王妃の館 上 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087477078

作品紹介・あらすじ

パリはヴォージュ広場の片隅にたたずむ、ルイ十四世が寵姫のために建てたという「王妃の館」。今は、一見の客は決して泊めない、パリ随一の敷居の高さを誇る超高級ホテルとなっているこのシャトーに、なぜか二組のワケあり日本人ツアーが同宿することになった。しかも、倒産寸前の旅行代理店の策略で、客室を昼と夜とでダブル・ブッキングされて…。ぶっちぎりの笑いと涙満載の傑作人情巨編。

感想・レビュー・書評

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  • 安定の浅田先生。声を出して笑うシーンもあれば、思わず涙が流れるシーンもある。本書は、倒産寸前の旅行代理店が、フランスの格式高い老舗ホテル一部屋を二重貸しして資金を調達することから始まる。実はこのホテルは全15部屋しかなく、不景気の真っ只中であるため、突如キャンセルとなった空き部屋を埋めるため旅行代理店とグルになって二重貸しするという、なかなかの暴挙にでる鬼畜ぶりである。本ツアーは10泊で200万近くする高額の光プランと、たったの19万ぽっちで10泊できる影プランとの2つで出来ている。光と影のお客様同士が部屋の二重貸しに気づかないように配慮しながら物語が進められるのだが、登場人物全員のキャラが立っていて、いちいち笑わせてくれるのだ。個人的に一番好きなのはゲイのクレヨンこと黒岩源太郎さん。何がいいって、まずこのニックネームと名前が素晴らしい。それにフランス語もペラペラで見た目も美しいという。完璧に面白い。このクレヨンと元警察官の近藤のコンビが良い。下巻では2人で手を繋ぎあって幸せになることを密かに願っている。

  • 集英社文庫の「夏の100冊」の景品がほしくて数年前に買った作品です。映画にもなるというし機は熟した。満を持しての読書。
    パリって場所を聞くだけで気持ちが浮き立ちます。ここぞとばかりに色々見て食べて買って感動して、に忙しくて、些細なことを気にしている場合じゃありません。たとえ同じツアーの参加者が一癖も二癖もある人たちだって。ホテルの自分の部屋に、留守中別のツアーの人間が出入りしてたって。気をもんでいるのはそれぞれのツアーの添乗員くらいなもの。そんな彼らだって、このホテルと王の昔話には夢中になってしまいます。笑いも涙もスリルも雑学も人生の暗い側面もめいいっぱい詰め込まれ、どうでもいいなーと思う場面もあるけれど、その倍は好きになる場面が出てきます。しかも同じシーンが好きな人と語り合いたいくらいはまります。
    旅行はいつか終わる物。ツアーを終えて現実に戻った彼らの今後が正直不安でもあります。まぁ何かあったらパリに戻って、今回の旅行を思い出したら大抵のことは乗り越えられるでしょうね。

  • 今ね、あんまりこういうドタバタの気分じゃないんだけれど、しんどい本の隙間にって感じで手に取って、めまいの治らない日にほけ〜っと読む。

    オットを支える妻は素敵なのよ、えぇ、素敵。でもね…。

    パリの地図を見て、まだ行っていない場所だと確認。
    ショパンの墓とか、あっち側を次回行ってみるかという
    気づきのきっかけになったのはgoodですよ。

  • 久々の浅田次郎。軽快なテンポ。奇想天外な設定。現代、いわくありありのパリ高級ホテル「王妃の館」ツアーと、17世紀、ルイ14世とその王子を巡る過去の物語が絡み合いながら、下巻へ。

  • テンポいい!
    さすが浅田なのかも(^^)

    今時当たり前なのかもだけど、登場人物が巻頭で確認できるのはいい。
    一気に読めず、間空きながらだとどうしても忘れちゃうので(^^;

    フィクションだから当然偶然は作れる。
    できすぎの偶然は賛否あるかもだけど、これの偶然はわくわくする。
    なんていうか、先が読めても、その課程がどうなるか気になる感じ(^^)

    エピソードって実話なんだろうか。。。
    実話だとしたら深い!
    フィクションだとしたら、ここまでリアルにかけるのが上手い!(笑)
    これがほんとなのかって新たな命題を出して、関連する他の本へいざなうみたいの、なかなかすごいかも。
    ま、他でもありそうだけど(笑)

