- Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087475852
感想・レビュー・書評
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朗らかで豊かで、滑稽で狡賢い。これだけの人物を登場させ、生活を淡々と追いながら、みごとに美しく書き上げるのはさすがとしかいいようがない。登場人物の名前や背景を忘れてこんがらがることは、よくあるけれど、そんなことはまったくなかった。花屋、犬の散歩、パーティ、妻のランチ。江國さんが描く登場人物たちは、幸福そうなのに、淋しさがあって切ない。不倫も浮気も離婚も、不幸めいて憎らしいものなのに、江國さんがかくとどうして余裕のあるような感じがするんだろう。
衿や陶子が感じた、自分の言葉でこれほどうれしく大切に思う存在がいたのかと、感動した、というのが理解できた。衿が結婚の決め手としたのも。
唯川恵さんが書いた解説、江國香織の文章は金の粒子が散りばめられたよう、という表現かなり気に入った。江國香織の文章は、金の粒子とかラメとか腐った花とかが混じった、ハーバリウムだよな。光に当てても綺麗だし、影がかかってくすんでいくのも綺麗なんだよね。
みんな、いちばん愛したひととはちがう相手と一緒にいるみたい (266)
春の花は色とりどりで、店の中には不思議なしずけさがみちている (320)
衿は昔から九月という月が好きだ。なんだかさっぱりしている、と思う。物事をあきらめるのに、九月ほどうってつけの月もない。(163)
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登場人物が多いので、ほうっておくと途端にわからなくなってしまう。わりと一気に読みました。陳腐(?)な言い方だけれど、恋愛とは、結婚とは、女の幸せとは、を考えたくなる小説でした。誰にいちばん共感したか、みたいな話を、読んだ方としたくなります。わたしは衿の生き方、言葉えらび、暮らし方のどれもがすてきだなあと強く惹かれました。陶子は「真昼なのに昏い部屋」を彷彿とさせました。登場人物それぞれにしっかりとした芯があり、妹や、姉や、友人の考え方に納得できないわ、といいつつも、それを真っ向から否定するのではなく、認め合っている(のか、あきらめているのか)ところが読んでいて気持ちがよかった。最後の恋のゆくすえが気になります!
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登場人物全員自分勝手だなぁと苛立つ場面も多かったけど、まぁ恋はそういうものなのかな〜とも思う。衿が好き。
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愛じゃなくて恋ばっかり。恋は自分勝手だから。
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江國香織の本はなんというか凄く清潔感がある。
うまく言えないけれど、汚れた物やだらしない物迄、秩序の中にある感じだ。
それは、文章の力だろうか?
寄って、お洒落な読み物の様に見えるけれど
そうではなく、感情を揺さぶるのに不快ではないのである。その力に私は読み進めていき、起承転結のないドラマに不満も無く、気持ちよく読み終えました。 -
群像劇、という表現が一番しっくりきます。
しかし、誰1人として共感できる登場人物がいない。ある意味それがこの作品の面白さなのかも。
皆が皆現状に満足していなくて、状況が変わっても物語は延々と続いて行きそう。
初めて読んだのは結婚を間近に控えた頃で、陶子の優雅な専業主婦生活に憧れも抱きましたが、いくら専業とはいえ夫・水沼氏の支配的な態度に苛立ったし、そんな夫に従順な顔をしつつも他所の男性と関係を持ってしまう陶子の言動も理解不能でした。
浮気体質な夫・土屋氏に文句の一つも言えない「できる女」風のれいこも、育児書にべったりで夫にも息子にも真正面から向き合っていない綾も、最後まで好きにはなれませんでした。
その中でも草子の苛立ち、桜子の無謀さは多少納得できたし、衿・真理江・道子の割り切りぶりにはまだ好感が持てましたが……。