嫉妬の香り (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087476965

感想・レビュー・書評

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  • 嫉妬の感情は人をこわしてしまう。
    恋愛につきまとう感情ではあるが捨ててしまいたい感情。辻さんの作品は心の描写が緻密ですばらしい。

  • 嫉妬と不倫がテーマです。

    私はいつも早希を抱く時、彼女が隠した香水の一滴の在り処を探し求めては鼻先を彼女の皮膚の上に這わせた。隠された香水の在り処が、毎回違っていることに気がついた…

    一滴の香水の知的でエロティックな遊び

  • 感情が孤独になる。孤独な感情が孤立した欲望に問いかける。
    歳を重ねてもなお自分を捨てず自分を磨き続けているか
    癪なことだが、いつも答えを知っているのは時間だけだった
    出口は出口ではない。出口は入口でもある。急いでも到達できる場所は決まっている。ずっと立ち止まっていても、いつかはたどり着く。それが人生だ。
    しばらく抱き合ったまま動かなかった。
    一本の白樺の木が少し先の丘の頂上にあり、二人は手を繋いだままそこまで青草を踏みつけながら歩いた。時間を忘れたこどものように。

  • 恋人のミノリと穏やかな日々を過ごしていたテツシ。高校の先輩・政野英二にあるプロジェクトに誘われ手伝うことになる。政野の妻・早希も加え、家族ぐるみのつきあいが始まるが、政野とミノリの交わる視線から、何かを疑い、嫉妬を深めていく。
    「もしもあなたが幸福でいたいと願うならば、あなたは決して人生とは何かと考えてはならない。人生を深読みすることは危険であり、人生を悟った気になるのはもっと危ない。これは同時に、愛についても、同じである。愛とはこういうものである、と私が定義してしまった時に私の不幸は始まったのだ。」
    4人の関係は運命の悪戯としか思えない。はじめに一番男女関係にだらしないと思われた政野が、実は一番純粋だったのかもしれない。
    「愛と嫉妬はつねに危険な関係にある。嫉妬のない愛などあるのだろうか。愛する者を奪われるという虞から嫉妬するのではない。自分が傷つくのが怖いから嫉妬の鎧を着てしまうのであり、つまり嫉妬とは自己愛に他ならない。もしも愛を永遠に維持させたいと願うなら、人間はまず愛する者に嫉妬をしないことを最初に自身に誓わなければならないだろう。」
    これが究極の愛というものだろうか。

  • このまえも思ったからこれを買ってみたんだが、やはりこの作家さんすきかもしれん。



    私の唾液だけが、彼女の顔を汚しているような気がして後ろめたい気分に包み込まれていく。どんなに力を込めても、激しく彼女の肉体を弄ろうとも、ミノリはだらりとしたまま一向に応じようとしなかった。ただ拒絶もしなかった。私の心が落ちつくまで、自分の肉体を貸し与えているといった応じ方だった。

    ―――何もかも置いてきた。捨ててきたと言った方がいいのかしら。もう戻る場所もない。戻るつもりもないけど。

    結婚を人々が求めるのは、そこに独占しあうという約束を公に手に入れるためであり、結婚によってただ相手を自分につなぎとめるためだ。結婚という法律を行使しないで、一生添い遂げる人も中にはいる。愛している、という言葉を一生使わないで人を愛す自信のない私には真似のできることではない。

  • 読んでいて、各場面で様々な香りが匂い立ってくる。辻仁成特有の描写力で終始生々しくて良い。

  • 辻仁成好きとして何度も読み返してる20年来(近く)の愛読書。いまの年齢になって読めば、30前後の若い男女4人の未熟さに端を発する愛憎劇かなとは思う。タイトルどおり香りに関する表現が緻密で、これらの香りを自分もかいでみたい!と思わせる。これが人間関係のスパイスとなっているところにこの作品の価値があると思う。もともと読み始めたのはテレビ朝日でドラマ化された作品を見てから。当時大学生、あのドラマは毎週ぶっ飛んだ演出をしていて、ほんとおもしろかったんだよなぁ。なぜ円盤化されてないのか疑問。堺雅人主演作品、ぜひ世に広めたかった

  • 誰に感情移入しても不快になる、主要の登場人物が皆クソ野郎だった。
    終始誰かしらが選択を誤って、最終的に全員不幸になって。ホラー小説を読み進めるかのような怖いもの見たさがあった。面白いお話だったけれど読後感が最悪なので二度は読みたくない。

  • あの人が好き、とかどうでも良くなるぐらいには辻仁成の作品「嫉妬の香り」は私の心に突き刺さるようなものだった。恋愛そのものを全否定したくなるような作品。恋愛に対してなにか負の感情を抱いている人はぜひ読んで欲しいがあまりオススメはしない........。とは言ってもこの作品から学ぶことは多かったと思う。

  • 一応香り関係の仕事に就いているので、興味があって読んでみました。
    楽しかった。初めは私も主人公と同様に、ミノリと牧野さんの関係を怪しんでいた。女性2人と中半端な関係を結びつつも、どちらからも離れられ、どん底に落ちる主人公をなぜか応援したくなってしまった。そして女性たちの身勝手さをその時は恨んでしまった。
    だけど最後辺りには、女性たちの気持ちもある程度理解できた。
    愛ってすごく脆いものなのかも。
    なんだかハッキリキッパリしないまま終わるところが、リアルな感じで良かったです。
    あと恋人がものすごく匂いフェチなのと、ムスクの香りに似た体臭と言われたことがあるので、恋人を主人公に、私をミノリに重ねてしまいました(笑)。

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著者プロフィール

東京生まれ。1989年「ピアニシモ」で第13回すばる文学賞を受賞。以後、作家、ミュージシャン、映画監督など幅広いジャンルで活躍している。97年「海峡の光」で第116回芥川賞、99年『白仏』の仏語版「Le Bouddha blanc」でフランスの代表的な文学賞であるフェミナ賞の外国小説賞を日本人として初めて受賞。『十年後の恋』『真夜中の子供』『なぜ、生きているのかと考えてみるのが今かもしれない』『父 Mon Pere』他、著書多数。近刊に『父ちゃんの料理教室』『ちょっと方向を変えてみる 七転び八起きのぼくから154のエール』『パリの"食べる"スープ 一皿で幸せになれる!』がある。パリ在住。


「2022年 『パリの空の下で、息子とぼくの3000日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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