泳ぐのに、安全でも適切でもありません (集英社文庫)

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著者 : 江國香織
  • 集英社 (2005年2月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087477856

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泳ぐのに、安全でも適切でもありません (集英社文庫)の感想・レビュー・書評

  • 短編集。中年の不倫ばかり。登場人物が全員同じに見える。

  • なんだろう、この気怠さは。
    「安全でも適切でもない人生の中で、愛にだけは躊躇わないーーあるいは躊躇わなかった女たち」の声が紡ぎ出す、少し哀しいモノローグ。結婚や家庭というものが「安全」で「適切」な関係だというのなら、ここに登場する男女はみな、そこから外れてどこかへ流されていくのか、はたまた溺れてしまうのか、わからない人ばかり。

    ぼんやりと、ちょっと山田詠美と同じ空気を感じるな、と思っていたら、「解説」が山田だった。
    「えっ⁉︎ 字、なのに……⁉︎」
    と山田が言うように、たしかに驚くほど五感を刺激されるのだ。
    「無機質な活字から五感のすべてを刺激して、くっきりとひとつの情景が浮かび上がるのである。まるで触れそうなくらいにくっきりと。匂いも嗅げそうにはっきりと。ぶれなどないかのように正確に。色だって、音だって、ちゃんとあるのだ。……字、なのに。」(解説より)

    いちばん印象的だったのは、「うんとお腹をすかせてきてね」。飲んで、食べて、セックスをする男と女。ただただ悦びを共にあじわう、甘く、美味しい、明日なき日々。鹿肉のグリル、オニオングラタンスープ、ワイン、エスプレッソ、ココナツクリームのケーキ、ビールに串揚げ…。食の描写がこんなにも官能的なのはいったいなぜだろう。ふと伊丹十三の「たんぽぽ」の役所広司と黒田福美を思い出してみたり。プルーストのマドレーヌ描写も、幼少期の思い出と結びついているシーンのはずなのに、やけにふっくらと芳しくて、ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」を思わずにはいられないほどプンプンと官能の香りがするものなぁ。食と色とはきってもきり離せないものなのかなぁ。
    「こんなふうにしてどこまでいかれるかしら」「死ぬまでこんなふうにして暮らせるかしら」「こんなふうに、食べることと寝ることだけをくり返して」そんな女の言葉を、男は「つまらないことを考えてないで、食べて」とふさぐ。(キスではなくて、クレソンで。)
    「あたしたちは身体全部を使って食事をする。おなじもので肉体をつくり、それをたしかめるみたいにときどきお互いの身体に触れる。あたしたちはますます動物になる。あたしたちのテーブルだけ深い森になる。森の中で、寝室でたてるみたいな声をこぼす。泣きそうになり、仕方なくみつめあって笑う。」

    他にも、「サマーブランケット」「うしなう」など、あまり性を感じさせないサラッとしたドライなお話の空気感も印象的。

  • ○人生を過ごす意味、仲間といる意味、お酒を飲む意味。
    表題作「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」をはじめとする10個の短編集。

    ・「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」
    葉月が一緒に住んでいる男と一緒にいるとき、妹の薫子から、祖母が入院したとの連絡がある。母もそこにいて、実家に帰らなかった親子は笑い合う。

    そのあとふと思い出す、"It's not safe or suitable to swim."(p26)。
    タイトルの「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」という言葉の原文である。
    少し読んでもよく意味がつかめないが、筆者は"私たちみんなの人生に、立てておいてほしい看板ではないか。"(p27)と葉月に言わせている。
    母も、姉妹も、比較的自由奔放に生きてきたけれど、実質的には遊泳禁止の場所もあったのではないか、やってはいけないこともあったのではないか。主人公はそう回想しただろう。
    ただし後悔とかそういう次元ではない、前向きな回想。
    自分たちは自分たちで、悪かったわけではないけれど、そういう看板があってもよかったかもしれないし、なくてもよかったかもしれない。

