娼年 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087476941

感想・レビュー・書評

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  • ⚫︎受け取ったメッセージ
    「娼夫」として関わる、
    女性の心の明暗、欲望、美醜。


    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    恋愛にも大学生活にも退屈し、うつろな毎日を過ごしていたリョウ、二十歳。だが、バイト先のバーにあらわれた、会員制ボーイズクラブのオーナー・御堂静香から誘われ、とまどいながらも「娼夫」の仕事をはじめる。やがてリョウは、さまざまな女性のなかにひそむ、欲望の不思議に魅せられていく……。いくつものベッドで過ごした、ひと夏の光と影を鮮烈に描きだす、長編恋愛小説。


    ⚫︎感想(※ネタバレ)
    所々生々しくかなり刺激的に思ったが、丁寧な表現と、主人公の清潔感と悲哀、そして出会う女性に「普通」に接する彼の性質があるおかげで最後まで読み進められた。小説内に娼夫に溺れる女がいたり、女を騙したりといったものが一切なく、悲壮感もない。こうした要素が物語をサラッとした感じに仕上げているのだなぁと思って、そこが石田衣良さんの技量なのだと感じた。

    静香さんの「自分で意識している魅力なんて、底が浅いものよ」などの何気ない台詞の表現の仕方が素敵だと思った。

    最後は静香さんが捕まってしまう。続きがあるらしいので、また読もうと思う。

  • 石田さんの、小説は、女性が、とても、可愛らしく思える。
    性的な描写が、多いが、不快な感じはしない。
    文章が、綺麗で、とても、読みやすい。
    3部作なので、次を読みたい。

    映画では、松坂桃李さんが、演じているが、
    紳士的で、繊細なところが、ピッタリ!

  • 映画から先に読んでから、本を読みました。
    両方とも面白かったです。

  • タイトルと内容に圧倒されがちです(と私は感じました)が、丁寧に真摯に読み進めると、単純に性を売る少年とクラブオーナー女性という枠から外れたほの温かさの伝わる物語でした。

    【あらすじ】
    主人公は未成年の大学生、リョウ。
    とあるきっかけから女性客をもてなすボーイズクラブのオーナー、御堂静香に出会い、娼夫として働くことになる。
    同級生からも反対され、一触即発の場面もありつつ、彼が下す決断とは……。
    ***************

    姫野カオルコさんの解説にもあるように、「やさしいものがたり」であり、「(物語の)すじはどうでもいい」という人向けの物語です(物語本編もさることながら、解説が的確で素晴らしいです)。
    ストーリー自体は全くもって単純、シンプルです。
    しかしそれとは対照的に、著者の文筆センスは(解説でも“イカした”と形容されていますが)とても美しく、スタイリッシュでキラキラしています。
    それはもう、読書メモにたくさん表現を書き溜めてしまうほど。ドキリとさせられる一文から、その瞬間を切り取る鋭い一文まで、美しい表現が満載です。

    「性的なジャンルを深く切り込んだ小説なのでエッチなことばかり書いているんじゃないの?」と思われている方もいらっしゃると思いますが(それは私だけかもしれないですね)、性・セックスというものを媒介にして、様々な人間の側面に触れる物語とでも言いましょうか、我々はリョウの心を通じて様々な年代の様々な人生を持つ女性の側面(男性もですが)を具に眺めることになります。
    それは時に生々しく、痛々しいものもありますが、私はこの本を通じてみたその世界にはセックスしかなかった、とは感じませんでした。

    人生に退屈した少年のひと夏の物語。もう夏は過ぎてしまおうとしていますが、この夏の読書にこの一冊を選ぶことができて良かったと感じています。

  • 恋愛にも大学生活にも退屈し、うつろな毎日を過ごしていたリョウ、二十歳。だが、バイト先のバーにあらわれた、会員制ボーイズクラブのオーナー・御堂静香から誘われ、とまどいながらも「娼夫」の仕事をはじめる。やがてリョウは、さまざまな女性のなかにひそむ、欲望の不思議に魅せられていく…。いくつものベッドで過ごした、ひと夏の光と影を鮮烈に描きだす、長編恋愛小説。

  • 気がつけば読み終わっていた感じです。
    とても細やかで美しい表現が散りばめられていて、ひとつひとつのシーンや登場人物を想像しながら大切に読みました。
    性の描写はたくさん出てきますが、とてもさらっとしていて自由な感じがしました。
    全体的にやさしい雰囲気の漂う物語で、わたしは好きです。

  • 内容は過激だけど、決してそこだけ悪目立ちすることなく、面白く読みました。

    人が持つ、様々な欲望…マイノリティと思っていることでも、実は多くの人が内面に抱えているのかもしれないなあと思ったり。
    欲望に対して貪欲に、素直にいられるのなら、歳をとるのも悪くないなあなんて思う。

    主人公のリョウ、素敵な男の子でした。

  • 男性が女性に身体を売り、女性の様々な欲望から見えてくる人間像や価値観が新鮮だった。それはアダルトビデオに見られるような男性優位の世界ではなく、女性の欲望を満たす世界を石田衣良のキレイな言葉遣いで描かれている。
    こういう仕事は汚れているという常識がどこかにあり、少し嫌悪感あるシーンもあったが、そもそもこの感情の出処は何か。
    愛すべき男性と女性がセックスをするのが普通と思い込んでいたが、そもそもこの「普通」の価値観は何だろう。性に対して閉鎖的な日本でこの普通からはみ出したものは異常と見なされるのか。それは言い換えると性という根本的な欲求を見ずに人間を語ろうとしているようにしか思えない。
    主人公が不特定多数の人とセックスをすることで見える人間の欲望に呆れつつも、それは人の生き方の表現にも見えた。
    性から見える生き方を考えてしまう一冊だった。

  • 再読本。
    人それぞれの欲望の形。
    表面上は抑えている内側の欲望を露に描き、それに寄り添う主人公の優しさ。
    性的描写が多いながらも、登場人物達の心の動きを捉えた描写。そして、どこか美しさを感じさせる文体は見事と思う。

  • 見ず知らずの年上の女性と短いデートをする、その短い時間でどのくらい相手の女性を喜ばせることができるか。
    彼は娼夫になり自由になったという。外見、年齢、性別、仕事で判断せず、その人の話をきちんと聞くまで判断は保留する。
    耳を澄ますと、その人の秘密の欲望は、その人の傷ついてるところや弱いとこかにある。
    そう考えると、彼の娼夫という仕事は、すごく優しいのかもしれない。

著者プロフィール

1960年東京生まれ。成蹊大学卒業。代理店勤務、フリーのコピーライターなどを経て97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2003年『4TEEN フォーティーン』で直木賞、06年『眠れぬ真珠』で島清恋愛文学賞、13年 『北斗 ある殺人者の回心』で中央公論文芸賞を受賞。他著書多数。

「2022年 『心心 東京の星、上海の月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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