から源流のペルーまでの船旅。
    今ではおそらく文明の波が押し寄せ、この当時の風景や文化は残っていないであろう。
    貴重である。そして面白い!

    旅で出会う、特徴のある人々、不運で奇妙な出来事が、次から次へと。

    登場する生き物もワニ、イルカ、ピラニア、ピラルクー、マナティー、アルパカと様々。

    アマゾン川を船旅からみた異色の旅行記は貴重な一冊。

  • 4ヶ月に渡るアマゾンを遡上する旅行記。観光名所ではなく、現地住民の暮らし方や人柄に著者の興味が向いている。読んでいると自分まで旅先にいるような気分になり、スイスイ読み進めてしまう。類い稀な行動力と文才が同居した方にしか書けない名作と思います。

  • やっぱり高野秀行は最高だ。
    本書は、アマゾン河の河口からその源流までを辿る、おやそ4ヶ月に渡る旅の記録である。
    基本的にずっと船旅であり、様々な町や集落に降り立ちぶらぶらする。船ではハンモックで波に揺られ眠る。巨大なアマゾンを船で行くとき、あまりに広い河幅のため、そこは湖か海かのように見える。
    おもしろいと思うのは、著者の感性と運だ。普通の人間なら慌てたりするアクシデントに遭遇したときも、彼はほとんど冷静だ。取材旅行である以上、アクシデント自体は心待ちにしている風でもある。
    ある時、乗っていた船が座礁する。普段はのんびりしている現地の人たちも大慌てになり、船内はパニックに包まれる。この事件を前に著者は次のように書いている。
    "今までのことが全てパーになってしまうという絶望感ーーというより、「無」に近い気持ちと、ついに奇跡の瞬間がやってきた(これを待っていたのではないか⁈)という興奮に捉えられた。"
    こんな無茶苦茶な状況から、よく帰ってこられたなと思う。だがよく考えれば、著者はこの本を書く前も後も、ずーっとこんな旅を延々続けているのだ。恐れ入る。

    とくに好きなエピソードをひとつ。
    著者はカメラマンの鈴木さんとともにアマゾンを上っていくが、実はもうひとり別の知人に"逆ルートから旅をしてくれ、そして中間地点で落ち合おう"と声をかけていた。落ち合うと言っても連絡手段などないため、"12月1日〜6日、テフェという町の市場の隣のバーにて"という約束を頼りにするほかない。
    凡人である私の感覚では、そもそも4ヶ月の工程で何が起こるか分からない、ケータイもないのに、まったく知らない土地で人と待ち合わせする、ということ自体が信じられない。テフェという町がどんなところだか、もちろん3人とも知らない。だが、彼らは、(ほとんど奇跡的な出会いにより)しっかり待ち合わせに成功する。
    その知人は、旅程で何度も強盗にあい金は底をつき、なんとかテフェまでたどり着いたものの行商人として働かざるを得なくなっていた。彼は疲れてはいたが、普通の感覚で想像するような絶望感は見せず、ヨガに興じたり、町の裕福な娘といい感じになったりしており、「いろいろあったんだよ」と嘆息した。
    著者は"もし行き違いになったらどうするつもりだったのだろう"とも書いている。なんて他人事な……。だが、読んでいるとだんだんこちらも麻痺してくるので、行き違いなら行き違いで、別のドラマが生まれただろうな、などと考えてしまう。

    凄まじい旅だ。しかし、語り口はやはり軽妙であっけらかんとして、読んでいて何度も笑った。さらにいうと、著者の言語的・地理的・政治的な知識が時折垣間見え、勉強にもなる。彼でなければ、旅の途中で元コカインの運び屋と仲良くなり、アマゾンとアメリカと日本における末端価格の違いを考察するようなこともないだろう。

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著者プロフィール

1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。

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