    上に立つ者の辛さ。
    この前見た映画「英国王のスピーチ」を思い出した。

    まだ、上巻だけなのに思った。
    映画じゃなくて本で読んで良かった、て。
    映画は見てないし、映画が良くないというんじゃない。
    これだけのボリュームを2時間とかの映画に納めるのは厳しい。
    結果、はしょられるとこが出ちゃう。
    アクションものは映画で見た方がいいから、それで映画の小説は読まなくなったのを思い出した。
    けど、本、特に原作は本の方が良い場合もあるかもね(^^)
    これ以外も、今まで見た映画の原作を読んでみるのもいいかもと思った。

    週末に下巻を買います(^^)

  • 2つのツアーが同じ日に同じホテルに泊まる。
    2つのツアーにはそれぞれの繋がりがあり、色々なストーリーがそこから生まれる。
    これからどのような展開になっていくのかすごく気になる。

  • 浅田次郎さんの作品はとても好き。
    人情味に溢れていて、感動できるし、心に響く言葉もある。

    再読の予定あり。
    再読したら下巻に感想を書きたいです。

  • 潰れそうな旅行会社が企んだ
    片や豪華、片やチープなパリツアー。
    どこにでも居そうな人物設定と
    かのフランス国王の心の機微を
    巧みな文章で描いてみせる。
    笑えて、ちょっぴりしんみりさせる。

  • ちょっと期待はずれ。
    時代が交差する部分の記述は滑らかで自然なのだが、ルイ14世の記述は冗長で読みにくい。クローミングローズのアルバムタイトルとしてインプットされている太陽王の知識を今更ながらに蓄える機会としてこらえる。
    そういえば、クローミングローズって、今どうなってるんだ?

  • 「浅田次郎」の長篇ユーモア小説『王妃の館〈上〉〈下〉』を読みました。

    『終わらざる夏』、『残侠―天切り松 闇がたり〈第2巻〉』に続き、「浅田次郎」作品です。

    -----story-------------
    〈上〉
    思いっきり笑えて泣ける、人情巨編!
    150万円の贅沢三昧ツアーと、19万8千円の格安ツアー。
    対照的な二つのツアー客を、パリの超高級ホテルに同宿させる!?
    倒産寸前の旅行会社が企てた、“料金二重取りツアー"のゆくえは…。

    パリはヴォージュ広場の片隅にたたずむ、「ルイ十四世」が寵姫のために建てたという「王妃の館」。
    今は、一見の客は決して泊めない、パリ随一の敷居の高さを誇る超高級ホテルとなっているこのシャトーに、なぜか二組のワケあり日本人ツアーが同宿することになった。
    しかも、倒産寸前の旅行代理店の策略で、客室を昼と夜とでダブル・ブッキングされて…。
    ぶっちぎりの笑いと涙満載の傑作人情巨編。

    〈下〉
    涙と笑いの人生ツアー、ついに決着へ!
    愛人と別れたうえリストラされたOL。
    人気作家とその担当編集者。
    心中を目論む老夫婦。
    カード詐欺師の夫婦…。
    「ルイ十四世」の秘話を織り込んで、親子の愛が、夫婦の愛がホロリとさせる珍道中の物語。

    ひと癖もふた癖もある「光」と「影」のツアーメンバーたちは、ドタバタ騒ぎとニアミスをくりかえしながらも、それぞれのパリの旅を楽しんでいた―かに思えたが、ついにツアーの二重売りがバレそうになって、さあ大変。
    さらに「王妃の館」に秘められた太陽王「ルイ十四世」の愛の行方をからめて、物語は十七世紀と現代とを縦横無尽に駆けめぐる。
    思いっきり笑って泣いて、ついに感動の大団円。
    -----------------------

    女性月刊雑誌『メイプル』の1998年(平成10年)5月号から2001年(平成12年)4月号に連載されたコミカルな作品、、、

    2015年(平成27年)に「水谷豊」主演で映画化され、2017年(平成29年)には宝塚歌劇団で舞台化されているらしいです。


    パリはヴォージュ広場の片隅にたたずむ、「ルイ十四世」が寵姫のために建てたという「王妃の館(シャトー・ドウ・ラ・レーヌ)」… 今は様々な著名人が泊まった一見さんお断りの高級ホテルとして鎮座する、、、

