異国トーキョー漂流記 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087477924

感想・レビュー・書評

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  • トーキョーで出会った外国人たち。一風変わっているけれど、著者との付き合いから徐々にその人らしさが表に現れてくる過程が面白い。著者の高野さんのオープンで気取らない人柄ゆえなんでしょうね。

    失礼ながら高野秀行さんのことは全然知らなくて、読み終えたばかりの『三大陸周遊記』の前書きの文章で知ったばかり。う〜んすごく面白い人!

  • 高野さんが東京で出会う外国人との交流。

    本当に日本の話?と思うほど、
    高野さんが色々な人種の人と、濃かったりそうでもなかったたりの様々な出会いをして、助けたり助けられたり、野球を観たり、バイト先を紹介したりというごく普通の日本人の私からすると目が回るような接触をしている。

    恩人の息子さんから言われた「あなたの一生は生き甲斐がある」という言葉にうんうんしてしまう。

    どの話もジーンとしたり、笑えたり(苦笑いを含む)、不条理を感じたりして、陳腐な表現だが面白かった。

    私からすると高野さんは十分変わり者だが、
    世間の目を気にせず、興味のあることに時間と体力と適当な額のお金を使えるのは羨ましい!
    死ぬ時に、無茶もしたけど記憶に残ることばかり!とニヤリとできそうだな。

    もっと若い時に読んでいたら、人生が少し違っていたかも。
    今はコロナ禍だし、そうでなくても私の中では911の前と後では海外旅行に対する意識もだいぶ変わってしまった。
    それに母親という役割があるからね!

    好きな話は
     百一人のウエキ系ペルー人
     大連からやってきたドラえもん
     トーキョー•ドームの熱い夜

  • おもしろいなあ。高野さんは何を読んでもいいけれど、私はトンチキなスチャラカ話が一番好きだ。これなんか本当にいい。愉快で、笑えて、ちょっと切ない。

    八王子の長屋に住み暗黒舞踏にはまっているフランス女性とか、「日本のマイケル・ジャクソンになる(意味不明)」と言うザイール青年とか、登場するガイジンさんもユニークだが、そもそも、こんなにいろいろな人と出会っていく高野さんこそ実にヘンな人だ。

    「私は子どもの頃から『まじめだ』『おとなしい』『協調性がある』などと言われて、優等生路線を歩み」と書いてあって、なぜか笑ってしまう。 「このままで行くと、大学を卒業し、どこかの企業に就職し、『まじめだ』『おとなしい』『協調性がある』と言われて、会社でほどほどに重宝され、やがて時は過ぎて、定年を迎える……。そんなシナリオが目に見えた」 そこで大学生の高野さんは「冗談じゃない」と思い、「これまでの平凡で従順な自分は、そういう人間を好むくだらない日本と一緒に、水洗便所のウンコのようにジャーッとどこかへ流して」しまおうと、海外へ出ようと決めたそうだ。海外の旅は「水洗便所のレバー」らしい。

    旅をする時、まず現地の言葉を勉強するのが高野さんのポリシーで、しかもリンガラ語とか習おうとするから、ちょっと他ではない出会いがあるわけだ。

    コンゴ人のジェレミー・ドンガラさんとの縁を綴った第二章がとても良かった。彼のお兄さんが作家で、ひょんなことから高野さんはその小説「世界が生まれた朝に」を翻訳し、それをワセダの卒論とし、小学館から出版する運びとなる。

    何年か連絡が途絶えていた後、突然ジェレミーさんから結婚式にただ一人の友人として招待され、高野さんは驚く。堂々たるエリートに見える彼も、十年に及ぶ日本での生活で孤独な異国人だったのだ。このときの高野さんのスピーチがいい。コンゴのドンガラさんの家を訪ねた時、歓待してくれた彼の家族のことがあたたかく語られている。コンゴを知らない新婦のご両親や親戚の方が「安心した」ととても喜んでくれたと書いてあって、ほろっとする。ジェレミーさんは目を真っ赤にして、空手で鍛えたバカ力で抱き締めてくれたそうだ。高野本屈指の名場面ではないだろうか。

    第八章で登場する盲目のスーダン人「マフディ」は、最近高野さんプロデュースで「わが盲想」を出版したアブディンさんのことだね。これは近々読もうと思っている本の一つだが、これを読んでますます楽しみになってきた。

  • 東京で出逢った様々な国の外国人達を通して高野さんが異国の「トーキョー」を体感!

