薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087475852

感想・レビュー・書評

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  • 高校生の時初めて読み、気取っていて意味がわからないと思った本。10年以上経ちふと思い出して読んで、瞬く間に夢中になった。いい女になってる気がしてくる本。

    個人的には陶子のような、庇護された妻が羨ましい。庇護されているのに、孤独、それでもいいと思いつつ、心の隙間を埋めるように別の男と愛し合うなんて甘美ー。と思いつつ、また数年経ったら別の登場人物に憧れるのだろうか…?

  • 女、女、女、女、女、たまに男。
    いろんな人が交錯してそれぞれの日常がつづられる。
    どの登場人物も理解できないようでいて、ふとこういう気持ちかもと思いつくような。
    この本を読んでいると人ってみんな、ちょっと不幸で、それは自分としてはどうしようもない不幸と考えていて、ちょっと幸福、でも幸福にはあまり気づいていないんだな。
    身勝手にもいろんな形があるもんだ。

    解説を読んで初めてこれは恋愛小説だったのか!と驚く。あ、後ろにも書いてあった。「恋愛運動小説」?
    確かにいろんな形の恋愛?が出てきたけれど。
    江國香織さんの変わらないものと変わっていくものの描き方がとても好き。
    あと丁寧に家事をする描写には憧れさえある。
    陶子や綾やれいこのように家事を楽しめる女性に憧れる。
    でも実際は綾のイライラ部分に共感し、エリ子のような生き方をしてしまいそう。
    「きちんとした妻でいることが、自分にとって大事であるために。たとえば夫や息子のためにしているのであれば、きっとこんなに孤独ではないのに」
    結局、自分の思うように行動が出来るのは収入があるから?

    途中まではチクチクと棘が散りばめられていて、登場人物たちがもどかしく読み進めるのが辛かった。
    それがポロポロと皮が剥がれるように変わっていく人々が出てくる。
    たとえば陶子の本音、衿やれいこの不安、近藤の情熱。エリ子の孤独。
    その辺りからホッとして読むことができた。

    「誰かを好きになったからといって、夫をきらいになれるわけじゃないもの」
    「でも、もう二度と、夫に男性的な魅力は感じられないと思うわ」
    女性が強いお話でしたが、世の中「オタガイサマ」なことも忘れずにいたいもの。

  •  朗らかで豊かで、滑稽で狡賢い。これだけの人物を登場させ、生活を淡々と追いながら、みごとに美しく書き上げるのはさすがとしかいいようがない。登場人物の名前や背景を忘れてこんがらがることは、よくあるけれど、そんなことはまったくなかった。花屋、犬の散歩、パーティ、妻のランチ。江國さんが描く登場人物たちは、幸福そうなのに、淋しさがあって切ない。不倫も浮気も離婚も、不幸めいて憎らしいものなのに、江國さんがかくとどうして余裕のあるような感じがするんだろう。

     衿や陶子が感じた、自分の言葉でこれほどうれしく大切に思う存在がいたのかと、感動した、というのが理解できた。衿が結婚の決め手としたのも。

     唯川恵さんが書いた解説、江國香織の文章は金の粒子が散りばめられたよう、という表現かなり気に入った。江國香織の文章は、金の粒子とかラメとか腐った花とかが混じった、ハーバリウムだよな。光に当てても綺麗だし、影がかかってくすんでいくのも綺麗なんだよね。

    みんな、いちばん愛したひととはちがう相手と一緒にいるみたい (266)

    春の花は色とりどりで、店の中には不思議なしずけさがみちている (320)

    衿は昔から九月という月が好きだ。なんだかさっぱりしている、と思う。物事をあきらめるのに、九月ほどうってつけの月もない。(163)

  • 登場人物が多いので、ほうっておくと途端にわからなくなってしまう。わりと一気に読みました。陳腐(?)な言い方だけれど、恋愛とは、結婚とは、女の幸せとは、を考えたくなる小説でした。誰にいちばん共感したか、みたいな話を、読んだ方としたくなります。わたしは衿の生き方、言葉えらび、暮らし方のどれもがすてきだなあと強く惹かれました。陶子は「真昼なのに昏い部屋」を彷彿とさせました。登場人物それぞれにしっかりとした芯があり、妹や、姉や、友人の考え方に納得できないわ、といいつつも、それを真っ向から否定するのではなく、認め合っている(のか、あきらめているのか)ところが読んでいて気持ちがよかった。最後の恋のゆくすえが気になります!

  • 登場人物全員自分勝手だなぁと苛立つ場面も多かったけど、まぁ恋はそういうものなのかな〜とも思う。衿が好き。

  • 登場人物は女性だけでもメインに9人いて、頻繁に語り手が変わっていくのでこの人誰だっけ...?と思い出す作業が地味に多かった。なのでひと息に読むのが良(忘れちゃうから)。作品としてはおもしろくて、割とさくさく読めた。予定調和のハッピーエンドやバッドエンドではなくて、登場人物たちそれぞれの人生を生きる様を淡々と描いているという感じが好き。誰にも共感はできないけど。
    土屋は全てを失う覚悟を決めてから、れいこ以外の女に手を出せ。

  • 緩やかに繋がる、さまざまな女性たちの群像劇。
    主たる人物は9人の女性なのだけど、その誰にも感情移入できなかった。
    感情というか、生活における肌感覚というか。
    強いて言うなら草子がまあ、理解できるかなっていう程度。

    何組もの夫婦が出てくるけれど、どれも家族としての空気が希薄。
    ちょっと力を入れるとパリンと割れそうな危うさがある。
    なんでだろうと思うに、彼らには「お互いさま」という感覚がない。

    100%自分好みを押し付ける夫と、100%それに依存する妻。
    必要だけど愛してはいない男と結婚して、息詰まる女。
    束縛されたくない夫と、嫉妬深い女と思われたくない妻。
    だけどホームパーティーは開催される。
    相手に弱みを見せないから、しんどい時に支えてもらうことはできないし、支えてあげることも出来ない。
    他人に見せびらかすことくらいしかできない。

    彼らにとって、結婚って何なのだろう?
    華やかな彼らの世界を垣間見ながら、ポカンと私は考える。

  • 愛じゃなくて恋ばっかり。恋は自分勝手だから。

  • 江國香織の本はなんというか凄く清潔感がある。
    うまく言えないけれど、汚れた物やだらしない物迄、秩序の中にある感じだ。
    それは、文章の力だろうか?
    寄って、お洒落な読み物の様に見えるけれど
    そうではなく、感情を揺さぶるのに不快ではないのである。その力に私は読み進めていき、起承転結のないドラマに不満も無く、気持ちよく読み終えました。

  • 群像劇、という表現が一番しっくりきます。
    しかし、誰1人として共感できる登場人物がいない。ある意味それがこの作品の面白さなのかも。
    皆が皆現状に満足していなくて、状況が変わっても物語は延々と続いて行きそう。

    初めて読んだのは結婚を間近に控えた頃で、陶子の優雅な専業主婦生活に憧れも抱きましたが、いくら専業とはいえ夫・水沼氏の支配的な態度に苛立ったし、そんな夫に従順な顔をしつつも他所の男性と関係を持ってしまう陶子の言動も理解不能でした。
    浮気体質な夫・土屋氏に文句の一つも言えない「できる女」風のれいこも、育児書にべったりで夫にも息子にも真正面から向き合っていない綾も、最後まで好きにはなれませんでした。
    その中でも草子の苛立ち、桜子の無謀さは多少納得できたし、衿・真理江・道子の割り切りぶりにはまだ好感が持てましたが……。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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