    この短編集には、お酒が良く出てくる。筆者がお酒好きだということもあるだろう。
    表題作でも背徳感で飲む白ワインが出てくる。そういう感情があるからこそおいしそうに見える。みんな人生を楽しんでいる。

    表題作に加えて、男と女の関係を描いたり、その男が外人だったり。
    いろいろな短編が詰まった1冊。

  • 再読
    わりと江國先生っぽい甘ったるさは控えめの、懐かしい感じの初期短編集っぽい空気だったんだな

  • こういう類の短編集は
    共感できるかどうか、がすべてな気がする。

    山田詠美のあとがきがうまいと思いました。まる。

  • 泳ぐのに、安全でも適切でもありません。
    私たちみんなの人生に、立てておいてほしい看板ではないか。

    結局のところ、私たちはみんな喪失の過程を生きているのだ。貪欲に得ては、次々にうしなう。

    大切なのは快適に暮らすことと、習慣を守ることだ。

  • いろいろな人生の一片だけを切り取った、短い物語。そしてその始まりも終わりも無い、途中から途中までの短すぎる物語なのにどっぷり浸かってしまう。書き手の巧妙な文章力によって、その光景がありのままに目に浮かび、その中に浸ることがこの小説の味だ。

    どこか刹那的で、さっぱりした女性主人公達は、打算的でも計画的でもなく、自分の人生をありのままに送っていて、素直な心を持っている。全員に共通してることは、違う形であれ彼女ら最大のテーマは男との関係とその位置。幸せの象徴の子供や家族についてはどちらかというと否定的(無)で、男性に対する期待感や存在感が大きく、特に父性的な愛情を求めているようにも見える。

    好きだった短編は「うんとお腹をすかせてきてね」「ジェーン」「犬小屋」と「愛しいひとが、もうすぐここにやってくる」。

  • それぞれ、恋愛の記憶を抱えた女性たちが主人公の短編集。
    物語として、感動的なラストがあるわけでもなく、基本的には「過去の出来事」を振り返るイメージなので、疾走感もない。
    個人的にはあんまりヒットしなかった。

  • 「うんとお腹をすかせてきてね」がとても気になった。食事のシーンでこんなに揺さぶられるとは。食べるという欲求と愛の取り合わせがグッときた。全部の話で感じたのが語られないことの存在、あと海外の短編を読んだ後に似た感覚。

  • 60
    それはたしかに、わたしの考えでは厚かましいふるまいなのだが、その厚かましさはなにか輝かしい、胸のすくような厚かましさだった。
    111
    向坂さんはまだ四十代だったけれど、心臓に病気を持っていた。ニトロールという薬をのんでいた。それは白い錠剤で、彼がセックスの後にそれを飲むと、私はいつもかなしくなった。悪いことをしたみたいな気がするのだった。
    147
    「家族なの?」
    214
    「きみはすばらしいな」
    「だってあなたがすばらしいから、知らないうちに私もすばらしくなっちゃうだわ、きっと」

  • 他人の恋愛を垣間見る。落ち着いた女性たちの少し冷めたような世界観。リアル。

  • 江國さんのお話は殺伐としていておしゃれでドライだ。近いはずなのに遠く感じたり、二人でいるのに孤独だったり、世界中から二人だけ疎外されていたり。ほんのり温かいけどいびつだったり。ドラマのようにカッコいい。(決して真似は出来ないが…)縛られていない分、自由。自由は濃い責任と孤独を生み出す。

