- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087477368
感想・レビュー・書評
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ベツレヘムの赤子殺しで有名なヘロデ王の生涯を、側に仕える竪琴弾きの目を通して見た物語。
読みやすかったです。登場人物の名前に苦戦しましたが。とても現代的な書き方というか、ドキュメンタリーのような。
一介の竪琴弾きの目から見た一人の王の側面。ヘロデ王という一個の人物を歴史上の人物として高みから批評する視点ではない。
「偉大な王と、とてつもない悪人と、どこで区切る?」
このセリフが印象的でした。
偉大な建築王、残虐な圧政者。一個の人間の評価は個々で異なる。
淡々とした描写ですが、考えさせられました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
(「BOOK」データベースより)
ヘロデ大王。ローマ帝国の庇護の下でユダヤの王となり、都市・神殿・水道などの土木事業や経済を発展させる一方、異常な猜疑心から妻子や縁者、貴族や祭司を次々と謀殺。宮殿は権謀術数の渦に呑まれてゆく。キリスト生誕にまつわるベツレヘムの赤子殺しなど、強圧的な政治を敷いた王の姿を、側に仕える竪琴弾きの目から映し出す。数奇で劇的な生涯を緻密に描き、人間の欲望と悪の本質を問う。 -
塩野七生さんの『ローマ人の物語』で予習しておくと、より美味しくいただけます。公共事業と残虐性で歴史的に有名なヘロデ王の話。他人に語らせている分、残酷さや狂いっぷりがややソフトになっています。
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サロメの存在を初めて知った話でもあるし、秘匿は相手に墓穴を掘らせる良い策なんだと気が付かされた話でもある。
視点を変えれば見え方も変わる、今にしてみれば当然の事なんだけども。 -
たしか友人にもらった本なのだが、どうも古代の歴史への苦手意識から読めずにいた。それがなんと2日で読み終えてしまうほどの面白さ。この物語には詳しく書かれていないが、スペイン語圏のエープリルフール「無垢な者の日?」がこのヘロデ王の、ベツレヘムの赤ちゃん殺しに由来しているという話を聞いた直後で、偶然に本を再び手に取ったときに表紙裏の解説にその話が書いてあり、興味がわいたのもあるかもしれない。また口の聞けない「穴」にストーリーを語らせる手法と、マルタケ、アヒアブという、政権の「良心」的な人物に魅力を持たせてあるお陰で、読み終えられたと思う。
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インフルエンザの予防接種受けに行って、待ち時間に読み始めたら止まらず…。
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本書は、著者の名前から察するに、通勤電車の中で読むには。。。と抵抗はあったのですが、このところ中東関係の歴史物を読む機会が多くあり、時代背景などは大分わかってきたので、まぁ読んでみるかという気になりました。
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塩野七生のローマ人の物語?の中で「内紛が日常茶飯事のオリエントの君主の典型」として、ほんの数ページでしかとりあげてありませんでしたが、まぁ、歴史に名を残すほどの人物ですから、たいへんな物語にはなりますです。はい。
あと、サロメというのも名前だけはよく耳にしますが、ヘロデ王の妹だったそうな。ああ知らなんだ。
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ただ、何の為に書いているのかが、最後まで読んでもよくわからなかったです。石田友雄氏による解説の一番最後にようやくそれらしき解釈はありましたが、いまひとつピンとくるほどのものはありませんでした。
2004/11/22 -
ユダヤ王国が栄えていた時代。荒野で暮らしていた青年は、その竪琴の腕をかわれ、宮廷楽師となる。「穴」という名をもらった彼は、耳は聞こえるのだが、言葉が話せない。話せない=聞こえないという図式にはまっている宮廷人は、彼の前で様々な本音をもらす。ヘロデ王自身、妻、腹心、肉親、その他に王と
関わる人々の想い、思惑を
「穴」の目線から語った作品。
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キリストの生まれる直前の歴史、王はかの悪名高きヘロデ。「2歳以下の赤ん坊を全て殺せ」というイメージしかなかった。怜悧な筆致で描き出す壮麗な風景に圧倒される。主人公ヘロデは賢く、そして、非常に孤独な人物だった。勘の良さ(あるいは自分の猜疑心による勘違い)で、悪い方悪い方の未来を選って手を打とうとし、話が進むにつれて血なまぐささはどんどんと強くなって、胸が痛む。それはヘロデに向けたものか、それともヘロデの標的になったものか、どちらに対してもだったのか。公式ホームページで建築狂だった彼の一端が伺える。http://www.shueisha.co.jp/herode/