    しかし、実は現在の懐事情は芳しくない… そこへ日本の倒産寸前の旅行会社がホテルを抱き込み、ダブルブッキングのツアーを企画・実行する。

    昼に滞在する客(光(ポジ)ツアー)には10日間で150万円、夜に滞在する客(影(ネガ)ツアー)は19万円という格差があるツアーをダブルブッキングがバレないように両方の組が鉢合わせしないようにして行ったのだ… そんなことを知らずにツアーに参加した客は、みな訳ありや癖がある者ばかり、、、

    物語は、取材のためにツアーに参加した作家「北白川右京」の創作などの、「ルイ十四世」と愛妾「ディアナ」、そして2人の息子の「プティ・ルイ」の話を織り交ぜながら、ドタバタ劇が繰り広げられる。


    久しぶりに読書しながら笑えましたね… 面白かった、、、

    泣くほどではなかったけど… 様々な過去を抱え、それぞれの目的を持ってダブルブッキングのツアーに参加した個性的なメンバーたち、顔を合わすことはなかったはずの光(ポジ)ツアーの7人と影(ネガ)ツアーの8人がニアミスを繰り返し、そして、ハプニング等にも助けられ、ツアコンの2人を含め次第に打ち解けて、同じ目的に向かって将来を生きて行こうとする展開は人情劇的で良かったですね。

    「浅田次郎」の作品って、幅広いですねぇ… 三作品、続けて読みましたが、それぞれ全く違う作風なので、同じ作家の作品とは思えないくらいです。



    以下、主な登場人物です。

    【光(ポジ)】ツアーメンバー

    「桜井香」
     上司との不倫の末、リストラされた38歳のOL。
     リストラ奨励金を使い切るためにツアーに参加

    「北白川右京」
     ベストセラー作家。
     長篇小説『ヴェルサイユの百合』執筆のために、隠密旅行に。

    「早見リツ子」
     精英社の文芸編集者。
     リフレッシュ休暇を使い、北白川右京の書下ろしを完成させるべく、グリップ旅行に。

    「下田夫妻」
     工場経営が破綻し、数億の借金を抱える中年夫婦。
     心中目的で有り金はたいてパリへ

    「金沢貫一」
     バブル崩壊後に成り上がった不動産王

    「ミチル」
     元銀座のホステス。現在は貫一の恋人

    「朝霞玲子」
     <光(ポジ)>ツアーを引率する敏腕ツアコン。社長と愛人関係にある


    【影(ネガ)】ツアーメンバー

    「近藤誠」
     謹厳実直。猪突猛進型の元警察官。
     韓国旅行での上司や同僚たちの醜態を見て退職。
     "世界を見聞するため"に参加。45歳

    「クレヨン」
     本名・黒岩源太郎。ゲイ・バーに勤める美形。
     フランス人の元恋人を探している

    「丹野夫妻」
     全身黒づくめの謎の夫婦。実は世界を股にかけるカード詐欺師。

    「岩波夫妻」
     元夜間高校の教員とその妻。
     夫はかつてゼロ戦乗りだったという過去を持つ。

    「谷文弥」
     音羽社の文芸編集者。北白川右京を追ってパリへ

    「香取良夫」
     文芸四季社の文芸編集者。谷と結託してパリへ

    「戸川光男」
     <影(ネガ)>ツアーを引率するツアコン。朝霞玲子はかつての妻。
     今は娘と二人暮らし。


    十七世紀「王妃の館(シャトー・ドウ・ラ・レーヌ)」をめぐる人々

    「ルイ十四世」
     フランスの太陽王

    「プティ・ルイ」
     本名ルイ・ド・ソレイユ・ド・フランス。ルイ十四世の息子

    「ディアナ」
     プティ・ルイの母。ルイ十四世寵姫だったが、ヴェルサイユを追われる。

    「ムノン」
     宮廷のグラン・シェフ

    「ジュリアン」
     ムノンの娘婿

    「マイエ」
     マ・ブルゴーニュの店主

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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