    泳ぐのに、安全でも適切でもありません
    りんご追分
    うしなう
    動物園
    犬小屋

    が好き。

  • 一見幸せそうだけど、もの悲しい女性たちの物語。
    愛だけは躊躇わなかった女性だから
    不倫モノ多し

    安全でも適切でもない場所で泳いだら
    きっと溺れるのは目に見えている、けれどそうなると
    分かっていても泳ぎ続ける女性たち。

    体全体使って食事をする様な動物的なカップルの
    食事シーンに様に肌で感じる様な描写が好きだった。

  • 初の江國香織作品。

    女性が語り手の、男とのかかわりの物語10編。

    どの短編にもかならずセックスがでてくる。
    そして男女の間から徹底して子供が排されている。


    男女の愛のかかわりはセックス抜きには語れないという彼女の主張のように思える。
    そして男女の愛のかかわりは子供が介在すると輪郭がぼやけてしまうという彼女の主張のように思える。

    食べる、触る、肌で感じる、など、5感の描写がとてもうまい作家だと思った。
    5感の描写で成り立つセックスに関する箇所も、エネルギーに満ちているのに透明感があり、エロティックというより切なさが際立つ。

    10人の女性それぞれの男性との関係を濃縮して切り取って見せてくれたとおもったらいきなり途中で放り出されてしまったあとの、短編小説特有の余韻。主人公たちが妙齢の日本女性たちであり感情移入しやすいせいか、この余韻を持て余して疲れを感じてしまうほどだった。
    それだけ上手な作家さんなのだろう。

  • たぶん初めて読んだ江國さんの本。短編集。
    「十日間の死」という話が印象深い。若い女の子の、短すぎる熱烈な恋の話。熱烈だから忘れられないのだろうと思う。物語の中の女の子もそして読者も。

  • おんなたちの短編集

    [サマーブランケット]と[りんご追分]がすき

    祖母の病院にかけつけた親子の女たち、食事の愉しみを知った女、海の傍の一軒家に暮らす女、居酒屋で働く女、ボウリングに勤しむ女たち、アメリカでルームシェアをする女、雨の動物園に行く親子、犬小屋にこもる夫をもつ女、フランスに留学している女、帽子屋の女

    みんなどこか寂しい、いつもどおり不倫をしている女が多い

  • 江國香織の小説、初挑戦。
    不倫の話多めです。苦手な方は要注意です。それ以外には、少し現実味がない話が多く、共感しながら読むという小説ではありませんでした。

    しかし、後ろめたさを感じる理性に目をつぶって、誰かをどうしようもなく好きになった経験があるならば、読みながら心がざらざらするかもしれません。安心感を少しと、虚無感と、心が粟立つような気持ち悪さが少し。

  • 詩集のような短編集でした。
    著者のあとがき通り、愛に躊躇しない人、しなかった人の集まり。結果不倫が多め。
    素敵な場所や物に囲まれた女性が主人公たちで、それぞれ拘りや理念を貫いていてかっこいい。それが世間一般の幸せじゃなくてもというのがよくわかるような…。
    物語というより恋愛紹介みたいな淡々さが思ってたのと違うので☆3

  • 山田詠美さんが解説で、作者の言葉の扱いにひれ伏してしまうと書いているが、この本は江國香織さんの小説の中でも特にそういう部分が全開だなとおもう。

  • 山本周五郎賞を受賞した江國香織の短編集。江國香織っぽさ全開。みんななんか自由な%、ちょっと変わった恋してるなー。『犬小屋』が印象的。なんか怖いよね、これ。2012/396

  • 「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」
    タイトルの付け方が魅力的過ぎてそれだけで星3点。


    上級な大人の女性のお話。
    私にはなんとなくまだ早い。
    「うんとお腹をすかせてきてね」が好き。
    濃厚な食事をさせてくれる人と恋愛がしたいです。


    何を濃厚と置くのかはまた別の話でね。

  • 短篇集だけど、主人公の悲しみのような感情が強く伝わってきて、面白かった

  • 私も、大好きな男も、頬を紅潮させている。私は自分たち二人を、遠い日に出会った男の子どもと女のこどもであるように感じる。快活で素朴で。夏休みが永遠に終わらないことを信じ続けていたあの頃のように。

  • うんとよく食べてね。

    大好きな人、という存在が食欲も色欲も、すべての欲を刺激する存在と思い出す。

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