    改めて高野さんの発想のユニークさに驚いた。
    辺境を旅するため、その国の言葉を覚えるには現地出身者に習えばいい、と色々な伝を頼りに東京にいる外国人を探しだし教えてもらう。
    相手との考え方や風習の違いなんて何のその!
    違う方が面白い、と相手の懐にスルリと入って行く。
    ただ受け入れるだけでなく、相手や相手の国の情勢等を冷静に見る目も持っている所もさすがだ。

    世界には文字を持たない言語が無数にあること、外国人も実は外国語が苦手なこと、そしてマクドナルドの重要さに驚いた。

    思わず大笑いしたりしんみりしたりとこの一冊で私も色々な「トーキョー」を体験できた。
    高野さんの出逢いの物語をもっともっと読みたい!

  • 世界津々浦々を訪れてきた冒険家の、でも適度に肩の抜けたあたたかい文章で綴られた、彼が東京で出会った外国人の話。
    高野さんを知ったのは「謎の独立国家ソマリランド」
    これは滅法面白い本で、日本でのソマリランドの知名度を一気に高めた訳ですが、行動力と伝達力(あるいは、洗脳力…?)が両方備わっている高野さんだからこそ、あれだけ面白い本がかけたのかなと思っています。
    「異国トーキョー漂流記」は「謎の独立国家ソマリランド」よりもだいぶ前に書かれた本ですが(なにせ携帯電話普及前のエピソードもある)、その面白さは変わってません。
    また、どうして、面白い人の周りには面白い人が集まってくるのか。登場人物のキャラ立ちは凄まじいかぎり。ちょっと変わった知的好奇心を満たしたい時、抜群の安定感で応えてくれます。

  • 最新文庫の「恋するソマリア」で高野秀行さんに恋をした私は、お気に入りの作家として私の読書履歴書に記入するために、早急に作品の半分とは行かないまでも、1/4ぐらいは読んでおきたいと思った。先ずはデビュー作の「幻獣ムベンベを追え」を片付けて、初期の作品で旅とは関係なさそうなこのエッセイに目をつけた。多面的に「高野秀行初期」を知るためである。

    時期的にはムベンベから「巨流アマゾンを遡れ」「怪しいシンドバッド」等々の、80年代終わりから90年代の主要著書のサイドストーリー的な役割も持つこともわかった。彼は冒険を始める前に、先ずはその民族の「言語」を学ぶ。そために最も効果的なのは、その言語を母語としている人から学ぶことである。高野さんだから、その人選がいい加減でユニークで、結果的にはみんな「へんな外国人」である。しかし、その外国人の目から見た東京も「変な異国」であるのだから、結果的に高野さんの眼は「変なトーキョー」を観る眼を養うことになるだろう。

    私も、異国から帰国した1日目は見慣れた日本の景色が異様に見えた。でも、2日目からは大抵は普通の日本国に戻る。そういう体験を何度もずっと長い間出来た高野さんが羨ましいと思う。

  • 自分には一生、縁がないような外国人との関わりを綴った内容であった。結構、楽しめた。

  • 今まで読んだ高野秀行さんの作品で、最も私が気に入っている作品。 1980年代の東京、高野氏が出会った、8人の奇妙な外国人の姿を描いた、ノンフィクション的な香りのする短編集。

    普通からはズレてるけれど、愛らしい人、おいおい、こんなんやってていいの?と、心配になってしまった人、一生懸命なのはわかるんだけど、ちょっと・・・と、言いたくなる人、そんな色々な外国人が登場する。 小説なんかより、ずっと感動的な、数々のエピソードにも心を動かされてしまったのだけれど、この作品が、巷に転がっているエッセイと一線を画しているのは、著者の登場人物達に対する視線。  ネガティブだとすら思える面を含め、彼らを、おおらかに、包みこむ、人間としての器の大きさが滲み出ている、本書を通じ一貫して感じられる著者の視線が、とても快い。

    ユーモアを適度に交え語られる、東京で暮らすオカシイ外国人の姿を読んでいると、普段気付かなかった東京の一面が見えてくるから不思議。

    ささくれた心に、潤いを与えてくれる、不思議な魅力を持った一冊。

  • 高野さんの他の著作を読んでいると、状況や当時人物に共通しているものがあって、ストーリーを補完してくれる楽しさもある。

    高野さんが狂言回しとして、トーキョーにやってきた7人の外国人の物語が綴られる。

    スペイン人とペルー人、イラク人の話が好み。みんな、話に少し寂しさというか、ビターな雰囲気があって、そこが良い。

  • フランス、イギリス、コンゴ、スーダンなどなど東京にいながら、異国の珍妙な話しが盛りだくさん。

    時代背景が”携帯電話がなかったころの東京”、というのもいい。

    ずっと読んでいられる幸せな時間でした。

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著者プロフィール

1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。

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