まほろばの疾風 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087475951

感想・レビュー・書評

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  • ミュージカル『刀剣乱舞』 〜陸奥一蓮〜 を観に行くにあたって、蝦夷の文化や関連の歴史に一度触れておきたくて読んでみたところ、足がかりとしてちょうど良さそうだった。

    蝦夷の文化・習俗についてが、信心深くない現代の日本人の目線から見ても噛み砕きやすいくらい理性的に描かれていて、大和側の歴史の動きも最低限振れているので自分の中での時代勘の同期もとりやすかった。

    こういった歴史上の人物や土着信仰を持つ人々を描く本に対しては、今まで、少年漫画の主人公によく見られるような、良い面ではアツく、悪い面では考えなしな人物像の主人公が書かれるイメージがあった。私自身はそのような人柄だと感情移入しにくいので少し警戒していたのだが、少なくとも本作のアテルイは、狩猟の民としての冷静さ・判断力が存分に描かれていて、自分の知らない慣習との橋渡しになってくれる。

    また、そもそもアテルイたち蝦夷の人々を理性的に描くことこそ、彼らを偏見なく見ることなのだなというのを、文字でなく実感させてくれたように思う。昔の、自然と暮らした民の話だから直情的な主人公かもしれない――という気持ち自体も偏見のひとつだったなと自省した(振り返って自分の心配を分析してみれば本の描写に対するものだったとはいえ、読む前はそこまで細かく区別して意識していなかったので、大差ないことだと思う)。

  • 20210814

  • アテルイを主人公にした作品は、陸奥甲冑記(澤田ふじ子)、火怨(高橋克彦)に続いて三作目ですね。
    前半を過ぎまでは、なかなか良いのです。アテルイの登場の仕方もモレとの出会いも。熊谷さんらしい力強さが有って、次々にページをめくってしまいます。しかし、最後はちょっと。というより、「火怨」の余りにヒロイックなアテルイの行動解釈を読んだ後では、どうしても負けてしまいます。こちらを先に読んでいれば、それなりに収まったのかもしれませんが(とは言え、ちょっと納得できないところもあります)。
    ところで、この作品、「火怨」と比べ幾つかの大きな相違があります。
    まず第一に、この戦いの先陣を切るアザマロの子(私生児)がアテルイだったとういう設定。更に戦いの初期はアザマロが全軍の指揮をとり、その病死後にアテルイに引き継がれて行くのです。
    もっと違うのはモレを隣村の女性(巫女)首長としていることです。当然ながら、そこにはロマンスがあるわけでして・・・。
    二人の出会いは鮮烈で、それはそれで成功だったように思えます。

  • 4回目の3.11に。

  • 蝦夷の英雄アテルイの一生を描いた大作。
    大和に服従せず、最後まで仲間とともに自分達の土地を守ろうと奮闘する。

    他の作家が書いたアテルイも読んで見たいと思う。

    2013.12.24読了

  • アテルイと坂上田村麻呂の戦い

  • 疾風...という程、吹き抜けてる感じはしない。テーマは面白いんだが、

  • 自然の恵みを戴く事に感謝し祈る蝦夷。
    反対に自然の脅威を恐れ祈る大和民族。
    同じ祈りだが根底の違いが互いを相容れないものとしてしまう。
    凄い興味深い内容だったけれど、あまりにも駆け足で物語が進んでいってしまったのが少し残念。
    数巻に渡りじっくり描いて欲しいくらい魅力的な話でした。

  • 桓武天皇の時代
    東北地方に住む蝦夷の制圧が行われた
    蝦夷の族長として闘ったのが英雄アテルイ
    そのときの征夷大将軍が坂上田村麻呂

    蝦夷のお話は
    いたたまれなくなる話が多いが
    アテルイが「英雄」のまま了している
    よかったよかった

    --追伸--
    「火怨(高橋克彦著)」の方が良い。

  • はっきり言って文章は粗く、特に会話のやりとりなんかは拙いと感じた。
    そのせいか、序盤はイマイチ感情移入しきることができなかったが、ある程度物語が進行してからのパワーたるや、さすがにはにゃ氏が勧めるだけのことはある。
    皆川博子氏の作品を想起させるような、遠大なクロニクルはとても読み応えがあった。
    それでいて、狩猟民族が農業に出遭った時の戸惑いなど、ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」が好きな向きならおおと感嘆してしまうような要素も散りばめられていたりするから、懐も深い。
    ラストシーンを始め、グッと泣かせにかかる山場まであって、これほど連続テレビドラマにハマりそうな小説も珍しいのでは!

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著者プロフィール

1958年仙台市生まれ。東京電機大学理工学部卒業。97年「ウエンカムイの爪」で第10回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2000年に『漂泊の牙』で第19回新田次郎文学賞、04年に『邂逅の森』で第17回山本周五郎賞、第131回直木賞を受賞。宮城県気仙沼市がモデルの架空の町を舞台とする「仙河海サーガ」シリーズのほか、青春小説から歴史小説まで、幅広い作品に挑戦し続けている。近著に『我は景祐』『無刑人 芦東山』、エッセイ集『いつもの明日』などがある。

「2022年 『孤立宇宙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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